北海道新幹線が開通する22年後の2035年、少子化と道外への人口流出で道民150万~200万人減になるのは確実だ。
更に道民の人口の7~8割は札幌経済圏(現在約340万人)に集中する。地方では職が少なく、病院も学校も減少するためで、現在も進行中である。
しかもその札幌経済圏の7割は、現役をリタイヤした60歳以上の高齢者が占める。従って「老人街札幌 」まで新幹線が延伸 したとしても、採算が取れる可能性はまったくない 。
しかし、財務省、財政制度等審議会が北海道新幹線は 「採算がとれない 」というような理由で凍結していたが、「コンクリートから人へ 」と謳って政権交代 を果たした民主党が、野田政権になって、この延伸事業が復活 となった。聞くところによると、国土交通省は、なんと延伸事業の復活が決まってから 「事業の採算性 」の検討に入った 、との事である。
さて、国土交通省が政務3役会議で北海道新幹線、新函館(仮称)-札幌間(211キロ)の2012年度着工を決定したが、工期24年とし、建設費1兆6700億円、2035年度の開業を目指すとしている。
しかし、22年後に日本はどうなっているのか考えて欲しい。
そもそも、北海道新幹線の誘致を運動していた人達の大半は、生きてるうちに乗れるかどうかも怪しい。
結局、大手ゼネコンにエサ(建設費1兆6700億円)を与える為の新幹線延伸 ではないのか。
また、現在も事故続きのJR北海道運行では、恐らく「”棺桶”新幹線 」になるし、北海道新幹線は赤字路線確実 であり、潤うのは工事を請け負った大手ゼネコンだけである 。その建設事業費である1兆6700億円だけで、北海道開発予算の3~4年分 にあたる。
24年間で、1兆6700億円使うとなれば、毎年約696億円つぎ込む計算だ 。新幹線の営業主体であるJR北海道(予定)の毎年の赤字額は300億円を超えている。果たして、2035年度の開業まで、鉄道事業を継続できるのか疑問 である。
更に建設主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(予定)は、採算がとれるとして、その後も永続してゆくことを、本気で考えているのだろうか。北海道新幹線で経済上向きになるなんて、夢のまた夢 である。
その間の費用は、工事業者である大手ゼネコンへの「乳供給事業費」 であり、税金の無駄遣い になるだけではない。
心配なことは、北海道が財政再建団体になる かも知れないということだ。そして道民に残されるのは、巨額の負債と錆び付いた鉄路である 。
北海道180市町村の2035 年の将来推計人口について
― 2005~2035 年の人口シミュレーション ―
社団法人 北海道未来総合研究所
調査結果の要旨
■北海道全体の30 年後(2035年)の人口
○総人口 は、2005 年の563 万人から2035 年には424万人(伸び率マイナス24.6%、年率マイナス0.9%)になるものと予測される。
○高齢化率 (総人口に占める65 歳以上人口割合)は、2005年の21.5%から2035年には36.4%まで上昇すると予測される。
○従属人口指数( 15~64 歳人口に対する0~14 歳と65 歳以上の人口割合)は、2035年に80を超えると予測される。
■180 市町村の30 年後(2035 年)の人口
○2005 年から2035 年の総人口の伸び率がプラスとなる市町村 は、180 市町村中5市町村にとどまる。
○2005 年から2035 年にかけて総人口が増加する5市町村 は、札幌市周辺の恵庭市、旭川市周辺地域の東川町、東神楽町、帯広市周辺の音更町、芽室町となった。
○総人口が5千人未満の市町村 は、2005年の62市町村から2035年には、112市町村に増加すると予測される。人口規模の上位10市町村についても、2035年には減少に転じていくものと予測される。
「コンクリートから人へ」を忘れた民主党は、北海道新幹線の札幌延伸の着工を正式に認可した。総工費1兆6700億円。
マスコミは、今日まで北海道新幹線の特集で「道民の夢、30年以上も開通準備を進めてきた努力が報われない」といった論調で報道してきた。
経済界ベッタリのマスコミにしてみれば、道の債務残高などどうでも良いことで、今回の新幹線、札幌延伸の着工は、さぞかし喜ばしいことであろう。
1.JRの役員の言によると、JR北海道による輸送実績の60%以上は貨物輸送などの物流であり、現在の段階では、青函トンネルがネックとなり、時速300Km以上での貨物輸送は不可能である。
2.旧・国鉄幹部の言によると、北海道新幹線の場合は「絶対に黒字にならない」と断言している。その根拠として、道民の生活水準の低下に加えて、公務員、例えば北海道大学の場合、本州方面への出張については旅費節減のため鉄道の利用を認めていない。民間各社も安い運賃の方を選ぶ。
しかも道庁の幹部も、「出張では鉄道は利用しない」と述べている。
従って、鉄道を利用できる客層は、「お金と暇がある方々」が中心になる。さて「年収300万円以下」が圧倒的に多い道民の何パーセントがこれに当てはまるか。
3.さて、めでたく北海道新幹線が開通した場合、在来線は廃止になる。そのような状態になったとき、在来線を利用していた周辺の住民生活はどうなるのか。(資料1)
北海道新幹線の開通を「大声で唱えている方々」は、はたして、在来線周辺住民の生活を考えているのか。(資料9)
更に、道の試算によると実質負担額(税金)は、建設期間(24年間)で2900億円となるそうだが、北海道新幹線の開通により、御利益を受けるのは、札幌~新函館間の「新幹線沿線の停車駅周辺のみ」である。
「道民の夢」は今の段階では、あくまで「夢」にしておいた方が宜しいのではないか。
北海道新幹線の開通は、青函トンネルの膨大な額の赤字を解消する起死回生の策でもある。考えうる解決策としてはその程度しかないが、これにも大きな疑問がある。更に、これからは格安航空会社(LCC)の時代であり、一段と北海道新幹線の赤字経営に拍車が掛かるに違いない。
北海道新幹線の利用者が住んでいる地域と、新幹線の停車駅や飛行場のアクセスにもよるだろうが、北海道(札幌始発)から東京まで行くのに、わざわざ新幹線を使う人は、はたしてどれだけいるだろうか。どう考えても飛行機の方が格安で、目的地に早く到着する。
極端な話、仮に千歳発着の国内線利用者が全て新幹線の利用者になったとしても、新幹線の建設費やトンネル等の建設費1兆6700億円。更に維持補修費だけでも最低、年間数十億円はかかる。その上、借金の利子が嵩み北海道新幹線の赤字が解消する可能性は極めて低い。
そもそも、千歳空港の利用者の半数でも新幹線の利用者になってしまったら、丘珠空港(札幌市)のように千歳空港も寂れてしまうだろう。
北海道内で客の奪い合いをしても北海道全体としては何の得もない。
千歳空港は国際空港でもあり、絶対になくす訳にはいかないというのが多くの道民の意見でもある。
次に、大きな問題は、道が法令違反(資料5) にもかかわらず、受け入れを決めている「震災がれき」の輸送における青函トンネル火災の恐れである。
JR北海道は、石勝線トンネル火災事故(資料7) などに見られるように事故続きであり、青函トンネル内で、もし「放射能汚染がれきの”自然発火”や、機関車や貨物車の”整備不良で起こる発火”」が原因で、貨物列車が火災を起こしたら、大量の「放射性がれき」が燃焼し大火災になるだろう。
青函トンネルは、地上のトンネルとは異なり、「致死量の放射線が青函トンネル内に充満」し、そのうえ、がれきは”未処理”であるため、青函トンネル外への排気により大気中に放射性物質が拡散されることになり環境を破壊する。また、JRの保線作業員の健康被害にも繋がり、復旧も困難になる。このように、青函トンネル内で大事故が起これば、北海道新幹線どころか、在来線の運行も不可能になり、本州と北海道が永久に分断されることになる。
北海道新幹線が赤字路線になるとJALの二の舞になり、潤うのは新幹線の建設工事に携わった大手ゼネコンだけである。
北海道新幹線の建設事業費の1兆6700億円だけで、北海道開発予算の3~4年分にあたる。その結果、北海道新幹線の破綻により道民に残されるのは、巨額の負債と錆び付いた鉄路だけである。
★北海道長期債務残高 4兆8901億5930万円
★道民一人あたり(子供を含む) 88万円 (2012年7月4日現在)
次に、「北海道新幹線」についてですが、北海道新幹線の新青森・新函館間については、青函トンネルを含む一部区間において新幹線と在来線貨物列車が共用走行する計画となっています。
高速で走行する新幹線と貨物列車が共用走行するケースは初めてであることから、国が中心となり安全対策の検討が進められているところですが、札幌までの全線開業時には共用走行区間の輸送力についても課題となります。
そのため、当社としましては、安全を確保した上で輸送力の確保が可能な方策として、在来線貨物列車をそのまま搭載し輸送する新幹線規格の貨物列車の技術開発に取り組んでおり、青函トンネルの最大限の活用のためにも是非とも実現させたいと考えています。
続きまして、北海道新幹線を利用される方の見込みについてですが、これまで道内経済界によって、利用者予測調査や、北海道、東北、関東地方等に在住する方を対象としたアンケート調査等が行われており、それらの結果によると、北海道新幹線が札幌まで開業した場合、北関東や東北地方と道央との移動における利便性が大幅に向上することによって、多くのお客様に北海道新幹線をご利用いただけると考えています。
また、新幹線の開業にあわせて、並行する在来線については当社の経営から分離されることになります。その取り扱いについては、北海道が中心となり利用実態等を勘案しつつ検討を進めることとなりますが、当社としましても鉄道事業者として可能な限りの協力をして参りたいと考えています。
今後ともJR北海道をご愛顧下さいますようお願い申し上げまして、このたびの、回答とさせていただきます。
2012/07/03
石川栄一
2000年代になって鉄道の廃止が顕著になった理由は2つある。
1つは、1999年3月1日の鉄道事業法改正である。
もう1つは、第三セクター鉄道の資金切れだ。
[ 杉山淳一,Business Media 誠] 全文>
VIDEO
What a comeback! Eleven months after the tsunami ravaged Japan, a series
of pictures reveals the incredible progress being made to clear up the
devastation.
本日(2015年3月14日)、北陸新幹線が開通した。
今までは、東京駅から長野駅まで部分開業しており、同区間は便宜的に「長野新幹線 」と呼ばれていた。本日開業した北陸新幹線は、現在の長野新幹線を延伸する形で、金沢と長野の間のおよそ230キロが新たに開業し、金沢と東京の間が、従来より1時間20分ほど短い、およそ2時間半で結ばれることになる。
テレビ等では、金沢駅や東京駅のホームで行われた出発式のテープカットや、くす玉割りなど華々しい光景を、盛んに報道していた。
テレビでは、金沢・東京間の所要時間の短縮や、経済効果などのメリットを大々的に報じているが、多くのデメリットを報じないのは、マスコミのいつものやり方だ。
さて、このように、めでたく開業した北陸新幹線ではあるが、前途洋々ではなさそうだ。
(引用:2014年11月02日付 HARBOR BUSINESS Online)
新幹線開業は必ずしもプラスの面ばかりではない。鉄道専門誌の編集者は 、
「地元で暮らす人にとってはマイナスの側面のほうが大きいかもしれない 」と話す。
具体的にはどのようなデメリットが生じるのか。
「現在、新幹線が新たに開業すると、並行している在来線はJRの運営から離れて第三セクター化されることになっています。これはJRの経営負担を軽くするため。つまり、逆に言えば収益の望めない赤字路線を地元自治体に押し付けるということでもある。これまでも東北本線の一部がIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道に、鹿児島本線の一部が肥薩おれんじ鉄道に、信越本線の一部がしなの鉄道に移管されています。そのいずれもが極めて厳しい経営を強いられていますし、運賃の値上げなどで利用者への負担も増加しています 」
(中略)
新潟から富山に単身赴任しているという国家公務員のA氏は言う。
「今は金沢~新潟に特急北越が1日5往復走っています。でも、新幹線が通ると北越は廃止。新幹線で上越妙高まで行って乗り換えるしかありません。お金も時間もかかるし乗り換えの手間もある。今までのように頻繁に家に帰ることはできませんね 」
富山県の高岡市から金沢市内に通勤しているB氏も「特急がほとんどなくなるので各駅停車でいくしかない」と溜息をつく。
「今は高岡から金沢まで約20分。各駅停車だと40分はかかります。本数も少ないですし……。新幹線駅もできますが、さすがに高いしすべての列車が止まるわけじゃありませんからね。僕たち北陸の人間にとっては新幹線が通ってもなにひとつ便利になりません 」
さらに深刻なのは、特急はくたかを運行する北越急行ほくほく線の沿線住民。特急はくたかは越後湯沢~金沢を結び、これまで東京と北陸のアクセスには欠かせない路線だった。しかし、新幹線開業に伴って廃止が決まっている。
「何でも北越急行って利益の9割がはくたかだったという話。はくたかが無くなることで、北越急行そのものがなくなっちゃうんじゃないかと心配しているんです。もしそうなったら、子どもたちの通学やお年寄りの通院はどうすればいいのでしょうか…… 」
(引用終わり)
北海道新幹線は赤字確実だ。テレビではいつもの通り、多くの問題点を報じない。
北海道新幹線(新青森・新函館北斗間 2015年度末)の開業に伴い、絶大な人気があった寝台特急トワイライト・エクスプレスや北斗星が廃止された。また、北海道新聞社のウェブサイトに、カシオペアの9月廃止が報じられている。
これは、青函トンネルの架線電圧が交流20kV(2万ボルト)から、新幹線規格の25kV(2万5千ボルト)になったことと、採算面の理由もある。
(引用:2014年11月02日付 HARBOR BUSINESS Online)
鉄道ファンからも新幹線開業に伴うデメリットを指摘する声が聞こえてくる。
この道20年の撮り鉄C氏が言う。
「北海道新幹線開通の影響で、JR西日本の運行する豪華寝台特急トワイライト・エクスプレスが廃止されます。まだ発表はされていませんが、JR東日本の北斗星(ブルートレイン)・カシオペアも廃止になるでしょう。どれも鉄道ファンならば一度は乗っておきたい寝台列車だけに、寂しい思いでいっぱいです 」
これらの寝台特急が廃止されるのは、新幹線の走る青函トンネル内の規格がこれまでの在来線仕様ではなく新幹線仕様になるためだ。
「JR貨物では在来線線路も新幹線線路も走ることのできる電気機関車EH800形を開発しましたが、これはこの区間が貨物列車にとってドル箱路線だからできたこと。寝台列車だけのためにJR西日本や東日本が車両をあらたに作ることは難しい。北海道新幹線の誕生で北海道から九州までが新幹線で結ばれることになりますが、それは寝台特急の終焉も意味するのです 」(前出・鉄道専門誌編集者)
(引用終わり)
■北海道新幹線 新青森・新函館北斗間は平成27年度末(2015年度末)開業予定!
■北海道新幹線 新函館北斗・札幌間は、平成42年度末(2030年度末)開業予定!
札幌延伸まで、あと15年。平均寿命は男性で約80歳、女性が86歳である。
単純に考えても、現在、65歳以上の男性と71歳以上の女性は、お墓の中で北海道新幹線の新函館北斗・札幌間の開業を祝うことになる。
北海道庁のホームページでは、『2015年度末に予定される北海道新幹線の開業に向け、いよいよあと1年となりました!北海道では、3月20日(金)~29日(日)を「北海道新幹線開業1年前ウィーク』として、関係団体と連携して、さまざまなイベントを開催します。」 などと、子供染みた宣伝を大々的に行っているが、採算がとれるのかどうかや、在来線の問題等については述べられていない。
新幹線自殺は他人事じゃない!
年収400万円世帯も将来は生活苦にあえぐ“下流老人”に
大きなニュースになった新幹線での焼身自殺。自殺したのは71歳の一人暮らしの老人で、「年金が少なく生活できない」ともらしていたという。公共交通機関を死に場所に選び、何の関係もない人を巻き添えにしたその行為は正当化されるものではないが、しかし、貧困にあえぎ、孤立する老人の姿はけっして、他人事ではない。
日に一度しか食事をとれずスーパーで見切り品の惣菜だけを持ってレジに並ぶ老人、生活の苦しさから万引きを犯し、店員や警察官に叱責される老人、医療費が払えないため、病気を治療できずに自宅で市販薬を飲んで痛みをごまかす老人、誰にも看取られることなく独り静かに死を迎える老人……。
さらに、これからの季節、深刻なのは、持病のある高齢者が倒れたまま発見されず、手遅れになる事態だ。「室内で転倒して動けなくなり、誰にも気づいてもらえない。身体は腐敗して真っ黒になり、人間としての原形をとどめていないこともある。遺体からは、腐敗した血液などの体液が流れだし、うじ虫やハエが室内を占拠するため、異様な腐敗臭が充満する」、そのようななかで、遠い親戚や遺品整理業者らが片付けを行うのだ。
社会的に孤立し、人間らしい余生や最期を送ることができずに、孤独死しかねない“下流老人”は、現在推定で600万~700万人はいるという。
12年間、埼玉県を中心に下流老人を含めた生活困窮者支援を行うNPO法人の活動に携わってきた藤田孝典氏の著書『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)によれば、今後も深刻な“下流老人”が増えていき、「平均的な給与所得があるサラリーマンや、いわゆるホワイトカラー労働者ももはや例外ではない。(略)現役時の平均年収が400万円前後、つまりごく一般的な収入を得ていても、高齢期に相当な下流リスクが生じる」「普通に暮らしてきた人々が、老後を迎えて、普通の生活を送れなくなってしまうような事態、すなわち下流に転落してしまう」(同書より)というのだ。
藤田氏は下流老人を「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義し、下流老人の具体的な指標として、1「収入が著しく少『ない』」、2「十分な貯蓄が『ない』」、3「頼れる人間がい『ない』」(社会的孤立)という3つを挙げている。
1「収入が著しく少『ない』」状態とは、いわゆる「貧困」状態だ。「相対的貧困率」(統計上の中央値の半分に満たない所得しか得られない人の割合)を目安に、2013年の国民生活基礎調査をもとにすれば、一人暮らしの場合、年の可処分所得額122万円、二人世帯では約170万円、三人世帯では約210万円、四人世帯では約245万円、この基準以下の収入しかない場合があてはまる。
2「十分な貯蓄が『ない』」状態は、収入が少ないために貯蓄に頼らざるをえないのだが、老後の生活もお金がかかる。「高齢期の二人暮らしの場合の1か月の生活費平均は、社会保険料などをすべて込みで約27万円。仮に年金やその他の収入が月約21万円あったとしても、貯蓄額が300万円では約4年で底をつくことになる(不足分6万円切り崩し×50か月)。仮に1000万円あっても、14年弱しかもたず、最終的に貧困に陥る可能性があるのだ」(同書より)
厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査の概況」によれば、4割以上の高齢者世帯が貯蓄額500万円に満たないとされ、数年で「すでに貯金を使い果たしてしまった」状態に陥りかねないのだ。
貯蓄がゼロのうえに、相談できる、3「頼れる人間がい『ない』」(社会的孤立)となれば、生活に困窮しても助けを求められず、問題が表面化するのは重篤化してからだ。
「下流老人とは、言いかえれば『あらゆるセーフティネットを失った状態』と言える。収入が低くても、親の遺産なども含め十分な貯蓄があれば問題ない。また、貯蓄がなくとも、家族の助け、地域の縁があれば支えあって暮らしていける。しかし、そのすべてを失ったとしたら……。現状において、有効な手立てを講じるのは難しいと言わざるをえない」(同書より)
たとえば、同書で紹介されている新潟県出身の男性・加藤さん(76)は、県内の公立高校を卒業して以降、自衛隊や飲食店、介護職など仕事を転々としてきた。「ところが、40代にさしかかるとき、重大な転機が訪れる。一番働き盛りのこの頃に、両親が相次いで病気に倒れ、介護が必要な状態になってしまったのだ」。
独身だった加藤さんは正社員の仕事を辞め、10年間介護を続けた。両親の死後、50代半ばとなった加藤さんは新潟の実家を引き払い、首都圏に出る。65歳まで介護の仕事で働き、年金を受け取るようになると、厚生年金がわずかに9万円であることが判明する。「両親の介護離職による年金加入年数の少なさ、低賃金などから支給される年金は少なかった」のだ。
糖尿病に、介護の仕事で患った腰痛で働くこともできず、500万円ほどあった貯蓄も瞬く間に消えてしまった。年金支給日前には野草を食べて暮らしたほどだ。
「野蒜(のびる)って知っているか。見た目がエシャロットとかラッキョウに似た小さな野草、一時期はそれを主食にしていてさ。それを食べて暮らすんだよ。よもぎとかふきのとう、つくしなんかも採っていたな。野草には救われた。それがなかったら餓死していたかもしれないと思うときもあるよ」(同書より)
現在、加藤さんは厚生年金に足りない部分の約4万円は生活保護を受け、家賃5万円で滞納していたアパートから低家賃の住宅に転居し、健康状態も回復することができた。
これらは、単に「かわいそう」といった同情や「自己責任」「自助努力」で解決できる問題ではない。簡単に“下流老人”に転落しかねない家族扶助を前提とした年金制度、負担ばかりが高まる医療費に家賃、「経済優先・弱者切り捨て」の原則に基づいた社会構造を見直すべきなのだ。
だが、現実は逆だ。すでに今年8月から、介護保険制度の改正で160万円以上の所得の人は負担額が倍になることが決まっているが、安倍政権はさらに社会保障費のカットを計画している。
自民党は稲田朋美政調会長を財政再建特命委員長にすえ、年間5000億円の社会保障費をカットする計画を進めている。これから先、介護保険はもちろん、医療、年金、生活保護と、あらゆる分野で、負担増、支給・サービス減の改悪が進んでいく。
絶望した老人が次々に自死を選ぶ。そんな社会はすぐ目の前に迫っているのだ。
(小石川シンイチ)【出典】 LITERA 2015.07.02
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