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ベーシックインカム検討の裏には政府の思惑も… |
菅政権が発足したことで、ベーシックインカム(BI)導入論が高まっている。ベーシックインカムとは、政府がすべての個人に対して、生活に最低限必要な現金を無条件で毎月支給する制度である。
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【図解】「全国民に月7万円」の代わりにあなたの「保障」はこんなに削られる |
BI導入のきっかけとなったのは、菅義偉首相のブレーンで経済学者の竹中平蔵氏(パソナグループ会長)。コロナ禍では「究極のセーフティネットが必要だ」と、国民全員に“毎月7万円支給”を提案した。
しかし、国民全員に月7万円支給するためには、ざっと計算しても年間100兆円の財源が必要になる。竹中氏は、年金や生活保護などの社会保障を廃止し、社会保障財源をBIにあてる方法を提案している。今年8月に刊行した著書『ポストコロナの「日本改造計画」』でもこう書いている。
〈一人に毎月七万円給付する案は、年金や生活保護などの社会保障の廃止とバーターの話でもあります。国民全員に七万円を給付するなら、高齢者への年金や、生活保護者への費用をなくすことができます。それによって浮いた予算をこちらに回すのです〉
現在の年金制度について、安倍晋三・前首相は国会で「100年安心は変わっていない」と抜本的改革の必要はないと説明してきた。
その安倍政権の方針を踏襲すると宣言して政権を受け継いだ菅首相が、社会保障制度をすべて廃止してベーシックインカムに一本化するような乱暴としか思えない改革に走り出したのはなぜか。日経新聞は菅首相の政治手法に関する竹中氏の興味深い発言を報じている(9月28日付電子版)。
「民間人が政策会議などでトスをあげる。それを受けた菅さんが強烈なスパイクを政策として打ち込む」 「だがスパイクなので改革は点になりがち。これを面にしていく政策が今後必要になる」
実務家の菅首相は、個別の政策課題への対処はできるが、かつてあるインタビューに「正直言うとね、国家観というものがそれまでは私になかったんです」と語ったことがあるように、ビジョン作りは苦手のようだ。社会保障改革も、本当の司令塔は「トス」をあげるセッター役の竹中氏らブレーンたちで、首相は行き先もわからないまま、提案されるまま改革を推進していく。
その国民にとって危険な政権の意思決定の姿が、今回のベーシックインカム導入の動きの裏で浮かび上がってきた。
ブレーンたちが菅首相に急進的とも言える社会保障改革を実行させようとしているのは、それが今後のコロナ対策と、増え続ける社会保障費問題を一挙に解決する方法だからだ。
現在、コロナによる休業者数は全国220万人にのぼる。特例で延長されている政府の休業補償(雇用調整助成金)の期限が今年12月に切れれば、失業者となって町にあふれ、失業率はすぐに戦後最高の5.8%までハネ上がるとの試算がある。経済回復は遠い先の話で、事態はさらに悪化が予想される。そうなれば生活保護の申請が殺到し、社会不安が広がり、財源はパンクする。そこで社会保障財源の“流用”に目をつけた。
〈おそらく経済が本格的に回復するまでには、数年はかかるでしょう。もし一回限りの給付(編集部注・特別定額給付金の10万円)で終われば、それまでの長い期間に、生活破綻する人がどんどん増えてしまいます。そこで考えられるのが、国民一人当たり七万円程度を毎月給付するという案です〉(『ポストコロナの「日本改造計画」』より)
社会保障をベーシックインカムに統一して生活保護の代わりに国民全員に7万円配れば、当面のコロナ生活破綻は回避できる。
しかも、今後、国民の医療費や介護などの費用が膨れあがっても、政府は「100兆円」を配るだけで、あとは「自己責任だ」と新たな財源の心配をする必要はない。国民のセーフティネットを切り捨てることで、「増税なき財政再建」を実現しようという国家の陰謀である。国民はその対策を考えることが急務だ。
※週刊ポスト2020年10月16・23日号
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安倍前首相の路線継承では菅首相は短命に終わる(写真:AFP/時事) |
安倍晋三の長期政権が終わり、調整役だった菅義偉が首相となった。のっけから安倍政治の継承を掲げるという地味な路線での新政権スタートである。だが、この路線、長続きするだろうか。私は難しいとみる。
2012年末に始まった安倍政権の7年8カ月は、2016年央までの前期とそれ以降の後期に分けられる。
前期は異次元緩和の時代である。デフレの元凶とリフレ派から名指しされていた日本銀行、そこを制圧する占領軍司令官のような役柄で送り込まれた黒田東彦は、自ら異次元緩和と名付けた大規模な量的金融緩和策を打ち上げることによって安倍政権誕生に祝砲を放った。
この異次元緩和、人々の気分を変えたという意味では成功だったといえる。2008年のリーマンショック以来1万円前後で低迷していた日経平均株価は、安倍政権スタートとともに上昇を始め、2015年には2万円台を回復した。
安倍の経済政策、通称「アベノミクス」は、しょせんは金融緩和頼みと皮肉られながらも、ともかく緒戦で数字を出すことには成功したのである。
構図が変わったのは、日銀の量的緩和の限界が明らかになり始めた2016年である。この年初に黒田が繰り出した唐突ともいえるマイナス金利政策が裏目に出た同年半ば以降、黒田日銀のアピール度はめっきり落ちた。
しかし、ここからが肝心の点である。頼みだった日銀に「全弾撃ち尽くし」の感が出たにもかかわらず、株式市況の強気は崩れなかったのである。安倍の辞意表明直前日の8月27日の日経平均株価は2万3208円と政権スタート時の2倍を超えている。アベノミクスは異次元緩和から乳離れできていたことになる。
なぜそれができたのか。私は、人々が異次元緩和という派手な演出に眼を奪われている隙に、税収の軸足を企業から家計へと移動させていたことにあると思っている。
安倍政権発足前の2012年度には約40%だった日本の法人税率は、2016年度までに大きく引き下げられ、今や30%の大台をも割り込んで現在に至っている。もっとも、これは世界の潮流でもあった。
世界がグローバリゼーションの波に押されるようになった2000年代以降、西側主要国の法人税率は足並みをそろえて低下し、法人税率20%台が自由主義経済圏の世界標準になった感すらある。
安倍政権による法人税率引き下げは、このような「底辺への競争」とも言われる世界的な法人税引き下げ競争にわがニッポンを遅ればせながらも参戦させるものだったのだ。
しかし、法人税引き下げ競争に参戦するには代替財源が必要である。安倍にとってのそれが消費税引き上げだった。安倍は、2014年と2019年の2度にわたって消費税を引き上げ、政権発足前に5%だった消費税率を2倍の10%にまで持ってきている。
安倍政権がそれまでの自民党政権と違うのは、財政再建のためなどという後ろ向きの言い訳に頼らず、「日本を、取り戻す」というスローガンが作り出す高揚感と黒田の異次元緩和が作り出した景気回復感を前面に押し出すことによって、普段なら政権の命取りになりかねない消費税引き上げを、大した抵抗もなく成功させたところにある。
だが、ここで大きな図式から全体を眺めてみよう。法人税とは、要するに売り上げから財サービスの仕入れと人件費を控除した残差である「利益」を対象とする税金である。
これに対し、消費税とは、売り上げから財サービスの仕入れだけを控除した残差である「付加価値」を対象とする税金である。
すなわち、消費税を増税し法人税を減税するという安倍の政策は、企業の賃金支払いへの課税を重くする一方で、企業利益の最終的な帰属先である株主への課税を軽減することを意味するわけだ。安倍政権における税制改革の正体は、労働課税強化を財源にした資本課税軽減なのである。
そこに気づけば、アベノミクスが株式市場とりわけ海外投資家に大好評だった理由もわかってくる。安倍政治あるいはアベノミクスの本質は、低所得層や中間層の犠牲において富裕層を優遇する政策であるばかりでなく、日本国民に負担を押し付けて海外投資家に媚を売るという、時代劇に登場する「悪代官」さながらの裏の顔を持つ政策でもあったのだ。
もっとも、私は、こうした安倍政治の裏の顔を、単純な正義感から批判しているわけではない。増税すれば簡単に国境を越えて出て行ってしまう資本を優遇し、国境を越えるほどの余裕がない人々に国家を支える負担を求めるという政策セットは、グローバリズムが作り出した企業優遇競争に直面した国家たちにおける一種の標準セオリーにほかならなかったからだ。
もし当時の日本が全世界的な資本優遇競争に参加を拒否し続けたとすれば、バブル崩壊後のデフレの底がさらに深くなった可能性だって否定できなかったろう。日本経済を空洞化から救うという文脈では、安倍政治の悪代官性もただの庶民いじめではなかった面もあるわけだ。
だが、それは菅が直面するだろうジレンマを予期させるものでもある。安倍が「一強」とも言える状況を作りえたのは、前の民主党政権や白川方明総裁の下での日銀をデフレの元凶に仕立てる劇場型ともいえる政治手法にあった。
しかし、その手法は、攻撃しやすい「敵」がいなくなれば通用しなくなる。たたき上げ苦労人としての「信頼できそうな人柄」が売りの菅には、劇場型演出によって消費税再引き上げや法人税再引き下げを押し通すだけの腕力はなさそうに思える。
では菅は何をすればよいか。
短期的には、新型ウイルス対策について筋の通った決断をすることである。本年3月から4月にかけての感染第1波を抑え込まないままで経済再開に踏み込んだアメリカの混乱はさておき、日本や欧州主要国ではウイルスの新規感染状況はまさに感染第2波の状況になった。ところが、この第2波におけるウイルスによる死亡状況を見ると、感染者数増とは裏腹に、ほとんどその深刻化を観察できない。
こうした状況で、いつまで「感染即隔離」というウイルス対策を取り続けるのか、そこに政治としての答を求められる日は眼の前に来ているように思う。すなわち「指定感染症」の解除といった明確な方針の表明である。
今回の感染症の性質の変化に人々が気づき始めた今、ただ感染拡大防止をと叫んでいるばかりでは、あの「オオカミ少年」の物語のように、政治も専門家たちも人々の信頼を失うだろう。9月連休における活発な旅行や人出を見ても、その可能性は高まっているのではないだろうか。
だが、より本質的かつ長期的視点から菅に必要なのは、財政をどうするかの議論を始めることである。今回のウイルス禍に対して行われた財政出動は、全国民への一律10万円給付を含め、従来の景気対策的な文脈からのものではない。
景気対策としての財政出動であれば、その見返りは将来の景気回復から得られるはずである。しかし、そうした将来への「投資」という側面を持たない被害者救済的な財政出動の落とし前をつけるためには、従来の課税理論を超えた税体系全体の抜本的見直しが必要なはずである。答えはあるのだろうか。
私は、答えはあると思っている。それは、法人税や個人所得税のような価値分配に対する課税を廃止あるいは大幅に縮小する一方、今の消費税つまり付加価値税の仕組みを拡張し発展させて「拡張付加価値税」ともいうべき新税を創設し、それを軸に税体系の全体を再設計することだ。
拡張付加価値税という考え方そのものについては拙著『ポストコロナの資本主義』(日本経済新聞出版、2020年8月)を参照してほしいが、狙いはファイナンス取引を取り込むことと、勤労者世帯の生計費の控除を可能にすることである。
むろんのこと、危機に備える方法は拡張付加価値税に限られるわけではない。ただ、今回を教訓とするのなら、さまざまな巨大リスクに耐えられる税制の新レジームを設計することは、次への備えの政治的コアであるはずだ。
そうした税制の再デザインにより、フラットで全体整合性のある税体系を準備しなければ、次の危機に備える財政の機動性を確保することなどできるはずがない。それを避けてデジタル庁新設などという行政統廃合でお茶を濁していれば、菅内閣は単なる中継ぎ政権で終わるほかはあるまい。
安倍政治の継承という看板を掲げ続けるだけでは、菅は「悪代官」にすらなれないだろう。
岩村 充 :早稲田大学大学院経営管理研究科教授
【出典】東洋経済オンライン 9/30(水) 5:11配信
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首相官邸HPより |
来週には辞任するというのに、この男は最後まで国民を舐めきった態度を貫くらしい。
昨日11日、憲法にも国際法にも反する「敵基地攻撃能力」保有の検討を事実上、進める方針を打ち出す「談話」を発表した安倍首相だが、その夜、公邸で、安倍首相のスピーチライターである谷口智彦内閣官房参与や鈴木浩外務審議官と約2時間、会食をおこなったと朝日新聞が報道。谷口参与によると、なんと〈コース料理を完食し、ワインも口にしていた〉というのだ。
そもそも、本サイトでも昨日取り上げたように、「政治判断を誤る」恐れがあると言って辞意を表明した安倍首相が、総理大臣として責任もとれないのに「談話」を発表して国の方向性を左右する重大な方針をこの期に及んで打ち出すこと自体、とんでもない話だ。
だが、それだけにとどまらず、夜の会食をおこない、コース料理を平らげてワインまで口にしていたとは……。
言っておくが、わずか2週間ほど前に持病の潰瘍性大腸炎の悪化を理由に政権を放り出したばかりなのだから、しばらくは職務以外は静養に務めるのは当然だ。ましてや安倍首相はまだ首相在任中だ。酒席を控えるのは当たり前だろう。
その上、本日午前には、安倍首相はかかりつけの慶應義塾大学病院を受診。昨日、本サイトでも指摘したように、安倍首相は辞意表明会見前は2週連続で同院を受診していたが、その後は一度も受診せず、きょうは約3週間ぶりの受診だ。
これらの報道を受け、ネット上では〈ん?通院の前日の夜にフルコース食ってワイン飲んだの?〉〈きのう宴会に出席して、フルコース完食&飲酒してたじゃねえかコイツ〉〈私なら、私ならばだけど、病院行く前夜に、お酒は飲まないし、コース料理食べないわな〉といった当然のツッコミが寄せられている。
いや、フルコース会食だけではない。今週発売の「週刊文春」(文藝春秋)では、首相周辺の関係者がこんなことを漏らしているのだ。
「内閣支持率も政権末期としては異例の六割超えで、本人も上機嫌。茂木敏充外相など、会う人会う人からゴルフの約束を持ちかけられているそうです。菅陣営の事務総長、山口泰明衆院議員も『総理とゴルフの約束をしたよ』と言っていました」
「病気と治療を抱え、体力が万全でない」と言って総理大臣を辞めると宣言した人物が、「通院前夜にコース料理完食&アルコール摂取」に「ゴルフの約束」……。ここまでくると安倍首相は「持病が悪化」なんてしていなかった、病気は政権放り出しの言い訳にすぎなかったとしか考えられない。
本サイトで何度も指摘しているように、辞任表明会見では、6月に潰瘍性大腸炎再発の兆候がわかり、7月中旬に体調に異変を感じたと説明していたが、首相動静を見ると、体調異変の以降も連日、ステーキやフランス料理などの会食ざんまいの日々を送っていた。
また、健康不安を理由に辞任を宣言しながら、会見では入院や静養はせず、「(後任が決まるまでの間)私の体調のほうは絶対に大丈夫だと思っております」と執務を続けることを宣言。
さらに、今後について聞かれると、「次なる政権に対してもですね、影響力……」と言いかけて、慌てて「一議員として協力していく」と言いなおす始末だった。
これらをみるだけでも、安倍首相の本当の辞任理由が「病気の悪化」ではなく、コロナ危機や支持率低下、見通しの立たない政治状況に嫌気がさして政権を投げ出したことは明らかだった。
ところが、安倍応援団や側近が重病説を煽り、仮病疑惑を追及しようとする言論を「病気の人をそんなに貶めたいか」と攻撃したことで、メディアも追従。安倍首相はすっかり「病気のせいで二度も志半ばで倒れた悲劇の宰相」ということになってしまった。
昨晩のフルコース会食も同様だ。会食の詳細を伝えた朝日の報道、それを受けて「本当に病気なのか?」「仮病なのでは?」という疑念の声が出ると、またも以下のような攻撃が加えられたのだ。
〈調子がいい時になに食べてもいいだろ。〉
〈リプ欄、少し調子が良い時にマトモな飯を食うのすら否定する人ばっかりで悲しくなるな。そりゃあブラック企業も過労死も自殺も無くならないわけだよ。〉
〈元気になって良かったではないか。総理が快復されるのは気に入らないようだな?朝日新聞は印象操作して何が言いたいんだ?腐った新聞社だ〉
〈病気療養中なので安倍総理のコースは、他の人とメニューが違った可能性もあるのに完食したというだけで反安倍の人達は嘘つきだ、仮病だと憶測で言いたい放題です〉
こうした攻撃には、そもそもの大前提がすっかり抜けている。安倍首相は一般人ではなく、本人も明言してきたように「国家の舵取りを司る重責」を引き受ける総理大臣という重大な立場に立つ者だ。それを、安倍首相は新型コロナという「国難」の最中に「病気」を理由に辞任すると自ら決めた。
ならば、首相在任中は少なくとも病気に差し支えるアルコールを控えるなど養生に務めるのが、国民に対して最低限の礼儀というものだろう。
なのに、国民に対してとるべき姿勢も見せず、側近が「コース料理を完食し、ワインも口にした」などと漏らし、国民に「本当に病気なのか?」「仮病なのでは?」と思わせるような行動を平気でとっているのである。当然、批判されるべきは政権を途中で投げ出した安倍首相の無責任ぶりのほうなのだ。
ところが、ネット上ではこの期に及んでもなお、安倍首相が途中で責任を放り出した総理大臣であることをネグり、「病人を差別するのか」などというデタラメな理屈で批判を封じ込める動きが起きている。
そして、本来は朝日を後追いして病状について徹底して追及・検証すべきメディアもそうした恫喝を恐れて口をつぐんでしまっている。
そして、深刻なのはこうしたネットやメディアの動きがそのまま国民の意識に反映されていることだ。多くの国民は安倍首相が病気の悪化で辞任したことを信じて疑わず、すっかり同情を寄せてしまった。
その結果、内閣支持率は爆上がり、共同通信の世論調査(8月29・30日実施)では56.9%にまでのぼった。さらに「安倍首相の傀儡」である菅義偉官房長官も総裁選で「安倍政権の継承」を打ち出し、支持率を上げた。
新型コロナ対応でさんざん批判を浴び、地に落ちていた支持率が「病気」ひとつで逆転し、いまだに責任追及がおこなわれるべき問題が山積した状態にあるというのに、それを「継承」すると打ち出した菅官房長官が支持される──。つまり、「病気」という錦の御旗によって、「安倍政治」は完全に息を吹き返したのだ。
そして、こうして同情により息を吹き返したことによって、安倍政権の「負の遺産」も、まったく責任がとられないまま菅官房長官によって継承されようとしている。
実際、本日おこなわれた日本記者クラブ主催の総裁選討論会では、公文書改ざんを命じられ追い込まれ自殺した近畿財務局の職員・赤木俊夫さんの妻が再調査を求めている問題について、菅官房長官は「財務省で調査をし、検察でも捜査した。結果は出ている」「再発防止策をこれからしっかりとつくっていく」と“終わったこと”として片付け、記者から“財務省の調査は身内によるものでしかない。
安倍昭恵氏や政治家の名前が文書から消された点など改ざんの経緯は明らかになっていない”と指摘されても、「いま私、申し上げたとおりです」と取り付く島もなかった。
政治責任の追及が不完全なままなのは、森友問題だけではなく、加計学園問題も「桜を見る会」問題も同じだ。
本当ならば、その全容が解明され、安倍首相が数々引き起こしてきた「政治の私物化」について安倍首相は責任をとらなければならないが、そうした追及・検証が「病気」によってなぜか幕が下ろされてしまった。
そして、それらが何の問題もなかったことのように「継承」されようとしている──。ようするに、「病気」がすべてに蓋をしてしまったのだ。
いや、それどころか、安倍応援団はすでに「第三次安倍政権」待望論を唱え始めている。第一次政権から第二次政権へと復活した際も、安倍首相は“病気で断念せざるを得なかった無念の思いを再びかなえる”などといったふうに政権投げ出しを美化し、利用したが、それが再び繰り返される可能性は十分ある。というか、国民世論がそれを後押ししているような状態だ。
「病気」を理由に批判が封じ込められてしまう状況があるかぎり、問題の全容解明も責任を明確にすることも、安倍政治にケリをつけることもできない。菅政権による悪政の継承、そして「安倍第三次政権」を阻止するためにも、病状も含め、安倍首相への追及を終わらせるわけにはいかないだろう。
(編集部)
【出典】LITERA 2020.09.12 10:18
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庶民感覚とは遊離していた安倍首相はコロナで信を失った
(写真:代表撮影、ロイター) |
7年8カ月に及ぶ在任期間を「攻め」の姿勢で駆け抜けてきた安倍晋三首相。だが、こと未知のウイルスには通用しなかった。数々の難局に対して批判に正面から答えず、国会での答弁拒否や文書改ざんで乗り切ってきた政権だが、ウイルスには無力だったといえる。健康の問題を理由に退陣することについては気の毒に思う。だが、政策の評価に同情を差し挟めば、次につながる教訓を見失う。
【データで見る】新型コロナウイルス 国内の感染状況
安倍政権は、同盟国のための武力行使を可能にする集団的自衛権という憲法の根幹を問う安全保障関連法の成立を強行した。そのほかにも、秘密を漏らした公務員を罰する特定秘密保護法、組織犯罪を準備したとみなされれば罪に問われるいわゆる共謀罪など、平和や人権に大きな変化をもたらしかねない法律を次々と成立させた。
野党や国民から批判の声が上がっても、正面から答えない詭弁を弄して、数の力で政権を維持してきた。「戦後レジームからの脱却」を掲げた、いわば安倍流の「攻め」の姿勢だ。
強硬な「攻め」を担保する「地ならし」にも余念がなかった。元防衛相の石破茂氏、元総務相の野田聖子氏、東京都知事の小池百合子氏といった、自分の地位を脅かしそうな政治家を遠ざけ、苦言を呈する議員には選挙区に刺客を送り込んで落選させた。
ターゲットは官僚にも向けられる。中央省庁の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」を発足させ、人事を官僚主導から政治主導に変えた。官僚が官邸に抵抗しにくいシステムを築き上げたのだ。首相の周囲は、経済産業省など経済活動を推進させる立場の役人が補佐官として張り付き、経済優先の路線をひた走る。
仕上げはメディアへの圧力だ。気に入らない報道には抗議するなどのほか、批判的なテレビ局には出演しない。首相の会見でも事前に質問を通告するよう求めるなど、制約が課せられた。やがてメディア側にも、官邸の意向を斟酌(しんしゃく)しなければ仕事がやりにくいという空気が育まれていった。これで忖度政治の完成だ。次第に批判は封じ込められ、政治は民意とはかけ離れたものになっていく。
首相の在任中、守勢に回ったのが「もりかけ問題」や「桜を見る会」だ。野党の追及も決定打を欠いた点も否めないが、首相は正面から追及に答えようとせず、逆に公文書の改ざんや廃棄などで難局を生きながらえてきた。庶民感覚を見失った宰相には、9億5600万円の国有地を1億3400万円で払い下げることの不自然さと、それに不公平感を覚える庶民感覚を理解できなかったのかもしれない。そのことによって近畿財務局の職員が自殺したことを、首相は自分の責任だと考えたのだろうか。
その宰相を襲ったのが、得体の知れない新型コロナウイルスだった。ウイルスばかりは忖度はしてくれないし、詭弁も通用しない。おまけに政治家や官僚とは違う、科学的な根拠を重視する公衆衛生や感染症の専門家の力を借りなければならない。詭弁とは対極にあるこれらの専門家には、もちろん永田町の論理が通じるわけもなかった。首相在任中、初めて経験する事態に安倍首相も戸惑ったに違いない。
コロナ対策で、まず安倍首相が手掛けたのは、2月27日に全国の小中高校に対して行った「休校要請」だった。首相が信を置く側近の今井尚哉首相補佐官の進言を受け入れて決断したと言われている。桜を見る会などで支持率を落とした首相にとって、起死回生の一策だったのかもしれない。だが、学校が休校になれば働く親たちが窮地に追い込まれることは容易に想像できる。とくに当時は子どもが感染しても重症化に至る率は低いことがすでにわかっていた。科学的根拠に基づかなかった一斉休校は、庶民の暮らしへの配慮を欠いていた。
防戦を強いられた首相の次の一手も、批判のターゲットとなる。
アベノマスクだ。
全国的なマスク不足を解消するためのアベノマスクは、今井補佐官とは別の補佐官の「全国民に布マスクを配れば不安はパッと消えますよ」との進言を受け入れたと言われている。当初は466億円をつぎ込むとされたが、PCR検査の殺到で機能不全に陥った保健所や地方衛生研究所の態勢整備が叫ばれていた時期でもある。「ほかにやることがあるのでは」「エイプリルフールか」などと非難の嵐に見舞われた。
結局、各戸に配られる頃にはマスク不足も解消され、菅義偉官房長官が会見で「布マスクの配布により需要が抑制された結果、品薄状況が改善された」などと、根拠の脆弱な言葉が失笑を招いた。
さらに追い打ちをかけたのが、緊急事態宣言の期間中だった4月12日に首相がインスタグラムにアップした動画だ。愛犬を抱いたりティーカップを手にくつろいだりして、「皆さんのこうした(自粛)行動によって、多くの命が確実に救われています」などと呼びかけるメッセージが添えられた。
当時といえば、自粛生活を強いられる多くの国民は不安に陥り、戸惑いが広がっていた。店の経営資金に窮して途方に暮れる自営業者や、多くの人が仕事を追われて失職し、明日の生活さえままならない絶望感に打ちひしがれていた。そんななかで、一見すると優雅に見える動画は、逆に反感を買うことになる。これも庶民感情を見誤った粗忽(そこつ)の極みだ。
一方、コロナ感染の防御対策も後手に回った。3月下旬に感染者が急増して医療現場が悲鳴を上げていた時期、専門家からも緊急事態宣言の必要性が訴えかけられたが、経済を懸念した官邸が宣言したのは4月7日だった。しかも自粛要請を求める業種などで東京都と折り合いがつかずにずれ込む不手際もあった。
首相は国民の前に出る機会が極端に減っていく。緊急事態宣言は5月25日、7週間ぶりに全面解除されたが、この日の首相会見以降、国会が閉会する6月18日まで、首相は一度も記者会見を開いていない。最後の会見は、広島の平和祈念式典に出席した8月6日で、わずか15分間だった。国を挙げてウイルスと闘っているとき、首相は明らかに腰が引けていた。
首相会見でこんな場面があった。
緊急事態宣言の延長を受けて開かれた記者会見の5月4日だ。ビデオジャーナリストの神保哲生氏の「検査を増やせと指示しても増えないのは、本気で増やそうとしなかったからなのか、増やそうとしたが増えなかったのか」との質問に、首相は、こう答えた。
「本気でやる気がなかったというわけではまったくありません。いわば人的な目詰まりもあった」
自分は頑張っているが、PCRを担う保健所や地方衛生研究所の目詰まりに責任を負わせるような口ぶりだ。
だが、実はこの保健所や地方衛生研究所の態勢整備は、自民党政権が棚上げしてきた感染症対策上、重要な“教訓”だった。
2009年の新型インフルの流行時の反省を踏まえて、今後の感染症対策のあるべき姿を検討した「新型インフルエンザ対策総括会議」の報告書では、「保健所や地方衛生研究所を含めた感染症対策に関わる危機管理を専門に担う組織や人員体制の大幅な強化、人材の育成を進める」と提言されている。
この総括会議の報告書が完成したのは2010年7月で、民主党政権下での提言だった。その後を継いだのは2012年末に政権交代を果たした自民党の安倍政権だった。にもかかわらず、保健所の拡充をせず、地方衛生研究所の法的裏付けも放置してきたのは安倍政権なのだ。
報告書では、このほかにも、アメリカCDC(疾病対策センター)などを参考にして、よりよい組織や人員体制を構築すべきである」などの提言がなされているが、予算措置を伴うものについては放置されてきたのが実情だ。
かつて「悪夢のような民主党政権」と放言した安倍首相。確かに国政を安定させるなど功績は少なくない。だが、こと感染症対策においては、同じ言葉を返されても抗弁できないはずだ。
コロナ禍が深刻化する3月には、「私が決断した」などと、政治主導をアピールする言葉を連発し、6月の会見では、「日本モデルの力を示した」と胸を張った首相だが、実の伴わない首相の言葉に信憑性を見いだせた国民がどれほどいただろうか。
他国ではそれぞれのリーダーたちが、よいも悪いも、その“言葉”によって影響力を行使していた。それと比べて、安倍首相の存在感は薄れるばかり。忖度とは無縁の未知のウイルスに安倍流は通用しなかった。
辰濃 哲郎 :ノンフィクション作家
【出典】東洋経済オンライン 9/2(水) 12:56配信
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国会延長を蹴飛ばし、臨時国会召集要求も無視しているのは何処の誰?
(C)日刊ゲンダイ |
安倍晋三の首相連続在職日数が24日で2799日となり憲政史上最長となった。
安倍は「政治においては、何日間在職したかでなく、何を成し遂げたかが問われるんだろうと思うが、この7年8カ月、国民の皆さまにお約束した政策を実行するため、結果を出すために一日一日、その積み重ねの上にきょうの日を迎えることができたんだろうと考えている」とコメント。
え?
どこのパラレルワールドの住人か知らないが、成し遂げたのは社会の破壊くらいだし、国民との約束を守らなかったことが現在問題になっているのにね。
自民党は2017年に党則をねじ曲げ総裁任期を「連続3期9年」に延長したが、二階俊博も甘利明も麻生太郎も安倍4選に言及。永久に安倍を担ぐ算段だったのかもしれない。しかし、現実世界ではそれは無理。
8月17日、東京・信濃町の慶応大病院を安倍は訪れ、約7時間半滞在。同24日にも再び病院を訪問した。安倍周辺は「前回の続き」と説明したが、持病の潰瘍性大腸炎が悪化したという説や、検察の捜査(公職選挙法違反)から逃れるための入院の準備といった説も流れた。
こうした中、SNSでは「さっさと死ね」といった類いの意見が散見されたが、乱暴なことは言ってはいけない。病気になったのは安倍の責任ではない。それに今、死んだら逃げ得だ。一連の「安倍晋三事件」の追及がうやむやになる可能性もある。
安倍が7年8カ月で日本に与えたダメージは凄まじい。北方領土をロシアに献上し、アメリカからはガラクタの武器を買い、拉致問題を放置。国のかたちを変えてしまう移民政策を嘘とデマで押し通し、森友事件における財務省の公文書改ざんをはじめ、防衛省の日報隠蔽、厚生労働省のデータ捏造などで国家の信用を地に落とした。
安倍は、水道事業の民営化や放送局の外資規制の撤廃をもくろみ、「桜を見る会」には悪徳マルチ商法の会長や反社会勢力のメンバー、半グレ組織のトップらを招いていた。
この悪党を支えてきたのがカルトや政商、「保守」を自称するいかがわしい言論人だった。
今、安倍がやるべきなのは無理をせずにしっかりと体調を整え、わが国で何が発生したのか、この先の検証に協力することだ。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/08/29 06:00 更新日:2020/08/29 06:00
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/08/29 06:00 更新日:2020/08/29 06:00 |
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国会延長を蹴飛ばし、臨時国会召集要求も無視しているのは何処の誰?
(C)日刊ゲンダイ |
「147日間休まず働いたら、普通だったら体調としては、おかしくなるんじゃないの」「休む必要があるということは申し上げた。ちゃんと自分で健康管理するのも、仕事の一つだ」
安倍首相が17日に東京都内の病院で「日帰り検診」を受けたことに触れ、こう語っていた麻生財務相。
国民に自粛生活を呼び掛けつつ、自宅のソファで愛犬と優雅に過ごす姿をネットに投稿していた安倍首相が、この約5カ月の間、ほぼぶっ続けで働き続けていたとは到底思えないが、それはさておき、麻生財務相は安倍首相が休めなかった理由として「新型コロナウイルスへの危機対応」を挙げたかったらしい。
「突然の出来事で忙しかったのだから、休むのは当然ではないか」というわけで、もっともらしく聞こえるものの、麻生財務相はかつてブログでこう主張していた。
東日本大震災、福島原発事故という未曽有の危機への政府対応が迫られた2011年の6月23日付だ。
<この通常国会は、昨日の衆議院本会議をもって、70日間の延長となった。ここで、はっきりさせておかなければならないことは、我々自由民主党は、延長そのものに反対したことはないということだ。我々は、被災地で災害からの復旧・復興が端緒に就いたついたばかりの段階で、国会議員が夏休みを取れるはずがないと、6月22日で国会を閉じようとされていた菅首相の対応に対して、厳しく物申してきた>
野党時代は、災害からの復旧、復興のためには<国会議員が夏休みを取れるはずがない>と言っていたにもかかわらず、自分たちが政権の座に就くと一変。新型コロナへの対応を求める国民の声に耳を傾けず、<休む必要がある>などと真逆のことを言っているからムチャクチャだろう。
<今の状況を考えたとき、被災地の復興や外交の立て直しなど、政府がやらねばならないことはいくらでもある。そういったことを進めるに当たって、何が障害になっているかといえば、菅内閣総理大臣の存在そのものがその一つになっていると、確信している。菅直人総理大臣が復興の最大の阻害要因、我々はそう言い続けてきたし、今もそう思っている。したがって、菅首相に辞めていただくことが、日本の為、復興の為になると、申し上げてきた>
麻生財務相は2011年6月のブログでこうも書いていたが、野党側が求めた国会延長を蹴飛ばし、さらに臨時国会の召集要求も無視しているのは何処の誰なのか。
麻生財務相の言葉を借りて言えば、新型コロナの感染防止と景気回復のための<障害><最大の阻害要因>となっているのは間違いなく安倍首相の存在だ。
麻生財務相が安倍首相に言うべきは<休む必要がある>ではなく、<辞めていただくことが、日本の為、復興の為になる>だ。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/08/19 06:00 更新日:2020/08/19 06:00
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/08/19 06:00 更新日:2020/08/19 06:00 |
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首相の三つの「ない」を巡る説明と本音 |
臨時国会を開かない、閉会中審査に出ない、記者会見しない―。新型コロナウイルスの感染再拡大が続く中、安倍晋三首相の発信力低下が際立っている。三つの「ない」には、野党や記者からコロナ対応などに関する追及を回避する思惑が透ける。
「私もこうした形で節目節目に話をしているが、菅義偉官房長官も西村康稔経済再生担当相も毎日会見を行い、説明している」。首相は4日夕、官邸で記者団から臨時国会や記者会見を開くよう求められ、こう答えた。「それでも国民は不安だ」と指摘されても同様の説明を繰り返し、「逃げないでください」という声も飛んだが、答えずに官邸を後にした。
政府・与党は早期の臨時国会召集に否定的だ。菅氏は4日の記者会見で「今はコロナ対策に全力を尽くすべきだ」と主張。観光支援事業「Go To トラベル」を巡る迷走や新型コロナウイルス特措法改正などが国会審議で取り上げられ、政権への打撃になることを避けたいのが本音だ。
首相には国会出席のために時間を取られることへの不満もある。昨年11月の参院予算委員会では「世界で私はおそらく最も、圧倒的に多くの時間を国会で質疑に応じている」と持論を展開している。
与党は、首相が閉会中審査に出席して説明責任を果たすべきだとの野党の要求も拒み続けている。閉会中審査は毎週開かれているが、これまで首相の出席はゼロ。自民党幹部は「首相の出席は(閣僚との)屋上屋になる」としているが、首相が矢面に立つのを防ぎたい意図は明らかだ。
約1カ月半、記者会見しない理由も同様だ。首相は会見を批判的に報道されることを気にしているといい、コロナ感染拡大後の会見の多くを外交日程などを理由に途中で打ち切ってきた。河井克行前法相、案里参院議員夫妻の事件や森友学園問題など、コロナとは無関係の問題でも追及されるのを避けたいようだ。
西村氏は4日で会見の実施日数が100日を数えたが、お盆の帰省を巡り菅氏と見解が食い違うなどの弊害も出ている。そもそも、一国の首相が発信するのとは重みが異なる。
立憲民主党の枝野幸男代表は4日の会見で政府の対応を「朝令暮改、閣僚ごとに言うことが食い違い、無政府状態と言っていい。一刻も早く退陣し、別の首相の下で対策に当たっていただくのが国家に対する責任だ」と酷評。自民党幹部ですら「政治家という商売は逃げていたら成り立たない」と苦言を呈した。(石井努)
【出典】北海道新聞 8/5(水) 10:03配信
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【出典】LITERA 2020.06.16 10:57 |
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首相官邸HPより |
韓国の民間の植物園で、慰安婦問題を象徴すると思しき少女像に安倍首相らしき男性がひざまずいて謝罪する像が設置されたというニュースに、また安倍政権とネトウヨが大騒ぎしている。
とくに28日午前の会見で菅義偉官房長官がこの件について「国際儀礼上、許されない。報道が事実なら日韓関係に決定的な影響を与える」などと不快感を表明したことが報じられると、「首相謝罪」がトレンドワードにまでなった。
しかし、問題はその後。いつものように、ネトウヨの韓国ヘイトがさらに拡大し、メディアが嫌韓一色になると思いきや、まったく意外な現象が起きている。嫌韓どころか、「安倍首相がコロナ対策の不手際を国民に謝った」と勘違いした人が続出しているのだ。
実際、ツイッターを見ると、こんな声であふれている。
〈首相謝罪、てっきり今までのコロナ対策の怠慢や無策を国民に詫びるとかだと思ったら違った。〉
〈トレンドに首相謝罪とあったので、めずらしくコロナ対応等で、 国民に謝罪会見でもしたのかと思ったら・・・〉
〈#首相謝罪 てっきり、税金を無駄な使って、ごめんなさい!と国民に謝罪した。と言うことだと思ったのに。 そんなことありえないか?(笑い)意固地だもんね。#アベノマスク に命かけているもんね。〉
〈コロナ対応や水害の被災者支援についての対応遅れについてかと思ったらちゃうのね〉
〈首相謝罪っていうから、コロナ禍で世界中が大変な時にさっさと国会閉めてろくな舵取りもしないで沈黙してごめんなさいってようやく謝って仕事する気になったのかと思ったらあれ?全然違う話?〉
〈トレンドの首相謝罪をみてしまった。 そっちの事でしたのね。 てっきりこのコロナのダメダメな世の中に謝罪かと思ってしまいました。〉
〈アベノミクスが全く嘘っぱちのゴミ施策でしたので国民へ謝罪するとかじゃ無いのね... #首相謝罪〉
〈トレンドに「首相謝罪」とあったので、国民に今までの不手際、私物化をようやく認めて謝罪したのかと思ったら、違う件でした。〉
GoToキャンペーン強行やアベノマスクの追加8000万枚配布という愚策が大炎上していたことから、その件につい謝罪したのかと勘違いした人も多かった。
〈首相謝罪って、私も国民にかと思った。 「マスク、めっちゃ儲かるので2回目しようとしてました。すみません!」かなぁって。〉
〈トレンドに #首相謝罪 ってあったけど、これを謝罪したわけじゃなかったのか。すみません、誤発注でした!とか。 布マスク、今後さらに8千万枚を配布 不要論でも発注済〉
〈首相謝罪?って、私は首相が布マスク配布やGOTOトラベルで無策で迷惑かけているのでてっきり国民に謝罪する件なんだとおもったんだが。〉
〈首相謝罪とかいうから、ついに国民に向けて「アホな政策で税金を無駄遣いしてしまい大変申し訳ございませんでした。」を言う気になったかと思ったら全然違った〉
しかも、驚いたのは、「首相謝罪」というのが、韓国に設置された安倍首相の謝罪像の件だったとわかったあとも、像や韓国には全く関心を示さず、むしろ、安倍首相が国民に謝罪したわけじゃなかったことへの失望を表明する声が相次いだことだ。
〈首相謝罪???とか思いながら開くと、あぁそういう事ねとw こっちはこっちで災害とかコロナで大変なんだから、あんなの放っとけばいいんじゃないですかね。〉
〈首相謝罪って国民に対してかと期待してしまったけど覗いたらつまらなくて草〉
〈首相謝罪っていうから国民に対してなんかしたんかと思ったけど像についてか、くだらん。〉
〈#首相謝罪 がトレンドに入ってるのを見て、ずさんなコロナ対策と感染者が増えてる中強行したGoToキャンペーンについて安倍総理が謝ったのかと思ったんだ。 そしたら韓国の植物園が置いた、慰安婦少女に謝る安倍総理に似た男性の像の事だったんだ。〉
〈首相謝罪ってあの像の事かよ!! こんな像作る余裕あるとか、よっぽど平和で暇な国なんだろうなぁ。 いいなぁ。 日本はコロナで大変ですよw〉
〈俺たち国民に謝罪したのかと思った。 というか思いたかった。 #首相謝罪〉
〈日本のトレンドに「首相謝罪」とあったので,ようやく安倍首相もおのれの愚策に気づき,政策転換を図るために全国民に対して謝罪をするのかと期待したら,全くの「ぬか喜び」だった。〉
〈日本国民に謝罪だとみんな思ったろうなあ。がっかり。〉
さらには、これをきっかけに、安倍首相に対して実際に国民に謝れ、と迫る動きまで出てきている。
〈安倍ちゃん国民に謝れ〉
〈トレンドに「首相謝罪」ってあるけど、コロナ対策もロクにしてないし、まずお前が謝罪しろ。〉
〈慰安婦像にする必要は無いが、税金を無駄使いしやがったことを国民に謝罪しろ。 #首相謝罪〉
〈首相謝罪か 国民にやってほしいよね実際に〉
〈首相謝罪像わろた 慰安婦はともかく、安倍さんは今すぐ日本国民に謝った方がいいと思うよ〉
〈首相謝罪?韓国に謝罪はいらんよ。安倍は日本国民に謝罪してくれよ。〉
〈むしろ日本国内にも多数、あれぐらいの土下座して欲しい国民いっぱいいるけどね。いや、土下座いらんから、1秒も早く政界やメディアから消えてくれ。言動の全てが日本の害悪〉
〈国民に謝罪せえよ 色々あるやろ 広島の議員のことや ありすぎて忘れるわ #首相謝罪〉
〈#首相謝罪 また使えないマスク8000枚配るバカはマジで国民に土下座しろ〉
〈コレはけしからん。 安倍が謝るべきは、今までさんざん欺き搾取してきた日本国民に対してだろ‼️ 日本でも韓国でも阿呆なエセ右翼は、ろくな事しないな。 #首相謝罪〉
〈首相謝罪ワロスwwwww安倍も菅もまずは日本国民に謝れwwwww〉
〈#首相謝罪 日本国民に対して謝罪してくれよん。 特に水害被災地に(支援遅すぎで)〉
〈殊勝なことに首相が国民に謝罪したのかと勘違いしたわw 韓国に謝るかどうかはともかくとして、土下座はこうするんだと理解する機会があってよかったじゃないか、安倍晋三。 #首相謝罪〉
しかも、対象は安倍首相だけではない。菅官房長官が不快感を表明したことにも、賛同どころか、「お前こそ土下座しろ」のツッコミの声があふれた。
〈安倍の謝罪像に菅がキレてるけど、安倍総理が他国からdisられようと、もはや何とも思わないなぁwww むしろ日本国民に対して土下座謝罪して欲しい気分なんだけど。 ずさんなコロナ対策について。〉
〈ガースー、お前も含めて実物の安倍夫妻に対し日本国民〔一部を除く〕も不快感だよ〉
〈首相謝罪はこの半年の日本国民への仕打ちにまずすべきだと思うの。やることやりもしないで不快感とか、何吠えてんの。〉
〈菅氏「首相謝罪」像に不快感 - Yahoo!ニュース そうだよな、まず日本国民に散々税金で好き勝手してごめんなさいって土下座をするのが先だよな。〉
〈首相謝罪…菅が不快感? 日本国民は普段、キミたちに不快感を露わにしていることに気付いていないのかい? キミたちは日本国民に土下座するべき立場なんだよ。それを渋って、いつまでも椅子温めて国民から税金搾取してお友達ごっこやってるから、日本国民に代わって制裁が下されただけのこと。〉
〈ホント不愉快ですね。 そんな像にムキになる前に「国民に対して」言うことないのか? 内面より外面の政府。 そのくせ「もっと安倍総理なら男前だ」位言って笑い飛ばす器量も無く1公園のモニュメントに「安倍総理様がー」って?〉
〈首相謝罪像とか自分のことに関してはめちゃくちゃ敏感なくせに国民の声は聞こうとしないよな。きも〉
さらには、謝罪像そのものをネタにして、こんなツッコミまで飛び出している。
〈首相謝罪像の頭を日本国民の方に向けて設置するべきなのでは〉
〈首相謝罪像って韓国にあると問題やけど 日本でもらって 国民に謝罪像として飾ったら 問題ないジャマイカ〉
〈日本にも一体送ってくれんかな〉
〈「首相謝罪の像」、日本にも何個か設置したいと思いませんか? 例えば福島とか、森友小学校跡地とかに。〉
〈この土下座する安倍像、是非とも日本でも作って国民の像と共にこんな感じで展示したい。 お粗末なコロナ対応で国民を苦しめた責任は重いでしょ。〉
〈その像(安倍が謝る像)は日本が作るものです 安倍晋三は韓国ではなく日本国民に謝るべきです〉
〈慰安婦像にではなく 国民に土下座してほしい この像 日本に寄贈してくれないかなぁ〉
〈首相謝罪像?国民に対しての像を国会議事堂入口に作ったら?〉
〈見ましたよ!本当に大笑い あの像は日本国民に対して使った方がいいだろ?〉
これまでのパターンなら「安倍首相に土下座させる像を置くなんてけしからん」というヒステリックな声がネットを覆い尽くすはずが、「首相謝罪像を日本にほしい」「日本でも設置してくれ」とは。しかも、こうしたツッコミをしているのは、以前から政権を批判してきたリベラルの人たちだけではない。文面やアカウントを見ると、ふだんは韓国に対して差別的な言説を連ねるネトウヨ的な人まで含まれていることがよくわかるのだ。
いったい、これはどういう変化なのか。というのも、ここ数年、日本ではネトウヨや安倍応援団だけでなく、とくに政治に興味のない人や、安倍政権に批判的な人のなかからもライトな嫌韓発言が出てくるなど、韓国ヘイトの空気が支配的になっていた。
そして安倍政権もまた、政権不祥事や悪法の強行採決などに対する批判をごまかすために、この嫌韓を利用してきた。なかでも象徴的なのが昨年の韓国に対する唐突な輸出規制で、これも参院選に合わせて嫌韓を煽り政権浮揚をはかるための差別政策そのものだった。
今回の安倍首相謝罪像問題も、安倍官邸は明らかにいつものように失政をごまかすために利用しようと、扇動を仕掛けていた。
韓国政府がまだ何のコメントも出していない時点で、菅官房長官がわざわざ会見で触れたという事実からもそのことはうかがえる(しかも、韓国政府はその後「どの国であっても外国の指導者クラスに対してそうした国際礼譲を考慮する必要がある」として像を批判している)。
普段は重要な問題について「コメントする立場にない」などと無視する菅官房長官が、それこそ本来「コメントする立場にない」はずの他国の民間人の表現活動について、「許されない」などとコメントするなんて、普通は考えられない。それこそ「韓国はひどい」「安倍さん負けるな」といった声を引き出すために、わざわざニュースを大きくしたのである。
ところが、上述のように、まったく嫌韓は盛り上がらず、逆に「安倍首相は国民に謝れ」「謝罪像を寄贈してもらって日本に設置しろ」という声が噴出する羽目になってしまったのだ。
これはもちろん、国民の意識が大きく変わったからだ。これまでは嫌韓に踊らされていたが、コロナ対策をみて、韓国よりはるかに日本の安倍政権がひどいということに気がついてしまったのである。
実際、ワイドショーなどでも最近は、嫌韓特集がまったく数字が取れなくなっているという。各番組はそれでも、北朝鮮との関係悪化、軍艦島の世界遺産登録に韓国が取り消し要求、G7参加、ビザ問題、慰安婦支援団体の不正などを取り上げていたが、視聴率が振るわず、結局、散発的に終わっている。
そういう意味では、これまで政権に怯え、忖度してきたマスコミもそろそろ意識を変えるべきではないのか。
〈国民に対して謝罪したのかと思ったら違ったわ。 国民に首相謝罪して、そして辞めて。仕事しない首相など要らない〉
これが大多数の国民の声なのだ。時代遅れの嫌韓をやってる場合ではないのである。
(編集部)
【出典】LITERA 2020.07.29 11:58
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【出典】LITERA 2020.06.16 10:57 |
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首相官邸HPより |
一体、この失敗の責任を安倍首相はどう負うのか。本日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2020年1~3月期の公的年金積立金の運用実績を発表したが、なんと、過去最大の損失額となった2018年10~12月期の14兆8039億円をはるかに上回る、17兆7072億円の赤字となったのだ。
さらに、2019年度の運用実績のほうも8兆2831億円の赤字となり、リーマン・ショックがあった2008年に9兆3481億円の損失を叩き出して以来、過去2番目の損失額を記録。こちらも2020年1~3月期の赤字が大きく響いた格好だ。
無論、今回ここまでの赤字を叩き出したのは新型コロナの影響によって世界的に株価が値下がりしたことが原因だ。実際、すでに4月の段階から1~3月期の運用が17兆円前後になると民間エコノミストが試算し、厚労省も同様の試算を示していた。
だが、今回約18兆円もの赤字を叩き出したことは、「新型コロナのせいなのだから仕方がない」などと済ませられるようなものではない。むしろ、国民が老後のために捻出してきた約18兆円もの年金を一気に溶かしてしまう、現在の運用システムの問題が浮き彫りになったというべきだ。
そもそも、GPIFは国民が積み立てた年金を資産運用し、その金額は130〜160兆円にものぼることから「世界最大の機関投資家」「クジラ」とも呼ばれる。だが、以前は国民の年金を減らしてしまう危険性を考え、株式などリスクのある投資を直接的にはほとんどしていなかった。
しかし、第二次安倍政権下の2014年10月に基本ポートフォリオを大幅に変更し、株式への投資を全体の半分にまで増やすことを決定。これは、GPIFに大量に株を買わせれば株価が上がり、景気が回復したという印象を与えることができるという安倍政権の計算があったためだ。
ようするに、国民の大事な年金を世論操作と政権維持に利用したわけだが、基本ポートフォリオを大幅変更したあとの2015年度には5兆3098億円の運用損を叩き出す結果となったのだ。
そして、2019年度は約8兆円もの赤字──。このように書くと、安倍政権支持者は「ほかの年は黒字だ」と騒ぐが、2015〜2019年度の黒字額は6兆8039億円だ。2020年1~3月期の約18兆円という損失額を見てもわかるように、今後も世界の新型コロナの感染拡大状況によって同じように株価市場に大きな影響が出る可能性は十分考えられる。株式投資割合を増やすという「大博打」後の黒字は一気に吹き飛び、それどころか赤字に転落することもありうるのである。
しかも、この年金を使った「大博打」による失敗のツケを払うのは、言うまでもなく国民だ。
実際、安倍首相は国会でこう明言している。
「基本的に、年金につきましては、年金の積立金を運用しているわけでございますので、想定の利益が出ないということになってくればそれは当然支払いに影響してくる」
「給付にたえるという状況にない場合は当然給付において調整するしか道がないということ」(2016年2月15日衆院予算委員会)
それでなくても株式の投資割合を半分にまで上げたこと自体が高リスクの大博打状態なのに、世界経済は今後、新型コロナの行方に左右されつづけることは間違いない。そして、このまま高リスクの投資に年金が注ぎ込まれつづければ、安倍首相が明言したように、わたしたちの年金給付額が減ってゆく事態になりかねないのだ。
安倍政権が「新型コロナの影響」と言えば国民は納得すると高を括っているのだろうが、問題の本質は、こうした危機の影響をモロに受け、一気に約18兆円もの年金を溶かしてしまう運用のあり方そのものにある。決して騙されてはいけない。
(編集部)
【出典】LITERA 2020.07.03 09:33
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【出典】LITERA 2020.06.16 10:57 |
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河井案里議員(46)と河井克行前法務大臣(57)が6月18日、買収の疑いで逮捕された。昨年10月、案里容疑者陣営の公職選挙法違反が報じられてから約8ヵ月。2人の逮捕が大きな波紋を呼んでいる。
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【写真】逮捕された河井克行前法務大臣. |
毎日新聞によると2人は共謀して案里容疑者を当選させる目的で、19年に案里容疑者への投票や票のとりまとめなどの選挙運動を5人に依頼。その報酬として計170万円を供与したとされている。さらに克行容疑者は同年、91人に報酬として計約2400万円を供与したという。
「2人は昨年10月、いわゆるウグイス嬢に法定上限を超える報酬を支払ったという疑いが一部週刊誌で報じられました。克行容疑者は法務大臣を辞任する際に『説明責任を果たしていきたい』といったものの、その直後から2人は雲隠れ状態に。
国会を1ヵ月以上も欠席したにも関わらず克行容疑者は323万円、案里容疑者は194万円ものボーナスを満額でもらっていたため非難の声が相次いでいました」(全国紙記者)
各メディアによると、議員辞職をする意向ではないという2人。ネットでは《国民への説明はいっさいなかった》《お金返して欲しい》と厳しい声が再燃。また、その火の粉は自民党にも及んでいる。
「2人に選挙資金として1億5000万円にも及ぶ大金が自民党から振り込まれていたと発覚しています。そこには案里容疑者の対立候補であり、安倍晋三首相(65)に批判的な立場だった溝手顕正元議員(77)を落選させる意図があったのではないかとの指摘も。また、克行容疑者はもともと法務大臣。法務省の長であったにも関わらず、逮捕されるというのは憲政史上初のことです。そのため安倍内閣、ひいては自民党に厳しい視線が注がれています」(前出・全国紙記者)
そんななか、各メディアによると18日に安倍首相はこうコメントしたという。
「我が党所属であった現職国会議員が逮捕されたことについては大変遺憾であります。かつて法務大臣に任命した者として、その責任を痛感しております」
「自民党総裁としてより一層襟を正し、国民に対する説明責任を果たしていかなければならないと考えています」
毎度のように「遺憾であります」「責任を痛感しています」と述べた安倍首相。ネットでは呆れたようにこんな声が上がっている。
《遺憾だとか責任は私にあるだとか、口先だけの会見はもう十分です。本当に悪いと思っていて、責任を痛感しているというのであれば、まずは具体的な説明責任を果たすべきでしょう。口だけで何もしないその姿勢には、もううんざりです》
《ただの不祥事と、違う。同時に2名が逮捕され、そのうち1名は自身が任命した法務大臣。「遺憾」や「襟を正す」では、済まない》
《「我が党所属であった現職国会議員が逮捕された」?
昨日まで自民党 だったじゃねえか》
【出典】女性自身 6/19(金) 6:32配信
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【出典】LITERA 2020.06.16 10:57 |
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参議院インターネット審議中継(6月15日)より |
新型コロナという「100年に一度の国難」(安倍首相)の只中にあるというのに、国権の最高機関であり唯一の立法機関である国会を、与党は明日、閉会させる見込みだ。
東日本大震災があった2011年、民主党政権は通常国会を8月31日まで延長し、9月と10〜12月に臨時国会を召集したが、新型コロナ対応にあたるいま、1年を通して審議がおこなわれるよう国会を開けておくことは当たり前の話だ。
しかし、安倍首相にはその「当たり前」が通用しない。安倍首相自身が「夏になったからと言って安心できない」などと第2波を懸念しているというのにどうして国会を閉じるのか、その理由はただひとつ、「追及を受けたくない」からだ。
世論調査では軒並み内閣支持率が下落しているが、これまでも安倍首相は国会閉会によって追及から逃げることで低下した支持率を持ち直させ、森友・加計疑惑や「桜を見る会」問題を有耶無耶にしてきた。
今回も同じように、新型コロナ対応の追及を封じ込めようというわけだ。
実際、いま国会が閉じてしまえば、追及がおこなえなくなる問題は山のようにある。
そのひとつが、電通への再委託が問題となっている「持続化給付金」だ。
事務を受託したサービスデザイン推進協議会をめぐっては入札に参加したデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社のほうが応札額が低かったことや、第二次補正予算に盛り込まれた「家賃支援給付金」でも支給事務をリクルートに約942億円という巨額で委託することが判明するなど、追及・検証が必要な問題が数々出てきている。
だが、さらに重要なのは、「申請から支給まで2週間程度」と謳われていた「持続化給付金」が、2週間以上経っても支払われていない人が数多くいるということだ。
しかも、申請開始の5月1日から11日のあいだに申請を受け付けた約77万件のうち、約5万件が1カ月経っても支給されていないというのである(6月12日時点)。
中小・零細企業にとって「命綱」であるこの給付金が1カ月経っても支給されない──。申請しているこの約5万件の事業者、そして雇用されている人たちのことを考えれば、どうしてこんなことになっているのか、安倍首相にはしっかり国民に説明する必要がある。
だが、安倍首相は15日の参院決算委員会で「この1カ月間で150万件に支払いをしている」「現場がぼーっとしていて何もやっていないのではまったくない」などと主張。
挙げ句、5月1日に申請した人たちにまだ支給されていない問題について、こんなことを言い出したのだ。
「申請する方もですね、人間ですから、これ、何にもまったく問題がなくて、受ける側がですね、受ける側が、全然、これ怠慢でですね、できてないというのでは、これは、これは明確に申し上げなきゃいけないんですが、それではないんですよ。そこをはっきり申し上げておきたいと思います。それはやはり、書類のなかにですね、さまざまな課題や、課題というか問題があったのは事実なんですよ」
「申請者に連絡を取ったら、また、なかなか(連絡が)つかなくなってしまった、あるいはまたですね、申請しても『こうこうこうしてください』と言っても、なかなかそうなってないのもあるんですよ、正直に申し上げまして」
「一人ひとり、相当ていねいに、これ、やっているんで、残ったのは少しですから。でも、それ以外は、これだけ進んでいるんですから、そこはですね、一生懸命やってるっていうことは評価もしていただきたいし、すべてがですね、経産省側の手落ちで、ということでもないわけであります」
少なくとも約5万件もの事業者が1カ月も支給されないままにあることを「残ったのは少し」と発言すること自体が信じられないが、もっと酷いことに、申請者に対して「提出してきた書類に問題があった」「連絡がつかなくなった」「指示しても指示通りにしてこない」など一方的に文句をつけ、「経産省は一生懸命やっている。経産省は悪くない」と主張したのである。
国会で繰り広げられた、この絶句するような安倍首相の答弁。だが、重要なのは、国会は野党による追及によって安倍首相のこうした姿勢をあぶり出し、メディアがそれを報じ、国民が批判の声をあげて問いただすことができるということだ。
その機会が奪われるということは、独断専行の安倍首相の暴走や怠慢を直接、追及する場を失うということなのである。
実際、一律10万円給付にしても、国民が批判の声をあげた結果、安倍首相を方針転換させることができたが、いまだに全世帯の4割程度にしか給付されていない状況にある。さらに、10兆円という前代未聞の予備費がまたも隠れ蓑を通じて電通のような安倍政権に近い大企業に流れる可能性だって十分にある。
今後、国会が開かれなければ、こうした問題を安倍首相に直接追及することができるのは、安倍首相の気分で開催が決まる記者会見くらいになってしまうのだ。
国民の命・生活を守るための議論より自己保身を優先し、逃げることを「恥」とも感じていない安倍首相。
しかも、ここにきて河野太郎防衛相がイージス・アショアの配備計画の停止を表明したが、停止の理由であるブースターの落下地点の問題はこれまでさんざん指摘され、一方で政府は「安全に配備・運用できる」と説明してきたものだ。
当然、その説明の食い違いについて徹底追及されなければならないが、肝心の国会は閉会してしまう。つまり、追及を避けるために閉会直前のタイミングを狙って配備計画停止を打ち出したのではないか。
繰り返すが、このまま国会を閉じるということは、新型コロナの感染が再び拡大したときに新たな補正予算や立法を伴う対策や、またその追及もできず、これまでよりももっと杜撰な対応がとられかねないという危険な問題を孕んだものだ。
立憲民主党と国民民主、共産、社民の野党4党は年末までの国会延長を要求、閉会日となる明日にも国会に延長動議を提出するとし、Twitter上では「#国会延長を求めます」「#国会を止めるな」というハッシュタグが生まれている。
国民から背を向けようという安倍首相のトンズラを、けっして許すわけにはいかない。
(編集部)
【出典】LITERA 2020.06.16 10:57
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【出典】LITERA 2020.06.16 10:57 |
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安倍長期政権では次から次への問題が露呈(C)日刊ゲンダイ |
新型コロナウイルスが庶民生活を直撃している。内閣府が5日発表した4月の景気動向指数(2015年=100)速報値によると、景気の現状を示す一致指数が前月比7・3ポイント低下の81・5と大幅に悪化し、過去最大の下げ幅を記録。
総務省の家計調査(4月)でも、1世帯(2人以上)当たりの消費支出額が物価変動の影響を除く実質で前年同月比11・1%減少となり、比較可能な01年1月以降でやはり過去最大の落ち込みとなった。
発表される指標がことごとく悪化している原因は、言うまでもなく新型コロナの感染拡大に伴う外出自粛や緊急事態宣言によって経済活動が抑制されたことだ。
宣言が解除されたとはいえ、今後、雇用、給与、物価……など、あらゆる場面で庶民生活に深刻な影響が出てくるのは間違いない。いつまで続くのかみえない「コロナ禍」という“災害”によって、多くの国民が生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされる状況になりつつあるのだ。
この未曽有の危機を乗り越えるためには、与野党、官民の区別なく、すべての国民が英知を結集させて新型コロナ対策に取り組むべきなのは言うまでもないが、そんな非常事態下の中、国会ではコロナ禍に乗じて政府や企業が仲間内と結託し、こっそりと税金をかすめ取る動きをしていた問題が浮上している。
国が新型コロナの影響を受けた中小企業などに最大200万円を支給する「持続化給付金事業」をめぐる中抜き疑惑だ。
コトの概要はこうだ。「持続化給付金事業」の事務業務を約769億円で受託した一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」(東京)が、業務の大部分を大手広告会社の電通に約749億円で再委託していたもので、野党らが「実際は何もせずに20億円を得るのは高額過ぎる」と批判の声を上げているのだ。
経産省は「給付金の振込手数料」(約15・6億円)、「人件費」(約1・2億円)、「旅費や事務用品費」(0・5億円)などと説明しているが、業務を右から左に流すだけでポンと20億円が手に入るのだから、協議会にとってこれほどボロい商売はないだろう。
協議会は16年に設立され、電通や人材派遣大手のパソナ、ITサービス業のトランスコスモスなどが関与したとされる。
1日現在の協議会理事はいずれも非常勤の8人で、この3社の関係者らが就任。「持続化給付金事業」を含めて経産省から14件、計1576億円の事業を受託し、うち9件は今回と同様、電通やパソナなどに再委託していた。
つまり、外形的に見れば、協議会は公共事業を受注する窓口の役割に過ぎず、実際は仲間内に流すだけの「トンネル団体」だということだ。
まさに濡れ手で粟のごとく「コロナ禍で丸儲け」という信じられない構図が浮き彫りになりつつあるわけだが、このコロナ利権に群がる怪しい輩たちの仲間に経産省も加わり、官製談合の疑いまで浮上してきたからクラクラする。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「我々の税金を一体何だと思っているのか。本来であれば、ピンハネされるお金をもっと国民生活に使えたはずです。政府はコロナ禍で苦しむ国民のことなど、まるで考えていないのでしょう。あまりにふざけています」
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パソナグループ会長の竹中平蔵氏(左)と
一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」が入るビル(C)日刊ゲンダイ |
梶山経産相は「持続化給付金事業」の中抜き問題について「手続き上の問題はない」と繰り返しているが、この問題は手続きうんぬんではない。
委託、再委託、さらに関連会社に業務発注……と仲間内で税金を分け合う構図が問題で、だから事業予算が膨らむ一方で、給付が進まないのだ。
本来は「トンネル団体」に委託するのではなく、全国に9カ所ある経産省の出先機関や地方自治体を活用すればいいのであり、そうすれば予算も低く抑えられ、給付の迅速化も図られたはずだ。
新型コロナ禍から国民生活を守るため、どうすれば「最小の経費で最大の効果」を上げることができるのか。
そういう発想が今の政府、行政に全くないことが病巣とも言えるのだが、公益よりも私利を優先するようになったのも、「政治の私物化」を当たり前のように行ってきた安倍政権の長期化が原因だろう。
とりわけ、お友達を厚遇してきた安倍政権の中で、“利権の権化”ともいわれているのが竹中平蔵東洋大教授だ。
竹中は政権主流の経産省の出向者が大半を占める「未来投資会議」のメンバーを務め、働き方改革の名の下で派遣法の拡大や残業代ゼロなどの政策を主導。
人材派遣のパソナグループ会長という顔も持つ竹中は「規制緩和」「民営化」と言って国民のためという形を装いながら、実際は“利益誘導”していたわけだ。
竹中は水道や空港などインフラの民営化も主張していたがその後、民営化された空港の運営を任されたのは竹中が関与していた企業だった。
今国会で成立した「スーパーシティ構想」(国家戦略特区法改正案)も旗振り役は竹中。政権の中枢で、これほど露骨にアベ友が利権を求めて闊歩している姿には呆れるばかりだ。
おそらく竹中みたいな利権を貪る輩が、今の政権内にまだまだ潜んでいる可能性は高く、表面化していないだけで「丸投げ」「中抜き」がゴロゴロしているに違いない。
9月入学や英語民間試験のドタバタを見ても分かる通り、教育すら利権がらみで政策判断するのが今の政権なのだ。まさに火事場泥棒の巣窟と言っていい。
新型コロナでPCR検査の数が絞られたのも、国立感染症研究所の検査権益や厚労省医系技官の利権を守るため――と言われているし、ワクチン開発だって製薬会社の利権がうごめいていると囁かれている。
事務局委託先の公募が急きょ中止されることが決まった観光需要喚起策「Go To キャンペーン」は「全国旅行業協会」の会長を務める自民党の二階幹事長の肝いりとされ、カジノ(統合型リゾート産業)や東京五輪は有象無象の利権屋が水面下で暗躍していると報じられてきた。詰まるところ、「持続化給付金事業」の中抜き問題は氷山の一角に過ぎないのだ。
次から次へとデタラメの悪事が露呈するものの、安倍政権は数の力をバックに知らんぷり。安倍首相は野党の国会質問を「意味がない」とまで言い切る始末だ。
長期政権ゆえのおごりから腐臭が漂い始めているのは明らかなのに、誰もチェックができず、やりたい放題。このまま悪辣政権をのさばらせたら何をしでかすか分からない。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「中抜き問題で、我々の血税を仲間内で回す仕組みという利権の構造がハッキリしたわけですが、そこには政治家だけでなく、官僚、大企業の癒着の構図もあらためて浮き彫りになりました。
この強固な政官財のトライアングルは、我々の税金をかすめ取り、甘い汁を今も吸い続けている。これは許せないし、一刻も早く壊すためにも政権の座から引きずり降ろさなければなりません」
国民は今こそ、怒りの声を上げるべきだ。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/06/06 17:00 更新日:2020/06/06 17:00
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/05/25 14:50 更新日:2020/05/25 21:24 |
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少額でも賭け麻雀は「違法」(黒川弘務東京高検検事長)/(C)日刊ゲンダイ |
“官邸の守護神”黒川弘務前東京高検検事長が、緊急事態宣言下にもかかわらず「賭けマージャン」に興じていた問題で、安倍政権は末期状態だ。23日実施の毎日新聞の世論調査で支持率が27%と“危険水域”の20%台に下落。
4月8日の調査に比べ、マイナス17ポイントもの“暴落”だ。ツイッターでは、「#さよなら安倍総理」のタグ付き投稿が40万件を超える(24日夜7時時点)ネットデモも巻き起こっている。そんな中、安倍政権の「過去の閣議決定」がさらなる決定打となりそうだ。
◇ ◇ ◇
問題の閣議決定は、第1次安倍政権時のものだ。2006年12月8日付で、鈴木宗男衆院議員(新党大地=当時)が賭けマージャンを含む賭博の定義などについて、内閣に質問主意書を提出。週刊誌の投書欄に、外務省内部で違法賭博が行われていることを示唆する記述があったことを受け、〈(省内で)賭け麻雀を行ったという事例があるか〉とただし、「賭博」の定義や〈賭け麻雀は賭博に該当するか〉などと質問している。
安倍内閣は同19日付で回答。省内で賭けマージャンが行われていたか否かは〈確認できなかった〉としたものの、賭博の定義については〈偶然の事実によって財物の得喪を争うこと〉と刑法の記述を提示。
賭けマージャンについては、〈財物を賭けて麻雀【中略】を行い、その得喪を争うときは、刑法の賭博罪が成立し得るものと考えられる〉と、ハッキリと「賭博に該当」との見解を示している。
質問主意書に対する内閣の答弁書は、各府省などで案文を作成し、内閣法制局の審査を経て閣議決定された見解を、質問者が所属する議院議長に示すものと規定されている。つまり、安倍内閣は「賭けマージャンは賭博罪」と、金額に関係なく違法であることを閣議決定していたわけだ。
ところが、22日の衆院法務委で、法務省の川原隆司刑事局長は、黒川氏が参加した賭けマージャンのレートについて、1000点当たり100円の「点ピン」だったと示した上で「必ずしも高額とは言えない」と、悪質性を打ち消す答弁を展開。懲戒処分もせず退職金を満額払う。過去の政府見解と矛盾するのは明らかだ。
こんなデタラメだからだろう。SNSでは「堂々と賭けマージャンしよう」という呼びかけが広がっている。
ツイッターでは、「【祝レート麻雀解禁!】検察庁前テンピン麻雀大会」と題し、参加者を募集する人まで現れた。「1000点100円=黒川レート」なんて言葉も出現している。皮肉を込めたイタズラかもしれないが、参加者に「政府は黒川レートならOKなんでしょ」と反論されたら、捜査機関はどうするのか。
「法律自体は、宗男議員が質問した06年と現在で変わっていないのに答弁は正反対。その矛盾を野党に質問されたらどう答えるのでしょうか。安倍政権は、これまでも自らや“お友達”を守るため、法の趣旨や過去の政府見解をねじ曲げてきました。この『一貫性のなさ』は今度こそ徹底的に追及されなければなりません」
(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)
黒川問題はまだ終わっていない。安倍首相は墓穴を掘った。自ら「さよなら」を切り出す時だ。
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法務省の「懲戒」判断を翻し、国会では責任を同省に押し付け…
(安倍首相)/(C)日刊ゲンダイ |
大甘処分の“犯人”はやはり安倍官邸だった。
賭けマージャンで辞職した黒川弘務前東京高検検事長の処分について、法務省は国家公務員法に基づく「懲戒」に当たると判断したのに、官邸が懲戒にはしないと結論付け、法務省の内規に基づく「訓告」となっていた。複数の法務・検察関係者が証言したと、24日、共同通信が報じた。
安倍首相は22日、国会で訓告より重い懲戒にすべきだと追及されたが、「検事総長が事案の内容など、諸般の事情を考慮し、適切に処分を行ったと承知している」と繰り返し、責任を法務省に押し付けた。
しかし、法務・検察関係者によると、事実関係を調査した法務省は、賭博をした職員は「減給」または「戒告」の懲戒処分とする人事院指針などに照らし、懲戒が相当と判断。任命権者の内閣として結論を出す必要があると考えていた。
森雅子法相は21日午前、報道陣に「21日中に調査を終わらせ、夕方までに公表し、厳正な処分も発表したい」と発言。この後、官邸と詰めの協議をし、官邸側の意向で訓告になったという。
ある法務・検察関係者は「当然、懲戒だと思っていたので驚いた」と証言した。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/05/25 14:50 更新日:2020/05/25 21:24
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/05/25 14:50 更新日:2020/05/25 21:24 |
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Fiers |
「コロナで死ななくても、収入が絶たれて死ぬよ」
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【図版】自国の政権に対する国民評価ランキング |
ポツリとそうつぶやく自営業の男性がTVに出ていた。同様の溜め息がいま日本全国に広がっている。4月7日発令の「緊急事態宣言」はさらに延長され、十分な補助や補償がないまま4月をなんとか耐え忍んだ中小企業や個人事業主、非正規雇用者などが、次々に廃業、解雇、雇い止めに追い込まれている。
中国が武漢のロックダウン(都市封鎖)を行ったのが今年の1月末。3月には欧州各国が相次いでロックダウンを実施し、同時に休業補償等も速やかに行うなか、日本では5月半ば現在、いまだ10万円の給付金はおろか、首相肝いりの「アベノマスク」2枚すら全国民の手元に届いていない。首相お気に入りのフレーズ「スピード感」は、いったいどれくらいの速度をイメージしているのだろうか。
そんな怒りとも嘆息ともつかない国民感情を反映する数値が、この度、海外の調査会社によって明らかになった。シンガポールの調査会社ブラックボックス・リサーチとフランスのメディア会社トルーナが、共同で行った意識調査だ。
両社による「自国のコロナ(COVID-19)対応への満足度」調査では、ほとんどの国が自国のコロナ対応に不満足を抱いていることがわかったが、なかでも注目すべきは日本の満足度のずば抜けた低さだった。
23の国と地域に住む約1万2600人(18~80歳)を対象に行われたこの調査の質問項目は全部で4つだ。「政治的リーダーシップ」「企業のリーダーシップ」「地域社会」「メディア」の4分野における世界の総合平均点は100点満点中、45点だった。
それに対して日本の総合スコアは16点という驚異的な低さ。「政治的リーダーシップ」分野にいたっては、世界平均40点のところ、驚きの5点だった。見事な赤点ぶりというほかなく、当然のことながら順位は「政治リーダーシップ」でも総合でも、23カ国・地域の中でダントツの最下位だった。
以下、調査結果を詳しく見ていこう。
ランキングのトップに輝いたのは、総合分野で85点を記録した中国だ。4つのカテゴリーすべてでもっとも国民の満足度が高い結果となった。2位はベトナム(77点)、3位はアラブ首長国連邦とインドが同じ59点と続く。
西洋諸国のなかで総合点が平均の45点を上回ったのは、ニュージーランド1国のみ。アメリカ・オーストラリア・イタリア・ドイツ・イギリス・フランスはすべて平均点以下で、特にフランスは西欧諸国内で最下位、23カ国・地域全体でも下から2番目の順位に甘んじることとなった。
さて、この結果をどう見るべきだろう。調査結果は「〈西洋圏〉のほうが〈アジア圏〉よりも自国満足度が低い傾向にある」ことを示している。
その理由の一環としては、「アジア主要国は、過去に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)などの経験があり、ふたたび同様の呼吸器系疾患が蔓延しても、自国政府は必要な手段を講じるはずだと信じているから」だと述べられている。
たしかにその点、幸運にも過去の新型コロナウイルスの影響を受けることがほどんどなかった日本やアメリカ、そして西欧諸国は、今回のパンデミックに対しても心の準備ができていなかったといえる。
中国武漢で感染爆発したときも、どこか対岸の火事として眺めていた節がある。まさか“先進国”たるわが国の医療体制がここまで壊滅的打撃を受け、政治や経済が混乱することになるとは専門家以外は実感していなかったのだろう。
「フランス人の84%が、指導者のコロナ準備対応が遅すぎると感じており、日本の82%、アメリカの74%の国民も、同様の思いを抱いている」と調査報告は続ける。
それにしても中国の点数が異様に高いことが気になる。ブラック・ボックスの創業者兼最高経営責任者のディビッド・ブラック氏は、中国に関してこのような指摘をしている。
「ほとんどの国が自国民の期待にうまく応えられていないなかで、唯一の例外は中国だ。それは世界がいまだコロナの感染爆発から抜け出せていないなか、中国だけがコロナを抑え、すでに次のフェーズへと歩みだしているからだ。中国政府はうまくこの危機を乗り切ったと国民が感じていることの証しである」。
たしかにこの調査が行われた時期が4月3日~19日だったことを考えると、その分析もうなずける。ただ、上位2カ国の中国とベトナムは、共に社会主義国家でもある。都市封鎖や行動制限の厳格さは、他の国々よりも徹底して行うことができたし、また言論の自由という意味でも、他国と単純に比較することができるかは不明な点も多い。
実はコロナウイルスが中国で蔓延しはじめた2月初め、私は中国人の知人に「マスクは足りているか」とSNSを通じてメッセージを送ったことがある。だが、普段ならすぐに返事が来るはずなのに今回はノーレスポンス。
返事が来たのは2カ月後の4月1日だった。メッセージには「中国ではこの間、SNSが禁止されており返事ができなかった」とサラリと書かれてあった。
現在、中国はコロナウイルスが武漢発祥であることの打ち消しに躍起になっている。危機を乗り越え、他国を援助できる力強い国としてのイメージ戦略にも奔走していることなども、考慮に入れるべきだろう。
ただ、そういったことも、日本のランクが最下位であることの言い訳にはならない。「世界中の国民が自国リーダーの手腕に期待しているが、それに成功して50点以上を獲得できているのは7カ国のみ。ランキング最下位の日本の場合は、わずか国民の5%しか政治のリーダーシップに満足していない」(調査報告)からだ。
日本についての分析はさらにこう続く。
「日本の低評価は、緊急事態宣言の発令が遅れたことや、国民が一貫して政権のコロナ対策を批判している現実とも合致している。明らかに日本国民は政治のリーダーシップに不満足であり、安倍政権はこのコロナ危機(という負荷の状態)において、(政治が正常に機能していないと見なされ)リーダーシップのストレステストに合格しなかったのだ」(ブラック氏)
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安倍首相はリーダーシップを発揮できていないという実感 |
しかも、改めてよく考えてみよう。今回の調査対象にはイタリアやスペイン、フランスやアメリカなど感染爆発により医療崩壊を起こした国々も多く含まれているのだ。命の選別トリアージが行われ、死者が続々と一時遺体安置室と化した大型冷蔵車に運び込まれ、葬式も出せず埋葬されていく光景を、私達もTV画面を通じて痛ましい思いで眺めていたはずだ。
一方の日本はそこまでの惨状にはギリギリ至っていない。たしかに、いまだPCR検査数が他国に比べて圧倒的に少ないため、そもそもの感染者数が厳密には把握しきれていないという指摘もある。急激な体調悪化で救急車搬送されるも、何十軒もの病院に受け入れを拒否されたという人もいる。
それでも5月12日時点の公式発表では、コロナ感染者数は1万6024人で、死亡者数は691人だ。誤差は存在していても、少なくともアメリカの感染者数130万人超え、死亡者数8万人超えの規模に比べたら雲泥の差だ。
それでも、日本の国民は政権のリーダーシップに満足していない。ブラック氏は、「ほとんどの政権にとって今回のパンデミックは前例がなく、いまだ予期せぬ事態に振り回されている」とコメントしているが、日本の場合は、それ以前の問題かもしれないのだ。
それはたとえば、首相自ら「PCR検査を1日に2万件に増やす」と宣言しておきながら1カ月後にも同じことを言っている現実や、「かつてない規模」の「あらゆる政策を総動員」した「大規模な対策」の結果が、まさかの「1世帯2枚の布マスク」であることの衝撃、しかも予算466億円を見積もって届いたマスクがカビだらけだったことの情けなさ、そもそもその予算や発注先も不明瞭な点が多々あることへの不信感など、国民の間に横たわる不安感や絶望感が影響しているのではないだろうか。
今回、西洋諸国でトップに立ったニュージーランドは、「感染拡大の抑え込みに成功し、ジャシンダ・アーダーン首相のリーダーシップは国民から高い評価を受けている」と、ブラック氏から評されている。
かの国の「政治的リーダーシップ」は67点。最下位の日本の5点とは比較にならないが、いったいその差はどこにあるのだろうか。
アーダーン首相は笑顔が魅力的な39歳の女性である。だが、美人であるだけではもちろんない。観光国にもかかわらず3月19日時点でいち早く外国人旅行者に対して国境封鎖を行うなど、大胆な決断力と行動力を持っている。
その一方で、オフタイムにはスエット姿で自宅からSNSに登場し、気さくに国民からの質問に応える柔軟性も持つ。国民を「500万人のチーム」と呼び、メッセージの最後には必ず「強く、そしてお互いに優しく」と語りかける人間的な親しみやすさが伝わってくる。
翻って日本だ。幸か不幸か、自粛生活で日中にTVを観る人が増え、リアルタイムで国会中継を観る人が増えた。そこで私たちが目にしたのは、カンペがないと目が泳ぎ、事前報告がない国会答弁には、キレまくる首相の姿だった。
しかも、コロナ危機という「緊急事態」の裏で、「検察庁法改正案」を押し通そうとする姿勢には、たった数日で400万件以上の「#検察庁法改正案に抗議します」ツイートが国民から発せられた。両者の差は歴然である。
もっとも「政治的リーダーシップ」以外の分野でも、日本の課題は多い。「コロナ危機において、企業はより積極的な役割を果たすべき」と考えている人は多く、調査対象の82%の人々が、少なくとも「上場企業は最低限の貢献を社会になすべき」だと感じているからだ。
そうしてみると、日本の「企業リーダーシップ」が6点(世界平均28点)というのは、残念な数値だ。その他、「地域社会」が6点(世界平均37点)であることも、「自粛警察」が他者を批判する事例が続出する日本ならではの数値かもしれない。
ブラック・ボックスの調査報告の最後は、このように締めくくられている。
「パンデミックで私たちの世界観は劇的にシフトしていくでしょう。政府のあり方、ビジネス手法、健康医療分野においても。コロナウイルスは人類にとって最初で最後のパンデミックではなく、各国のトップは今後もさらなる政治の舵取りや危機インパクトを熟考していく必要があります」。それこそが国民の信頼の回復につながるとつづっているのだ。
三浦 愛美(みうら・まなみ) フリーランスライター
1977年、埼玉県生まれ。武蔵大学大学院人文科学研究科欧米文化専攻修士課程修了。構成を手がけた本に『まっくらな中での対話』(茂木健一郎ほか著)などがある。
【出典】PRESIDENT Online 5/19(火) 15:16配信
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「官邸の守護神」がいれば万事セーフ(昨11日、答弁する安倍首相と黒川東京高検検事長=右、共同)/(C)日刊ゲンダイ |
安倍政権がコロナ禍のドサクサに紛れてゴリ押しする検察庁法改正案がモーレツな批判にさらされている。新型コロナウイルス対応は後手後手なのに、検察官人事の恣意的運用の正当化は超特急だからだ。週末から「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグをつけたツイートが急増。著名人も次々に参戦し、500万件を超えてツイッターデモ化しているが、アベ自民党はお構いなし。週内の衆院通過をもくろんでいる。しかし、採決を強行したら命取りになるだけだ。
安倍政権が、検察官の定年を延長する「検察庁法改正案」の成立にシャカリキになっているのは、「官邸の守護神」と呼ばれる黒川弘務東京高検検事長を検事総長に就任させるためだ。
そもそも問題の発端は、本来“2月退官”だった黒川検事長の定年を、1月末の閣議決定で半年間延長したこと。今回の法案は、官邸の脱法行為を後付けで正当化しようというものだ。しかも、国家公務員の定年を65歳に延長する国家公務員法改正案と抱き合わせにして、8日の衆院内閣委員会で審議入りした。
検察庁法改正案に反対する野党は、森法相の出席や内閣委・法務委の連合審査を求めたが、与党は森法相の出席を拒否。野党が欠席する中、与党と日本維新の会の3党のみで質疑を進めたのである。
こうした動きに芸能界も反発。きゃりーぱみゅぱみゅ、水原希子、城田優、井浦新、ハマカーン神田らが「#抗議します」のハッシュタグでツイートし、社会現象となっている。500万のツイートは、前代未聞である。
11日の参院予算委員会の集中審議で立憲民主党の福山哲郎幹事長がツイッターデモを取り上げ、検察庁法改正案の分離を提案したが、安倍首相は「政府としては法案として提出させていただいている。どのような議論を行うかは国会でお決めいただきたい」とスッとぼけた。
「週内の衆院通過は既定路線。8日の内閣委で2時間審議したのを踏まえ、13日には残り3時間を質疑に充てて採決する方針です。野党が求める森法務相の出席には応じない」(与党関係者)
安倍政権は、なにがなんでも息のかかった人物を検事総長に就けるつもりだ。オトモダチ政治をあらわにした「モリカケ疑惑」も、地元の票集めに利用してきた「桜を見る会疑惑」もチャラにしようというのである。
「#抗議します」に賛同した元特捜検事の郷原信郎氏は言う。
「日本の司法は検察が公訴権を独占している。政権が検察の人事を支配するのは三権分立を揺るがす大問題ですし、法務省と関係ないところで審議しているのもメチャクチャ。そもそも、検察官の職務は属人的ではなく、定年延長は全く必要ないし、そうした要望もない。にもかかわらず、政権が強行するのは邪な目的からにほかならない。違法な閣議決定を数の力で正当化しようとしている」
一方、アベ応援団は理屈で反論できないのか、「#抗議します」をツイートした芸能人に「法案を理解していない」「政治的な発言をするな」とイチャモンをつけ、「#検察庁法改正案に興味ありません」というハッシュタグまで出現している。
しかし、500万ツイートを無視したら、火に油となるだけだ。これまでは、どんな悪法も成立してしまうと国民の怒りは沈静化した。ところが、今回の法改正には、有名人が「もうこれ以上、保身のために都合よく法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい」と切実に訴えている。かつてない大きなうねりを踏みつぶせば、政権の致命傷になるのは必至である。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/05/12 14:50 更新日:2020/05/12 15:50
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一律10万円の支給に方針転換したことは評価できるが……
TOMOHIRO OHSUMIーPOOLーREUTERS |
<安倍政権が打ち出したコロナ危機への経済対策は、表面的な金額こそ立派だが、その中身をひもとくと問題が山積している>
政府は新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、総額117兆円の緊急経済対策を取りまとめた。だが、支援の実施方法や金額に関して多くの批判が寄せられている。 率直に言って今回の対策は、直面している危機に十分な効果を発揮するとは思えない。
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世論の批判を受けて安倍首相は、世帯を限定して30万円を給付するプランを撤回し、個人に対して一律10万円を支給する施策に変更した。広範囲な給付に切り替わったことは評価してよいが、課題は山積している。
安倍政権は4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策を閣議決定した。事業規模の総額は108兆円とGDPの2割を突破している。これはアメリカやドイツに匹敵する水準で、表面的な金額としては過去最大といってよい。だが、この施策には大きな問題があり、このまま実施した場合、十分な効果を発揮しない可能性が高い。
安倍首相は117兆円という金額について「世界最大級」と胸を張るが、これは事業規模の総額であって、実際に政府が財政支出する金額ではない。
企業に対する納税や社会保険料の支払い猶予(約26兆円)は、あくまで一時的な猶予にすぎず、資金繰り支援に使われる財政投融資(約10兆円)についても、基本的には貸し付けなので返済が求められる。
さらに言えば、昨年12月に閣議決定した26兆円の経済対策のうち、まだ執行していない分(約20兆円)や、3月までにまとめた緊急経済対策の第1弾と第2弾の分(約2兆円)など、今回の支援策と無関係なものまで含まれている。
政府は各支援項目の詳細を明らかにしていないが、「真水(まみず)」と呼ばれる政府が実際に支出する金額は18兆円程度、コロナ終息後に実施する旅行券配布などの施策を加えても28兆円程度と推定される。約47 兆円を真水とする政府の説明とは大きな乖離がある。
政府が撤回した30万円給付プランの最大の問題点は、給付条件をあまりにも厳しすぎたことである。基本的には住民税非課税水準に収入が落ち込まないと給付されない仕組みだが、中間層の世帯はほとんど支払い対象にならない。
政府は1300万世帯が給付対象になると説明していたが、もしこのプランが実際に発動された場合、給付対象となる世帯はもっと少なかっただろう。
一連の施策は閣議決定されたものであり、行政運営上、閣議決定の意味は重い。閣議決定を覆して10万円支給に切り換えたことは素直に評価してよいと筆者は考える。
だが、真水部分が少ないなど、この施策には依然として問題が多く、経済の落ち込みに対して十分な効果を発揮しない可能性が高い。
一方で、支出の詳細項目が定められておらず、資金の使途はある程度、自由になる余地も残されている。
今は、補正予算を成立させることが最優先だが、この法案を成立させた後、給付金以外の資金使途についても、給付金と同様、柔軟な決断を行っていく必要がある。
今の日本は、輸出で経済を成り立たせているのではなく、既に消費主導型経済になっている。消費は経済のエンジンであり、個人の経済状況が悪化すれば、日本経済そのものが立ち行かなくなる。
賃貸住宅に住んでいる場合、当座、10万円の支給があれば何とかなった世帯でも、家を追い出されてしまえば、その金額で生活を立て直すことは極めて難しい。ひとたび消費が壊れてしまうと、再構築するのは容易なことではない。
今後の経済対策についても、個人の生活を破綻させないことを主軸に、各種のプランを検討することが重要である。個人の生活を守ることは「福祉政策」ではなく、れっきとした「経済政策」であるとの認識が必要だ。
<本誌2020年4月28日号掲載のものを一部変更・加筆>
加谷珪一(経済評論家)
【出典】ニューズウィーク日本版 4/23(木) 12:21配信
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佐々木はじめ公式ウェブサイトより |
新型コロナの感染拡大にともなって、国民に自己責任を押し付ける安倍政権の姿勢が次々明らかになっているが、そんななか、政府の役職を務める自民党議員がとんでもないツイートをしていたことがわかった。
4月4日、国土交通大臣政務官を務める佐々木紀衆院議員が「外出自粛でも「買い物・旅行」、60代が最も活発」というニュースをリツイートしたうえ、こうツイートしたのだ。
〈国は自粛要請しています。感染拡大を国のせいにしないでくださいね〉
佐々木議員は、2012年の衆院選で引退した森喜朗元首相の後継として石川2区から出馬して当選、現在は細田派に所属する典型的な安倍チルドレン、しかも魔の3回生だ。
その思想はもちろん、ゴリゴリの極右で、日本会議国会議員懇談会、神道政治連盟国会議員懇談会、靖国神社に参拝する国会議員の会、さらには例の百田尚樹を招いて言論弾圧を語り合った文化芸術懇話会にも参加している。
しかし、それにしても、今回のツイート、ひどすぎないか。新型コロナ感染拡大で国民に不安が広がっているなか、これでは「国は自粛要請したんだから、あとは知らない、お前らの責任だ」と言っているようなものではないか。
当然、このツイートは大炎上。佐々木政務官はきょう5日朝になって削除し、こうツイートし直した。
〈国は自粛要請しています。感染拡大を国だけの責任にしないでくださいね。でも、自粛を求めるなら補償とセットでないといけません。しっかり取り組みます!〉
そして、すぐ後にこんな釈明をしている。
〈朝から、お騒がせいたしました。政府発表と強制力の弱さから、各個人の注意喚起の意味と行動を促す為の投稿でしたが不適切でした。4月7日には経済対策を出します。単発ではなく、必要に応じて対策を出していきますので、ご意見いただければと思います。〉
しかし、これ、炎上したから取り繕っているだけで、佐々木政務官の本音は完全に最初のツイートのほうであり、“コロナは国民の自己責任“というものだろう。というのも、佐々木政務官が感染者の責任をもちだしたのは今回のツイートがはじめてではないからだ。それどころか、3月30日には、コロナウイルスの感染者を犯罪者扱いするようなツイートも行なっている。
佐々木政務官はこの日、ヨーロッパ旅行に行っていた京産大生の感染が石川県で確認されたというニュースをリツイートして、〈卒業旅行みたいだけど、卒業後はどこに入社するのかな…その会社の対応が気になります。〉と投稿。
その数十分あとにも、富山県で京産大生の感染が確認されたというニュースをリツイートして、今度は〈3月にスペイン旅行って… また卒業旅行みたいだけど、卒業後は、どこに入社する予定だったのかな⁈〉とつぶやいたのだ。
これ、明らかに「こんな時期にヨーロッパに行くような学生を、企業はそのまま入社させるのか」という脅しだろう。
ヨーロッパ旅行で感染した京産大生は、ネットでもネトウヨなどからひどいバッシング浴びせられているが、彼らが旅行に出かけた時点では、ヨーロッパの感染者は日本より少なく、誰もこんな事態になるとは予想していなかった。
どういう条件下で感染したとしても感染者が糾弾されるというのはおかしいが、京産大生がヨーロッパ旅行に出かけたことについては、もっと批判されるいわれがない。しかも、富山県で感染が確認された京産大生については、ゼミの卒業祝賀会に参加していたというだけで、スペイン旅行に行ってたいたかどうか自体、報道されていない。
ところが、佐々木政務官は感染の発端となった京産大生がヨーロッパ旅行をしていたことを徹底的にあげつらい、就職先の問題まで持ち出して、脅しあげているのだ。これではほとんどネトウヨとかわりがないではないか。
いや、ネトウヨより悪質だ。というのも、ヨーロッパなどからの帰国者から感染が広がっている背景には、政府の検疫体制のザル状態が背景にあるからだ。空港の検疫所は厚生労働省の管轄だが、佐々木議員が政務官を務める国交省も協力体制をしくべき関係にある。
それこそ、帰国者任せになっている隔離のための滞在施設や交通手段の確保など、国交省の役割だろう。それなのに政府の責任は頰かぶりして、若い大学生に責任を押しつけているのだから、卑劣というしかない。
だが、この卑劣さは佐々木政務官だけのものではない。安倍政権のコロナ対応全体にいえることだ。検査体制も治療体制も整えず、感染の実態を隠し、感染拡大が明らかになったら今度は「自覚のない若者」や「夜の繁華街」のせいにする。
一方では、この期に及んでも、国民全員に必要なものを届ける即応的な生活支援も全く打ち出そうとしない。
それは結局、いまの自民党や安倍政権が佐々木政務官のような思想の持ち主の集合体だからである。そして、その頂点にいて、極右自己責任論者をどんどん公認候補に立ててきたのが安倍首相なのだ。
「感染拡大を国のせいにしないでくださいね」と口に出していないだけで、安倍首相も考えていることはきっと同じである。
(編集部)
【出典】LITERA 2020.04.05 03:24
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2003年、党幹事長時代に『週刊女性』の取材に応じた安倍首相
今と表情が全然違う |
「7年間という長期政権で安倍さんは権力を持ちすぎてしまった。安倍さんを守るために官僚も大臣も平気で嘘をつき、国民ではなく安倍さんのための政治になっている」
山井和則衆院議員は第2次安倍政権をそう批判する。
通算すると歴代最長の長期政権となり、権力を恐れる周囲は“忖度”をしていく。その様子を“まるで戦前の日本だ”と評する人もいるが、この異常な状況はいつから始まったのか。アベノミクスならぬ“安倍の愚策”を振り返る。
次から次へと政策の看板をかけ替える
「安倍さんは20年にわたるデフレからの脱却を至上命題として掲げ、これを実現するために“金融緩和”“財政出動”“成長戦略”という三本の矢を打ち出しました。株価が上昇して一見、成功しているように見えたアベノミクスですが、実際はそんなことはありません。株価対策として年金資金が80兆円以上も使われているのです」
と、ジャーナリストの須田慎一郎さんがアベノミクス成功の目くらましを解説。続けて、こう批判する。
「安倍さん同様に長期政権だった小泉(純一郎)さんは、5年半の任期中に郵政改革を、中曽根(康弘)さんは5年で国鉄民営化、佐藤栄作さんは7年半で沖縄返還を実現しました。政策のよい悪いは置いておいて、実際に掲げた目標はそれぞれ達成しています。じゃあ、安倍さんは何をしたの? というと標語を発表するばかりで、達成できたのか検証もないまま次から次へと政策の看板をかけ替えている」
これまで安倍首相が掲げた標語は、
《デフレ脱却/三本の矢/女性活躍/地方創生/一億総活躍/働き方改革/人生100年構想/人づくり革命》
などといったもの。
「どれも聞きざわりのよい言葉ですが、例えば“人生100年構想”は定年を70歳まで延長して、さらに年金の普及を遅らせる狙いがあります。
“働き方改革”は電通の新入社員だった女性が長時間労働で自殺した事件や過労死が取りざたされ急きょでてきたスローガンです。長時間労働の是正や非正規社員の待遇改善がなされるのかと思いきや、現場企業を混乱させただけで9割の企業が働き方改革に成功していない(クロスリバー調べ)と答えています」(政治評論家の有馬晴海さん)
「安倍さんがしたことで、最も許せないのは憲法9条の法解釈を変えて集団的自衛権を合憲とし、自衛隊が専守防衛の枠を超えて武力行使できるようにしたこと。戦争に巻き込まれる国になったんです。大事なことなのに審議を尽くさず数の力で押し切っていく。まさに“独裁政治”です」
と、前出の山井議員。そんな“独裁”は数々の犠牲者を生んできた。
安倍昭恵夫人の関与が囁かれ、国有地が大幅に値引きして売却された森友学園問題。
「籠池夫妻は昭恵さんと出会わなかったら逮捕されなかった。ほかにも赤木俊夫さんという方が犠牲に。彼は財務省近畿財務局の上席国有財産管理者という立場で、文書改ざんを強いられ自殺されました。改ざん前の文書には昭恵夫人の名前が繰り返し出ているのに、安倍さんが国会で“私や妻が関係しているということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞める”と言い放ったことが文書改ざんの引き金です」(山井議員)
さらに52年間どの大学も認められなかった獣医学部を新設する『国家戦略特区』の指定について官邸の働きかけがあったとされる加計学園問題。いずれも周囲が安倍首相に“忖度”し、起きたこと。
なぜ安倍首相の“独裁”が続くのか。前出の山井議員は、
「安倍さんの意向に逆らうものは冷遇され、従うものは好待遇を受けるというお友達人事があるからです。
例えば、与党内でも安倍さんに批判的だった溝手(顕正前参院議員)さんは、同じ選挙区に河井案里議員をぶつけられました。河井さんには1億5000万円もの選挙資金が投入され、溝手さんは落選。溝手さんを落としたことで夫の河井克行さんは法務大臣にまで出世しました」
と、お友達優遇人事を批判する。しかも案里議員は、その選挙で公職選挙法違反を疑われ夫は法相を辞任。先日ついに夫妻の秘書が逮捕された。
山井議員は続けて、
「森友問題だって、自殺された赤木さんの上司の佐川局長は出世しています。安倍内閣では安倍さんのほうを向いて嘘をつけば出世できるから、みんな言いなりになる。これまで20年近く議員を務めていますが、こんなに嘘ばかりの内閣は初めて!
お友達議員は大臣にふさわしくなくても次々に出世。口利き問題の甘利明さん、防衛省をあれだけ混乱させた稲田朋美議員も守りました」
ほかにも“お友達記者”の山口敬之氏によるレイプ事件。
「山口氏に逮捕状が出たにもかかわらず官邸の鶴のひと声で取り下げられたと言われています」(全国紙社会部記者)
昨年から今年にかけても、公費の私物化が問題視された “桜を見る会”問題や、検察幹部の定年延長人事への介入問題など続々と疑惑が。
いつまで国民はこの“独裁”に振り回されるのだろうか。
「順調にいけば、東京五輪を花道にして来年9月の満期まで首相を務める予定だったと思います。しかしコロナでの対応が後手にまわり、反感情は高まるばかり。ある婦人団体は自民党に“一刻も早く総理をお辞めになってください”と手紙を出したそうです」(前出の須田さん)
ツイッターでも『安倍辞めろ』というハッシュタグがトレンド1位になったが、数時間後には圏外になるという不思議な現象が起きた。
「絶対的権力は絶対的に腐敗する」(イギリスの格言)
忖度国家に警鐘を鳴らすのにぴったりの言葉だろう。
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「桜を見る会」でご満悦の安倍首相と昭恵夫人 |
■2012年
12月 第2次安倍政権スタート
■2013年
12月 特定秘密保護法を強行、国民の“知る権利”が脅かされることに
■2015年
3月 安倍政権を批判していた元経産省の古賀茂明氏はレギュラー出演していた『報道ステーション』を降板させられたとし、自身の最終出演回に「I am not ABE(私は安倍首相ではない)」と書いた手製のパネルを掲げた
6月 安倍首相の元番記者の山口敬之・元TBSワシントン支局長に出されていた準強姦逮捕状を握りつぶす(伊藤詩織さんレイプ事件)
9月 集団的自衛権の一部行使容認を含む安全保障関連法が成立
■2017年
2月 国有地売却をめぐる森友学園問題が発覚。首相の妻・安倍昭恵氏の関与が焦点に
5月 獣医学部新設をめぐる加計学園問題で「総理のご意向」文書が発覚
6月 共謀罪法を強行
■2018年
3月 森友問題で財務省の公文書改ざんが発覚
12月 沖縄・辺野古への米軍新基地建設で埋め立てを強行
■2019年
7月 衆院選で改憲勢力3分の2を割るも与党過半数を維持/安倍首相に批判的なことを言った一般人が複数の警察官に取り囲まれる事態に
11月 桜を見る会問題が発覚/'16年当時に安倍首相の元秘書の子息とトラブルを起こした相手が暴行容疑で逮捕されていたことが発覚(通常なら口頭注意ですむようなケンカだったと言われる)
■2020年
2月 従来の法解釈を変更し、東京高検の黒川検事長の定年を半年延長。官邸に近い黒川氏を次の検事総長にするため!?
3月 コロナで小中学校一斉休校要請 新型コロナ対策特別措置法施行
【出典】週刊女性PRIME 3/25(水) 11:00配信
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「フクシマについてお案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています(アンダーコントロール)。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」「汚染水の影響は、福島第一原発の0・3平方キロメートルの港湾内で、完全にブロックされています」などとIOC総会で東京をアピールする安倍晋三首相=2013年9月7日、ブエノスアイレス |
東日本大震災から9年。
被災地では、高速道路や鉄道などが再開した。公共事業も進捗し、物的なインフラは、時間とともに確実に回復してきた。
しかし、東京電力福島第一原子力発電所の事故処理は終わっていない。廃炉作業、汚染土・汚染水処理などは、遅々として進まず、終わりの見えない状況だ。
いまだに避難している住民も、大本営(政府)発表の数字でも福島中心に4万7千人。帰還したくてもできない地域は残されたまま。今さら故郷に戻れないという人も日に日に増える。
一方、そんなこととは関係なく、「復興五輪」と銘打った東京五輪の聖火リレーが来週から始まる。その起点は、福島県楢葉町・広野町にあるJヴィレッジだ。その後の聖火リレーの中継点も、事故の傷痕など感じさせない、きれいに整備された区域が中心だという。世界に「復興」をアピールする「だまし絵」だ。
思えば、東京五輪は、2013年9月のブエノスアイレスで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)総会での安倍総理の歴史的な大ウソによって誘致された。福島原発事故から2年半後の当時、事故のインパクトは大きく、「東京」五輪といっても、「放射能は大丈夫か」と各国関係者や選手たちは心配した。
そこで、安倍総理は一世一代の賭けに出た。すぐにバレてしまうような嘘の演説で、各国を「説得」しようとしたのだ。
「フクシマについてお案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています(アンダーコントロール)。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」「汚染水の影響は、福島第一原発の0・3平方キロメートルの港湾内で、完全にブロックされています」
いずれも、とんでもない大ウソだ。それがばれるのに1日もあれば十分だったが、安倍総理は確信犯だった。総会で東京が選ばれるまでの間さえ、なんとかもてばよいと考えたのだろう。
福島事故を矮小化することで各国の不安感を取り除き、五輪を東京に持ってくることに成功したのだ。
あれから6年半。安倍総理は、再び、大ウソをつこうとしているのではないか。
聖火リレーが始まる3月26日、安倍総理は福島を含めた東日本大震災の被災地の復興について発言するだろう。その時果たして、安倍総理は、何と言うのか。
「福島(被災地)が見事に復興した姿を世界中の皆さんに見ていただけることは、私の最も大きな喜びであります」とでも言うつもりかもしれない。
さすがに、それには気が引けるだろうから、「完全な復興まであと一息のところにたどり着きました」と言うかもしれない。
「嘘つき東電」の廃炉計画でさえ、廃炉まであと30年。実際にはどれだけかかるかわからない。復興が「あと一息」と言っても、大ウソに変わりはない。
安倍総理にとって幸運なことに、新型コロナウイルス騒ぎのせいで、福島事故関連の報道は例年よりかなり減っている。仮に安倍総理が再び大ウソをついても、おそらくメディアではほとんど批判されずに終わるだろう。
世界を騙す大ウソをついた総理の責任を問わない私たち日本人。
再び世界への大ウソを許すとしたら、これは安倍総理の罪では済まない。こんな総理をあれから6年半も野放しにした私たち日本国民の罪が問われるのではないだろうか。
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古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』
(講談社文庫) |
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【出典】※週刊朝日 2020年3月27日号
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安倍首相は今さらリーダーシップを発揮(左)
休館が拡大(東京国立博物館)/(C)共同通信社 |
噂が出回った先月末には「デマ」だと完全否定したまさかの「東京五輪中止」が現実味を帯びてきて、橋本聖子五輪相らが火消しに躍起だ。
国際オリンピック委員会(IOC)の重鎮であるカナダのパウンド委員が、3カ月後の5月になっても日本で新型コロナウイルス感染が収束していなかったら「中止を検討するだろう」とAP通信に発言したことが波紋を広げている。
同委員は「開催可否の判断は5月下旬までに下される」と述べており、IOCのコーツ調整委員長も自身の地元である豪州メディアに27日、「5月判断」との認識を示した。
「私はマスクをしないで最後まで頑張ろうと思っている」――。東京五輪組織委員会トップの森喜朗会長が披露したこんな非科学的な根性論は、世界に通用しないということだろう。
27日、IOCのバッハ会長が緊急の電話会見に応じて「予定通り実施へ全力」と、とりあえずの沈静化を図ったが、中止論の背景に日本という国に対する“世界の不安”があるのは間違いない。
安倍政権の不手際で日本は武漢化した。世界はそう見ている。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染者が爆発的に増えたことで日本政府の対応に疑問を抱いた海外メディアは、下船時に陰性の乗客を公共交通機関で帰したことを知ってさらに批判を強め、「道連れにされたらかなわない」とばかりに酷評している。
米ブルームバーグ通信は「日本が急速にコロナウイルスの温床に」という見出しで、<日本は最も危険な場所の1つに浮上しており、安倍政権が感染拡大を阻止できなかったと批判されている>と報じた。
米紙ワシントン・ポストは<安倍政権はプレッシャーを感じるのが最も遅かった>と、他国の首脳と比較して皮肉り、<クルーズ船の新型コロナウイルス感染に関する日本の対応は『完全に不適切』だと衛生専門家が言明>と伝えた。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客だった医者の話を掲載。<私が感染していなかったことが驚きだ。ウイルスは野火のように船に広がった。日本政府は我々を感染させるために培養皿の中に閉じ込めたというのが私の推論だ>と証言したというから、愕然である。
「海外メディアが厳しい論調なのは、ひとえに自国民がクルーズ船に閉じ込められていたからでしょう。乗客乗員への扱いが本当に酷かったと受け止めている。加えて、厚生労働省がきちんと情報を出していないことにも不満が高まっている。国際感覚が分かっていないと思われています」(医療ガバナンス研究所理事長・上昌広氏)
英ロイター通信にまで「安倍首相はどこに行った」という記事を書かれたからか、安倍は政府の対策本部で今さらながらに前面に出て発言し始めた。
後手後手対応と責任回避の保身ばかりで、自治体や個人への“丸投げ”批判に耐えかねたのか、27日は、全小中高校に週明けの来月2日から春休みまでの臨時休校を呼びかけるという極めて異例の要請に踏み込んだ。
米CNBCテレビに登場した米食品医薬品局の前長官はこう言ったという。
「日本はコロナウイルスがパンデミック級に感染拡大するかを予測する上で、重要な指標になるだろう。我々は日本の状況を非常に注意深くウオッチする必要がある」
世界が固唾をのんで見守っている。
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とうとう日経平均は2万2000円割れ(C)日刊ゲンダイ |
感染拡大が止まらず、国民もパンデミック目前を意識せざるを得ないからだろう。日本のあちこちで、パニック状態の混乱が発生している。
ワイドショーがこぞって取り上げた映像には仰天した。横浜のドラッグストア前で、マスクを求める列に割り込んだと取っ組み合いの喧嘩が起き、流血騒ぎとなったのだ。
政府が「増産態勢によりマスクの毎週1億枚供給が確保された」と言っても、店頭はいつも空っぽ。入荷するかどうかも分からないのに開店前に行列ができる。
コロナウイルスの有無を確認するPCR検査を受けたくても受けられない状態が続き、「政府は感染者数を少なく見せるために、検査させないようにしている」という疑心暗鬼が拡大。保健所の相談窓口への電話が鳴りやまない。
お隣の韓国は毎日数千件態勢で検査しているのに、日本では1日平均900件だと加藤厚労相が明かしている。なぜこうも違うのか。やっぱり日本はおかしい。国民の不安と不信は募るばかりだ。
花王や日本たばこ産業(JT)が27日、新たに全社員を対象にした在宅勤務の実施を発表したが、大手企業を中心としたテレワークの拡大は、政府に任せられないという究極の“自己防衛”でもある。
コロナ対策での政府の初動ミス、判断ミスは重い。そんな中での全国の小中高校への臨時休校の要請。一見「子供の健康と安全を考えた判断」と映るものの、1カ月もの長期にわたって子供が家にいたら共働き家庭はどうしたらいいのか。
安倍の発言はそうした具体的な事情や対策を検討したうえでのものなのか。日本中がますます大混乱である。
「政府がパニック状態に陥っているのですから国民もパニックになりますよ。全国の小中高校を休校にするのも、データに基づいて行っているのか。新型コロナの感染は高齢者や糖尿病などの持病のある人がより危険で、子供や若い人は重篤化もしにくいことが分かっています。『この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要だ』という政府の見解も何か根拠があるのか。2月になって検査を始めたから、いま陽性になる感染者が増えているだけで、もっと以前から蔓延していたかもしれないのに。政府の対応のまずさが国民のパニックを招いているのです」(上昌広氏=前出)
日経平均は27日、2万2000円台を割り込んだ。新型コロナ禍関連倒産は、愛知の老舗旅館に続き、2例目が出た。コロッケ製造・販売やレストラン運営の北海道の会社だ。
いずれも中国からのインバウンド客の激減が直撃した形だが、問題は外国人だけじゃない。イベントの自粛ラッシュや市中感染不安の拡大で日本人も移動をしなくなる。「人・物・カネ」が流れなければ経済は停滞。その影響は計り知れない。
経済評論家の斎藤満氏が言う。
「コロナ懸念で先週21日に世界の株価が下落した際、通常なら『リスクオフ』で買われる安全資産の日本の円が売られる“珍事”が起きました。安倍政権のコロナ対応がお粗末過ぎて、金融市場の日本に対する見方はガラリと変わったのです。米国では経済番組のコメンテーターらが日本をウイルスの感染源という意味で『エピセンター』と呼んでいます。日本株の暴落も外国人が売りに走っているからです。インバウンドの縮小は当初は中国が原因でしたが、今は日本自体が原因になってきている。米国は日本への渡航警戒レベルを『2』の注意強化国に引き上げた。これからビジネスマンも日本に来られなくなり、経済へのダメージはさらに加速するでしょう」
自民・公明は新型コロナの追加経済対策として、来年度の補正予算案編成を政府に求める方針だ。
国会では来年度の当初予算案が審議中というのに、もう補正予算の話が出てくるバカげた状況は、安倍政権の経済無策を物語っている。恐慌目前になってから動いたって遅すぎる。
米紙ニューヨーク・タイムズが<壊滅的な台風と増税により、日本経済はすでに苦境に立たされている。そしてコロナウイルスが、日本を本格的な景気後退に陥れるおそれが出てきた>と書いていた。確かにいまの日本はその通りの惨状である。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/02/28 17:00 更新日:2020/02/28 17:00
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/02/28 17:00 更新日:2020/02/28 17:00 |
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限られた人員で対応(C)日刊ゲンダイ |
ようやく、安倍政権が重い腰を上げる。ついに4人が重症。新型コロナの感染が加速度的に広がる中、ウイルス検査の態勢強化など緊急対策に乗り出すが、しょせんは付け焼き刃の対応だ。これまで、感染症対策をおろそかにしてヒトやカネをバッサリ削ってきた“人災”のツケが回ってきた。
◇ ◇ ◇
現在、ウイルス検査や分析などの対応に追われているのは国立感染症研究所だ。米国では、感染症について「情報収集と発生時の対応」はCDC(疾病予防管理センター)、「研究・開発」はNIH(国立衛生研究所)、「ワクチンの品質評価」はFDA(食品医薬品局)と、3つの機関が分業している。
この3つの役割を感染研は一手に担っている。
近年、インフルエンザ、麻疹、風疹、梅毒などの流行が見られ、感染症の脅威は高まっている。しかし、感染研はすさまじい大リストラを食らってきた。
2009年度に61億円あった研究費と経費の合計額は、18年度はなんと41億円。3分の1に当たる20億円も減らされてしまった。研究者も09年の322人から、現在は307人。組織はスカスカにされている。
理由は十把一絡げの国家公務員の削減だ。山野美容芸術短大客員教授の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「感染研が担う役割や仕事量からして、300人余の研究者は極めて少人数です。10年間でさらに人も金も減らしているのは、安倍政権が感染症対策を軽視している表れといえます」
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国立感染症研究所(東京都武蔵村山市)/(C)共同通信社 |
感染研の大リストラには、有識者からも強い異議が起こっていた。11年に医学の有識者らでつくる「国立感染症研究所研究評価委員会」が報告書をまとめている。
<人員や経費が削減される中、研究所の業務や研究の範囲は拡大し続けており、個々の職員の努力に依存した運営には限界がきている><予算・人員の裏付けをつけることが重要であり、研究所は、その国民に対する使命の質と大きさに鑑み、「国家公務員削減計画」からの除外対象とすべきである>
悲鳴のような報告書が出されても、安倍政権は、予算・人員を削り続けた。
さらに昨年4月9日、共産党の田村智子参院議員が内閣委員会で、感染研のリストラ問題を取り上げた。政府は「(感染研は)重要な機能を有していることは認識しています。新規増員を措置してきている」(宮腰光寛内閣府特命相=当時)と答弁。
感染研によれば、「国会で予算が通れば、新年度は1人増えて、308人になります」(総務課)という。増員幅はスズメの涙だ。
安倍政権が評価委や田村議員の指摘に耳を傾けていれば、新型コロナウイルスはここまで感染が拡大しなかったのではないか。
「予算、人員削減のツケが回ってきました。例えば、クルーズ船の約3700人全員のウイルス検査は、マンパワー不足の問題で決断が遅れました。感染が確認された検疫官が防護服を着ていなかったのは、金がない証拠です。安倍首相のいう国防は、高額の軍艦や飛行機を買うことですが、感染症から国民の命を守ることの方が大事な『国防』です」(中原英臣氏)
安倍政権は新年度予算案に過去最高となる防衛費5・3兆円を盛り込んだ。
政権発足後、8年連続アップで、6000億円も増やしている。いくらかでも感染症対策に回したらどうだ。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/02/13 15:00 更新日:2020/02/13 16:42
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2020/02/13 15:00 更新日:2020/02/13 16:42 |
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首相官邸HPより |
昨日おこなった施政方針演説で、やたら「夢」だの「希望」だのといったフレーズを連発し、ことごとくオリンピックの話題を政策とつなげた安倍首相。これには当然ながら「東京五輪の政治利用だ」という声があがっているが、よりにもよって施政方針演説で中身がスカスカの政策を五輪の話題でごまかすなどというのは、安倍政権の無能っぷりを象徴するかのようだ。
この五輪の政治利用にかんしては別稿でお伝えするのでそれをお待ちいただきたいが、じつは昨日の施政方針演説をめぐって、信じられないような事実があきらかになった。
安倍首相は施政方針演説のなかで地方創生について言及し、ある男性の実名を出しながら、Iターンの事例を紹介した。だが、それがフェイクまがいだったというのだ。
いったい安倍首相は何と語っていたのか。まずは該当部分のスピーチを引用しよう。
「東京から鉄道で7時間。島根県江津市は『東京から一番遠い町』とも呼ばれています。20年以上、転出超過がつづき、人口の1割に当たる2800人が減少した町です。
しかし、若者の起業を積極的に促した結果、ついに一昨年、転入が転出を上回り、人口の社会増が実現しました。
◯◯◯◯さんはパクチー栽培をおこなうため、東京から移住してきました。農地を借りる交渉をおこなったのは、市役所です。地方創生交付金を活用し、起業資金の支援を受けました。農業のやり方は地元の農家、販路開拓は地元の企業が手助けしてくれたそうです。
『地域みんなで、手伝ってくれました』
地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が、◯◯さんの移住の決め手となりました。
『地方にこそ、チャンスがある』。そう考え、地方に飛び込む若者を、力強く応援してまいります」(注:伏せ字の部分は演説では実名)
普通に演説を聞けば、この移住した男性の話は現在進行形のように思える。だが、中国新聞デジタルが昨晩、こう銘打って記事を配信したのだ。
「安倍首相の施政方針演説の起業支援で紹介の男性、既に島根県江津市から転居していた」
この記事によると、中国新聞の取材ではこの男性は〈昨年末に県外へ転居〉しており、さらに〈昨年末にこの会社を辞め、既に江津を離れていた。個人的な事情という〉と伝えているのだ。
言っておくが、施政方針演説というのは政府のこれからの1年の基本方針を示すためにおこなわれる重要なものだ。そして安倍首相は、この男性のエピソードを地方創生の企業支援政策の“成功例”として紹介した。それが〈個人的な事情〉とはいえ、すでに会社を辞めて土地も離れていたのだ。この男性個人の選択や理由はどうあれ、地方支援の政策の成功例として持ち出すのは、どう考えても不適切だろう。しかも、男性が辞めたことに一切触れないで、『地方にこそ、チャンスがある』などといった政策宣伝につなげるのは、フェイクとしか言いようがない。
それにしても、安倍首相はなぜこの男性の話を実名で持ち出したのか。中国新聞の記事では、市は〈首相が演説で示した市の人口増減のデータなどに関する国からの問い合わせには昨年末に回答していた〉というが、〈男性のことが演説に盛り込まれているとは知らなかった〉という。
施政方針演説というメディアも大々的に伝えるスピーチだというのに、安倍官邸は事実関係を調べていなかったのだろうか。演説では引用したとおり、安倍首相は実名を挙げただけではなく、男性の「地域みんなで、手伝ってくれました」というコメントまで紹介していた。しかし、もし、実名を挙げた男性に安倍官邸側が直接取材したのなら、普通は退社や県外に移った事実を知らされるはずで、こんな紹介の仕方にはなっていないだろう。
ということは、コンタクトはとっており事実関係も知らされていたが、それを無視してスピーチに使用したか、あるいは安倍官邸側は男性に取材もせず、過去にメディアで取り上げられた二次情報をもとにスピーチをつくった。そういうことではないか。
当たり前だが、どんなかたちであれ、この男性には何の非もない。しかし、もし安倍官邸側が事実を知りながら無視したり、そもそも取材もしていないとなれば、これは大問題だ。
こんなありえないことが起きてしまうのが、安倍政権の怖さなのだ。実際、安倍首相には、スピーチや国会答弁で虚偽・フェイクまがいの話を喧伝してきた“前科”がある。
たとえば、安倍首相が9条に自衛隊明記する改憲の理由としてしきりに持ち出していた、「自衛官が息子に『お父さんは違憲なの?』と目に涙を浮かべながら言われた」というエピソードがそうだ。安倍首相はことあるごとにこのエピソードを取り上げ、「自衛隊の幹部から聞いた」「ある自衛官から聞いた」と語ってきた。
しかし、国会で小中学校と自衛隊駐屯地のそばで育ったという立憲民主党の本多平直衆院議員が「こんな話が出たことがない」と質疑のなかで述べると、安倍首相は血相を変えて「私が嘘を言うわけないじゃないですか!」と喚き立て、「資料を出せと言うんであれば出させていただく」と大見得を切った。
ところが、その後の衆院予算委員会で、安倍首相は出すと言っていた資料も出さず、「防衛省担当の総理秘書官を通じて、航空自衛隊の幹部自衛官から伺った話」と答弁。つまり、「自衛隊の幹部から聞いた」「ある自衛官から聞いた」と語ってきたのに、実際には又聞きだったことがわかったのだ。
しかも、本サイトが調べたところ、「お父さん違憲なの?」のネタ元だと思われる元自衛官の話が「正論」(産経新聞社)に掲載された2017年6月と同時期に、同じような話が極右界隈で語られはじめていた。ちなみに安倍首相が9条に自衛隊を明記する改憲案をぶちあげたのは同年5月。ようするに、改憲案を正当化するために、改憲勢力や自衛隊出身の右派論客などが古いエピソードを持ち出した疑いがあるのだ(過去記事参照)。
雑誌などで語られていたような話を「自分が直接聞いた話」だと嘘をついて国会答弁やスピーチで平気で繰り返し、改憲の道具に使う──。大前提として、「お前の父ちゃん憲法違反!」などといじめられた子どもがほんとうにいるのだとしたら、おこなうべきはいじめの解消・解決。そのエピソードを持ち出して改憲の理由にすること自体がどうかしているのだが、ともかく、これが安倍首相の常套手段なのだ。しかも、そのやり口はスピーチライターを含む側近たちに完全に広がり、官邸全体の方法論と化している。
こうした状況を踏まえると、今回の施政方針演説の問題もさもありなんと言わざるを得ないが、今回の演説でもうひとつ指摘しておきたいのは、安倍首相の「個人情報」の考え方だ。
安倍首相は「桜を見る会」問題では、招待者について「個人に関する情報」だと言い張ってすべての回答を拒否している。それは自ら招待されたことを宣伝材料にしていたジャパンライフ会長の件についても同じで、当人が招待されたとあきらかにしているにもかかわらず、安倍首相はやはり「個人に関する情報なので回答は差し控える」の一点張りだ。
事ほどさように「個人情報」の保護遵守を言い募るのに、一方では国会の演説でカジュアルに一般人の実名を挙げて、結果このような騒ぎを巻き起こす……。結局、安倍首相の言う「個人情報」に対する認識とはこの程度のもので、都合が悪いときの隠れ蓑でしかないのだ。
威勢のいい言葉や美辞麗句を並べ立て、中身が空っぽだっただけではなく、地方創生の成功例として語った話が実際にはフェイクまがいだったというこの疑惑。安倍首相に説明が求められることは言うまでもない。
(編集部)
【出典】LITERA 2020.01.21 05:30
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国民には増税を強いて海外へは破格の大盤振る舞い
(ASEAN首脳会議でタイを訪問した安倍首相夫妻)/(C)共同通信社 |
「国民目線」からはほど遠い決断だ。10月の消費増税は「税と社会保障の一体改革」の名の下に、税収を社会保障の安定財源に充てる名目にしていたが、直近で安倍首相が決めたのは、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国への「出資倍増」だった。庶民に痛みを強いる消費増税実施直後のタイミングでの“海外バラマキ”に批判の声が続出するのは時間の問題だ。
◇ ◇ ◇
ASEAN首脳会議でタイを訪れていた安倍首相は日本時間の4日夜、外務省所管の国際協力機構(JICA)への出資を今後倍増させ、ASEAN諸国のインフラ開発などを支援していく方針を表明。この発言に対し、SNSなどでは〈また、外国にばら撒きかよ〉〈諸外国に出す金があるなら、(消費税を)増税するなよ〉〈途上国の外国人よりも、氷河期の日本人を支援すべき〉といった批判の声が相次いだ。
そりゃあそうだろう。第2次政権が発足した2012年以降、安倍政権は海外諸国にドヤ顔でカネをばらまき続けているからだ。
昨年1月26日の参院本会議の代表質問で、社民党の福島瑞穂議員は〈総理が表明した(海外への支援)額を機械的に加算した場合、円借款や一部重複部分を含め54兆3621億円になるという回答が(外務省から)あった〉と指摘。〈社会保障を削って、なぜこの大盤振る舞いなのですか〉と追及すると、安倍首相は〈54兆3621億円は、民間資金と重複計算により額が膨大に膨らんでおり、極めて誤解を招く数字〉とムキになって反論。〈(本来の総額は)2兆8500億円〉とか言っていたが、その詳細な内訳はいまだに分からずじまいだ。
このやりとり以降も、安倍政権は平然と“海外バラマキ”を継続。18年4月、過激派組織「イスラム国」との戦闘終結後のイラク復興支援名目で、同国の上水道整備などのために約350億円の円借款供与を決定したほか、同年10月には、インドの高速鉄道計画などに3000億円強、さらに今年4月にはパナマ首都圏のモノレール建設事業を巡り、約2810億円の円借款を決めた。そして5月末は、バングラデシュの鉄道や商業港建設に関連し、1300億円規模の円借款を約束するなど、ざっと取り上げた大型案件だけでも、バラマキ金額は約7500億円にも上る。総額でいえば、ざっと55兆円を突破している計算だ。
さらに言えば、昨年末に閣議決定した19~23年度「中期防衛力整備計画」に基づくステルス戦闘機の“爆買い”だって、トランプ大統領の要求に屈した安倍首相の米国への巨額な“バラマキ”に等しい。1機116億円とされる戦闘機を147機購入する計画で、維持費を含めると日本の支出額は約6兆2000億円。つまり、バラマキ総額は実に60兆円を超えているのだ。
「海外支援に資金を支出することは重要なことかもしれません。しかし、政府はこれまで多額の出資をし、どれだけの成果を上げてきたのかが全く見えない。安倍首相は、大枚をはたいて各国首脳を味方につけたかのような気分に浸っているだけではないか。給料が上がらない中、消費増税に苦しむ国民が多いのに、海外へのバラマキに税を費やしている場合ではないはずです」(経済ジャーナリスト・荻原博子氏)
消費増税した途端に海外にカネをばらまき始めるというのは、もはや、宰相としても政治家としても、マトモな頭じゃない。これじゃあ、いくら増税してもキリがないだろう。「カップ麺が1個400円」などと国会答弁で平気で言ってのけるバカ者だらけの政権にこれ以上、税金を使わせたら国が滅ぶ。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/11/06 15:00 更新日:2019/11/06 17:58
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日立製作所が英国で進める原発新設プロジェクトに対し、3メガバンクと国際協力銀行(JBIC)を含む銀行団が、総額1・5兆円規模の融資を行う方針を固めた。
事故などによる貸し倒れに備え、日本政府がメガバンクの融資の全額を債務保証する。政府系の日本政策投資銀行は出資による支援を行うほか、中部電力など電力各社も出資を検討する。総額3兆円規模に上る原発輸出を、政府主導の「オールジャパン体制」で後押しする。JBICや政投銀による投融資も含めると、政府が巨額のリスクを抱える形となる。 |
(出典)安倍首相の海外バラマキと同行企業リスト「青山貞一編」 |
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(出典)日刊ゲンダイ |
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訳がわからない(C)共同通信社 |
消費税2ケタ時代が始まり、つくづく思ったのは、責任感や国民への奉仕の精神を持たない人たちが政策を担当すると、おかしなものが出来上がってしまうということです。
消費税は本来、財政再建のために導入され、順次、税率が引き上げられるのも財政健全化のためだったはずです。
しかし今や、安倍政権は自分たちのやりたいことのために増税している。突然、持ち出してきたのが、「幼児教育・保育の無償化」です。
今回の増税分の半分を、このいかにも子育て世代向けの“点数稼ぎ”くさい政策に充てることになってしまいました。
しかも、当事者たちが本当に欲しい制度ではないから、実は点数稼ぎにさえなっていない。支離滅裂です。
さらには、増税による消費落ち込み対策として、ポイント還元を導入し、ついでにキャッシュレス化も推進してしまえ、みたいな、訳の分からないことも起きている。
世のため、人のため、という本気の問題意識が欠如しているので、増税効果を自ら相殺するようなことになってしまうのです。
食品を軽減税率にして8%に据え置いたのも、一体、誰のための政策なのか。突き詰めて検討されたわけではないでしょう。「軽減税率なら食品」と短絡的に決めただろうにおいがプンプンする。食品は多様で、高額なものもあり、購入者は金持ちだったりする。逆進性の排除には全く役に立たない可能性があります。
そう考えると、消費増税直前の9月末に、トイレットペーパーをいくつも買い込むという消費行動に追い込まれた私たちは、本当に哀れだと思います。無責任な政策が人々を不自然な行動に追い込んでいく。
本来、政策は、不自然なことやつじつまの合わないことを修正し、自然でバランスの取れた状態に戻すために存在している。経済・社会に対する「外付け装置」として均衡の保持と回復に努める。それが政策の役割です。
ところが、そういう役割のはずの政策が、逆に人々の生活を狂わせているのが現状。これは酷く恐ろしいことです。
コトは消費増税の問題に限りません。金融政策の失敗もそうです。直近では、関西電力の金品受領という驚くべき事案も明らかになりました。これも日本の原子力政策の怪しい体制に絡んで噴出した問題だといっていいでしょう。
そして、もうひとつ。老後に2000万円不足するという問題です。政府の意図するところではないと金融庁の報告書は撤回されましたが、「貯蓄から投資へ」という方針は、人々を危ない橋へ追いやる間違った政策です。
普通の人たちは、健全な貯蓄によって生活を維持できることを望んでいる。それが可能な状況をつくっていくことが、本来の政策の役割のはずです。
政策が人々の生活をよりよくするものになっていない。むしろ私たちは政策の餌食になってしまっている。
ロクでもない政策とその背後にある安倍政権の下心から、日本の経済・社会を救出しなければいけない状況になってきました。
「日本経済救出大作戦」に踏み切る必要が出てきたと思います。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/10/19 06:00 更新日:2019/10/19 06:00
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浜矩子 同志社大学教授
1952年、東京生まれ。一橋大経済学部卒業後、三菱総研に入社し英国駐在員事務所長、主席研究員を経て、2002年から現職。
「2015年日本経済景気大失速の年になる!」(東洋経済新報社、共著)、「国民なき経済成長」(角川新書)など著書多数。 |
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/10/19 06:00 更新日:2019/10/19 06:00 |
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文部科学省HPより |
安倍内閣からまたも疑惑が飛び出した。安倍首相の側近中の側近で、先日の内閣改造で初入閣を果たした萩生田光一文科相に公選法違反疑惑が持ち上がったのだ。
この問題を報道したのは、23日付のしんぶん赤旗。記事によると、2017年10月におこなわれた総選挙の期間中、萩生田氏が代表を務める政党支部「自由民主党東京都第二十四選挙区支部」は約1847万円もの企業・団体献金を集めていた。
一方で同支部は、衆院が解散した9月28日から11月10日のあいだに計6回、「はぎうだ光一選挙対策本部」に総額1600万円を寄付していたという。
政治資金規正法では、癒着や汚職を防ぐために公職の候補者の後援会などへの企業・団体献金は禁止されている。そのため、政党支部を迂回させて、本来は受け取ることのできない企業献金を得ていたのではないかとみられる。
実際、以前に萩生田氏を支援する団体で役員を務めていた空調機器販売会社の会長は、しんぶん赤旗の取材に対し、企業名で総選挙の公示直後に100万円を献金したことについて証言。
「覚えていますよ。正式な手続きをして出させてもらいました」と答え、
〈萩生田氏個人への選挙応援のための献金だった〉ことも認めたという。
だが、萩生田氏の選挙運動費用収支報告書では、収入として「自由民主党東京都第二十四選挙区支部」からの1600万円しか記載していない。
この点について、上脇博之・神戸学院大学教授は「本来は候補者個人に対して行われた企業・団体献金を、政党支部への献金として政治資金収支報告書に記載したことになり、政治資金規正法上の虚偽記載罪の疑いが生じます」と指摘。
また、公選法では選挙運動に関するすべての収入と支出を報告するようを定めており、公選法違反の虚偽記載に当たる可能性もあるのだ。
本来は禁止されている企業献金を受け取るために、法の抜け道として政党支部を迂回させる──。これは意図的な脱法行為にほかならない。萩生田事務所はしんぶん赤旗の取材に対し「回答しない」というふざけたコメントで無視を決め込んでいるが、萩生田文科相には徹底した責任追及が必要だ。
しかも、先日本サイトでもお伝えしたように、今回の内閣改造で大臣に返り咲いた高市早苗総務相をめぐっても、公選法違反疑惑が取り沙汰されている。
この問題は、やはり2017年におこなわれた衆院選の選挙期間中に、高市氏が代表を務める自民党奈良県第2選挙区支部が、当時、警察庁や防衛省と取引のあった奈良市の寝具リース会社から30万円の献金を受けていた。
公選法では、国と契約を結ぶ企業などから国政選挙に関連して献金を受けることを禁止しており、あきらかに公選法違反にあたるだろう。
この問題を報じた共同通信が18日付記事では、取材に対して高市総務相の事務所は「企業と国との契約の有無を知りうる方法はないが、指摘の通りなら結果的に公選法に抵触する恐れがある」と、公選法に抵触する可能性を指摘していた。
ところが、翌19日におこなわれた会見で高市総務相は、国との契約を知らなかったという理由で「公職選挙法への抵触はまったくない」と主張。
「選挙制度や政治資金を所管する大臣として、疑義を指摘されるのは不本意なので道義的観点から返金した」と述べたのだ。
「疑義を指摘されるのは不本意」って、何を寝ぼけたことを言っているのか。
「知らなかったからセーフ」が通用するなら法律の意味などないし、所管大臣がこんな態度ならなんでも「知らなかった」で済まされてしまうことになる。はっきり言って言語道断だ。
しかも、萩生田文科相にも高市総務相とまったく同じ疑惑が浮上。同様に2017年の総選挙期間中に防衛省と取引のあった企業から100万円の寄付を受けていたと22日付の読売新聞が報道。
だが、萩生田文科相の事務所も「(国発注の)事業をしていたとは知らなかった」と言い訳した。
その上、安倍首相の側近である萩生田氏と高市氏に持ち上がったこれらの疑惑について、テレビも新聞も追及の動きはまったくなし。
ワイドショーではあいも変わらず韓国のチョ・グク法相の疑惑を熱心に追及しているのに、である。
いや、そもそも萩生田氏と高市氏が大臣に登用された段階から、「こんな組閣が許されるのか」と批判が巻き起こっていない時点でおかしいのだ。
言うまでもなく、萩生田氏は加計学園問題のキーパーソンであり、実際に文科省が公開したメール文書では、「広域的に」「限り」の文言を加えるという事実上の「京都産業大学外し」を内閣府に指示していたと名指しされており、同じく文部省の内部文書「10/21萩生田副長官ご発言概要」でも、萩生田氏が文科省に対し「官邸は絶対やると言っている」「総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた」などと“総理案件”であることを伝えていたことが明らかになっている。
それをよりにもよって安倍首相は文科省の大臣に抜擢したのである。
さらに、高市氏は総務相だった2016年に“国は放送局に対して電波停止できる”と国会答弁し大問題に。
当時、池上彰氏も〈まるで中国政府がやるようなことを平然と言ってのける大臣がいる。驚くべきことです。
欧米の民主主義国なら、政権がひっくり返ってしまいかねない発言です〉(朝日新聞2016年2月26日付)と指摘していたが、やはり安倍首相は露骨な言論封殺を示唆した高市氏を総務大臣に再び登用したのだ。
しかし、こんなあからさまな人事がおこなわれたというのに、テレビは小泉進次郎氏の初入閣を大きく取り上げるばかりで、萩生田氏と高市氏をはじめとする新大臣の過去の問題や疑惑をスルーした。
しかも、萩生田文科相は就任記者会見で加計学園問題の関与と安倍首相からの指示を否定した上、「私としては私の発言していないことが私の発言だといって文書で出てきて、大変疑念をかけられ、迷惑した」などと文科省を非難。
高市総務相も「過去に電波を止めるといった発言をしたことはない」と開き直っている。普通に考えて、国民を舐めきっているとしか言いようがないが、これらの暴言も、テレビはまったく取り上げようとしないのだ。
国民をバカにした人事と、人を食ったような発言しかしない大臣。
しかし、こうした実態も浮上した疑惑も伝えられることなく、なかったことになってゆく──。
何度、ひっくり返っていてもおかしくはない安倍政権がひっくり返らないのは、ひとえにメディアのアシストによるものだと痛感せずにはいられない。
(編集部)
【出典】LITERA 2019.09.26 11:53
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【出典】LITERA 2019.09.26 11:53 |
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こんな無駄使いも!内閣府のゆるキャラ”確にゃん”(内閣府HPより) |
10月1日からいよいよ消費税の10%への増税が実施される。貧富の格差がどんどん激しくなっている中で、逆進性の高い消費増税を導入することは庶民の生活をさらに圧迫するのはもちろん、経済状況を取り返しがつかないくらい悪化させることが、専門家の間でも指摘されている。
だが、国民の怒りの声はあまり大きくなっておらず、安倍政権の詐術に騙されてしまったのか「少子高齢化が進む中、社会保障の充実のためにはしようがない」という声がかなりの部分を占めている。
しかし、この事実を知ってもまだ「増税はしようがない」と言っていられるだろうか。安倍政権は今回の消費増税にかこつけ、なんと消費税対策の「広報・宣伝」に74億円もの巨額の税金を投入、その中には、なんの宣伝効果もないゆるキャラ制作代まで含まれていたというのだ。
安倍政権は「社会保障の充実」を名目に10%への引き上げを行うのだが、実は約5.6兆の税収増見込みのうち社会保障の充実にあてられるのは約1.1兆円。
その一方で、2兆円を超える金を増税による消費落ち込みを防ぐ「景気対策」としてバラマくことになっている。具体的には、最大2.5万円分の商品券を2万円で購入できると謳う「プレミアム付商品券」制度や、クレジットカードなどキャッシュレスでの買い物の際、特定の条件において最大5%のポイントを還元する制度(以下、ポイント還元制度)などが実施される。
消費増税のお題目である「社会保障の充実」に充てる金よりも「景気対策」でバラまく金が倍近く多いということ自体、信じられないが、さらに、この「プレミアム付商品券」制度と「ポイント還元制度」のための宣伝・広報費として、74億円の予算がつけられているというのだ。
しかも、ひどいのはその中身だ。たとえば、内閣府が担当する「プレミアム付商品券」の特設ホームページを覗いてみるといい。いきなり虫眼鏡を手に持つ招き猫風の「ゆるキャラ」のイラストが目に飛び込んでくる。名前を「確にゃん」というらしい。
「あなたは対象者? 確認したら申請にゃん!」なんて喋っている“確にゃん”だが、内閣府はこうした広報になんと「14億円」もの予算を組んでいるらしいのだ。
ゆるキャラを使った行政の広報については、財務省が2014年の予算執行調査で独立行政法人に対して、目標がないままマスコットキャラクターを多用し、効果が上がらないまま無駄な予算を使っていることを指摘している。
ところが、今回、首相のお膝元である内閣府がよりにもよって消費税対策でその“無駄遣い”を大々的に行っていたというわけだ。
いったい安倍政権は何を考えているのか。内閣府に電話取材すると、プレミアム商品券の担当者は「宣伝費の予算上限が14億円」であることを認めたうえで、このように説明した。
「宣伝費は、チラシやポスター等のほか、テレビやラジオなどのマス系のメディアあるいはインターネットを通じた“広報のパッケージ”で予算を組んでいます。ですので、『ゆるキャラ制作費』みたいなものは存在しません。よく誤解されるのですが、“確にゃんを制作するためにいくらつぎ込んだ”というような世界ではなくて、基本的な広報戦略における統一コンセプトのもと、デザインのひとつとして、こうした親しみやすい猫のキャラクターを使っていこうということになりました」
内閣府担当者によれば、プレミアム商品券の広告宣伝は、公募で決定した事業者に包括委託したものだという。つまり広告代理店への外注だ。実際、官報などによると「プレミアム付商品券事業に係るクロスメディア広報業務」との名称で公募が行われ、今年の4月19日に大手の博報堂が落札していた。
安倍政権はプレミアム付商品券事業に1723億円の予算(2019年度)を計上しているが、少なくともそのうち14億円は広告代理店の懐に入ってしまうということらしい。
しかも、その巨額の税金をつぎ込んだ宣伝は効果を発揮しているのか。内閣府担当者はゆるキャラを使ったことについて、「プレミアム商品券は対象の方が限定されておりますので、事前に申請等をしていただかなければなりません。
まずは日常生活のいろいろな場面で目につきやすく、なおかつ“なんだろうこの猫は?”と、なんとなしに見ていたら“申請が必要なんだな”というふうに気づいていただくことが非常に重要でして」などと説明していたが、“確にゃん”を発表してからすでに数カ月が経ったが、このキャラクターのことを知っている国民はほとんどいないだろう。
こうした広報・宣伝費の巨額無駄遣いは経産省が担当する「ポイント還元制度」でも同様だ。こちらはなんと、宣伝広告費として60億円余りが注ぎ込まれるのだという。
本サイトは、経産省へも電話で数回にわたって取材を申し込んだが、同省キャッシュレス推進室は担当者の不在や多忙を理由に取材に応じなかった。
しかし、経産省がいくらごまかそうとしても、省のトップがこの巨額宣伝費投入の事実を認めていた。
今年2月、当時の経産相・世耕弘成がテレビ朝日の報道にいちゃもんをつける流れの中で、つい、こうつぶやいてしまっていたのだ。
〈一般的な「広報宣伝費」であるポスター・チラシの配布、WEBや新聞、テレビを通じた広報、説明会の開催等にかかる予算としては、消費者向け、中小・小規模事業者向け合わせて、60億円強を計上しています。〉
世耕大臣は自慢げに語っているが、ポスター・チラシの配布に、広告、説明会の開催で60億円なんてどうかしているとしか思えない。
いずれにしても、事実関係ははっきりしたはずだ。内閣府14億円+経産省60億円。社会保障の充実を謳って消費税を増税しながら、安倍政権は本当に計74億円もの金を宣伝費に使っているのだ。
この事実を知ると、安倍政権はもしかしたら、社会保障の充実どころか、景気維持すらまともに考えていないのではないか。そんな気さえしてくる。
実際、74億円を使って宣伝するプレミアム付き商品券もポイント還元制度も、その制度自体に様々な問題点が指摘されている。
たとえば内閣府はHPで、プレミアム付商品券を〈25%もお得に買い物ができる〉と謳っているが、これは“ひとりあたり最大2万5000円分の商品券を2万円で購入できる”という仕組みだ。
対象は住民税非課税の人と「学齢3歳未満の小さな乳幼児のいる子育て世帯」で、後者は3歳未満の子どものひとりにつき一枚、誕生日を一日でも過ぎていれば(2016年4月1日以前に生まれた子ども=引き上げ時に3歳半以上)対象にならない。
有効期限も税率引き上げ後から6カ月に限定されている。言うまでもなく2%の増税はずっと家計を直撃し続けるわけで、これでは「一時しのぎ」との批判が出ても仕方がないだろう。
プレミアム商品券は2015年にも消費税率8%引き上げに対する「緊急経済対策」として実施されたが、内閣府の分析ですらその経済効果は予算額2500億円の半分以下(1019億円)、みずほ総合研究所は個人消費の押し上げ効果を640億円程度と発表していた。
ポイント還元についてはさらに問題が山積している。これは、クレジットカードや電子マネーを使って「中小店舗」で買い物をしたとき、最大5%分のポイントがつくというものだ。期間は引き上げ時から9カ月。
そもそも制度自体が複雑であるというのはもちろん、キャッシュレス決済でのポイント還元は当然、高い買い物のほうが得られるポイントが多くなる。低所得者はカードの上限額が低かったり、そもそもそんな高額の買い物をする余裕などない。
消費税は逆進性があり、増税の負担は低所得者ほど重いのだが、ポイント還元制度も同じように「金持ち優遇」なのである。これでは、景気対策につながるわけがない。
要するに、安倍政権が景気対策として打ち出した制度は、いずれも金がかかるだけで、ほとんど効果が望めないものばかりなのだ。
しかも、これまで指摘してきたように、予算の全額が景気対策に使われるわけでもなく、かなりの金額が広告代店を儲けさせるだけの宣伝・広報費に投入される。
いや、広告費だけではない。ポイント還元制度では、2019年度予算2798億円のうち国民に還元されるのは1600億円程度で、残りは経産省などが経費として使う予定なのだ。この異常な予算配分に、政府内からは、首相に近い経産省が自分たちの利権拡大のためにポイント還元制度を強行したのではないかという声まで聞こえてきている。
何度でも言うが、本来、消費税率引き上げによる税収は「すべて社会保障の充実に使う」はずだった。
だからこそ、国民は生活がさらに苦しくなるのを我慢して、渋々消費増税を認めたのだ。にもかかわらず、安倍政権は、その貴重な血税を無駄遣いし、特定の省庁の利権拡大や企業を儲けさせるために使おうとしているのだ。
本当にこんなことを許していいのか。ここで怒らなければ、国民は安倍政権の奴隷かのように舐められ続けることになるだろう。
(編集部)
【出典】LITERA 2019.09.24 10:50
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【出典】LITERA 2019.09.24 10:50 |
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第4次安倍再改造内閣(C)共同通信社 |
第4次安倍再改造内閣、どうなることかと不安だったが、まずは安心した。
安倍がまともな人材を集めて組閣していたら目も当てられなかった。
次の衆院選に向けて、国民の怒りも高まり、野党共闘の流れが出てきたのに、水を差されることになってしまう。
しかし杞憂に終わったようだ。19人の閣僚のうち17人が交代、13人が初入閣にもかかわらず、なんの代わり映えもしないのは、安倍政権の腐敗の象徴が勢ぞろいしたからだろう。
加計学園事件のキーパーソンで加計学園が運営する千葉科学大客員教授の萩生田光一を文部科学相にしたり、自身のウェブサイトが数カ月にわたり閲覧できなくなっている理由について「よくわからない」と答える78歳のおじいちゃんを科学技術・IT担当相にしたり、ネトウヨ路線に活路を見いだし、いつ暴発するかわからない河野太郎を防衛大臣にしたり、完全にカオス状態。衛藤晟一、加藤勝信ら、安倍友もしっかり入閣。
雲隠れしていた甘利明は党税制調査会長にもぐりこんだ。なお安倍は「総理大臣になるには、どうしたらいいのですか?」という小学生の質問に「友達をたくさん作ること」と答えてる。
一方で「外の目も入れていかなければ客観的な評価はできません」「今回の問題でなぜ近畿財務局の職員が自ら命を絶たなきゃいけなかったんですか」と公文書改ざん等を批判した石破茂および石破派は閣僚メンバーから完全にパージされている。わかりやすすぎる。
誰もが笑ったのが小泉進次郎の環境相就任だろう。私がツイッターで〈以前、進次郎さんの発言をほぼすべて確認したのですが、批判する場所が一か所もなかった。内容がゼロだから批判しようがない。「砂糖は甘いんです。僕は昔からそう思っている」みたいなことを遠くを見つめながら言う。
政治家にはあまり向いていないと思います〉と書いたら5日間で150万件を超えるインプレッションがあった。
要するに多くの国民が呆れ果てているということだ。揚げ句の果てには内閣府政務官に今井絵理子を起用。この人、不倫以外になにかやったのか。しかも1期目。安倍は「安定と挑戦」と言っていたが、これはわれわれ日本人に対する挑戦だろう。
役者は揃った。安倍政権はこれまでの路線を踏襲し、ぶれずに衆院選に突入してほしい。
(適菜収作家)
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/09/21 06:00 更新日:2019/09/21 06:00 |
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首相官邸HPより |
「新しい時代の国づくりを力強く進めていくための布陣を整えた」──昨日、第4次安倍第2次改造内閣が発足し、記者会見で安倍首相は新内閣について「自民党は『老荘青』、人材の宝庫です」などと語った。
「人材の宝庫」って……(苦笑)。この新内閣の実態は、どう見ても「お友だちの不良品一掃内閣」「極右不正政治家集結内閣」だろう。
とにかくひどい顔ぶれだが、これを見てまず思い出したのが、最近のワイドショーの報道だ。ワイドショーは、連日、文在寅大統領側近のチョ・グク氏のスキャンダルを取り上げ、法相就任を「日本ではありえない」「異常」などと攻撃してきた。
実際、9日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)では、司会の宮根誠司がこんなことを言い放っていた。
「これ普通、日本だと“疑い”ですよ。家族でもなんでも、なにか“疑い”。怪しいことがあったら、まあ高岡さん(読売テレビ解説副委員長)、日本だったら総理大臣が任命しませんよね、法務大臣に」
「安倍総理だったら疑惑がある人を大臣なんかに任命しない」って、まったくよく言ったものだ。
『ミヤネ屋』をはじめとするワイドショーは、チョ・グク氏が玉ねぎのように皮を剥いても剥いても疑惑が噴出することから名付けられた「タマネギ男」という呼称を嬉々として連発してきたが、はっきり言って、安倍首相によるこの新内閣のほうがずっと「疑惑のある人」だらけの「タマネギ内閣」だろう。
まず、国民を舐めきっているとしか思えないのが、再入閣組だ。高市早苗氏は総務相に再任したが、高市氏は総務相だった2016年に“国は放送局に対して電波停止できる”と国会答弁し、大問題に。
また、厚労相に返り咲いた加藤勝信氏も、昨年、働き方改革一括法案の国会審議でデータ捏造が発覚した上、インチキ答弁を繰り返したばかりだ。
この高市総務相の暴言と加藤厚労相のデータ捏造とインチキ答弁は、その段階で大臣を辞任すべき問題だった。だが、安倍首相は側近である両大臣の問題をスルーして続投させ、内閣改造で首を挿げ替えただけ。
その結果、こうして問題大臣が同じポストに再び収まったのだ。信じられない人事と言うほかない。
しかも、この2人には重大な疑惑とスキャンダルもある。高市氏はやはり総務相だった2016年に計925万円の「闇ガネ」疑惑が浮上するなど、カネにまつわる疑惑が数々持ち上がってきた(詳しくは過去記事参照)。
さらに、加藤氏は、マルチ商法としてたびたび社会問題化し、昨年経営破綻したジャパンライフの“広告塔”を務めてきた人物。ジャパンライフは史上最大の消費者被害を出した安愚楽牧場に次ぐ被害規模として現在、捜査が進められているが、そんななかで“広告塔”としての責任を問うことなく大臣に再任するなど、まったくもってありえない。
だが、これはまだ序の口。安倍内閣過去最多の13名となった初入閣組も、かなりの「タマネギ」揃いだ。
そのひとりが、経産大臣に抜擢された菅原一秀氏。一昨日、本サイトでは、2016年に「週刊文春」(文藝春秋)で元愛人からモラハラ被害を告発され、菅原氏が当時27歳だったこの元愛人に「女は25歳以下がいい。
25歳以上は女じゃない」と言い放った挙げ句、「子供を産んだら女じゃない」とまで言っていたという問題について取り上げたが、菅原氏をめぐってはカネの疑惑も取り沙汰されてきた。
たとえば、2009年には、菅原氏が代表を務める政治団体が発注した高級メロンを、菅原氏の選挙区の有権者90人に贈っていたという公選法違反疑惑を朝日新聞が報道。
また、昨年12月にも、菅原氏の後援会が支援者などから会費を集めたバス旅行の収支を政治資金収支報告書に記載していなかったことが発覚。
後援会は収支報告書を訂正したというが、小渕優子経産相(当時)は後援会主催の観劇会の収支を不記載にしていたことなどが判明し辞任に追い込まれている。
しかも、菅原氏の後援会が収支を不記載にしていたのは2013〜15年、2017年と複数年にわたっており、悪質と言わざるを得ない。
さらに、菅原氏に輪をかけてひどいのが、内閣官房副長官から経済再生担当相に抜擢された“安倍首相の腰巾着”である西村康稔氏だ。
西村氏といえば、昨年の「平成最悪」となった豪雨時に例の「赤坂自民亭」に安倍首相と一緒に参加し宴会の模様を嬉々として投稿、〈笑笑 いいなあ自民党〉などと発信、その後は〈自衛隊員約21,000名が人命救助など活動中〉と拡散したが、これはデマで、2万1000人の自衛隊員は待機中にすぎなかったことが判明した件などが記憶に新しいが、忘れてはならないのが、2013年に「週刊文春」で報じられたベトナムで女性を買った疑惑だ。
記事によると、西村氏は2012年7月に出張先のベトナムでカラオケ・クラブから7人のホステスを宿泊するホテルのスイートルームに呼び入れ、その後、残った3人と行為におよび、対価としてあわせて600ドル弱を支払ったと、3人のうち2人の女性が証言。
このほかにもホテルでの目撃談をはじめ、複数の関係者がこの疑惑を裏付ける証言をおこなっている。
しかも、この疑惑を追っていた記者に対し、西村氏の私設秘書を名乗り、過去に恐喝未遂容疑で逮捕されたことのある人物が「記事を書けば恥をかくのはお前たちだ」と何度も〈恫喝めいた電話〉をかけてきたとも報じられた。
恫喝によって記事を潰そうとしたのが事実ならば、2重の意味で大臣としての資質などあるはずがない。
また、昨年7月には、米大手カジノ企業「シーザーズ・エンターテインメント」の日本進出におけるアドバイザーである人物が、西村氏をはじめとするカジノ議連所属の国会議員にパーティ券購入というかたちで資金提供していたと報道され、西村氏自身も国会で事実だと答弁。
つまり“脱法献金”を受けていたことを認めたのである。
凄まじい「タマネギ」っぷりの西村氏だが、安倍首相の側近といえば、総裁外交特別補佐を務め、今回、法務大臣に登用された河井克行氏も、元秘書の男性が2016年に傷害事件とパワハラ疑惑を「週刊文春」に証言している。
この男性は、1999年4〜7月に運転手を兼任するかたちで秘書を務めたが、「運転の仕方や言葉づかいが気にいらんと言っては、(河井氏が)『このやろう』と罵声を浴びせかけ、ハンドルを握る私の左腕めがけて後部座席から革靴のまま蹴ってきよるのです」と言い、そうした結果、全治14日間の大ケガを負ったと告発。
「週刊文春」には、当時、病院で撮影されたという写真も掲載、そこには左腕にアザがしっかりと写っている。また、河井氏に “対立候補のポスター剥がし”もやらされたとこの元秘書は証言しているのである。
しかも、河井氏の疑惑はこれだけにとどまらず、後追いした日刊ゲンダイの記事では、違う元秘書も「私も『国会議員の車の運転席の後ろが汚れてるのはなんでか知ってる?
蹴るためさ』と言われ、途端に恐ろしくなりました」とコメント。
河井氏の地元・広島の「第一タクシー」の会長までもが「うちは河井事務所から配車の要請があっても、一切お断りしています。
河井先生が乗務員の運転席を蹴るわ、人を人とも思わないような暴言を吐くからです。『もっと速く走れ!』と法定速度以上を出すよう要求され、危うくスピード違反に加担させられそうになった乗務員もいました。もうコリゴリですわ」と証言している。
元秘書への暴力や「ポスター剥がし」を命じた件などが事実であれば、河井氏が法務大臣を務めることに恐ろしささえ感じずにはいられないが、それは首相補佐官から農水大臣に抜擢された江藤拓氏も同じだ。
というのも、江藤氏は2016年、当時の森山裕農水相(現・自民党国会対策委員長)や西川公也・元農水相らとともに、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉中だった2015年に一般社団法人「日本養鶏協会」(養鶏協)の会長から現金20万円を受け取っていたことが発覚。
養鶏協は国内向けのTPP対策予算を狙い、協会幹部からは「鶏卵業界に予算をもらうなら、政治家ともっと密接になったほうがいい」という声が出ていたというが(「週刊朝日」2016年7月15日号/朝日新聞出版)、こんなふうに農水族議員という立場で違法の可能性が高い献金・寄付を受けていた人物に、果たして農水大臣が務まるのか。
まだある。国家公安委員会委員長となった武田良太氏は、付き合いのあったプラント製造会社の会長に対し「インドネシアは、日本のODA(政府の途上国援助)枠がまだ9千何百億円か残っている。それを使って、プラントを売ることができますよ」などと語り、「(現地視察に)何人か議員を連れていくから、面倒を見なくちゃいけない。
いくらか用意してくれないか」と持ちかけていたことを「週刊朝日」2009年8月14日号が報道。この会長の証言によれば、視察直前に現金300万円、さらに赤坂の寿司店でも現金100万円を渡したが、「視察もその後、どうなったのかウヤムヤのまま」。
さらには〈武田氏の政治団体の政治資金収支報告書に、これらの記載は見当たらない〉というから、この会長の証言が事実であれば政治資金規正法違反にあたる行為だ。
また、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当相に抜擢された橋本聖子氏も、今年、白血病であることを公表した水泳の池江璃花子選手について、講演会で「池江選手が素晴らしい発信をしてくれたことによって、スポーツ界全体がそんなことで悩んでいるべきではない、ガバナンス、コンプライアンスで悩んでいる場合じゃない、もっと前向きにしっかりやりなさい、ということの発信を、池江選手を使って、私たちに叱咤激励をしてくれているとさえ思いました」
(朝日新聞デジタル2月16日付)と発言。
ようするに、池江選手を利用して「ガバナンスやコンプライアンスなんてどうでもいい」と言ってのけたのである。
さらに橋本氏は、ソチオリンピックの閉会式が終わった後に選手村でおこなわれた打ち上げパーティーでフィギュアスケートの高橋大輔選に抱きつき何度も強引にキスをしたと写真付きで「週刊文春」に報じられている。都合よく選手を政治利用し、権力を利用した悪質なパワハラ・セクハラまでおこなった人物を東京五輪・パラ担当相にしてしまうとは驚愕だ。
マルチ商法の広告塔にセクハラ、パワハラ、脱法献金、闇ガネにタカリ疑惑……。
そもそも、これら初入閣の大臣たちだけではなく、経産大臣から外務大臣に横滑りした茂木敏充氏は、昨年、公選法違反の“手帖配布”問題が持ち上がっており(詳しくは過去記事参照)、もはやこの安倍新内閣は
“スキャンダル・疑惑のデパート”というべき状態なのだ。
だが、驚くべきは、このほかにも“危ない”大臣がいるということだ。
じつは、昨日、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に出演した田崎史郎氏が、「『この人いれちゃうの?』という人が3人くらい入っている」と言い、初入閣である田中和徳復興相と竹本直一科学技術担当相、北村誠吾地方創生担当相の名前を挙げたのだ。
田崎氏は「長く入れなかった人には、それなりの理由があるんです」と思わせぶりに語ったが、御用ジャーナリストの田崎氏でさえツッコまざるを得なかったということは、今後、この3人の疑惑・スキャンダルが出てくる可能性も多いに考えられるだろう。
しかし、問題はメディアの姿勢だ。ちょっと調べれば上記にあげてきたような疑惑・スキャンダルはすぐにわかるし、だいたい高市氏や加藤氏の再任や、加計学園問題のキーマンである萩生田光一氏をよりにもよって文科大臣に引き上げるという常軌を逸した人事は誰の目にもあきらか。だというのに、昨日のワイドショーはそうした問題にツッコミもせず、小泉進次郎の初入閣でお祭り騒ぎ状態に。
さらに、新閣僚の記者会見でも、これまでの疑惑やスキャンダルについて追及をおこなう質問はほとんど飛ぶことがなかった。安倍政権以前ならば、内閣改造後の新閣僚会見では記者が過去の疑惑やスキャンダルを洗い、それについて質問を浴びせることは普通におこなわれていた。
だが、そんな当たり前さえ、この国のメディアからは失われているのだ。
大臣の不正や疑惑が持ち上がっても追及もせず、「安倍総理は疑惑がある人を大臣なんかに任命しない」とまで言ってのける。こうした異常な状況があるからこそ、安倍首相は好き勝手に、問題議員たちを堂々と大臣に登用できるのだ。
メディアがこの体たらくでは、この「タマネギ内閣」の疑惑やスキャンダルが報じられることもないのだろう。
(編集部)
【出典】LITERA 2019.09.12 02:01
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【出典】LITERA 2019.09.12 02:01 |
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「損失リスク」公表を検討すると言っていたのに(C)日刊ゲンダイ |
厚労省が公表した年金の財政検証で、楽観的なケースでも30年後に給付額が2割減少することが分かり、国民の不安は募るばかりだ。さらに30日、同省は給付額確保のための積立金運用に潜む損失リスクを“隠蔽”していたことまで発覚した。
年金保険料の一部を原資とした約160兆円の積立金を運用する厚労省所管の「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」。国内外の株式などで運用しているが、昨年10~12月期に14兆円の損失を出し問題となった。
GPIFはそんな最悪の場合を想定し、損失規模を事前に試算する「ストレステスト」を実施しているのだが、会計検査院にその結果を公表するよう求められていたにもかかわらず、同省はヒタ隠ししていたのだ。30日の野党ヒアリングで明らかになった。
検査院は今年4月に公表した報告書で、〈GPIFは、収益が減少するリスクについて国民に対して丁寧に説明を行っていく必要がある〉としたうえで、〈ストレステストの結果等中長期のリスクについて業務概況書に継続して記載することが重要〉と指摘。国民の年金を基に運用しているのだから、検査院の指摘はもっともだ。ところが、GPIFが7月5日に公表した概況書には、ストレステストの結果についての記載が一切ない。厚労省は検査院の指摘を「ガン無視」したというわけだ。
ヒアリングで追及された年金局資金運用課長は緊張した様子で、非公表の理由を「(金融)市場等への影響に留意した」と説明。一方、検査院の厚生労働検査第4課長は、厚労省の対応に不満があるのか「引き続き、GPIFと厚労省の対応状況を確認していく」と厳しい表情で話した。
「4月に国会で追及された根本厚労相は『ストレステストの結果を含め、概況書への記載を検討する』などと答弁していました。しかし、概況書公表は参院選公示の翌日で『2000万円不足』問題も連日報道されていた。GPIFのマイナスリスクを公表すれば、さらなる“年金不信”を招き、安倍自民に大打撃です。“忖度”した厚労省は結局、検査院の指摘を無視してでも、公表を避けたかったのでしょう」(永田町関係者)
同省は通常6月の財政検証公表も、今回は参院選後に先送りし、批判を受けている。そのうえ、GPIFの運用リスクまで“隠蔽”するとは。
「これまで、四半期単位で数兆~十数兆円の損失が出てきている。ストレステストの結果は、少なくとも10兆円規模のマイナスでもおかしくない」(厚労省担当記者)
経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。
「厚労省は昨年、14兆円もの損失を出したことをキチンと総括したようには見えません。身内である検査院の指摘まで無視したわけですから、国民の保険料を預かっているという意識が希薄なのでしょう。政権に忖度して情報を隠しているのなら、許されることではありません」
そもそも、国民の年金を“株ギャンブル”につぎ込んだこと自体が大きな過ちである。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/08/31 15:00 更新日:2019/08/31 15:00
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/08/03 17:00 更新日:2019/08/03 17:00 |
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「自分ファースト」(C)ロイター |
〈9月1日から、残りの3000億ドル(約32兆円)相当に10%の追加関税を課す〉
6月末に行われた、米国・トランプ大統領と中国・習近平国家主席との首脳会談以降、一時休戦状態となっていた米中貿易戦争が再び、ガチンコバトルに突入だ。トランプがおととい(1日)のツイッターで、中国からの輸入品ほぼすべてに制裁関税を拡大する「第4弾」を発動すると明らかにしたのだ。
米通商代表部(USTR)は5月に現在制裁対象から外れている3000億ドル分の中国製品3805品目に最大25%の関税を上乗せする案を発表しているが、今回の「第4弾」が発動されると、対中制裁の対象は実に計5500億ドルに達し、中国からの年間輸入実績に匹敵することになる。
トランプはまた、記者団に対し、貿易協議が決着するまで中国製品に関税をかけ続けるとし、税率25%超の引き上げも示唆。これに対し、中国もレアアース(希土類)の対米輸出規制を検討するなど、米中貿易戦争はさらなる長期化が避けられない見通しとなった。
これを受け、きのうの東京株式市場は、自動車など輸出関連銘柄を中心に全面安の展開となり、日経平均株価の終値は前日比453円83銭安の2万1087円16銭となり、外国為替市場では円高も進行した。
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「アベクロ」コンビで奈落の底に(C)日刊ゲンダイ |
「自分ファースト」のトランプにとって米中貿易戦争がもたらす世界経済の行方など、どうでもいい。最大の関心は来年の大統領選で、選挙に勝つまで対中強硬姿勢を徹底的に貫くつもりだ。
仮に米中貿易戦争で米国経済がダメージを受けたとしても、金融緩和でしのげばいいと気楽に考えているのだろう。
そんなトランプに尻を叩かれた米連邦準備制度理事会(FRB)は、低失業率で過去最高値圏の株価を維持しているにもかかわらず、リーマン・ショック後の2008年12月以来、10年7カ月ぶりとなる政策金利の利下げを決定。
「トランプ・チャイルド」と揶揄されるパウエル議長は金融緩和の長期化を否定したものの年内に追加緩和を行う公算が高い。主要な中央銀行では欧州中央銀行(ECB)も9月に利下げを実施する方向で、今後、米欧に引っ張られる形で世界各国で利下げに踏み切る国が相次ぎ、金融緩和が激しさを増すことになる。
この影響をモロに受けるのが日本だろう。世界の中銀がそろって利下げに動けば、円高圧力は避けられない。当然、輸出企業の収益を圧迫するため、外需頼みだった日本経済は大打撃だ。日本も他国に追随して金融緩和すればいいが、そう簡単ではない。すでに黒田日銀はこの6年半、安倍政権のハリボテ経済政策「アベノミクス」を支えるため、「異次元緩和」と称して「利下げ」と「国債の買い入れ」を積極的に進めてきたからだ。
黒田日銀は7月末の金融政策決定会合で「ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置」との声明文を公表したが、すでに“禁じ手”と言われる「マイナス金利政策」まで導入している状況で、これ以上、どんな緩和策を打つ余地があるのか。誰が見ても「打つ手なし」というのが実態だろう。
経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「トランプの対中関税発言は、FRBに次の利下げを暗に迫ったとみていい。おそらくFRBは9月に欧州と足並みをそろえて再利下げする可能性が高い。日銀も円高を避けるために対抗するでしょうが、国内の金融機関はこれまでの緩和策で収益が大幅に悪化するなど、すでに副作用が出ている。追加緩和すれば副作用が酷くなるだけ。金融業界も国民生活もメチャクチャになります」
世界経済の減速、金融緩和競争による円高進行、日米貿易協議での農産品の関税引き下げ圧力……。タダでさえ日本経済を取り巻く環境が厳しさを増す中、安倍政権が景気悪化に追い打ちを掛けるように強行するのが「狂気の愚策」とも言うべき、消費増税10%だ。
大体、すでに現時点で消費増税を行う環境にないのは明らかだ。2020年の東京五輪の会場建設やインフラ整備に伴う特需の限界が叫ばれ始め、黒田日銀の金融緩和が招いた不動産投機マネーによるバブル景気崩壊の懸念も指摘されている。
慢性的な人手不足は解消されず、実質賃金(5月)は前年同月を5カ月連続で下回るなど、経済にとって何ひとつ明るい材料がない。このまま消費増税を強行すれば庶民生活、経済は徹底的に破壊されてしまうだろう。
それでも何が何でも消費増税したい安倍政権は7月末の臨時閣議で、増税に伴う景気対策を別枠で扱うことを決定。すでに本年度予算で盛り込んだ2兆円規模の対策費に加え、年末に向けた予算編成でも新たな具体額を検討するという。
しかし、わざわざ数兆円規模の対策予算を組むのであれば、一体、何のための消費増税なのか。しかも「対策」とは言うものの、どれもケチな内容の絵に描いた餅。消費増税まで2カ月に迫る中、まるで普及していない。立正大客員教授の浦野広明氏(税法学)がこう言う。
「消費者にとっては8%だろうが、10%だろうが、消費税を含めて価格提示された通りに支払うだけですから、増税対策は何ら関係ありません。必然性が乏しい政策ですから、周知されず、普及しないのも当然です。『対策』と言えば、何か国民のために取り組んでいるかのように聞こえますが、投じられる税金はまったくのムダ遣いとしか思えません」
とりわけムダの極みが「軽減税率」と「キャッシュレス決済のポイント還元制度」に向けた対策だろう。軽減税率は飲食料品の購入や持ち帰り品が対象だが、店内で飲食した場合や酒類は対象外。8%と10%の両商品を取り扱う店や中小企業は、軽減税率に対応したシステムの導入、改修が必要とされる。
政府はシステム改修費などで原則4分の3を補助する支援策を用意しているが、6月末までの申請件数は約11・1万件と利用予想の3分の1超。ポイント還元は10月~来年6月末まで、クレジットカードなど現金以外で買い物をした場合に購入額の2~5%分をポイントで還元する仕組みだが、経産省によると、制度に参加した申込店舗は現時点で約24万店と参加可能な店舗の約1割にとどまる。
〈そもそも一体改革を進めるための消費増税のはずが、増税とセットで出てくるのは景気対策しかない。本当に景気が刺激されればまだいいが、キャッシュレス決済によるポイント還元策では難しい。お客さまの買う場所が変わるだけで、買い物が増えるとも思えない。将来への不安は変わらないから、還元分は貯金に回るだろう〉
〈(ポイント還元の)効果は一切ない。むしろ、これまで経験したことのないようなポイント合戦や価格競争につながるだろう〉
日本食糧新聞の特別インタビュー(7月27日付)で、日本スーパーマーケット協会会長の川野幸夫ヤオコー会長は消費増税に伴う政府対策をこう切り捨てていたが、これがまっとうな経営者の見方だ。
川野会長はまた、〈政治に対する発言力について、今回ほど無力感を覚えたことはない。私たちの声はあまりにも取り上げられず、検討されることもない〉と憤っていたが、庶民も同じ。このまま安倍暴政を黙って眺めていたらなぶり殺し状態になるのは間違いない。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「黒田日銀の6年半でハッキリしたのは、金融政策で経済をコントロールするのは不可能だということ。むしろ、その金融政策によって日本経済を悪化させてしまった。その上、消費増税など、とんでもない。経済の底が抜けてしまいます」
一刻も早く退陣させないと国民生活はズタズタにされてしまう。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/08/03 17:00 更新日:2019/08/03 17:00
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/08/03 17:00 更新日:2019/08/03 17:00 |
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年金制度を維持するために、どんな社会が待ち受けているのか |
金融庁が6月にまとめた報告書で、年金だけでは老後資金が2000万円不足すると指摘されたことで、年金制度への不安が高まっている。今後の年金制度はどうなっていくのか。経済アナリストの森永卓郎氏は、政府・厚生労働省が目論む年金制度の将来と、高齢者の生活がどうなるかについて、次のように展望する。
* * *
政府はすでに、このままでは年金制度が立ちいかなくなることがわかっていたため、「一億総活躍社会」という謳い文句のもと、「みんな70歳まで働け!」という方針を押し進めている。
たとえば、2014年に行なわれた公的年金の将来見通しを試算した厚生労働省の財政検証では、高齢者の労働市場への参加が進むケースとして、2030年の65~69歳男性の労働力率を67%と想定し、そうなれば現行水準並みの年金給付が維持できると結論づけた。
この試算が意味するのは、3分の2の男性が70歳まで働き続け、年金保険料を払い続けることが、年金制度の崩壊を免れるための絶対条件ということである。逆にいえば、それが実現できなければ、所得代替率(厚生年金収入の現役世代の手取り収入に対する割合)50%以上の年金給付は維持できなくなるということだ。
2019年は5年に1度の財政検証の年だ。その新しい財政検証の結果はすでに出ているが、参議院選挙を考慮してか、今はまだその内容が隠されている。参院選後に公表を延ばしたこと自体、国民にとって相当厳しい内容であることは想像に難くない。
おそらく、65~69歳男性の労働力率は70.1%、65~69歳女性の労働力率も53%台に設定され、それなら所得代替率50%以上を維持できる。すなわち、「みんな死ぬまで働け!」という結論になるのは間違いないだろうろう。
これらが象徴するように、政府は今、年金制度維持のために給付期間を短縮することで帳尻を合わせようと躍起になっている。
現在の年金支給開始年齢は原則65歳だが、受給開始を60歳から70歳の間で自由に選べる制度となっている。それを75歳まで繰り延べて選択可能にするというのが、政府の次の一手だ。
そして、年金受給を繰り下げれば割増しとなって受給額が増えると謳って、事実上70歳代から受給を開始する人を増やしていく。そのうえで、「みんながそうしているのだから」という機運を高めて、最終的に支給開始年齢自体を原則70歳に繰り延べすることを狙っている。
現在、65歳時点の男性の平均余命は17年だ。支給開始を原則70歳にすれば、男性の平均受給期間は17年から12年に減り、3割カットできることになる。それなら年金制度はギリギリ崩壊せずに済むというのが政府の思惑なのだ。
しかし、このまま政府の目論見通りになったら、国民の老後はどうなるのか。男性の健康寿命は72歳である。70歳まで働いてようやく年金をもらえるようになり、これから悠々自適の老後が送れると思っても、わずか2年後には介護施設などに入所しなければならなくなる人が大半となる。そんな老後で本当に幸せだろうか。
【出典】7/18(木) 7:00配信 マネーポストWEB
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【出典】LITERA 2019.07.15 12:22 |
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首相官邸HPより |
首相がこの選挙戦で誇示しているデータや数字がいかにデタラメなものであるかをお伝えしてきたが
前編 https://lite-ra.com/2019/07/post-4832.html
後編 https://lite-ra.com/2019/07/post-4833.html
安倍首相の街頭演説のなかでも、とくに度肝を抜かれたのは、この嘘だ。
「この選挙、年金問題も大きな議論であります。野党は財源の裏打ちのある具体的な議論をせずに、不安ばっかり煽っている。残念です」
いやいや、参院決算委員会や党首討論でも、野党は財源案も出して年金の見直しについて安倍首相に提案をさんざんおこなってきた。そもそも、年金2000万円問題のきっかけは金融庁の報告書案であって、それを「受け取らない」などとないことのような態度に出て国民の不安を煽りに煽ったのは安倍政権だ。
そのトップが、党首討論や国会で野党に対案を突きつけられたことも完全無視して「具体的な議論なし」「残念です」と国民に平然と嘘をつくとは──。
この嘘ひとつだけでも、到底信用ならないことがよくわかるかと思うが、いまこそ強調したいのは、この安倍首相が無視している野党の「対案」こそ、今回の選挙の最大の争点と言えるものだということだ。
それは、安倍首相が率先してきた大企業・富裕層の優遇をやめる、という税の見直しだ。
まずひとつ目は、金融所得課税だ。所得税は年収が高くなるほど税率も上がる累進税率になっているが、株式の配当や売却益といった金融所得は累進課税を免れており、住民税を含めると所得税が最高55%の税率であるのに対し、金融所得は一律20%でしかない。しかも、高所得者ほど金融所得の割合が多いため、所得税の負担率は年収1億円を超えると右肩下がりになっている。
たとえば、2020年から年収850万円超の会社員は所得税が増税されるが、それによって見込まれる増収は約900億円。対して、金融所得課税を現在の20%から25%に引き上げた場合は、増収は財務省の試算でも2500億円で、数千億~1兆円の増収になるとの試算もある(中日新聞2007年12月12日付)。
低所得者であるほど負担が重くなる逆進性の高い消費税を増税するならば、この不公平極まりない優遇を真っ先に見直すべきだが、しかし、安倍首相は金融所得への課税の増税を見送った。
そして、もうひとつは法人税。第二次安倍政権の発足以降、アベノミクスの成長戦略として法人税率はどんどん引き下げられ、法人実効税率は37%から2018年度には29.74%にまで減少している。
しかも、実質的に企業が負担する法人税率も、2016年度のデータでは資本金1億円以下の小規模企業の負担率は18.1%である一方、資本金100億円超の大企業は12.4%で、連結納税法人はわずか5.2%。資本金10億円超の企業と連結納税法人を合わせた大企業全体だと10.4%になったという(しんぶん赤旗2018年4月20日付)。
なぜこのように大企業の法人税負担率が低くなっているかといえば、大企業のために莫大な数の租税特別措置が設けられているからだ。こうした法人税減税の一方で、大企業の内部留保は6年連続で過去最高を更新し続け昨年は446兆円を記録している。
富裕層や大企業を優遇し、その分を消費税によって庶民に肩代わりさせる──。これが、安倍首相がやってきたことなのだ。
にもかかわらず、安倍首相は日本記者クラブでの党首討論会で、こんなことを言い出した。
「安倍政権においてですね、消費税率をこれ以上引き上げることは、まったく考えておりません」
こう言われると「これ以上は上げないと言っているし、10%への引き上げも仕方がないか」と思う人もいるだろう。だが、騙されてはいけない。
そもそも安倍首相は総裁任期を延長しつづけており、一体いつまでのさばるつもりなのか未知数な上、法人税率の引き下げなどで安倍首相が言いなりになってきた経団連は、昨年4月に政府への提言として公表した「わが国財政の健全化に向けた基本的考え方」のなかで〈税率10%超への消費増税〉を提唱。
ちなみに、2015年の提言「『豊かで活力ある日本』の再生」では、経団連は消費税率10%台後半への引き上げを政府に求めている。
賃金は上がらず、消費増税で生活はさらに苦しくなり、その上、老後は自助でどうにかしろと迫るのに、大企業や富裕層を優遇しつづける安倍政権。──そんななか、これに「NO!」を叩きつけているのが野党だ。
安倍政権と対峙する野党は、こうした優遇税制と庶民への痛みの押し付けを批判し、今回の参院選で税制の見直しを打ち出している。
たとえば、立憲民主党は、選挙公約で〈消費税率10%への引き上げは凍結〉〈金融所得課税や法人税などを見直し、税の累進制を強化して公平な税制へ転換〉と明記。
共産党は消費増税の中止はもちろん、さらに具体的な財源提案をおこなっており、「大企業優遇税制の見直し」で4兆円、「法人税率引き下げをやめ、中小企業を除いて安倍政権以前の水準に戻す」ことで2.5兆円、「富裕層への証券課税の強化」で1.2兆円、「富裕層の各種控除の見直しなど」で1.9兆円など、合計で17.5兆円の当面の財源確保案を提示し、同時に「マクロ経済スライド」の中止も訴えている。
また、山本太郎氏が立ち上げた「れいわ新選組」は消費税廃止を訴え、法人税に累進性を導入することを公約に謳っている。
しかし、こうした野党の提案を安倍首相は無視。6月10日の参院決算員会では、マクロ経済スライドと富裕層・大企業優遇税制の見直しを迫った共産党・小池晃議員に対し、安倍首相はこう言って一蹴した。
「まったく馬鹿げた政策なんだろうと、こう言わざるを得ない。間違った政策だと思いますよ、それは」
ようするに、安倍首相は「野党は財源の裏打ちのある具体的な議論をせずに、不安ばっかり煽っている」と言うが、実際には「議論をせずに不安を煽っている」のは、安倍首相のほうなのである。
そして、馬鹿げているのは、現実には国民の多くを苦しい生活に追い込んでいる政策をあらためるでもなくありもしない成果を謳い、「年金は増やせる」などと無責任に言い放っている安倍首相のほうなのではないか。
だからこそ、繰り返したい。今回の選挙の争点は「憲法改正」などではなく「わたしたちの生活」であり、消費税の増税中止・廃止、大企業・富裕層の優遇税制を見直すと公約で掲げる野党か、それともそれを「馬鹿げた案」だと言い、経済悪化のなかで消費増税を決行しようとしている与党か、どちらを選ぶかという選挙なのだ。
(編集部)
【出典】LITERA 2019.07.15 12:22
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【出典】LITERA 2019.07.15 12:22 |
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安倍首相は「政策次第で年金を増やすことは十分可能だ」と言うが… |
通常国会閉会後の記者会見で安倍晋三・首相はこう言い放った。
「政策次第で年金を増やすことは十分可能だ」──。松下幸之助氏が聞いたら「やってみなはれ」と言うだろう。サントリーの鳥井信治郎氏ならこう返すかも知れない。「やらなわからしまへんで」と。
だが、国民にはもうわかっている。年金2000万円不足を隠す言い逃れに過ぎないことを。
政治家はカネが足りなくなると「改革」を唱え始める。安倍首相は何歳になっても働ける「エイジフリー社会」、「過労死ゼロの働き方改革」と耳当たりの良いスローガンを並べてきたが、真に受けると大変な目に遭う。
待ち受けているのは増税、年金減額、保険料アップと国民の老後資産が奪い取られる未来だからだ。
目前に迫ってきたのが10月の消費増税だ。政府は「ポイント5%還元制度」や「軽減税率」で国民の目を誤魔化そうとしているが、よく見ると増税されないはずの食料品の値上げが相次いでいる。この4月から6月にかけて大容量のペットボトル飲料が一斉に20円値上げされ、食品では6月出荷分からカップ麺、ポテトチップス、アイスなどの値上げが続いている。
次は年金改革。政府は「70歳までの雇用延長方針」を打ち出しているが、次に間違いなく来るのは「75歳定年制」導入だ。そうなると高齢者は、黙っていると死ぬまで年金をもらえなくなる。
そして定年や年金受給を控えた現役世代には、働き方改革で来年から大幅な賃下げ時代がやってくる。残業規制などによる手取り収入の大幅ダウンで、住宅ローン返済に行き詰まる人も出てくるだろう。
さらには、子供や孫の世代にまで、「就職氷河期世代」対策や「大学無償化」など、“バラ色の約束手形”がバラ撒かれようとしている。だからこそ、国民はスローガンの裏にある意図を見抜いて自分の資産を守らなければならない。
【出典】週刊ポスト 2019年7月12日号
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世間をにぎわせている金融庁の“2000万円報告書”。多くの人が、その内容の厳しさに愕然となったが、じつはこれよりも“ヤバい”文書が隠されているのだ――。
「新しい『財政検証』をなぜ速やかに出さないのか。出てこない限りは、年金制度の安心が保たれているかどうか、判断できません」
金融庁の報告書に端を発した“老後資金2000万円問題”。6月19日に行われた党首討論では、野党党首が年金問題について、安倍晋三首相を厳しく追及した。
冒頭の言葉は、国民民主党の玉木雄一郎代表が、安倍首相に投げかけたものだ。“年金博士”として知られる、社会保険労務士の北村庄吾さんが、解説する。
「『財政検証』とは、厚生労働省が作成する年金財政の“健康診断”のようなものです。年金制度が持続できるように、5年に1度、検証し、発表することが法律で定められています。財政検証の結果に従い、将来の年金の支給計画が立てられたり、法改正が行われたりする。まさに、年金制度にとって、もっとも重要な文書なのです」
話題の“2000万円報告書”は金融庁の作成。年金だけでは不足する老後資金をどう補うべきか、金融を所有する省庁の立場から“ご提案”したものにすぎない。
一方、財政検証は、年金を所管する厚生労働省が作成する調査報告書と計画書を兼ねたようなもの。まさに、年金制度の今後を占う要といってもいい。
ところが、その公表が遅れているという。過去2回の財政検証は、内容を議論する専門委員会の最終会合から3カ月ほどで公表された。今年は3月7日に最終会合が行われたので、6月中旬までには公表されると見込まれていた。だが、いまだ公表の予定はない。
財政検証を担当する厚労省年金局数理課は、「検証中で、まだ発表時期ではないとしか申し上げられない」と繰り返すのみで、作業の進捗状況すら答えなかった。
政治ジャーナリストの角谷浩一さんは、こう分析する。
「永田町では『老後2000万円問題で紛糾するなか、よほど悪い検証結果なので、夏の参院選が終わるまで出さないのではないか』といわれています。厚労省が安倍内閣に“忖度”している、あるいは官邸から公表しないように指示された、そんなふうに見られているのです」
今年3月に公表された「2019年財政検証の基本的枠組み」では、厚生年金の適用拡大や、受給開始年齢の選択化も「財政検証」に盛り込むことが予告されている。
「政府は、将来的に受給開始年齢を引き上げていく方針です。
過去の改正を鑑みると、現在50歳以下の女性は、受給開始が68歳に引き上げられることが予想されます。いずれは65歳定年が法制化され、受給開始は70歳にされるでしょう」(北村さん)
われわれの将来を占ううえで、欠かせない「年金財政検証」。角谷さんは語気を強めた。
「参院選の前であろうと、後であろうと、財政や数字は変わりません。大事なのは、早急に公表し、この年金不安に対して、どのような対策で取り組んでいくかを議論して、選挙で信を問うことです」
経済評論家の加谷珪一さんはこんな懸念をする。
「“2000万円報告書”が批判を浴びたのを受けて、財政検証の内容が書き換えられてしまうのではないか。これまでの例を踏襲しなかったり、悲観的な試算を隠したりと、不正確な財政検証が出たら、将来的に被害を受けるのは、われわれ国民なのです」
目の前の選挙や政局のために、われわれの未来がないがしろにされてはならない。
【出典】6/27(木) 11:03配信 女性自身
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【出典】6/27(木) 11:03配信 女性自身 |
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見直し案は山ほどある、投票で示すしかない(C)日刊ゲンダイ |
年金がアテにならないとする金融庁の報告書がなかったことにされ、年金の将来見通しを示す財政検証の公表は参院選後に先送り。国民は、年金制度がかなりヤバいことになっていると気づき始めている。今こそ、与野党超えて、制度の抜本的見直しが必要だ。ところが安倍首相は、批判や対案に全く聞く耳を持とうとしない。
安倍首相は22日朝の日本テレビ系「ウェークアップ!ぷらす」に生出演した。
辛坊治郎キャスターから「今の年金制度はもう相当に時代遅れだ。根本的に見直す必要があるのではないのか」と突っ込まれると安倍首相はこう言ってのけた。
「では(他に)どういう制度があるのかということですが、それを示した人はいません」
オイオイ、ちょっと待った。急速な少子高齢化が進む中、これまで、年金制度の見直し案は散々語られてきたじゃないか。
例えば、19日の党首討論で立憲民主党・枝野幸男代表は〈総合合算制度〉の早期導入を訴えた。
「家計単位で、医療、介護、保育、障害にかかるトータルの金額に上限をかける。低年金者でもその範囲で一定の医療や介護を受けられる安心をつくる」と具体的な提案を示した。
給付水準を目減りさせる〈マクロ経済スライドの廃止〉を訴えた共産党・志位和夫委員長は、年金保険料の上限額について、年収1000万円から健康保険並みの2000万円まで引き上げ、かつ高額所得者の給付を抑制すれば、廃止の財源1兆円が捻出できるとした。しかし、番組で安倍首相は枝野提案を「意味がない」、志位提案を「乱暴な議論だ」と一蹴した。
さらに、民主党政権時代に実現しかけた〈最低保障年金〉も再考すべき制度だ。収入がなく、保険料未払いの人でも最低でも月7万円の年金を受け取れ、上乗せ分は所得比例にする2階建て方式だ。
政府が国民全員に無条件で生活に必要最低限の現金を支給する〈ベーシックインカム〉は、人工知能(AI)の普及で人間の仕事が減る場合に有効だとして、議論が盛んになっている。
抜本的見直しとして、現役世代が受給世代を支える賦課方式から、〈積み立て方式への移行〉はあまたの専門家が指摘してきた。
長年、積み重ねてきた年金をめぐる真面目な議論がなかったかのように「示した人はいません」とはよくも言えたものだ。立正大客員教授の浦野広明氏(税法)が言う。
「安倍政権が野党やメディアの批判や対案に聞く耳を持たない姿勢なのはいつものこと。年金制度についても同じ調子で対応しているのでしょう。しかし、現役世代が減少する中、年金は党派を超えて取り組むテーマです。情報を開示して、非を認めるところは認めて、早く根本的な手を打たないとどんどん傷口が広がっていきます。番組での対応を見ると、安倍首相は深刻さを認識しているようには見えません。野党は年金を争点化し、国民が参院選で民意を示すしかありません」
参院選は〈年金選挙〉で決まりだ。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/06/24 15:00 更新日:2019/06/24 15:43
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なかったことにはできない
(「報告書受け取らない」と会見する麻生金融相)/(C)共同通信社 |
公的年金だけでは老後資金が2000万円不足するとした金融庁の報告書。連日、ワイドショーでも取り上げられ、老若男女誰もが“老後”を考えるきっかけになった。ぼんやりしていた年金への不安がクッキリ明確になったわけだが、不足しそうな人がどれくらいいて、どんな行動に向かうのだろうか。
プルデンシャルジブラルタファイナンシャル生命保険(PGF生命)の調査結果が興味深い。今年60歳となる男女2000人を対象に4月に実施された。
貯蓄額の平均は昨年の2725万円から2956万円と231万円増えた。金融庁が示した2000万円を大幅に超えている。金融庁に警告されるまでもなく、着実に老後の備えが厚くなっているように見えるが、内実は散々だ。
貯蓄1億円以上が8.1%と2ポイント近く増えたことが平均額を引き上げただけなのだ。逆に、100万円未満が4ポイントも増え、24.7%と4人に1人となった。「貯蓄の格差が広がっているように見えます」(PGF生命広報チームの担当者)
一部の富める人に高額の貯蓄が集中し、圧倒的多数は厳しい状況なのだ。老後資金が不足するとされる貯蓄2000万円未満はナント、全体の3分の2を超える。この人たちは金融庁の報告書をどう受け止めるのか。
「不足するということで、金融庁は投資を勧めたわけですが、将来不安を抱く人が、儲かるかもわからない投資になけなしのおカネを投じるとは思えません。むしろ、これまで以上にギリギリまで節約を徹底し、少しでも貯蓄しようと考えるはずです。この先、国民の消費マインドは冷え込み、消費大不況が訪れるかもしれません。〈老後2000万円不足〉の件は今や子どもでも知っています。影響は計り知れません」(金融ジャーナリスト・小林佳樹氏)
おこづかいをねだる子どもに、“老後資金”を盾に渋る親の姿が目に浮かぶ。“消せない報告書”が景気をどん底に落とすことになるのか。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/06/18 15:00 更新日:2019/06/18 20:29
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ついに「年金返せ・払えデモ」はじまる(C)日刊ゲンダイ |
デタラメな「年金政策」を推し進める安倍政権への怒りが拡大している。ついに、16日、政府の年金政策に抗議する「年金返せ・払えデモ」が、東京の銀座で始まった。
デモにはSNSの呼びかけに応じた数千人が参加。「年金返せ」「生活できる年金払え」などと声をあげて街を歩いた。若者の参加が多く、デモの先導も若者だった。
デモに共感したのか、沿道では手を振って応援する人が目立った。この先、「年金返せ・払えデモ」は、全国に広がっていく可能性がある。
今ごろ、安倍官邸は、真っ青になっているに違いない。完全に対応を間違えた形だ。<年金だけでは不十分><2000万円貯蓄しろ>という金融庁の報告書もヒドイが、麻生財務相が「報告書は受け取らない」と受け取りを拒否したため、どんどん話が大きくなった。慌てて“火消し”に走ったのだろうが、裏目に出た格好だ。
しかも、自民党の二階幹事長が「我々選挙を控えておるわけですから」と、ホンネを漏らすなど、7月の参院選に響かないように“隠蔽”しようとしていることがミエミエだった。
「国民が怒りを強めたのは、『安倍政権は年金問題に本気で向き合っていない』と感じたからでしょう。なにしろ、麻生大臣は『金融庁の報告書は読んでいない』と堂々と答弁し、自分が年金を受け取っているかも知らないと答えている。庶民の年金に関心がないのは明らかです。これでは、ただでさえ“年金不信”の強い若者がデモを行うのも当たり前です」(政治評論家・本澤二郎氏)
安倍官邸は、参院選までには国民の関心を「年金」から「安倍外交」に移すつもりだ。しかし、年金が消えるかどうか。もし、参院選の争点が年金となったら自民党は惨敗する可能性がある。小泉政権も、第1次安倍政権も、年金が争点となった参院選で敗北している。
「いま、安倍シンパのメディアは『年金は政争の具にすべきではない』『与党も野党もない』などと必死になって選挙の争点から外そうとしています。参院選の行方は、有権者が安倍シンパの宣伝にだまされるかどうかでしょう。もし、だまされなかったら、12年前のように自民党は大敗し、あの時のように安倍首相は退陣に追い込まれる可能性がある。実際、あの時のムードに近づいています」(本澤二郎氏)
デモが大きくなれば、参院選も大きく動くことになるのではないか。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/06/17 14:50 更新日:2019/06/17 14:50
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15年間過酷な労働、お先真っ暗(未来投資会議で発言する安倍首相)
(C)共同通信社 |
安倍首相が議長を務める「未来投資会議」は先週、70歳までの雇用確保を企業に求める方針をブチ上げた。改正案を来年の通常国会に提出する。
70歳雇用なら「年金支給開始」75歳が現実味を帯びる。定年後の継続雇用で給料が激減し、年金ももらえない“貧困老人”が激増しそうだ。
企業は現在、定年後に希望する労働者に対して65歳まで雇用を継続する義務を負っている。未来投資会議は、これを70歳に引き上げるというのだ。
「今回は、70歳までの就労確保を努力義務にとどめましたが、近い将来の義務化は既定路線です。政府が70歳まで働ける法整備を急ぐ狙いは、年金支給を遅らせたいから。最低でも支給開始を75歳に引き上げたいと考えています」(財務省担当記者)
だが、定年後の継続雇用の実態はキツイものだ。明治安田生活福祉研究所が昨年、60代前半の継続雇用の男性に対して実施した調査によると、定年直前と比べ、労働時間が「変わらない」は5割を超えているが、年収が半分未満に減少している人は4割もいる。年収が下がった3人に2人は、「モチベーション」も下がっている。
今はこのような不満だらけの環境でも、何とか65歳まで頑張れば、年金にありつける。ところが、この先、60歳定年制度が変わらず、年金支給開始年齢が75歳になれば、60歳から15年間も継続雇用に耐えなければならなくなる。
社会保障に詳しい立正大客員教授の浦野広明氏(税法)が言う。
「モチベーションが下がっても、生きていくために働くというのは、過酷な労働環境です。若い人ならともかく、高齢者が10年以上も耐えられるのでしょうか。ほとんど、生殺しです。しかし、国が面倒を見てくれない以上、働けるうちは働こうと無理をすることになる。その結果、心や体を壊すという悪循環が目に見えています。“姥捨て制度”と言っても過言ではありません」
総務省の労働力調査(2018年)によると、65歳以上の高齢者で働いている人は862万人。前年の807万人から55万人も増えた。
一方、生活は楽ではない。内閣府の高齢社会白書によると、高齢者世帯の平均所得(15年)は308・1万円で、全世帯から高齢者世帯と母子世帯を除いたその他世帯(644.7万円)の半分以下だ。
「未来投資会議」が描く“未来”は、姥捨て列島じゃないか。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/05/20 15:00 更新日:2019/05/20 15:00
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首相官邸ホームページより |
ついに、アベノミクスの化けの皮が剥がれてしまった。昨日、内閣府が3月分の景気動向指数の基調判断を発表したが、景気の現状を示す一致指数が前月比で0.9ポイント低い99.6となり、基調判断を1・2月の「下方への局面変化」から景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に引き下げたのだ。「悪化」は、5段階ある判断のうちもっとも悪いもので、じつに6年2カ月ぶりとなる。
一方、10日に厚労省が公表した3月の「毎月勤労統計」調査の速報でも、物価の影響を考慮した実質賃金は前年同月比でなんとマイナス2.5%と大幅に下落した。しかも、3カ月連続の減少だ。
これは統計不正問題であきらかになったことだが、これまでの実質賃金の賃金伸び率はまやかしだった。
中江元哉首相秘書官(当時)の圧力によって、2018年1月から、「毎月勤労統計」の調査手法を変更。それにともない産業構造や労働者数などの変化を統計に反映させるための「ベンチマーク更新」でさかのぼり補正をおこなわなかったり、常用雇用者から日雇い労働者を除いたりと、あの手この手で賃金伸び率を引き上げていたのだ。
しかし、統計不正の発覚で、今年1月からは数字を上ぶれさせていた不正調査の数値補正やベンチマーク更新がおこなわれなくなったため、「毎月勤労統計」の1月および2月確報値の名目賃金や実質賃金も前年同月比で一転、マイナスになった。
だが、3月の実質賃金マイナス2.5%という速報値は、1月のマイナス0.7%、2月のマイナス1.0%(ともに確報値)を大幅に上回るもの。これはどう弁解しても、国民生活が悪化しているという証明だろう。
しかも、恐ろしいのはこの先だ。アメリカが中国に対する追加関税引き上げに踏み切ったが、米中貿易摩擦の激化と中国経済の減速は今後さらに深刻さを増していくだろう。今回の、3月分景気動向指数の「悪化」とする判断でも「中国経済の減速」が要因として挙げられたが、日本経済に及ぼす影響はこれから本格化するはずだ。
にもかかわらず、安倍首相は10月から消費税を増税するというのだから、正気の沙汰ではない。
だいたい、これまで安倍首相が「アベノミクスで経済が上向き」などと言っていられたのは、アベノミクスの成果などではなく、たんに世界経済の好調に救われてきただけだ。
たとえば、安倍政権の前内閣参与で消費税の10%への引き上げに反対してきた藤井聡・京都大学大学院教授の著書『「10%消費税」が日本経済を破壊する』(晶文社)によれば、GDPは2014年の消費増税前から2018年4-6月期までの間に約18兆円(実質値)伸びているが、この間に輸出は約15兆円も増加。ようするに、輸出の増加がなければ〈一年あたり約0.7〜0.8兆円、成長率にして実に年率平均約0.2%しか伸びなかった〉のである。
また、この4年で、輸出に次いで伸びたのは「民間投資」だが、これも輸出が伸びた結果であると考えられるという。藤井氏はこう述べている。
〈つまり、世界経済の好況という「他力」がなければ、日本経済はやはり、消費増税によって「衰退」していたのである〉
〈万一、消費増税によって内需がこれだけ弱々しい状況に至っている中で世界的な経済危機が勃発すれば、衰弱した日本経済は恐るべきダメージを被るであろう〉
その上、2014年の消費増税時は「外需の伸び」という幸運があったが、これは「アメリカ経済の好況」と「安い原油価格」があってのこと。ご存じのとおり、トランプ大統領は先日、安倍首相に日本の農産物関税の撤廃を要求したほか、自動車の追加関税をちらつかせており、原油価格も上昇。つまり、〈2019年増税の外需環境は、2014年増税よりも、より深刻な被害をもたらした1997年増税時のそれに類似している〉のである。
藤井氏は世界各国の経済成長率(1995〜2015年)に目を向け、〈日本の20年間成長率は断トツの最下位〉〈日本の成長率だけが「マイナス」の水準〉であるとし、〈日本はもはや、「経済大国」でないばかりか、「先進国」ですらない〉〈先進国でも発展途上国でもない、世界唯一の「衰退途上国」とでも言わざるを得ない〉と明言。
こうした元凶が、バブル崩壊後の1997年に実施した消費税の3%から5%への引き上げによって「デフレ不況」に突入したためだと説明している。その再来のような危機的状況を迎えつつあるのに、そこで消費税を増税すれば、一体どうなるのか。
藤井氏は〈確実に破壊的ダメージがもたらされる〉と警告を発するが、もはや増税中止どころではなく減税すべき局面にあると言っていいだろう。
本サイトでお伝えしてきたように、今月20日に発表される四半期別のGDP速報値でもマイナスになると見られている。その結果を受けて、参院選を睨んで安倍首相が増税見送りに踏み切るか、その動向に注目が集まっているが、増税見送りなど当然のことであって、むしろ問題は、あきらかな「アベノミクスの失敗」のほうだ。
安倍首相はつい先日も民主党政権時代を「悪夢」と呼んだが、アベノミクスがほんとうに誇れる結果を出しているならば、そんな昔の話をいつまでも持ち出すわけがない。実際、民主党政権時代の実質賃金の平均賃上げ率が2.59%であるのに対して、第二次安倍政権での平均賃上げ率はわずか1.1%にすぎない。
また、暮らしぶりが良くなっているのかどうか、現に5月11・12日におこなったJNN世論調査では景気回復について「実感がある」と答えた人はたったの9%で、「実感がない」と答えた人は87%にものぼった。ようするに、「悪夢」と呼ぶべきは、景気は回復などしておらず、むしろ「悪化」しているのに「緩やかに回復している」などと現実を無視して喧伝する安倍政権のほうなのだ。
大企業や富裕層を優遇する一方でここまで庶民の生活を悪化させたその責任をしっかり取らせなければ、ほんとうの「悪夢」が、これからはじまるだろう。
(編集部)
【出典】LITERA 2019.05.14 10:30
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メチャクチャ(昨年の未来投資会議での安倍首相)/(C)共同通信社 |
〈厚生年金加入、70歳以上も 厚労省 納付義務を検討〉――。16日の日経新聞の朝刊1面トップ記事は衝撃だった。会社員らが加入している厚生年金の保険料を納付する義務年齢について、厚労省が現行の70歳未満から70歳以上に引き上げる検討に入った、というのだ。
厚労省は今年、5年に1度の公的年金制度の検証作業を実施する。記事によると、6月をめどに厚生年金の加入期間を延長した場合の年金額の試算結果を公表。保険料の支払期間について「75歳まで」といった具体的な数値が盛り込まれるかが焦点になるという。予想されていたとはいえ、いよいよ議論が本格化するのだ。
記事では〈内閣府の調査では仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」と答える。長生きに備えて、健康のうちは一定時間以上働く高齢者にとっては、加入期間の延長によるメリットは大きくなる〉などと解説していたが、高齢者のホンネは「年金収入だけでは暮らせないからやむを得ず働く」だろう。仮に保険料の支払い義務が75歳なんて事態になれば、今以上に生活が困窮する高齢者が続出するのは間違いない。
すでに公的年金制度は受給開始や納付期間の年齢がどんどん引き上げられる一方、将来、きちんと受け取れるのかも分からなくなっている。政府が強調する「100年安心」なんて言葉だけ。本年度以降、国保料の大幅引き上げも始まるが、今の政府は国民からカネを搾取することしか考えていない。米国の言い値で大量の武器を買ったり、外遊の口実にするために海外にカネをバラまいたりしているから税金が足りなくなるのだ。
そもそも「70歳以上の保険料納付の義務化」は、安倍首相が議長を務める「未来投資会議」で打ち出されたものだ。
この会議は、首相のお友達や取り巻きが大儲けする仕組みを次々とつくる一方、国民はカネを生む奴隷と考えているらしい。
2020年にも関連法案を国会に提出する可能性があると報じられているが、国民が東京五輪のお祭りムードで浮かれている時期を狙っている魂胆がミエミエだ。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「問題は納付義務の年齢引き上げだけではない」と言い、こう続ける。
「現行制度では、従業員数501人以上の企業や月額賃金8・8万円以上などの条件を満たした人は厚生年金に加入しなければならないが、政府は、この賃金額の引き下げや従業員規模の縮小なども検討している。あの手この手で年金制度を支える要員を確保したいのです。それでいて、年金資金を株に投資し、昨年10~12月期は14兆円も損失を出している。今の政府は『国民は死ぬまで働け』としか思っていないのでしょう」
この国は「ブラック国家」の道をまっしぐらだ。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/04/17 15:00 更新日:2019/04/17 15:36
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/04/17 15:00 更新日:2019/04/17 15:36
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「人でなし」政権トップの安倍首相(首相官邸HP) |
「安倍晋三首相は増税によって、景気を悪化させようと決心しているように見える」──消費税の10パーセントへの引き上げまで半年を切ったなか、米経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルが5日、こんな社説を掲載し、話題を呼んでいる。
日銀短観をはじめとして経済指標がさえない内容であるのに増税を実施するのは「自傷行為になるだろう」と言うのである。
それでなくても統計不正によって“アベノミクス偽装”がおこなわれていたことが発覚し、景気判断も信用に値するのかと不信感が高まっているというのに、何事もなかったかのように消費増税に踏み切るというのはあり得ない。
しかも、今年以降、わたしたちの生活を直撃するのは、消費増税だけではない。国民健康保険の保険料が大幅に値上がりするというのだ。
安倍政権は2018年4月から、市町村が担当していた国保の財政運営を都道府県に移した。国は“財政基盤を拡大することで国保財政を安定化させる”などと説明するが、実際には、これまで市町村が保険料を抑えるためにおこなってきた国保会計への公費の繰り入れをやめさせ、都道府県の算定する「標準保険料率」に合わせることを求めるものだ。
国はこの変更で国保料が値上がりした市町村は全体の23パーセントだと言うが、しかし、国保の加入者の多い都市圏では値上がりした地域が続出。
たとえば、「給与年収400万円・30代の夫と専業主婦、子2人の4人家族」の場合、東京都は51市町区村が値上げとなり、10市村が据え置き、値下げとなったのは千代田区のみ。しかも、江戸川区は年1万2300円の値上げで国保料は43万円に達し、21の区で年6800~8600円増となり、国保料は42万円を超えたという。
また、「年収240万円・非正規雇用の単身者」の場合も、東京都では72.6パーセントが値上げされている(しんぶん赤旗2月24日)。
しかも、話はこれで終わりではない。この各都道府県の「標準保険料率」をもとに共産党が独自試算したところ、2019年度以降、市区町村が「標準保険料率」通りに国保料(税)を改定した場合、全国の約8割の自治体で平均4万9000円も値上げになることがわかったというのだ。
この試算によると、たとえば東京都新宿区で「給与年収400万円・4人家族(30歳代の夫婦+子2人)」の場合、「2018年度の実際の国保料の額」は42万6200円だが、「2019年度の市町村標準保険料率で計算した国保料の額」(以下、2019年標準料試算)はなんと52万4700円。その差は9万8500円にもおよぶ。大阪市の場合も41万9500円(2018年度)が、2019年標準料試算では45万9900円となり、4万400円も高くなる。
そもそも、国保の加入者は高齢者や非正規雇用の若者といった低所得者が多い。だが、「給与年収240万円・単身者(20歳代)」で新宿区の場合、試算では2018年度が16万2600円であるのに対し、2019年標準料試算では20万400円に跳ね上がる。
こうした値上がりは名古屋市(16万9600円→17万6500円)、大阪市(20万2200円→21万2400円)や京都市(17万7200円→19万1800円)、福岡市(18万4900円→19万7600円)も同様だ。
また、「年金収入280万円・高齢夫婦世帯(夫230万円・妻50万円、ともに65〜74歳)」で新宿区の場合は15万5000円→19万800円で3万5800円の値上がりで、名古屋市でも12万9000円→14万2300円、大阪市で16万6600円→18万2300円、京都市15万1100円→16万5000円、福岡市15万3400円→16万5400円となっている。
高齢者や若者の貧困が深刻な社会問題になっているというのに、これほど大幅に値上がりするようなことがあれば、それは命にかかわる問題となるのは必至だ。
一応、「標準保険料率」の活用は都道府県の判断にかかわり、市区町村も独自に負担抑制などを維持することも可能な状態ではあるが、7日の41同府県議選・17政令市議選で自民党が2015年を上回る議席を獲得した結果を見ると、都道府県や市区町村が国の圧力を撥ねつけるようなことができるのか、疑問だ。
むしろ、安倍政権の徹底した「弱者切り捨て政策」を考えれば、数年のあいだにこうした試算のように大幅な値上げが起こる可能性のほうが高いだろう。
いや、現実に、すでに今年秋から、消費増税にともなう医療費の値上げが決まっている。初診料は60円増の2880円、再診料は10円増の730円。入院料も一般病棟の入院基本料の場合、230~590円引き上げられる。
こうした命や生活の質にかかわる、けっして削れない分野で軒並み値上げした挙げ句、追い打ちをかけるように10月からは消費増税……。
格差・貧困の拡大が叫ばれるなかで、法人税を引き下げる一方、低所得者ほど負担が大きい逆進性の高い消費税を増税しようという安倍政権の弱者に対する鬼畜ぶりはどうだ。
成果などまるでない口だけの「アベノミクス」の幻想に惑わされず、統一地方選後半や参院選では投票によって、この「人でなし政権」にNOを叩きつけるほかないだろう。
(編集部)
【出典】LITERA 2019.04.12 11:30
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【出典】LITERA 2019.04.12 11:30
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2016年伊勢志摩サミットの再現?(左は麻生財務相)/(C)共同通信社 |
「やはり消費増税は難しいのではないか」――。
再び増税延期説が流れている。これまで消費増税を後押ししてきた麻生財務相の発言力が急速に低下するとみられているからだ。
地元・福岡県の知事選の大敗は、麻生大臣にとって致命的だ。安倍首相に新人擁立を直談判し、保守分裂選挙を招いた上、現職に95万票もの大差をつけられる惨敗だった。すべて麻生大臣のワガママが原因だ。
さすがに9日、県連最高顧問を辞任する意向を示している。
「財務官僚が心配しているのは、消費増税に理解がある麻生大臣の影響力が低下するだけでなく、この先、麻生大臣とは“犬猿の仲”である菅義偉官房長官の発言力が大きくなりそうなことです。なにしろ菅長官は、景気を悪化させる消費増税には反対ですからね」(霞が関関係者)
実際、麻生大臣とは対照的に、新元号発表で「令和オジサン」になった菅長官は今やすっかり時の人だ。7日の統一地方選でも、福岡県知事選では大勝した現職を支援し、北海道知事選も、菅長官が擁立した前夕張市長が野党統一候補に圧勝した。
そんな中、財務省がビビっているのが「今井ペーパー」だ。
2016年5月末の伊勢志摩サミット(G7)で安倍首相は各国首脳に「ペーパー」を示し、「世界経済がリーマン・ショック級の危機に陥るリスクに直面している」と説明。サミット直後の6月1日、2年半の増税延期を発表した。
「ペーパー」の作成は、経産省出身の今井尚哉首相秘書官が主導したとされる。
「6月の大阪G20に向けて、今井秘書官が経産省に『第2の今井ペーパー』の作成を指示したという話が流れています。伊勢志摩の時と同じように、G20で安倍首相が『ペーパー』を使って、各国首脳に世界経済とリーマン・ショックとの類似性を示し、直後に増税の再々延期を発表するのではないかといわれている。この頃なら通常国会は閉会しているので、野党から凍結をアベノミクスの失敗と追及されることもないし、7月の参院選にも追い風になります」(官邸事情通)
内閣府が8日発表した3月調査では、消費者心理の明るさを示す消費者態度指数は前月比1・0ポイント低下の40・5となり、6カ月連続で悪化。
また、景気に敏感な小売店主らに聞いた「街角景気」は、3カ月前と比べた現状判断指数が前月比2・7ポイント低い44・8となり、2カ月ぶりに悪化した。
実際問題、とても消費税率を10%にアップできる状況ではない。麻生氏失墜と増税凍結が現実味を帯びてきた。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/04/10 15:00 更新日:2019/04/10 15:00
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/04/10 15:00 更新日:2019/04/10 15:00
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何も考えない(C)共同通信社 |
2019年度予算が27日、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。一般会計の総額は101兆4571億円で、7年連続で過去最大を更新。当初段階の100兆円超は初めてだ。
「消費税を引き上げられるような状況をつくり出していきたい」
この日の参院予算委で、安倍首相はこう強調していたが、本気で言っているのであれば正気の沙汰とは思えない。
政府は先週20日の月例経済報告で3年ぶりに景気判断を下方修正。日銀が4月1日に発表する3月の全国企業短期経済観測調査(短観)の民間シンクタンク予測でも、世界経済の減速を背景に代表的な指標である大企業・製造業の業況判断指数(DI)は前回(12月調査)よりも6ポイント悪化するとみられている。
中国や欧州など世界経済の減速が指摘され、2月の貿易統計では輸出額が3カ月連続で減少。今の日本を取り巻く経済環境が明らかに悪化する中、とてもじゃないが消費増税に踏み切るタイミングではないことは言うまでもない。
安倍政権は毎月勤労統計といった景気判断に使われる統計数値を恣意的につまみ食いしたり、サンプルデータを“改ざん”したりして懸命に「戦後最長の景気回復」をアピールしてきたが、現実とのズレは拡大するばかり。今や日経新聞やJNNの世論調査でも、景気回復を「実感していない」との回答は8割にも達しているのだ。
安倍自身も国会で「景気回復を実感できない人がたくさんいることも承知している」と答弁していたのだから、低所得者層ほど負担が大きい消費税を引き上げれば国民生活が深刻な影響を受けることぐらい分かるはずだ。
しかし、ほんの一握りの「富裕層」と「お友だち」のフトコロさえ潤えば、庶民生活はどうでもいいのだろう。安倍は何が何でも10%の消費増税に突っ走るつもりだ。
以前から増税反対を訴えている前内閣官房参与の藤井聡京大大学院教授が19日夜に都内で安倍と食事した際、あらためて「このまま増税すれば大変なことになる」と言って増税断念を直談判した――などと、一部のメディアが報じていたが、安倍はてんで耳を貸さなかったらしい。
あらためて藤井教授がこう言う。
「2014年4月の消費増税(8%)の際には大きな混乱はなかった、と言われていますが、理由は輸出が大きく伸びていたからです。しかし、今は外需が下落傾向にあり、状況が全く違います。そもそも今秋の10%増税は、デフレ経済から脱却しているとの見込みに基づくもの。しかし、デフレ経済から脱却しておらず、外需も厳しいのですから増税すべきではありません。97年4月の増税(5%)時は『幸運な外需拡大』のタイミングではなかったため、直後に激しい経済の混乱が起きました。今回も増税すれば97年と同じか、それ以上の影響が出る可能性があります。今のタイミングで増税はあり得ないというのが私の考えです」
これがまっとうな政策判断というものだ。
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国民生活が壊れる…(C)日刊ゲンダイ |
国民の多くが真っ平ゴメンと考えている消費増税は論外だが、その増税対策として本年度予算で約2兆円が計上されたのもムチャクチャだ。
とりわけ「世紀の愚策」とされるのが、政府が対策の目玉と位置付けている「キャッシュレス決済向けポイント還元」(2798億円)だ。
ポイント還元は、クレジットカードなど現金以外の決済で商品を購入した消費者にポイントを付け、その費用を国が負担するのだが、「付け焼き刃」感は否めない。決まっているのは「中小店で5%」「コンビニなど大手フランチャイズチェーン加盟店で2%」という還元率だけ。
どこまでを中小店とするのか、対象品をどうするかといった詳細な制度設計はこれからだ。現場の大混乱は避けられないだろうし、大体、5%還元であれば、実質5%の減税になる。
強引に増税する理由が全く分からないし、購買力のある富裕層と、そうではない低所得者層の「格差拡大」がさらに広がりかねない。増税目的も対策と称したカネの使い方も、すべてがデタラメの極み。それなのに安倍政権はなぜ、10%増税にこだわるのか。「10%ストップ!ネット」呼び掛け人の醍醐聡東大名誉教授がこう言う。
「政府が予算計上した2兆円の増税対策費用は、増税による国民の実質負担増分とほぼ変わりません。しかも、通常の年間広報予算の5倍にあたる400億円もかけて消費増税をPRするのだから言語道断。
安倍政権がなりふり構わず消費増税したいのは、中止や延期をして『アベノミクスは失敗』という批判が出るのを避けるためとしか思えません。政権延命のために税金を食い潰し、国費を私物化しているのです」
安倍は参院予算委で、自由党の森裕子議員が「(旧民主党政権時代の)子ども手当を潰した自民党を許すことが出来ない」と批判したのに対し、「あの頃、愚か者と考えていた人は多いのではないか。率直に言って私もその一人だ」などと言い放っていたが、「真の愚か者」は他ならぬ安倍自身だ。
〈あの「美しい国」には「森羅万象を担当」していると自ら公言してはばからない、神様のような首相が鎮座ましまし、その横には「産まなかった方が悪い」を繰り返す副総理が居座り、そして、他人の病気に「がっかりした」りする大臣までが住んでます。
あの人たちは皆、ご本人がおっしゃるように間違って使っている言葉に、悪気はないのです。すなわち知性が欠如しているだけなのです。どういう所で言葉を学ぶと、ああいう言葉が次から次と、尽きせぬ泉のように湧いて出るのか〉
劇作家の野田秀樹氏が21日付の東京新聞のコラム「ゴーマンイング・マイウェイ!」に寄稿した内容が「秀逸」と評判になっているが、見識を備えた知識人であればあるほど安倍政権に否定的だ。
デタラメ政治を評価しているのは国民生活そっちのけで安倍に従うことしか考えていないお友だちとヒラメ化した官僚だけ。これじゃあマトモな政策は到底期待できない。
本来は、メディアがきちんと批判するべきなのにそれをしない。消費増税についても〈安倍晋三首相は27日、10月に予定する消費税率10%への引き上げに覚悟を示した。(略)2019年度予算の成立は増税延期をしにくくなったことを意味する。(略)政府内にはリーマン・ショックのような危機でなければ経済対策で乗り切るべきだとの意見が広がっている〉(日経)、〈首相官邸幹部は「全部今からなくすことはできない。増税はもう変えられない」とみる〉(朝日)などと、安倍の言い分を垂れ流しだ。
なぜ、予算成立が増税不可避とイコールなのか。政権側の勝手な言い分、ヘリクツをなぜ真正面から批判しないのか。メディアがこんなテイタラクだから、安倍がやりたい放題になるのだ。
元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資氏がこう言う。
「テレビ・新聞はこれまでも安倍政権の言うがままを報じていましたが、最近はさらに踏み込んで政権寄りの解説報道までするようになりました。もはや批判精神をまったく失ったメディアはアベ政治の共犯者と言っていいでしょう」
国民は不幸になる一方だ。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/03/29 17:00 更新日:2019/03/29 17:00
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「戦後最長景気」はもともと2014年の消費増税で途切れていた Photo:PIXTA |
内閣府は、3月7日、1月の景気動向指数を公表した。
景気の現状を示す一致指数は97.9で、前月に比べ2.7ポイント低下し、昨年11月(▲1.8)、同12月(▲1.3)に続いて3ヵ月連続の下降となった。
このため、基調判断も、これまでの「足踏み」から「下方への局面変化」に下方修正された。
一方で、先月21日に発表された2月の月例経済報告での基調判断は「景気は、緩やかに回復している」と、今回の景気動向指数のものと異なっている。
これをどう考えればいいのか。
景気動向指数(一致系列)は、次の9つの統計から算出されている。
具体的には、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数(調査産業計)、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(小売業、前年同月比)、商業販売額(卸売業、前年同月比)、営業利益(全産業)、有効求人倍率(除学卒)だ。
指数はこれらから機械的に算出しており、景気の動きを素直に客観的にみるにはいい指標だ。
内閣府の景気動向指数研究会(座長・吉川洋立正大教授)が、この指数の中期的な動きを確認し、他の経済指標も考慮して、景気が後退局面から拡張局面に移る転換期(「谷」)や、逆に拡大局面から後退局面に移る境目(「山」)を判定する。
一方で、月例経済報告は、内閣府が資料を作るが、関係閣僚会議に提出された後に、了承という経過を経て公表される「政府の見解」である。
月例経済報告は、さまざまな経済指数を分析するとともに、指標の動きの背景にある経済環境や企業の景況感などを総合的に勘案した結果であり、機械的な算出ではないからだ。
ざっくり言えば、景気動向指数は機械的な算出、月例経済報告は総合判断で、それぞれ景気を見ているわけだ。
もっとも、機械的な算出なはずの景気動向指数でも、これまでの景気判断では首をかしげることも少なくなかった。
今回の景気拡大でも、景気動向指数研究会は、2012年12月から続く景気拡大期間が今なお続いていると判定しているが、筆者としては異論がある。
景気動向指数(一致指数。2015年=100)のデータを素直に見る限り、2014年4月の消費増税の悪影響はその前後ではっきりでており、そこに景気の「山」があり、2016年5月あたりで「谷」があるように見える(図参照)。
その前の「谷」は、2012年11月(91.2)と、判定されているが、これは指数の動きをみてもはっきりわかり、その後、上り坂になっている。
これは、野田政権から安倍政権への政権交代と完全に軌を一にしている。この判定については、誰でも異論がないだろう。
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景気動向指数の推移 (資料)内閣府 |
問題なのは、2014年4月の消費増税によって景気が後退したかどうかだ。
景気動向指数をみると、2014年3月に105.6とピークになり、その後、ゆっくり低下し、2016年5月の98.0が底だ。
しかし、この間については、景気の「山」や「谷」が判定できず、景気拡大がずっと続いていたというのが、景気動向指数研究会の判断である。
研究会は、消費増税後の悪影響により景気が後退したとの見方について、これまで否定してきている。
そのロジックは、2012年11月の谷以降、明確に「山」が見つからないというものだ。しかし、筆者の目には、2014年3月が「山」であるように見えるが、読者はどうだろうか。
研究会の吉川座長は、2014年の増税前に、消費増税をしても景気への影響が軽微だと、発言していた。
それは結果として間違いだったのだが、この座長発言があったために、その後の研究会の景気基準日付けを判断する時の議論が左右されたようにも思われ、すっきりしない印象だ。
景気動向指数は、消費増税後、2016年5月に底をつけた後、緩やかに上昇し、2017年12月105.2がピークとなっている。そして、1年程度上下を繰り返して、ここ3ヵ月ほどマイナスで低下が顕著になっている。
こうした指数の動きを見れば、2014年4月の消費増税後の景気判断や、今回の月例経済報告での景気の腰折れを否定する判断は、ちょっとおかしいと、筆者は思っている。
筆者は、機械的な算出の景気動向指数をより重視しているが、これまでのその動きを見ると、景気の「山」「谷」の転換点は、その時のマクロ経済政策(金融政策、財政政策)と外的要因(リーマンショックと東日本大震災)の影響ということで、ほぼ説明ができる。
マクロ経済政策の効果ラグ(半年~1年半程度)を考慮すると、2000年11月の「山」は、2000年8月の「ゼロ金利解除」が契機になったことや、2008年2月の「山」は、2006年3月の量的緩和解除で2007年5月にピークの後ずるずると景気後退したことがわかる。
2009年3月の「谷」(景気が底になった)のは、リーマンショックによるものであり、2012年11月の「谷」(同)は、東日本大震災もあったが、円高に十分、対応できなかった民主党政権の愚策の結果だろう。
こう考えてみると、今回の2012年11月以降の「戦後最長」とされる景気拡大局面の“実態”は、2014年5月が消費増税による景気後退で「山」、その後、2016年5月あたりが「谷」となって、2017年12月あたりがまた「山」となり、現時点では下降中と考えるのが自然だろう。
この間の景気に影響したのは、中国経済の要因は確かにあるが、景気は2017年12月あたりがピークでそれ以降、下降している。これは、2016年9月のイールドカーブコントロール導入による金融引き締めの結果とも読める。
それに最近の中国経済の成長減速要因が加味されたとみるほうがいいだろう。
国内要因で景気が落ち目になった時の外的ショックは、下り坂で押されるのと同じで、大きく景気が落ち込む悪影響になるので要注意だ。
こうしたことを考えると、今後の景気の大きな落ち込みを避ける処方箋は、今年10月の消費増税を当然、やってはいけないとなる。
(嘉悦大学教授 高橋洋一)
【出典】高橋洋一:嘉悦大学教授 ダイヤモンド社 2019.3.21
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笑っている場合か(C)日刊ゲンダイ |
不毛な審議だった。ようやく国会に出てきた統計不正のキーマンは案の定、真相を語らず、謝罪もなし。
15年にも及ぶ毎月勤労統計の不正で約567億円、2000万人以上の雇用保険や労災保険などが過少給付されたのに、頭ひとつ下げず妙なドヤ顔で、野党の質問をかわすだけだった。
厚労省の大西康之前政策統括官が、きのう(8日)午後の衆院予算委員会に招致された。大西氏は統計担当の統括官として、毎勤統計の不正な実態を知り得る立場にいた真相解明の重要人物だ。
「賃金構造基本統計」でルール違反の郵送調査を知りながら、根本厚労相に報告を怠ったカドで、通常国会の本格審議が始まる直前の今月1日付で更迭。大臣官房付に異動となった。
自公与党は野党の国会招致要求を「現職ではない」との理由で拒否してきたが、新年度予算案審議と引き換えに渋々承諾。口封じの“幽閉”を解かれたキーマンの発言に注目が集まったが、期待外れもいいところだ。
肩透かしは、野党の追及不足が要因だ。5日の衆院予算委で立憲民主の西村智奈美議員は「カギを握る大西氏に今日も来ていただけない」と約1時間の持ち時間中、大西氏の名前を10回近く呼び、招致を訴えたが、いざ実現したら、参考人席にほぼ座らせっぱなし。
質問に立った立憲民主の川内博史議員は「聞きたいことがいっぱいある」と気負っていたのに、大西氏への質問は3、4問程度。それでも、大西氏の答弁は突っ込みどころ満載だった。
大西氏は毎勤の不正を「昨年12月13日に初めて知った」と説明したが、統計をつかさどる統括官が、それまで何も知らないのは不自然だ。
13日に知りながら、厚労審議官、官房長、総括審議官ら上司に、部下を通じて報告したのは5日後の18日、事務次官への報告が翌19日、大臣への報告は20日と1週間もかかったことも認めた。
なぜ、内部対応がここまで遅れたのか。実は裏で、こっそり口裏合わせでもしていたのではないか。
5日の根本の答弁によると、大西氏は口頭で大臣に説明したことになっている。これだって、おかしい。資料もなく大臣に重要事項の説明をする役人がいるものか。
「野党の持ち時間は約3時間もあったのですから、あらゆる疑問点について大西氏にネチネチ、しつこく追及すれば、いずれボロを出したはず。そのほころびから真相に近づくことだってあり得るのに、野党の追及は尻切れトンボ。不正統計で問われているのは、勝手にルールを破り、違法行為と認識しながら、組織ぐるみで嘘の上塗りを重ね、こっそり修正しようとした厚労省の隠蔽体質であり、バレなきゃ何でもやる安倍政権の政治姿勢です。そのド真ん中にいる大西氏の答弁を真に受けるなんて、野党はおかしい。大西氏を呼び出しただけで成果と胸を張るのか。あまり政権を追い込み過ぎて今、解散されたらマズイとでも思っているのかと疑いたくなります」(政治評論家・本澤二郎氏)
弱腰野党には国民もがっかりだ。
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座らせっぱなし(左から定塚厚労省官房長、大西前統括官)(C)日刊ゲンダイ |
野党がこの体たらくだから、安倍政権も図に乗る。6日付の朝日新聞に「大西氏を招致した上で『現在の担当者が答えます』と言わせればいい」と、自民党ベテラン議員のなめた言葉が載っていたが、何てことはない。野党から鋭い質問が飛び出さないから、そこまでやる必要もなかった。
この政権は統計不正の真相解明なんて、屁のカッパ。できる限り「アベノミクス偽装」を大ごとにしたくない態度がミエミエだ。国民への説明責任は常にゼロ回答。国会閉幕まで、とにかく、ごまかし続けるハラだ。
大体、毎勤不正の検証を性懲りもなく、厚労省の特別監察委員会に担わせていること自体、国民を愚弄する政権の体質を物語る。特別監察委は、聴取対象者の3分の2を身内の厚労省職員にやらせ、たった1週間の“お手盛り調査”で「組織的隠蔽は認定できない」との結論を出した。
第三者性もへったくれもない特別監察委はサッサと解散し、より独立性の高い組織で出直すのが、せめてもの国民への罪滅ぼしだ。
ところが、きのうの衆院予算委に招致された特別監察委の樋口美雄委員長は「労働政策研究・研修機構理事長として呼ばれているので答弁を差し控える」と繰り返し強弁。再調査の内容を聞かれても「今後の検討に影響を及ぼす危険がある」と答弁逃れだ。
労働政策研究・研修機構は厚労省の天下り法人。そんな身内同然の樋口委員長に第三者性を期待するだけムダなのに、野党議員は「立派な方と存じ上げている」(立憲民主の大串博史議員)と持ち上げる。
その様子を安倍首相も麻生財務相もヘラヘラ、ニタニタと余裕たっぷりで見つめる姿は、もうマンガの世界だ。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。
「統計不正の過少給付で、2000万人以上もの国民に総額567億円もの経済的損失を与えれば、マトモな先進国なら政権は即刻、総退陣です。
トップは責任を取るために存在するのに、安倍首相は給付金ネコババに居直りですから、唖然とします。
大西氏は根本厚労相に1週間も不正を報告しなかったことになっていますが、ここまで大臣が役人にないがしろにされたら、政権与党はもっと怒るべきです。それなのに政権与党を挙げて真相解明に後ろ向きなのは、この政権は『アベノミクス偽装』のグルと見られても仕方ありません」
いつだってそうだ。この政権は、あらゆる不正をごまかし、責任を役人に押しつけ、国民置き去りのウヤムヤ決着が繰り返されてきた。
モリカケ問題では疑惑の渦中にいる安倍昭恵夫人や、加計学園の加計孝太郎理事長の国会招致を拒み続け、真相解明を妨害。森友文書改ざん発覚で昨年3月、ようやく佐川宣寿元財務省理財局長の証人喚問が実現しても、「刑事訴追を受ける恐れがある」と証言拒否を繰り返させた。
加計問題で国家戦略特区担当の柳瀬唯夫首相秘書官(当時)は2017年7月の参院予算委で参考人として呼ばれ、15年に加計学園の関係者らと面会したかと問われても「私の記憶する限りお会いしていない」とシラを切り通した。
学園関係者らと官邸で3回面会したと認めたのは、18年5月に改めて参考人招致に応じた時だ。約1年もしらばっくれて真相を隠し、政権に恩を売り続けたのである。この政権は国民の資産である国有地をタダ同然で、首相夫人の息のかかった小学校に売り払おうとしても、特区制度を悪用して首相の“腹心の友”に過剰な恩恵を与えても、お構いなし。
国民にバレなきゃ何でもやる。給付金を長年ネコババしても、罪の意識すら感じない。「民は由らしむべし、知らしむべからず」を地で行くのが、安倍政権の本質で、一貫して国民は何も知らずに俺たちに従っていればいいという態度だ。
「安倍政権は数の力で押し切り、強引に疑惑を包み隠してしまう。野党に加え、NHKをはじめとする大マスコミの追及も甘く、何をやっても知らされずに済む。昔の自民党なら、こんな政権はとっくに引きずり降ろしていたはずですが、今や皆、独裁首相の言いなり。国民置き去りの絶望的状況を変えるには、今年の統一地方選と参院選で有権者が目にモノを言わせるしかありません。この政権が亥年選挙を乗り切れば、さらなる絶望と危機が待っているだけ。2019年の日本は戦後最大の岐路に立っています」(本澤二郎氏=前出)
これ以上、給付金ネコババ政権の居直りを許してはいけない。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/02/09 17:00 更新日:2019/02/09 17:00
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アベノミクスに真実なし(C)共同通信社 |
第1次安倍政権は「消えた年金問題」が火を噴き、ブン投げ辞任の引き金となった。厚労省が15年前から基幹統計のひとつである「毎月勤労統計」のデタラメ調査を続けていた問題は、それを上回る業火となる様相である。
雇用保険をはじめとする追加給付などにかかる必要経費は、事務費約195億円を含む計約795億円。安倍政権は財源を捻出するため、2019年度予算案の一般会計総額を修正し、異例の閣議決定し直し。6億5000万円を追加計上し、101兆4571億円に増額した。
過去最大だった当初予算案はさらに膨らみ、増額分は新規国債発行で賄うという。つまり、国民へのツケ回しだ。残りはどこから調達するのかといえば、大半は労使が拠出した保険料をプールした特別会計。ズサン統計のシワ寄せが労使にも重くのしかかるのだから、フザケるにもほどがある。
デタラメ調査の最大の問題は、ズルズルと不正を働いていた厚労省が昨年1月分からデータ補正を始めていたことだ。厚労省は04年から本来全数調査すべき「500人以上規模の事業所」について、都内計1464事業所のうち、3分の1程度の抽出調査しかしてこなかった。
それが一転、調査結果を「3倍」にして全数調査に近づける不正処理を開始。そのタイミングは、安倍首相が17年10月の経済財政諮問会議で「3%の賃上げが実現するように期待する」と異例の数値目標に言及し、12月の経団連審議員会では「ズバリ3%以上の賃上げをお願いしたい」とさらに踏み込んだ直後だ。背景にはアベノミクスの“成果”で上がるべきはずの実質賃金がちっとも振るわない現実があったのではないか。
17年の実質賃金指数は平均で前年比マイナス0.2%という惨憺たる数字だった。データ補正後の昨年1~11月の平均はプラス0.3%。インチキ処理によって物価変動の影響を除いた賃金の動きを示す実質賃金指数まで上昇した結果だ。
17日の野党合同ヒアリングに出席した厚労省の屋敷次郎大臣官房参事官が「上昇幅はより小さくなる可能性がある」と認めていたように、実際はマイナスだった可能性が高い。「毎勤の不正処理による実質賃金指数の伸び率は0.3~0.8%程度カサ上げされたとみられます」(厚労省関係者)というから、やっぱり実質賃金の下落傾向に歯止めがかからず、下がり続けているのだ。
問題はこれだけにとどまらない。他にも怪しげな数値がゴマンとあるアベノミクス効果のイカサマは今後、次々に明らかになっていく。毎勤の再集計によって、雇用報酬や可処分所得ばかりでなく、国際的な経済指標であるGDPの修正にまで追い込まれるのだ。
経済評論家の斎藤満氏は言う。
「毎勤は国勢統計や国民経済計算と並ぶ56の基幹統計の1つで、政策立案や経営判断のベースになります。政策の根っことなる基幹統計がメチャクチャでは、経済実態の正確な診断ができず、適切な処置もできなくなる。毎勤の不正調査は小泉政権までさかのぼりますが、データ補正の発端は官邸に忖度した厚労省がアベノミクスの成果をデッチ上げるためだと思えてなりません。もっとも、第2次安倍政権発足以降、疑わしい統計がゴロゴロしています。15年9月に安倍首相が名目GDP600兆円の20年度達成を目標に掲げると、すぐさまGDPの算出方法を変更。研究開発費などの参入で約31兆円もカサ上げした結果、15年度の名目GDPは532兆円に膨らんだ。内閣府発表の景気動向指数も怪しい。15年春以降は明らかな下向きで、多くのエコノミストが景気後退懸念を強めているのに、〈景気後退ではない〉との大本営発表で議論さえ封じている。労働力調査にも疑問があります。総務省による最新の昨年11月調査では完全失業率2・5%、完全失業者168万人とされていますが、厚労省発表の有効求職者数は約171万人。有効求職者はハローワークに登録した求職者の総数に過ぎず、それでも少なくとも3万人のギャップが生じている」
いよいよハッキリしてきたのが、今年の景気悪化と消費増税断行の狂気である。虚飾の政権の暴走によって日本経済はどん底まで沈みゆこうとしている。
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通常国会は大紛糾必至(C)日刊ゲンダイ |
安倍政権は実質賃金の伸び率を消費増税の判断材料のひとつとしていたはずだ。「国難突破解散」と銘打った17年10月の総選挙では消費増税を巡る使途変更の是非も争点に掲げ、その前提として「4年連続の賃金アップの流れを更に力強く、持続的なものとする」と胸を張っていた。
ところが実際は、第2次政権発足以降で実質賃金指数が前年比プラスになったのは16年だけで、それもわずか0.7%。15年マイナス0.8%、14年マイナス2.9%、13年マイナス1.0%だったのだ。
ほとほと、信用できないペテン政権の場当たりのゴマカシを許していたら、どんどん傷口は広がっていく。10月に予定される消費増税による痛税感緩和を口実に、安倍政権はバラマキを拡大させている。統一地方選と参院選が重なる選挙イヤー対策で大盤振る舞いだ。
キャッシュレス決済向けのポイント還元向けに、19年度予算案で約2800億円を計上。20年度予算などでも1000億円強の追加が必要と想定している。日経新聞(19日付朝刊)によると、企業が中小店舗から調達する仕入れも対象にするという。法大教授の小黒一正氏は勘定の甘さをこう指摘していた。
「年間の家計消費300兆円の仮に50兆円分が還元対象だとしても1%あたり5000億円が必要」
ポイント還元費用が2兆~3兆円に膨らむ事態が否定できないというのだ。実際、安倍政権は還元総額の上限を定めない方針だというから、青天井の勢いである。
アベノミクスの片棒を担ぐ日銀のバランスシート(BS)もメチャクチャだ。国債の大量買い入れで市場にマネーを流し込む異次元緩和で円安株高を演出し、ETFの爆買いで官製相場を支え続けてきた。立大大学院特任教授の金子勝氏が日刊ゲンダイコラム(12月26日付)でこう警鐘を鳴らしていた。
〈日銀の「営業毎旬報告」(12日公表)によると、日銀は国債を約471兆円保有。これは購入価格で簿価だ。「日本銀行が保有する国債の銘柄別残高」(同日公表)は額面金額ベースで約459兆円。この差額の12兆円は何か。日銀がマイナス金利下で10年債未満の国債を額面よりも高値で引き受けることで生じたものだ。満期になれば、日銀の赤字となる。これによって、政府は国債の利払いから逃れ、日銀に赤字を付け替えることができる〉
昨年7~9月期は米中貿易戦争の影響で輸出が1・8%減り、実質GDP成長率はマイナス転落。年率換算で2・5%減に後退した。米中通商協議では日本経済の屋台骨である自動車分野の狙い撃ちは必至。「アメリカ・ファースト」のトランプ大統領に数量規制をねじ込まれてしまえば、GDPの0・8%が吹き飛ぶ。
日本はガタガタだ。内政でどん詰まりの安倍は「戦後外交の総決算」とうそぶき、ロシアとの平和条約締結交渉に前のめり。国会をサボって訪ロし、25回目の日ロ首脳会談に臨むが、北方領土の旧島民が切望する進展は望むべくもない。
経済アナリストの菊池英博氏は言う。
「安倍首相はダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)にも出かけて演説するようですが、真剣に耳を傾けるリーダーがいるのでしょうか。安倍首相のひと言をきっかけに官僚が民主主義の根幹を破壊する公文書の隠蔽・改ざんに走り、製造業では長年にわたって検査不正が横行し、果ては基幹統計もインチキだらけ。日本は国家としての信頼を失っています」
アベノミクスもイカサマ、“外交の安倍”もデタラメ。ウソで塗り固めた政権と心中なんて真っ平御免だ。第1次政権と同じ轍を踏ませなくてどうする。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2019/01/21 17:00
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作為的な統計でアベノミクスを演出(C)共同通信社 |
景気回復を実感しないのは「感性」の問題なのか。いや、違うだろう。内閣府の景気動向指数研究会(座長・吉川洋立正大教授)の景況感には驚きを禁じ得ない。
2012年12月を基点とする景気回復が17年9月まで続き、高度成長期に4年9カ月にわたった「いざなぎ景気」(1965年11月~70年7月)を超え、戦後2番目の長さになったと認定したのだ。来年1月まで続けば戦後最長となり、6年1カ月に及んだ「いざなみ景気」(02年2月~08年2月)を抜くという。
「いざなぎ景気」を支えたのは、個人消費の拡大と企業の旺盛な設備投資だった。
自動車、クーラー、カラーテレビの「3C」の普及が購買欲を刺激し、65年度から70年度を平均した実質成長率は10.1%に上った。
賃金もぐんぐんアップした。振り返って、足元はどうだ。12年度から17年度の平均実質成長率はわずか1.2%。7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算で2.5%減だった。
前期比0.3%減、年率1.2%減とした速報値から大幅な下方修正だ。生活実感に近い名目GDPも前期比0.7%減、年率2.7%減に引き下げた。
経済アナリストの菊池英博氏はこう言う。
「第2次安倍政権発足以降、国民生活は確実に苦しくなっている。景気回復の実感がないのは当然です。厚労省のデータによると、13年から17年までの実質所得(1世帯当たりの平均所得額)は5年で80万円減収している。その内訳は3%分の消費増税で60万円。アベノミクスによる異次元緩和で円安が進み、輸入物価高で20万円。円相場は2012年の80円台から120円に値を下げた。円安は40%も進み、実質的な円の切り下げです。この5年間で名目GDPは492兆円から546兆円に膨らみましたが、そのうち32兆円は算出方法の変更による底上げです。実態は20兆円の増加で、年間成長率はわずか0・8%。ゼロ成長です。“いざなぎ超え”はまったくのデタラメ。詐欺的統計と言っていい」
安倍首相は「有効求人倍率は1倍を超えた」「250万人の新たな雇用を生み出した」と何かと胸を張る。確かに、雇用者はこの5年間で370万人増えたが、そのうち正規社員は26%。非正規社員が73%も増加し、雇用状況は不安定化している。
正規社員の所得の3分の1程度とされる非正規社員が増えれば、所得水準は下がる。実質賃金指数は12年の104.8から17年は100.5にダウン。4.1%も下げている。この5年間で実質賃金がプラスになったのは16年の1回だけ。実質可処分所得は減る一方なのだ。
恐るべき政府のイカサマPRに加えて、安倍官邸に近い大メディアは、〈「いざなぎ超え」 戦後2番目に〉〈景気「いざなぎ」超え 内閣府認定、来月で戦後最長〉などの見出しを打ってアベノミクスの“成果”を盛んにヨイショ。官邸を徹底的に忖度した提灯報道をジャンジャン流している。
麻生財務相は14日、閣議後の記者会見で“いざなぎ超え”にもかかわらず、賃金が上昇しない状況について問われると、「上がっていないと感じる人の感性」の問題だと強弁した。言うに事欠いて、一国の財政を担うトップが何のデータも根拠も示さずに、感覚でモノを言うのだから空恐ろしくなる。“いざなぎ超え”なんて、ちゃんちゃらおかしいのだ。
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賃金上昇は「感性」の問題だと(C)日刊ゲンダイ |
目端の利く外国人投資家は日本経済をとうに見限り、一斉に逃げ出している。東京証券取引所によると、12月第1週(3~7日)の投資部門別株式売買動向(東京・名古屋2市場、1部、2部と新興企業向け市場の合計)は海外投資家が4週連続で売り越していた。
売越額は前週の2101億円から約3倍増の6001億円。2月第1週の6446億円以来の大きさだった。11月第2週1369億円↓同第3週1967億円↓同第4週2101億円という経過をたどり、その額は週を追うごとに膨らんでいる。
「日本は実質的にマイナス成長に突入している。海外の投資家は日本経済をそうみていて、日本市場から手を引いているのです。日銀がETFの大量購入で株価を支えているいまのうちに、売ってしまおうということ。官製相場でなければ、日経平均株価はとうに2万円を割ってもおかしくない。安倍政権は算出方法の変更でGDPに化粧をしていますが、その数字でさえ今年はマイナス成長に転落する可能性があります」(菊池英博氏=前出)
来年以降の日本経済は惨憺たるありさまとなりかねない。キーワードは米国のトランプ大統領、フランスのマクロン大統領、中国の習近平国家主席。保護主義と新自由主義をめぐり、対立は深刻化している。
マクロンは燃料税引き上げに端を発したデモで求心力をさらに失い、政権はガタガタ。これに一枚噛んでいるとみられているのが、トランプだ。地球温暖化に関心のないトランプはパリ協定から離脱。
一方のマクロンはトランプに強硬な態度で臨み、国内で燃料税引き上げを図り、ルノーの打ち出の小づちである日産自動車の現地生産を進め、さらに利益を吸い上げようとしている。米国の自動車産業を守るために海外メーカーの現地生産を推し進めるトランプにとっては、マクロンは目の上のたんこぶ以外の何ものでもない。その矢先に起こったのが、日産のカルロス・ゴーン前会長の電撃逮捕劇だった。
経済評論家の斎藤満氏は言う。
「ゴーン逮捕に動いた東京地検特捜部は伝統的に米国と関係があり、安倍政権をアゴで使うトランプ政権の意向が働いたという指摘がある。その一方で、安倍政権はフランスの意向をくみ、臨時国会で水道法改正を通し、水道民営化を着々と進めています。八方美人なアベ外交は“個人的な信頼関係”をかたってうわべだけのつき合いを重ね、金銭供与でつないでいるだけの“良好な関係”にしか見えない。どの国からも信頼されず、外交で相手にされないリスクが高まっています」
トランプに押し込まれた日米通商協議が来年1月中旬から本格化する。米通商代表部(USTR)が開いた対日貿易に関する公聴会に参加した自動車メーカーや業界団体は、米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)よりも強力な為替条項や自動車輸出の数量規制を要求。輸出制限には具体的数字も飛び交っていて、阿達雅志国交政務官が講演で「最大100万台という要求もあった」と交渉の内幕を明かしていた。
「17年の日本車対米輸出は174万台。年間7兆円に上る対米黒字の8割を自動車分野が稼いでいます。それが半分に落ち込めば、GDPの1%が吹き飛んでしまう。現地生産を進めるといっても、対応できるのはトヨタ自動車やホンダくらいでしょう。自動車産業は非常に裾野が広く、関連企業は20万社に上るともいわれます。ヘタをすればGDPの2%を失いかねない。トランプ大統領のさじ加減ひとつで、一気にマイナス成長へ転落です」(斎藤満氏=前出)
拳を振り上げた中国包囲網から一転、安倍は中国との関係改善を図っているが、米中貿易戦争のあおりで雲行きは怪しくなっている。中国国家統計局によると、小売売上高や工業生産はいずれも伸びが鈍化。
その影響は日本経済にも表れ始めている。12月の日銀短観では米中新冷戦の懸念から、3カ月後の見通しを示すDI(業況判断指数)はプラス15と4ポイント悪化した。米中関係をさらにこじれさせているのが、米国の要請を受けたカナダによる華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟CFOの逮捕劇だ。米国は次世代通信5Gの覇権争いで、中国を敵視。トランプがそれに拍車を掛け、同盟国にファーウェイの締め出しを求めると、安倍政権も追従。政府調達から排除を決めた。
「民間企業も中国排除に追随する姿勢です。今月上旬に起きたソフトバンクの大規模通信障害はファーウェイCFO逮捕との関わりがあるとされ、ソフトバンクはファーウェイと関係を築いているために狙われたという見方がある。
現状ではソフトバンクだけの問題とみられていますが、他の日本企業にも波及するとの不安が広がっている」(金融関係者)
来年10月には消費税が10%に引き上げられる。14年の8%増税の例を引くまでもなく、経済停滞は避けられない。
政治的思惑も絡んで世界経済が大きな岐路に立つ中、何の処方箋もなく、“いざなぎ超え”と大はしゃぎするだけの安倍政権にこの国を任せていていいのか。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2018/12/15 17:00
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景気が拡大したわけではないのはこのグラフを見たら一目瞭然 |
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全部オレが決める(C)共同通信社 |
制度設計が不十分なまま衆院を通過した改正入管難民法もメチャクチャだが、安倍政権がブチ上げた来年10月の消費税率引き上げに伴う増税対策もデタラメの極みだ。象徴的なのが軽減税率だろう。NHKが開設している〈基本がわかる消費増税〉と題したサイトを見るとよく分かる。政府が増税対策として公表した軽減税率の対象例、指針などを解説しているのだが、制度設計が不十分どころの話じゃない。
〈「コーヒー回数券」 チケットを販売した時点では、店内で飲むのか持ち帰るのか判断できないため、軽減税率の対象となるか迷うことになりそうですが、コーヒーに交換した時点で、どちらか確認する必要がある。チケットを8%の税率で販売していて、店内で飲むことになった場合には、交換する時点でその差額を客に請求するなどの対応が考えられます〉
〈「すしを途中で持ち帰る場合」 「外食」か「持ち帰り」かは、客に提供した段階で判断されるため、店内で食べるものと区別せずに提供されていれば、「外食」にあたり軽減税率は適用されないとしています。一方で、最初から持ち帰り用にパック詰めして販売する場合は、軽減税率の対象になります〉
他にも、軽減税率の対象となる飲食料品が土産品で配られるパック旅行や、サラリーマンの出張に支払われる日当……などの例が紹介されているが、どう見ても政府指針は付け焼き刃の思い付きだ。来年10月以降、店舗や消費者が大混乱に陥るのは間違いないだろう。
グチャグチャなのは軽減税率だけじゃない。中小の小売店、飲食店などでクレジットカードや電子マネーといった「キャッシュレス」で支払った場合の「5%ポイント還元」も愚策としか言いようがない。増税時から9カ月間の期限付きとはいえ、この間、事実上の税負担は現在の8%を下回り、5%になる。軽減税率が適用される飲食料品であれば3%だ。減税になるのであれば、一体何のために増税するのか。理解不能だ。
さらに住民税非課税世帯(年収256万円未満)の低所得層と、0~2歳児を持つ子育て世帯に対して用意される「プレミアム商品券」や、自動車や住宅購入に対する税制優遇、民間企業のポイントをマイナンバーカードに貯めて買い物などに利用できる「自治体ポイント」の導入、幼児教育無償化も増税対策として盛り込まれたが、誰が見ても選挙目当てのマッチポンプ、バラマキは明らかだ。
日銀は税率を一律10%に引き上げた場合、家計負担の増加額を年間5・6兆円と試算。しかし、軽減税率の導入や各種バラマキによって同2・2兆円に縮小するという。つまり、それだけ税収が減るということで、増税目的だった「財政再建」と「社会保障の充実」は遠のくばかりだから、冗談じゃない。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「増税対策は対策でも何でもない。茶番です。バカバカしい策をあれこれ考えるのであれば、政府は増税せずにできる施策や知恵、工夫をするべきです。それを一切せず、安易に増税を決めておいて、後から泥縄のように国民負担を軽くする、といって好き勝手にバラマキ施策を作り、借金をしているのだから、税金の私物化に等しい。まるで国家の体をなしていません」
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また出てきた(C)日刊ゲンダイ |
チグハグを通り越して支離滅裂といっていい国民愚弄策の増税対策の骨格づくりを主導したのは、政府の「未来投資会議」(議長・安倍)だ。2016年9月、第2次安倍政権が「アベノミクス」を進めるためにつくった「日本経済再生本部」の下に位置付けられている組織で、26日付の日経新聞によると、増税対策などの経済財政政策はこれまで財務省の影響力が強かった「経済財政諮問会議」で議論されてきた。
ところが、最近は経産省の出向者が事務局の大半を占める「未来投資会議」が中心になりつつあるという。運営を取り仕切る経産省の新原浩朗経済産業政策局長は、今回の増税対策で「5%ポイント還元」を進めた人物らしいが、なるほど、どうりで「財政再建」や「社会保障の充実」といった重要な視点が欠落しているワケだ。
見逃せないのは、この会議で中西宏明経団連会長などと一緒に民間議員に名を連ねているのが、竹中平蔵東洋大教授ということだ。「安倍・竹中」といえば、“利権”の腐臭が漂う最悪のコンビ。代表的なのが愛媛・今治市の加計学園獣医学部新設を巡る問題で注目を集めた「国家戦略特区諮問会議」だろう。
安倍と近しい関係のメンバーが民間議員として加わり、「規制改革」と称して自分の会社や関係する業界に“利益誘導”する。暗愚の暴君にひれ伏す取り巻き――のような国家私物化システムをつくるために暗躍したとささやかれているのが竹中だ。
国家戦略特区で外国人労働者の家事代行サービスが解禁された際、政府のあっせん事業を真っ先に受注したのは、竹中が会長を務める人材派遣パソナグループの子会社だったこともある。「未来投資会議」傘下の「第4次産業革命会合」では会長を務め、自治体が公営事業の運営権を民間に売却できるコンセッション方式の積極活用を主張。
今臨時国会で成立が確実視されている水道事業の民営化にも絡んでいるから、怪しいにおいがプンプンする。投資会議は看板を替えた特区諮問会議のようだ。
その「未来投資会議」が打ち出したのが「70歳就業義務化」の検討だ。社会保障政策を管轄する厚労省を抜きに進めた施策で、成長戦略の目玉に位置付けているが、国民を死ぬまで働かせようとする魂胆がミエミエ。
未来への投資なんて嘘っぱちもいいところだ。大体、増税回避のための異次元緩和はどうなったのか。「2年でインフレ目標2%」は5年経っても達成されず、国の借金(国債及び借入金などの残高)は1091兆7000億円に達し、この1年間で11・3兆円も増えた。
いくら増税しても「財政再建」も「社会保障の充実」もない。借金だけが増えているなんて、これほどバカな話はない。他方、国民の生命、財産にはてんで目もくれない安倍政権が大盤振る舞いなのが防衛費だ。
18年度の防衛費は過去最高の5・2兆円。自民党は今年の「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」の見直しに合わせて防衛費の対GDP(国内総生産)比率を現状の約1%から2%に引き上げるように提言しているが、早速、政府は最新鋭ステルス戦闘機「F35」を米国から最大100機購入する方向で検討に入ったという。1機100億円超で計1兆円以上。海自の護衛艦「いずも」を改修して「空母」まで持つというから、防衛費はどこまで青天井になるか分からない。
トランプ米大統領から武器購入を迫られ、「ハイハイ」と従ったのだろう。政治的ビジョンも理念もない。トランプにちょっと脅されれば、カジノも解禁し、自衛隊も差し出す。これぞ亡国官邸による国会・国民冒涜のペテン政治だ。経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう言う。
「未来を奪う施策ばかりを掲げる『未来投資会議』は論外ですが、それ以上に問題なのは、どんどん安倍政権が横暴になっていることです。野党の意見や反論には全く耳を傾けず、時間が過ぎたら『ハイ、オシマイ』です。これは国会ではないし、議会制民主主義もあったものではありません」
本来は大新聞が批判的に報じるべきなのに「軽減税率」で頭が上がらないのか、腰砕け。まったくだらしない。このままだと、この国の未来が本当になくなってしまう。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2018/11/16 17:00
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プーチンの罠にハマった(C)共同通信社 |
「戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つ」
14日にシンガポールで行われた日ロ首脳会談の後、安倍首相が記者団に語ったセリフだ。毎度のごとく大物気取りで、仰々しさは天下一品。「戦後外交の総決算」は9月の自民党総裁選で打ち出した3期目の主要課題だけに、そのひとつである北方領土問題が進展しているという印象を打ち出したいのだろう。
実際に、今回の首脳会談で合意した内容は、「1956年の日ソ共同宣言を基礎に北方領土交渉を加速させる」「年明けにロシアで首脳会談」であり、何か具体的になったわけではないが、“やってる感”をアピールしたい安倍官邸は前進イメージをメディアに流すのに必死だ。特に9月の東方経済フォーラムで、唐突にプーチンから「前提条件なしの年内の平和条約締結」、つまり事実上の領土棚上げ交渉を提案され、赤っ恥をかかされているだけに、安倍としてはそれを“上書き”するような方向性を見せる必要があった。
そこで急浮上しているのが、日ソ共同宣言で明記されている「平和条約締結後に歯舞群島と色丹島の2島の引き渡し」を先行させるという選択肢である。日本政府は国後島と択捉島を含めた4島返還を大原則としているため、15日、菅官房長官が会見で「4島の帰属問題を解決し、平和条約を締結する立場に変更はない」と2島先行論を打ち消そうとしてはいたが、“手柄”を急ぐ安倍は長年の政府方針を振り切って、前のめりになっている。
しかし、2島だとしても、北方領土を「戦利品」と考えるロシア国民の反発を抑えてまで、あのプーチンが返還に動く可能性はあるのか。
そうしたら早速、プーチンはきのう、安倍との首脳会談について記者会見し、「引き渡し後に島がどちらの主権になるかは(日ソ共同宣言に)明記されておらず、今後の交渉対象だ」と牽制してきた。おいおい、そこからですか、ではないか。これでは安倍が平和条約締結へ舵を切っても、領土が本当に日本へ戻ってくるのか分かったもんじゃない。
元外交官の天木直人氏はこう言う。
「驚きましたよ。プーチン大統領の発言は、日本にとって北方領土交渉が前進するどころか、むしろ後退したと言っていい。2島の主権交渉から始めるって、いつまでかかるのか、気の遠くなるような話。プーチンにまんまと前提条件をひっくり返された形です。本来なら北方領土交渉は、4島で行くのか2島で行くのか、米軍基地の問題など日米同盟とどう両立させるのか、そうした日本の方針をしっかり決めてから臨むものです。それをしないまま結論だけ急いだ結果がこれ。外交のレベルが低すぎます」
筑波大教授の中村逸郎氏(ロシア政治)もこの先の見通しに悲観的だ。
「このまま平和条約を締結したら、それだけで終わって、2島どころか1島も帰ってこないでしょう。日ソ共同宣言には、平和条約締結後に、北方領土を『いつ』返すのかの期限は書かれていない。100年後か、200年後か。1000年後だっていいわけです。プーチン大統領の狙いは、平和条約だけ結んで、領土問題は棚上げすることなのです。そしてもうひとつ、日本の世論が2島返還論と4島論とに分断されることもプーチンの狙い。日本国内がモメて、方針が定まらなければ、日本側の問題として領土返還を棚上げできる。日本はプーチンに足元を見られてしまいました。日ソ共同宣言に返るということは、日本の対ロ外交の大転換であり、大失敗になると思います」
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改憲では側近が大チョンボ(C)日刊ゲンダイ |
ここに来て安倍が北方領土交渉に傾注するのは、「戦後外交の総決算」なんてカッコつけながら、どれもレガシーにできるような成果が見通せないからだ。
拉致問題を抱える北朝鮮との関係について、安倍はきのうも、ASEAN諸国連合との首脳会議の場であらためて、「金正恩朝鮮労働党委員長と直接向かい合い、拉致問題の早期解決を成し遂げる決意だ」と意気込んでいたが、意欲だけが空回りしている。最近も一部報道で、日本の情報当局トップの北村滋内閣情報官と北朝鮮の金聖恵統一戦線策略室長がモンゴルのウランバートルで極秘会談したと報じられた。北村が北朝鮮高官と密かに会ったという情報はこれで3回目である。
しかし、北朝鮮にとって直近の優先事項は2度目の米朝首脳会談であり、それが来年の正月以降に先送りされている以上、日朝のトップ会談など具体化するわけがない。
日中関係の正常化も「総決算」の柱のひとつだが、安倍が隷属するトランプ米国が前面に立ちはだかる。先月、安倍は7年ぶりに訪中し、習近平国家主席と会談、「競争から協調へ」「互いに脅威とならない」「自由で公正な貿易体制を発展」という「3原則」を確認したとブチ上げたものの、貿易戦争で対中強硬姿勢を強める米国からの横ヤリが入ってトーンダウン。13日に来日したペンス米副大統領にもクギを刺され、軌道修正を余儀なくされている。
加えて内政はと言えば、景気にも陰り。内閣府が今月発表した9月の景気動向指数は2カ月ぶりに低下し、景気基調判断が「改善」から「足踏み」へと24カ月ぶりに下方修正された。豪雨や地震など自然災害が理由の一時的なものと解説されているが、電子部品や建設機械などで在庫が積み上がっている状況などから、グローバル経済の減速が日本の輸出の足を引っ張っているとみるエコノミストが少なくない。既に景気後退局面に入っている可能性もあるのだ。
国会では片山さつき地方創生相や桜田義孝五輪相ら醜聞大臣が野党から集中攻撃を受けボロボロ。懸案の外国人労働者を拡大する法案も、中身がスッカラカンすぎて審議が進まない。
そして、安倍にとって「戦後70年の総決算」として最大のテーマであり、悲願なのが憲法改正。しかしこれも、夏ごろには「秋の臨時国会で議論を前に進め、一気呵成に年内発議」(安倍周辺)などと鼻息が荒かったものの、まったく進んでいない。それどころか、アベ友の下村博文自民党憲法改正本部長の大チョンボで憲法審査会開催のメドすら立たないのだ。下村が改憲審議に乗ってこない野党を「職場放棄」と批判したことに野党が猛反発。下村は発言の陳謝・撤回に追い込まれ、衆院憲法審の幹事就任も辞退させられた。
安倍が自分の意向に沿って国会の改憲論議を進めさせようと、憲法ド素人である子飼いの側近を本部長に抜擢したことがそもそもの間違いなのだが、後の祭りだ。
結局、ありとあらゆることが停滞し、焦りまくる安倍が、プーチンがまいた毒入りのエサに飛びついた、ということなのである。
国際ジャーナリストの春名幹男氏が言う。
「第2次大戦末期に旧ソ連は国際法違反によって日本へ侵攻し、北方領土を奪ったわけです。日ロの研究者がこうした歴史をまとめ、北方4島が日本の主権下にあることは過去、ロシア側も分かっていた。内政や外交で問題を抱えている安倍首相は、そうした歴史を踏まえることなく、プーチン大統領の仕掛けた罠にハマってしまうのではないか。国際的にも、日本は何でも譲歩してしまう甘い国だとみられてしまいますよ」
毎度毎度、大風呂敷を広げた揚げ句、すべてが尻すぼみ。口先だけ、やってる感だけの目くらましで、空虚なアドバルーンを揚げ続ける安倍政治には辟易する。大メディアも「北方領土交渉加速化」なんて持ち上げているが、首脳会談翌日のプーチンの態度で分かるようにその見通しは甘くない。またもや安倍は、プーチンの手のひらで踊らされている。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2018/11/16 17:00
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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ |
安倍首相は3選を決めた直後の10月5日、首相官邸で開催された未来投資会議でこう語った。
「生涯現役社会の実現に向けて、意欲ある高齢者の皆さんに働く場を準備するため、65歳以上への継続雇用年齢の引き上げに向けた検討を開始します」
つまり、65歳定年延長どころか「70歳まで働かせる社会」をつくる「政府方針」を明らかにしたのだ。
高齢者の雇用年齢の引き上げは始まっている。5月末には空調事業の大手ダイキン工業が、定年を60歳から65歳に引き上げ、希望すれば70歳まで再雇用する方針を発表した。いよいよ、70歳まで働く雇用政策が現実化しつつあるのだ。
人生100歳時代を迎える中で、より長く働くことはいいに違いない。しかし、70歳まで働かされるということは、年金の受給開始も70歳からになることがセットになる。政府の狙いがそこにあるのは明らかだ。
70歳まで働く社会はどうなるか――。経済アナリストの森永卓郎氏が言う。
「今、70歳定年がある民間企業はほぼ6分の1で大部分は再雇用、勤務延長で、給与は半分から3分の1に下がります。今後は人手不足から外国人労働者が導入され、さらに賃金水準は下がる。しかし、年金支給が遅くなるため低賃金でも働かざるを得ない。そんな社会になるということです」
安倍政権になり、人口減少から就業者は増えたが、急増したのは低賃金で働く高齢者だ。では、定年後の高齢者はどんな仕事をしているのか、再雇用の現場について、大手電機メーカー幹部がこう言う。
「役職定年者はまず人材開発関連の子会社に移り、そこで再雇用の会社を紹介されます。しかし、キャリアを生かせる仕事はほとんどありません。中にはグループ会社が手掛ける現場の交通整理の仕事を斡旋される人も少なくありません」
さらに、再雇用されても、現場の社員は元管理職に遠慮し、一方、元管理職は現場に口出しするなど、部署内の環境はギクシャクしてくるという。
データブック「国際労働比較2018」(労働政策研究・研修機構)によると、65歳以上の男性労働力率は日本は31.7%、米国24.0%、英国14.4%、ドイツ9.3%だ。すでに日本人は十分働いてきているのだ。
「65歳を過ぎれば肉体的にもきつい。それでも生きていくため、低賃金でも必死に働かなければならない社会になるんです」(森永氏)
70歳まで働かされる働き方改革で、老後の豊かな生活が待っているとは思えない。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2018/10/25 06:00
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【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2018/10/25 06:00 |
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臨時閣議で増税を表明(C)共同通信社 |
この政権に任せていたら、どれだけ増税しても足りやしない。バラマキと公務員の昇給、米国のご機嫌取りに使われるのがオチだ。
安倍首相が15日、臨時閣議で消費税を19年10月から予定通り10%に引き上げると表明。増税による影響を和らげるための対策を各省庁に指示したというが、景気が悪化すると分かっていながら、なぜ消費税率アップを強行するのか。1年も前から、全省庁を挙げて対策の準備が必要になるような悪手なら、消費税増税なんてやめればいいのだ。
「消費税を8%に引き上げた時も景気は落ち込みました。何兆円もの購買力を奪うのだから当たり前です。しかも、安倍政権の6年間で実質賃金は下がり、社会保険料の負担増や所得税の控除縮小で可処分所得は減り続けている。家計支出が低下している中で、消費税を上げればどうなるか。庶民生活は破綻してしまいます。どんな対策を講じたところで、小手先対応ではどうにもならない。ただでさえ、世界同時株安などで景気が底割れの懸念もあるのです。今はまだ2020年の東京五輪需要で持っていますが、五輪後の大不況は避けられません。そんな時に消費税を上げるなんて、狂気の沙汰です」(政治学者の五十嵐仁氏)
安倍は「引き上げによる税収のうち半分を国民に還元する」とエラソーに言っているが、そもそも税金は、国民に再配分するために徴収しているのだ。消費税8%への増税だって、社会保障制度を充実させるためというから、国民もシブシブながら受け入れた。それが、実態はどうだ。少しでも社会保障が拡充されたか? 年金カットに支給先送り、生活保護カット、介護保険料アップ……。社会保障制度の財源確保のための増税なんて、嘘っぱちなのだ。
「今回の増税も、『全世代型社会保障制度』への転換とのセットとされていますが、社会保障を持ち出すのは、国民をごまかすための方便でしかありません。消費税を8%に増税してから、肝心の社会保障費を削って軍拡予算を増やしてきたのが安倍政権です。しかも消費税を上げる一方で、法人税はどんどん下げている。消費税は低所得者ほど逆進性に苦しめられるのに、庶民から召し上げて、大企業を優遇し、格差を広げてきた。これはもう詐欺というレベルではなく、国民生活を破壊する行為です」(経済アナリスト・菊池英博氏)
法人税をいくら引き下げても経済効果がないことは、大企業の内部留保が証明している。6年連続で過去最高額を更新し、17年度には446兆4884億円に達した。安倍政権発足前の11年度末から160兆円以上も積み上がったことになるが、これが賃上げに回ることはない。庶民生活は貧しくなる一方だ。
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8%でもカツカツなのに…(C)日刊ゲンダイ |
大企業が儲かっているなら、法人税を上げたらどうなのか。所得税で富裕層から取る方法もある。だいたい、アベノミクスで空前の好景気とうたいながら、庶民の給料が上がらず、負担が増える一方なのはなぜなのか。
経済学者のスティーブン・ランズバーグは「政府が新たな歳入を再分配せず、無益なプロジェクトに支出すれば、社会はそれだけ貧しくなる」と指摘した。増税分がどこに消えているのか、きっちり説明してもらいたい。
この消費税増税は、何から何までデタラメの極みだ。そもそも消費税が弱者いじめの金持ち優遇策であるというだけでなく、増税対策とされるメニューがまたヒドイ。酒と外食を除く飲食料品に軽減税率を適用するというが、こんなのインチキもいいところだ。
「軽減税率と聞くと、税負担が軽くなるように錯覚しそうになりますが、現行8%に据え置くというだけの話で、軽減ではなく“継続税率”です。負担軽減策でも何でもない。生活必需品は非課税にするなら分かりますが、1000円の食料品を買って、支払いが1100円か1080円かの違いしかありません」(五十嵐仁氏=前出)
何もないよりはマシとはいえ、8%据え置きの軽減税率では低所得者の痛税感を緩和する効果はほとんどない。メリットが大きいのは高級食材で自炊できる富裕層だ。庶民にも恩恵があるかのように書く新聞報道にだまされてはいけない。
「軽減税率がいかがわしいのは、恣意的に特定の業界・業種を優遇できるところで、ワイロの温床になるのです。適用を求める業界は自民党に献金し、役人に天下りポストを用意する。大新聞はカネではなく論調を差し出す。メディアがまともに機能していれば、安倍政権はとっくに退陣に追い込まれていました。ところが軽減税率にあやかりたい大新聞は、時々批判するフリだけで、本質的な問題には切り込まない。ヤクザ者にケンカの仲裁を頼んだら、骨の髄までしゃぶられるに決まっています。権力にオネダリしてしまった新聞は、民主主義社会の必要条件である権力を監視する機能を果たせなくなった。だいたい、社会保障制度を維持するために消費税増税が必要だといって国民に痛みを強いておきながら、自分たちだけ特別扱いしてもらおうなんて、おかしいのです。これで、いざ軽減税率の適用が確定するまで大新聞は政権批判をできなくなったし、今後さらに消費税を上げる段にも、軽減税率を8%のままにするか10%にするかの攻防がある。未来永劫、政権には逆らえないということです。そんな大新聞が書く政府の増税対策なんて、デタラメばかりと思った方がいいでしょう」(消費税問題に詳しいジャーナリストの斎藤貴男氏)
増税実施を1年も前に表明したのは、憲法改正に向けてメディアを飼いならしておく魂胆もあるのだろう。
軽減税率の他に挙がっている増税対策も、住宅や自動車を購入する人を税制と財政で支援する、幼児教育や低所得者の大学無償化を着実に実施、中小の小売店でキャッシュレス決済すれば2%分をポイント還元など、効果が疑わしいものばかりだ。
住宅や自動車は庶民がそう頻繁に買うものではないし、幼児教育の無償化にしたって、生活保護世帯や非課税世帯はすでに無料もしくは低額だから、恩恵を受けるのは、むしろ高所得世帯だ。
「いま政府が増税対策と称しているものは、すべて大企業と富裕層のための対策です。消費税増税で苦しむ消費者や中小企業のためではない。住宅や自動車購入の優遇措置は、その業界が困らないようにということです。2%のポイント還元なんて、中小イジメとしか思えません。現金商売でやっているところは、キャッシュレス決済のための設備を導入しなければならないし、カード決済では手数料も取られる。クレジットカードを持っていない人には還元されないのかという問題もある。要は増税対策を名目にして、政府がキャッシュレス化を進めようとしているだけなのです。誰がいつどこで何を買ったか把握できて、マイナンバーと連動させれば、あっという間に監視社会の出来上がりです。消費税そのものが、弱者がより多く負担する汚い税ですが、その対策も腐りきっています」(斎藤貴男氏=前出)
この増税にも、対策にも、一分の理もないことが分かる。だいたい、消費税増税の前提だった議員定数削減はどうなったのか。学校建設や武器輸入で安倍のお友達を喜ばせるために、税金を納めているわけではないのである。
ハッキリしているのは、この人でなし政権が続くかぎり、増税しても社会保障の充実は望めないということだ。人生100年時代などと言って死ぬまで働かせ、病気になれば自助を強いる。なけなしの税金は、安倍のバラマキ外遊やバカ高いだけで役立たずのイージス・アショア代に消えてしまう。それでも国民は黙っていられるのか。
今回の安倍の増税表明で、さすがに政権の醜悪な正体に気づいたはずだ。
【出典】日刊ゲンダイ 公開日:2018/10/16 17:00
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マスコミに載らない海外記事
2018年9月20日 (木)
日本は敵対的なアメリカの軍事的衛星国だという、ロシアの極めて現実的な懸念を無視して、千島列島と引き換えに、わずかばかりの経済投資の可能性をちらつかせる、彼のロシア政策丸ごと冗談だったのだ。
Gilbert Doctorow
2018年9月15日 土曜
Russia Insider
第4回東方経済フォーラムは、9月12日水曜日に全体会議を行い、主催者のウラジーミル・プーチンや、様々な北東アジア指導者の重要な演説があったが、世界のマスコミからはほとんど注目されず、経済、地政学、国防分野における分析材料の宝庫のごくわずかな部分だけを強調している。
演説後の質疑応答で、スクリパリ事件について発言し、一週間前イギリスのテリーザ・メイ首相が、軍諜報機関(GRU)工作員として名前を挙げたロシア人容疑者は、自ら現れており、犯罪人ではなく、普通の市民に過ぎないと述べたウラジーミル・プーチンのうまく仕組まれた発言を取り上げたものもある。
近くのロシア極東で、ソ連時代以来見られない規模で、中国とモンゴルの部隊も初めて参加して行われているヴォストーク-18軍事演習に注目したものもある。専門家間では、ロシアがあげた兵力数(兵士300,000人、航空機、1,000機、戦車と装甲兵員輸送車、36,000輌)を巡り、水増しではないか、あるいは演習は、短時間で、7,000
kmのロシア連邦を横断するロシアの戦力投射能力を実証しているのか議論されている。
フィナンシャル・タイムズなど、ごくわずかが、フォーラムがその真価とする経済的重要性を検討している。FTは、ロシア極東とロシア連邦全般に対する継続中の中国投資の背後にあるリスク計算にまつわる記事を掲載した。
私の知る限り、主要評論家は、誰も北東アジア指導者間の力学を検討していない。
フォーラム正式開催の前日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、主要賓客、中国国家主席習近平と二国間会談を行った。日本の安倍晋三首相とも会った。いずれの場合も、会談後、マスコミに対して、重要で価値ある長い声明が出された。
だが、より興味深いのは、全体会議で、五カ国の指導者全員演壇に上がったことだった。ロシア、中国とモンゴルの大統領、日本と韓国の首相が一緒に座り、お互いの演説を聴き、質問に答える姿を見るのはまれなことだった。
質疑応答は、ロシアの経済政治フォーラムの最近の伝統を破って、司会が、遠慮がちな質問や、クレムリンで、権威主義的連中に立ち向かい、欧米聴衆を喜ばせるためのいじめ質問をするNBCやブルームバーグの人間ではなく、ロシアで最も有能で、最も視聴率の高いテレビ・ジャーナリストの一人、セルゲイ・ブリリョフ(ロシヤ-1)だったことから、一層興味深いものになった。
彼の質問は事前にクレムリンと調整されている可能性が高く、これまで、このようなフォーラムで見てきたどれより徹底して示唆に富むものだった。
それ以降のことに関しては、同僚ジャーナリストの目を引かなかったように見える議事の極めて重要で、明白な特徴に注力したい。指導者たちの演説と公的会談が、安倍晋三と地域における日本の政治的位置について一体何を語っているかだ。
完全なライブ報道、解説無しの、全体会議演説、フォーラム開催に先立つ二国間会談後のウラジーミル・プーチンと賓客たちの記者会見や、フォーラム内や周囲での他の重要な場面を、ロシア国営テレビが、世界中の聴衆に報じてくれるおかげで、こっそり聞き耳を立てる特権的監視所のような立場を利用して、私はこれをしている。
時差のため、北アメリカの、私の同僚たちはぐっすり眠っていたかも知れないが、ヨーロッパでは、極東からのロシア放送は朝食時間か、それより遅い時間に当たるので、興味をそそられる画像や演説を新鮮な気分で見ることが可能だ。
最初に、安倍首相は仲間外れだったことを指摘せねばならない。彼は全体会議での演説を主に、この世代のうちに、彼自身とウラジーミル・プーチンの任期中に、ロシアとの平和条約を締結しようという嘆願に割いた。対照的に、他の外国指導者全員が、彼らのロシアと極東地域における、進行中および計画中の大規模投資活動を生き生きと語った。
安倍には、ロシアとの他の国々の協力に匹敵するようなものがほとんどなく、ロシアにおける取るに足らない日本の取り組みに人間的な顔をかぶせるはずのビデオを上映して補おうとした。映画は、二年前に、全て、二国間関係を新たな高みへと導くため、安倍が提示し、ロシアが受け入れ、日本がロシアで実施している150のプロジェクト中の様々な医療関連やハイテク関係のプロジェクト(交通管理、廃棄物処理)の概要だ。
日本のプロジェクトは皆安上がりだ。全てが規模の上で実にささやかで、東京が言う通りにロシアが平和条約を調印さえすれば、つまり南千島四島の日本主権への返還に同意すれば、人々の生活向上のため日本がロシアに授けることができる偉大な支援を示唆するよう仕組まれている。
ロシアにおける日本の協力プロジェクトにまつわるビデオと詳説の効果は、安倍が意図していたであろうものと真逆だ。だが、それは現在のロシアと日本の交渉上の相対的立場に対する彼の全く時代後れの理解と完全に一致している。
映画編集上の偏向は全く一方的だ。豊かで技術的に優れた日本が、感謝に満ちたロシアに手を差し伸べるのだ。これは、全ての参加国が、いかに開発計画の緊密な協調や、相互の貿易と投資でお互いに助け合うかと言って、フォーラムで語る他の外国指導者たちの全体的主題と矛盾する。
液化天然ガス輸出用のロシア向けの高度な船舶の主要輸出国でありながら、ウラジオストック近くのロシア最大の造船複合体建設(ズヴェズダ)への韓国の参加に触れた韓国首相のプレゼンは、このバランスのとれた、双方共に利益を得られる取り組み方に見える。
北朝鮮との関係が正常化され次第、トランス-シベリア経由、更にはヨーロッパへの鉄道輸送を実施したいという韓国の熱意だ。スエズ運河経由、あるいは海上輸送で、アフリカの角を周回する航路の代替としてロシアが開発したがっている北海航路インフラへの韓国参加もそうだ。
ロシアとの共同エネルギー・プロジェクト、ロシアの鉄道と港湾インフラ経由での石炭出荷拡大の既存と計画中両方の計画/希望を説明するモンゴル大統領の演説でもこれを見た。
ロシアに対する安倍晋三の手法は、日本が力強いアジアの虎として、世界的尊敬と羨望を享受し、アメリカ合州国の不動産をあちこちで買い占めており、ソ連が、景気衰退ではないにせよ、深刻な景気停滞にあり、エネルギー資源の新たな買い手と新たな投資家を探している時期の1970年代と1980年代にさかのぼる。
現在中国は、日本が40年前に、そう装っていた戦略的パートナーの地位を占めている。中国はロシアの主要な融資家で、投資家で、顧客だ。中国は日本が昔そうであり、今もそうであるような、ハイテク供給者として、高い位置にはないかも知れないが、民間航空分野などのハイテク共同開発で、中国はロシアと対等のパートナーだ。
現在の中国貿易と投資の重要性は、フォーラムで目立つメッセージの一つだった。二国間交渉後の記者会見で、ウラジーミル・プーチンは、中国との二国間貿易は今年20%以上伸びて、1000億ドルを上回ることを認めた。一方、全体会議での演説で、1000億ドルという数値が再び現れた。今度は、極東やバイカル地域に対する中国-ロシア共同投資プロジェクトの価値の数値化だ。
この背景に対し、日本の投資規模と安倍の150の協力プロジェクト全体は二桁小さい。こうした“ニンジン”で、日本の条件に同意し、平和条約締結するようロシアを動かせるという考えは全く非現実的だ。
安倍は、主権放棄にロシアが抵抗している点を意図的に無視して、南千島の共同統治のための鼻薬を提案した。本当の問題点を、全体会議中のウラジーミル・プーチンへの質問で、セルゲイ・ブリリョフが直接提起した。
北方諸島が、もし日本主権になれば、アメリカ軍事基地の更なる駐留基地、特に弾道弾迎撃ミサイル装置配備地になるというロシアの懸念を二人の指導者は話し合わなかったのか。プーチンは話したと言ったが、安倍は平和条約締結への障害として、無視することを選んだ。
求められている平和条約を実現するための“ふとおもいついた”提案だと言って、プーチンは演壇で、二国は“前提条件無しに”年末までに平和条約調印を進めようと提案した。そこで、友人となってから、両国はより強い相互信頼で、北方諸島のような厄介な問題に取り組むことができるだろう。この提案を、後に安倍は始めて聞いたと認めたが、後で同席していた日本人外交官が実行不能だと切り捨てた。
言い換えれば、ロシアが日本を、アメリカ合州国とペンタゴンの「隠れ馬」と見なしている限り、ロシアは主権の譲渡に同意しない。しかも、フォーラムでの彼の振る舞いで、またしても安倍は、ロシアといかなる協定を結ぶよりも、核の傘のため、ワシントンのご主人への服従が、彼にとって、より重要であることを示したのだ。
演壇の5人の指導者中で彼だけ、ドナルド・トランプの名を挙げた。斬新かつ大胆に北朝鮮に手を差し伸べ、金正恩とサミット会談をしたと、度を超したトランプ称賛をした。最初に、更に再度、南北朝鮮間や、アメリカと北朝鮮間の会談を建設的大団円に導いた韓国指導者文在寅の取り組みに、彼は全く触れなかった。
フォーラムで明らかになった、そしてそれを更に遥かに超える地域の戦略的、大規模経済統合の地図のどこにも日本の姿はない。他の結束力は、中国の一帯一路構想とユーラシア経済連合だ。
安倍晋三の日本は、北東アジアにおける日本の地理的、事業的環境からほとんど切り離された、アメリカ前哨基地のままだ。日本は地域全体を活性化している活力に満ちた過程を見逃している。
フォーラムで、中国は2,000人を超える実業家と政府の代表団を擁する最大の参加国だった。フォーラムで明らかになった安倍晋三のような生気がなく、小心なリーダーシップの下、日本は日の沈む国となる運命にある。
【出典】Gilbert Doctorow
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But then his entire Russia policy has been a joke -- dangling the prospect of measly economic investments in return for the Kuriles while ignoring Russia's very real concern that Japan is a military satellite of a hostile USA
Gilbert Doctorow Sat, Sep 15, 2018 | 26,920 104
The 4th Eastern Economic Forum which held its plenary session on Wednesday, 12 September and heard important addresses from its host, Vladimir Putin, and from a constellation of Northeast Asian leaders, has received a smattering of attention in the world press, highlighting only a few elements in what has been a cornucopia of material for analysis in the economic, geopolitical and defense spheres.
Some picked up Vladimir Putin’s well planted remarks in questioning following his address, when he commented on the Skripal case, saying that the Russian suspects named a week ago by British Prime Minister Theresa May as military intelligence (GRU) operatives had presented themselves and were just ordinary citizens, not criminals. Some turned their attention to the Vostok-18 military exercises going on nearby in the Russian Far East on a scale not seen since the days of the Soviet Union and with participation of both Chinese and Mongolian units, a first of its kind. There were discussions among analysts over whether the numbers of forces named by the Russians (300,000 fighting men, 1,000 aircraft, 36,000 tanks and armored personnel carriers) were not inflated and whether the exercise truly demonstrated Russia’s force projection capabilities across the 7,000 km of the Federation in tight timelines. Some very few, like The Financial Times, looked at the economic significance of the Forum taken on its own merits. The FT published an article on the risk calculations behind ongoing Chinese investments in the Russian Far East and in the Russian Federation more generally.
No mainstream commentators to my knowledge have examined the dynamics of the Northeast Asian leaders among themselves.
In the day preceding the formal opening of the Forum, Russian President Vladimir Putin held bilateral meetings with the lead guest, Chinese President Xi Jinping. He also met with Japanese Prime Minister Shinzo Abe. In both cases, the talks were followed by lengthy statements to the press that were substantial and worthy of our time.
Still more interesting were the appearances of the five national leaders present on the dais at the plenary session. It was a rare occasion to witness the presidents of Russia, China and Mongolia, the prime ministers of Japan and South Korea sitting together, hearing one another’s addresses and responding to questions.
The questioning was all the more relevant because, breaking with the recent tradition in Russian economic and political forums, the moderator came not from NBC or Bloomberg, who brought coy or hectoring questions to amuse Western audiences by standing up to the authoritarian in the Kremlin, but from one of Russia’s most capable and most watched television journalists, Sergei Brillyov (Rossiya-1). His questions had likely been coordinated with the Kremlin in advance and were more probing and revealing than anything we have seen hitherto in such formats.
In what follows, I will direct attention to one highly important and obvious feature of the proceedings which seems to have escaped the attention of my peers: what the speeches and public meetings of the leaders tell us about Shinzo Abe and Japan’s political positioning in its region.
I do this taking advantage of the fly-on-the-wall privileged observation post that Russian state television granted to its global audience by presenting full live coverage, without commentary, of the plenary session addresses, of the statements to the press made by Vladimir Putin and his honored guests following their bilateral meetings ahead of the Forum’s opening, and of other significant moments in and around the Forum. While my peers in North America may have been fast asleep, given the time differences, here in Europe the Russian broadcasts from the Far East arrived at breakfast time or later, making it possible to apply a fresh mind to tantalizing incoming images and speeches.
First, it has to be said that Prime Minister Abe was odd man out.. He used his address to the plenary session primarily as a plea for conclusion of a peace treaty with Russia during this generation, during his own and Vladimir Putin’s mandates in office.. By contrast, all of the other foreign leaders spoke glowingly of their ongoing and planned large-scale investment activities in Russia and the Far Eastern region. Abe had little to match their cooperation with Russia and sought to compensate by presenting a video that would put a human face on Japan’s miniscule efforts in Russia. The film was a brief overview of the various health related and technology related projects (traffic management, refuse reprocessing) that Japan is implementing in Russia from among the 150 projects that Abe had presented and Russia accepted two years ago, all to guide their bilateral relations to a new plateau.
The Japanese projects are all on the cheap. All are quite modest in scope and are meant to be indicative of the great assistance Japan can bestow on Russia in improving people’s lives if only Russia signs a peace treaty as dictated by Tokyo, meaning its agreement to the return of the Southern Kurile islands to Japanese sovereignty.
The effect of the video and recitation of Japanese cooperation projects in Russia is quite the opposite of what Abe may have intended. But it is perfectly in line with his wholly outdated understanding of the relative negotiating positions of Russia and Japan today. The film’s editorial slant is all one-way: a wealthy and technologically superior Japan is lending a hand to a grateful Russia. This contradicts the overall theme of the other foreign leaders speaking to the Forum, which is how all the participating countries will help one another by closer coordination of their development plans, by mutual trade and investment.
We saw this balanced and win-win approach in the presentation of the South Korean prime minister, who mentioned his country’s participation in the construction of Russia’s largest shipbuilding complex (Zvezda) close to Vladivostok, while remaining a major supplier of advanced vessels to Russia for transporting liquefied natural gas. Or in South Korea’s eagerness to implement through rail transit to the Trans-Siberian and onward to Europe as soon as relations with North Korea can be normalized. And in the Korean participation in the North Sea route infrastructure for maritime shipping that Russia is keen to develop as an alternative to the routes via the Suez Canal or around the horn of Africa.
We saw this in the address of the Mongolian president describing joint energy projects with Russia and plans/hopes for expanded shipment of coal via Russia’s rail and port infrastructure, both what exists and what is under planning.
Shinzo Abe’s approach to Russia harks back to the 1970s and 1980s, when Japan was enjoying worldwide respect and envy as a dynamic Asian tiger that was buying up properties in the United States right and left and when the Soviet Union was in serious economic stagnation if not decline, looking for new buyers of its energy resources and new investors.
Today China occupies the position of strategic partner to which Japan pretended forty years ago. China is Russia’s major financier, investor and customer. China may not rank as highly as supplier of advanced technology as Japan did back then and continues to be today, but China is an equal partner with Russia in joint development of high-tech, as in the domain of civil aviation.
The present-day importance of Chinese trade and investment was one of the outstanding messages of the Forum. In the meeting with the press after their bilateral talks, Vladimir Putin affirmed that two-way trade with China this year will grow by more than 20% to top 100 billion dollars. Meanwhile, in the addresses to the plenary session the figure 100 billion came up again: this time quantifying the value of the joint Chinese-Russian investment projects directed at the Far Eastern and Baikal regions.
Against this background, the scale of Japanese investment and the whole of Abe’s 150 cooperation projects come in two orders of magnitude less. The notion that these “carrots” could motivate Russia to agree to Japanese conditions for concluding a peace treaty is wholly unrealistic.
Abe’s proffered sweetener of joint administration of the Southern Kuriles intentionally misses the point of Russian resistance to abandoning sovereignty. What is really at issue was brought up directly by Sergei Brillyov in a question to Vladimir Putin during the plenary session: whether the two leaders have not discussed Russian concerns that the Kuriles, if held by Japan, would become yet another stationing point for American military bases and in particular for the installation of anti-ballistic missile units. Putin said they had, but this is something that Abe chooses to ignore as the stumbling block to conclusion of a peace treaty.
In what he described as a “spontaneous” suggestion to achieve the sought-after peace treaty, Putin proposed on stage that the two countries proceed to sign a peace treaty “without preconditions” before the end of this year. Then, having become friends, they might tackle the thorny issues like the Kuriles with more mutual confidence. This proposal, which Abe later acknowledged he was hearing for the first time, was later dismissed as unworkable by the Japanese diplomats present.
Put in other words, Russia does not agree to concessions so long as it sees Japan as a stalking horse for the United States and its Pentagon. And by his performance in the Forum, Abe demonstrated yet again that obedience to his masters in Washington for the sake of the nuclear umbrella is more important to him than striking any deal with the Russians. He alone among the five leaders put the name of Donald Trump in play from the dais: he extended his fulsome praise to Trump for an innovative and brave outreach to North Korea, for holding a summit with Kim Jong-Un. No mention on his part of the initiative shown first and shown again most recently by the South Korean leader Moon Jae-In to bring the talks to a constructive finale between the Koreas and between the USA and North Korea.
Japan is nowhere on the map of strategic and large-scale economic integration of the region that includes but goes well beyond what was on show in the Forum. The other binding forces are China’s Belt and Road initiative and the Eurasian Economic Union. Shinzo Abe’s Japan remains a US outpost largely cut off from its geographical and business environment in Northeast Asia. It is missing out on the dynamic processes energizing the whole area. At the Forum. China was the single largest player with its delegation exceeding 2,000 businessmen and government representatives. Under leadership as stale and timid as Shinzo Abe proved to be at the Forum, his country is fated to become the Land of the Setting Sun.
Source: Gilbert Doctorow |
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古賀茂明「安倍外交が完全破たん?プーチン、トランプと隙間風で頼みは
大嫌いな習近平?」〈dot.〉 2018/9/17(月) 7:00配信 AERA dot. |
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データ操作を報じる西日本新聞(公式ウエブサイトより) |
「真っ当な経済を私たちは取り戻すことができました」──総裁選への出馬表明会見でそう胸を張った安倍首相に、経済データの“恣意的な操作”疑惑が浮上した。厚労省が発表している賃金関連統計である「毎月勤労統計調査」が今年に入ってからデータ作成手法を変えたことで、統計上の賃金が高めになっていると12日付けの西日本新聞が報じたのだ。
問題の「毎月勤労統計調査」は、厚労省が全国約3万3000の事業所から得た賃金や労働時間のデータをまとめたもので、従業員に支払われる「現金給与総額」(名目賃金)などが公表される。これが今年に入ってから月ごとに発表される前年比増加率が昨年の平均0.4%を大きく上回るようになり、8月に発表された6月の同調査では、労働者1人当たりの現金給与総額(名目賃金)の平均が速報で前年同月比3.6%増を記録(確報は3.3%)。「21年5カ月ぶりの高水準」「アベノミクスの成果」などと報じられた。
だが、これにはカラクリがあった。これまで「毎月勤労統計調査」では、調査対象事業所のうち30人以上の事業所については2~3年ごとに無作為抽出した事業所に総入れ替えしていたが、今年1月分の調査からいろいろな名目をつけて半数弱を入れ替える方式に変更。しかも、従来は総入れ替え時におこなっていた指数や増減率の遡及改訂を取りやめたのだ。これでは正しい比較はできないだろう。
結果、どうなったのか。たとえば、前年比3.3%増となった6月も、入れ替えられなかった事業所だけで集計した参考値では1.3%増でしかなく、2.1%増と公表された5月も0.3%増にしかならない。
つまり、名目賃金が高い伸び率を記録しているのは「アベノミクスの成果」などではなく、恣意的な作成手法の見直しによって“かさ上げ”されていると考えられるのだ。
さらに、西日本新聞は13日付け朝刊でも続報を展開し、今度は内閣府の「雇用者報酬」も過大に推計されている可能性を指摘。この「雇用者報酬」は問題の毎月勤労統計を用いているために、同様に上振れしているというのだ。
だが、問題はこれだけにとどまらない。じつは西日本新聞が名目賃金の数字の嘘を指摘した12日、東京新聞もアベノミクス最大の問題を追及。そう、名目GDPのかさ上げだ。
安倍首相は自民党総裁選でも、名目GDPが過去最高の551兆円となったことを大々的に喧伝し、「戦後最大のGDP600兆円を実現」を目標に掲げている。
しかし、本サイトでもたびたび指摘してきたように、この名目GDPも恣意的に導き出された数字だ。というのも、安倍政権は2016年にGDPの推計方法を変更し、「研究開発投資」なる項目を追加して加算するなどの見直しをおこなった。その結果、2015年度の名目GDPは、旧基準では500.6兆円にしかならないところが532.2兆円に跳ね上がったのである。
この名目GDPのかさ上げをはじめとする「アベノミクスの成果」の嘘をデータをもとに検証した『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル)の著書である弁護士の明石順平氏は、東京新聞の取材に対し、「(建設投資の推計手法の変更など)国際基準とは関係ない部分の上げ幅が、安倍政権の時期だけ突出して大きく、都合よくデータを選んでいることが疑われる」と答えているが、これこそが安倍政権の特徴であり詐術と言えるだろう。
事実、安倍首相が「70年振りの大改革」の目玉にした「裁量労働制の拡大」では、安倍首相が「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者より短いというデータもある」と答弁。しかし、そのデータは実際には1日の残業時間が1カ月分より長いという異常値が大量に見つかるなど完全にデタラメなシロモノだった。さらに、「高度プロフェッショナル制度の創設」でも、安倍首相は「労働者のニーズに応えるもの」などと述べていたが、その肝心の労働者の聞き取り調査の内実は“ヤラセ”というべきもので、完全に後付けの杜撰なものだったことが判明している。
政治の私物化を隠蔽するために公文書を改ざんし、作為的に都合のよい数字をつくり出して国民を欺く──。安倍首相は総裁選でこのほかにも都合のいい数字を並べ立ててアベノミクスの実績を前面に押し出しているが、それは嘘やカラクリに塗り固められたものだと暴いていくしかない。西日本新聞や東京新聞といったブロック紙の奮闘に、他のメディアもつづいてほしいと願うばかりだ。
(編集部)
【出典】 LITERA 2018.09.14
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日銀・黒田総裁(C)日刊ゲンダイ |
「このままアベノミクスを続けて本当にいいのか」――。総裁選の最大の争点は、アベノミクスなのではないか。5年続けた「異次元緩和」が、いよいよ限界に近づいてきたからだ。
大新聞テレビは伝えようとしないが、企業業績が一気に急降下しそうなのだ。SMBC日興証券の集計によると、上場企業の2019年3月期の最終利益は、2・1%減の減益になる見通しだという。中でも、銀行は8・2%も減少するという。
5年間「異次元緩和」を続けた安倍政権は、市場にマネーを大量に流すことで「円安」と「株高」を演出し、企業業績をアップさせてきたが、さすがに無理なやり方は限界に達しつつある。
「本来、金融政策は主役ではありません。“3本の矢”でいえば、主役は、あくまで“成長戦略”です。しっかりした成長戦略がないと、強い経済にはならない。金融政策だけでは、どうしても限界があります。その証拠に、株価も2万2000円で頭打ちとなっています。このままアベノミクスを続けても、景気が上昇することはないでしょう」(経済評論家・斎藤満氏)
振り返ってみれば、アベノミクスが威力を発揮したのは、最初の2年間だけだった。株価は1万1000円台から2万円へと2倍になり、為替も急速に「円安」が進んだが、その後は完全な頭打ち状態。とうとう企業業績の拡大にもブレーキがかかり、これから急降下が予想されている。
最悪なのは、アベノミクスが限界に達しただけでなく、“副作用”ばかり大きくなっていることだ。
モロに直撃されているのが銀行だ。中でも地方銀行は深刻な打撃を受けている。金融庁によると、何と地銀106行のうち54行が、融資などの本業で赤字に陥っているという。銀行の利益の根幹は、長短金利差である。
ところが「異次元緩和」によって長期金利も急低下し、金利差がなくなってしまった。銀行は利ざやを稼げなくなっている。このままでは、地銀の半数は“救済合併”などで姿を消してもおかしくない。
追い詰められた地方銀行は、とうとう不正にまで手を染めている。超優良地銀だった「スルガ銀行」までが、書類を改ざんするなど不正融資をやっていたのだから、信じられない話だ。
地方銀行が苦境に陥れば、地方経済も疲弊してしまう。
さすがに、日銀OBも「異次元緩和」を批判し始めている。日銀の理事だった安斎隆氏(セブン銀行特別顧問)は、日経新聞「私の履歴書」で次のように語っている。
<金融システムは、金融政策が効果を上げるための「舞台装置」である。舞台装置がしっかりしなければ、いくら金融政策を実行しても効果が出ないし、経済全体も、がたついてしまう。舞台装置が揺らいでしまうのはなぜか。実はその原因は金融・財政政策の失敗にある。金融・財政政策を間違えると舞台装置にしわ寄せがきて揺らいでしまう>
黒田日銀の政策失敗によって、「舞台装置」である金融機関が揺らいでいるのは間違いない。さらに、こう続けている。
<それでは現在はどうか。政府は金融・財政政策に過度に依存しているのではないか><これでは再び舞台装置が壊れ、民間金融機関は自らリスクを取る気迫がなくなってしまう>
日銀の大物OBが、ここまで公然と古巣を批判するのは異例のことだ。前出の斎藤満氏が言う。
「もともとアベノミクスは、銀行に犠牲を強いる政策です。銀行を犠牲にする代わりに景気を良くしようとした。当初の計画通り2年の短期決戦だったら地銀も体力がもったでしょう。でも、5年という長期戦になり、多くの地銀が窮地に陥ってしまった。スルガ銀行をかばうつもりはありませんが、優良地銀だったスルガ銀行を不正融資に走らせた責任の一端は日銀にあります」
金融システムを守るはずの日銀が、地銀を窮地に追い込んでいる。
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金融機関が揺らいでいる(C)日刊ゲンダイ |
このままアベノミクスを続けたら、この国は一体どうなるか。本当に大丈夫なのか。
アベノミクスは国民生活に直結するだけに、総裁選の大きな争点にするのが当たり前だ。なのに、争点になる気配はまったくなく、対抗馬である石破茂も取り上げようとしないのだから摩訶不思議である。大新聞テレビは、「アベノミクス以外に対案がないから経済政策は争点になりづらい」などと、まるでアベノミクスが成功しているかのように報じているが、大嘘もいいところだ。
安倍首相は「安倍内閣の発足以来、5年間で名目GDPは56兆円増えました」などと威張っているが、安倍政権が誇る実績は、ほとんど嘘で塗り固められたものである。
たとえば、GDPが増えたのは、2016年12月に算出方法が変更され、数値が一気にカサ上げされただけの話だ。株価が2万2000円をキープしているのも、日銀、年金、ゆうちょ、共済を総動員して下支えしているからに過ぎない。
もし“公的資金”がなければ、株価はとっくに2万円を大きく下回っているはずである。アベノミクスの成果は一事が万事、この調子。ほとんど粉飾である。筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)がこう言う。
「大手メディアの報道を真に受けている国民は、『とりあえず景気はいいらしい』と思い込まされているようですが、完全に騙されています。潤っているのは、大企業と富裕層だけです。地方は廃れ、商店街はシャッター通りとなっている。そもそも、一番大事な労働者の実質賃金は増えていません」
トリクルダウンは、どこにいったのか。
このままいったら、日本経済は年末にも暴風雨に突入しかねない。上場企業が19年3月期の最終利益を減益になると予想しているのも、年末から年明けにかけて景気が急速に冷え込むとみているからだろう。
ヤバイのは、日本経済が危機に直面しても、すでに異常な低金利政策を続けている黒田日銀には、打つ手が残っていないことだ。
しかも、メガバンクも地銀も体力を失っている。日本経済は、地方を中心に、なす術もなく海底に沈む恐れがある。
「異次元緩和は本来、カンフル剤や麻薬みたいなものです。劇薬が効いている間に手術を行い、“成長戦略”を実行に移す必要があった。ところが、5年経っても成長戦略はひとつも出てこなかった。電気自動車にしろ、IoTにしろ、世界で戦える新産業はまったく育っていない。この5年間、安倍首相は何をやっていたのか。銀行を疲弊させただけです。しかも、粉飾した数字を掲げて『アベノミクスは成功している』と吹聴している。神経を疑いますよ。その揚げ句、カジノが最大の成長戦略だというのでしょう。バクチを成長戦略にする国が、どこにありますか。総裁選に出馬する石破茂も、『政策論争をしたい』と口にしながら、どうしてアベノミクスの問題点を突かないのか。大手メディアも、アベノミクスの是非を問おうとしない。どうかしていますよ」(小林弥六氏=前出)
“安倍3選”となったら、アベノミクスは続くことになる。国民は覚悟した方がいい。
【出典】日刊ゲンダイ 2018年8月23日
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首相官邸ホームページより |
また安倍首相の“北朝鮮やるやる詐欺”が始まった。安倍首相は、16日に生出演した『ウェークアップ!ぷらす』(読売テレビ)で日朝首脳会談について「拉致問題の解決に資する会談にしないといけない」と述べ、前向きな姿勢をアピールした。しかし一方で、西村康稔官房副長官は17日朝、『報道プライムサンデー』(フジテレビ)に出演し、「(日朝会談を)8月や9月までにやるのは難しい」と漏らした。こちらが安倍首相の本音だろう。
ようするに、日朝会談をやるというポーズはとっているものの、実際にやって全面解決ができなければ、政権に大きなダメージとなり、自民党総裁3選もおぼつかなくなる。そこで、9月の総裁選よりあと、できればもっと先に伸ばしていく作戦らしい。
そして、この“やるやる詐欺”を隠すために、官邸はいま、御用マスコミに「拉致被害者を取り戻せるのは、これまで北朝鮮と渡り合ってきた安倍首相しかいない」というストーリーを拡散させるよう、大号令をかけている。
「たしかに、安倍首相の側近たちがここにきて一斉に『北朝鮮に騙されず交渉できるのは、安倍首相しかいない。小泉訪朝のときも安倍さんがいたから北朝鮮に騙されずに5人を取り戻せた』と、当時の安倍首相の活躍をやたら語り始めています。ようするに、今後、北朝鮮との交渉が遅々として進まない状況が起きても、それは安倍首相が北朝鮮に騙されないように慎重にやっているからだ、というエクスキューズに使うつもりなのでしょう」(全国紙官邸担当記者)
賭けてもいいが、「正論」(産経新聞社)や「月刊Hanada」(飛鳥新社)、「WiLL」(ワック)などの応援団メディアは今後、必ずや「拉致問題を解決するのは安倍首相しかいない!」「安倍首相がいかに果敢に北朝鮮と戦ってきたか」とのキャンペーンを展開していくだろう。“拉致タブー”に縛られたテレビも、こうした大合唱を追従するはずだ。
いや、すでにそれは始まっているのかもしれない。たとえば15日には、産経新聞が朝刊の一面で「北との会談 私の番だ」「私はだまされない」なる唖然とする大見出しを打った。記事によると、安倍首相が14日に「北朝鮮による拉致被害者家族会」のメンバーと官邸で面会した際、〈「私は北朝鮮にだまされない。1994年から拉致問題に取り組んできたが、何度もだまされてきた。北朝鮮のだましの手口は分かっている」と強調〉したという。なお、この面会自体は他紙も報じているが、安倍首相のこの「だまされない」発言を報じたのは産経だけだった。
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(写真)livedoorニュース |
さらに15日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、拉致問題の歴史を振り返る説明のなかで、2002年10月の拉致被害者5人の「一時帰国」について、MCの羽鳥アナウンサーがフリップを使いながらこのような解説を入れていた。
「安倍総理はこの当時、官房副長官でした。このときに、帰ってきた5人に対して『絶対に(北朝鮮に)戻したらだめだ』と。これを戻したら2度とあの5人は戻ってこないということで、安倍さんが結局、戻さなかったんです」
前後の流れとは関係なく、帰国しなかったというエピソードが安倍首相の手柄としてわざわざ語られたのは、明らかに不自然だった。
もし、安倍官邸が“やるやる詐欺”をごまかすために「拉致の安倍」エピソードを再び喧伝しようとしているのならば、あらためて釘を刺しておかなければならないだろう。実は、こうした安倍首相の北朝鮮武勇伝は、ほとんどが安倍氏自らが吹聴した自己宣伝のデタラメである。
その典型が、前述の『モーニングショー』が紹介した「安倍首相が拉致被害者5人の北朝鮮への帰国を止めた」という話だ。
たしかにこのとき、日本政府は当初、拉致被害者5人は一時的な帰国であり、その後北朝鮮に戻すと約束していたが、結果的に5人が日本に「永住帰国」する決断をしたという経緯があった。そして、マスコミでは「安倍官房副長官(当時)が止めた」という話がまことしやかに報道され、安倍首相自身もFacebookで“帰さないという自分の判断は正しかった”と書き込むなど、あたかも自分の手柄のように吹聴してきた。
しかし、これはまったくの嘘である。このことを著書『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)のなかで告発したのは、当時、拉致被害者である蓮池薫さんたちと行動をともにしていた兄の蓮池透氏だ。透氏は今回、本サイトに改めてこう語った。
「安倍さんが弟たちを北朝鮮に返さないように説得したというのは、真っ赤なウソです。少なくとも弟を説得したのは私であり、安倍さんではありません。当時の官房長官だった福田康夫さんが朝日新聞のインタビューで、2002年の10月23日の夕方に安倍さんが官房長官室に飛び込んできて、『携帯で全員の確認を取りました。帰らなくてもよいということでした』という報告を受けたと言っているのですが、私や弟にそんな電話はなかった。そのとき私は弟たちと新潟の温泉宿にいましたが、安倍さんからの連絡なんてひとつもなかったんですから」
透氏によれば、安倍氏は一貫して一時帰国した5名を北朝鮮に戻すとの既定路線を主張し、日本政府はスケジュールを変更できないものとして進めていたという。もし、安倍氏が政府方針に逆らってでも「帰さないという判断をした」というのならば、拉致被害者や家族に対して、その気持ちを暗に伝えたり意思確認するなど何かしらのアプローチがあってしかるべきだ。しかし、安倍氏はそうした行動を一切起こしていない。透氏が当時の状況を振り返りながら続ける。
「断言しますが、当時の安倍さんから『本当は、私は薫さんたちを北朝鮮に戻したくないと思っている』というような言葉を聞いたことは、一度たりともありませんでした。一度もです。弟にとっては、このまま日本に留まり親兄弟をとるか、北朝鮮に戻り子どもたちをとるか“究極の選択”を迫られたのです。生きるか死ぬかというような本当に大きな問題。私は弟を何度も必死で説得しました。それも弟のみならず、国家、マスコミ、多くの国民の皆さんを向こうに回しての本当に孤独な闘いでした。最終的に弟は『北朝鮮には戻らない』と決断してくれた。これは日本政府の方針に逆らうものでしたが、あえて本人の口からその意思を日本政府に伝えたのです。決して安倍さんに説得されたものでも、意向に応えたものでもありません。その葛藤のなかで、もし安倍さんが一言でも『北に戻したくない』と声をかけてくれていたら、どんなに救われたでしょうか。仮定のことを言っても仕方がないですけど、とにかく、安倍さんが弟たちを止めたというのは事実無根です。なのに、新聞でもテレビでもいまだに『安倍総理が戻さなかった』と言い続けている。マスコミの騙されかたをみていると心底残念です。私と弟の闘い、互いの苦悩の末やっとの思いで到達した“決断”を、自分の売名のために安売りすることは非常に不愉快で許されません」
しかも、これは透氏だけが証言していることではない。安倍氏の身内である自民党所属の札幌市議・勝木勇人氏も、2003年1月30日の自身のブログで、当時の安倍氏の言動についてこのように記していた(後に掘り起こされ騒ぎになった後、現在は削除)。
〈(安倍晋三氏は)地村さんたちには、最初、「とにかく一度北朝鮮に戻って、子供を連れて帰国するべきだ」という話をしたそうです。しかし、地村さんたちは、この申し入れを断固拒否したそうです。「一度、戻ったら、二度と帰国はできない」ということだったそうです。「私(安倍)他、政府の人間がたくさん同行すれば、変なことにはならないでしょう」と言うと、「みんなで一緒に行っても、突然銃をもった者が部屋に入って来て、我々を引き離そうとしたら、どうしますか? 安倍さんたちは、その場で何ができますか? 自衛隊も一緒に行ってくれるなら話は別ですが、」と言われ、結局、彼らの言うとおりにしたそうです。〉(現在は削除)
これは同年の1月14日に札幌で行われた「安倍晋三先生を囲む会」に出席した勝木市議が、その席で安倍氏自身が発言した内容として紹介しているものだ。つまり、当時、安倍氏は地村保志さんら拉致被害者に対して「とにかく一度北朝鮮に戻れ」と言ったことを自ら認め、しかも周辺に吹聴していたことになる。つまり、「安倍氏は一貫して5人を北朝鮮に戻すことを既定路線として主張していた」という蓮池透氏の証言にピタリと一致するのである。
しかも、安倍氏の拉致問題をめぐる“武勇伝”の嘘はこれだけではない。2002年9月、当時の小泉純一郎首相と金正日総書記による日朝首脳会談と平壌宣言をめぐっても、「安倍氏が『金総書記が謝罪しなければ席を立って帰国しましょう』と小泉首相に直訴した」なる武勇伝が新聞やテレビでばらまかれた。
しかし、本サイトでも何度も伝えているように、これも事実ではなかったのだ。日朝首脳会談をセッティングし、会談にも同行した田中均・アジア大洋州局長(当時)が、後にフリージャーナリストの取材に対して、安倍氏が署名見送りの進言をしたと発言したことは「記憶にない」と証言している。田中氏はその際、そもそも金総書記が拉致を認めて謝罪しなければ平壌宣言に署名できないのは会談関係者全員の基本認識だったから、わざわざそんなことを言う必要もなかった、という趣旨の解説もしていたという。
「対北朝鮮強硬派」「闘う政治家・安倍晋三」の印象を与える、この有名すぎる逸話も、実のところ偽の情報だったのだ。しかも、その発信源は安倍氏本人だった。実は当時、官房副長官だった安倍氏は帰国後のオフレコ懇談で「僕が首相に言ったんだよ。共同調印は見直したほうがいいって」などと各社に語っていたのだ。このことは複数記者のオフレコメモからも確認されている。
そして、安倍氏はこうした自己宣伝と同時に、日朝首脳会談実現の立役者である田中氏について「北朝鮮の意向で動いている」といったマイナス情報をリーク、世論を煽り、田中氏を悪者に仕立て上げ、拉致問題の主導権を自分の手に握ってしまったのだ。
ようするに、拉致問題で一躍脚光を浴び、総理への階段を駆け上がった安倍氏だったが、実際にはあらゆる手柄を横取り・独り占めにし、でっち上げを拡散して、自分の権力掌握のために政治利用したにすぎない。その結果、拉致問題は安倍氏の意向どおり、圧力一辺倒になり、まったく解決のメドもたたないまま野ざらしにされてきたのである。
そして、それから16年たったいまもまた、安倍首相は拉致問題を本気で解決するのでなく、情報操作を使ったごまかし、政治利用を行おうとしている。
それは、これまで指摘してきた過去の北朝鮮武勇伝デマの再利用だけではない。安倍首相は日朝交渉の担当窓口に、なんと自らの最側近で、謀略情報操作を得意とする“官邸のアイヒマン”こと北村滋内閣情報官を抜擢したらしいのだ。
「この人事には、我々も驚きました。北村氏は元公安でむしろゴリゴリの反北朝鮮ですから、対話のパイプなんてもっているはずがない。むしろ、北朝鮮の反感を買うだけ。にもかかわらず北村氏を日朝交渉担当にしたのは、いろんな北朝鮮に関するいろんなマイナス情報をマスコミにリークさせて、拉致解決できなくてもやむなしという空気を作るためじゃないのか、といわれています」(前出・全国紙官邸担当記者)
この国はいつまで、嘘つき首相に騙され続けるのだろうか。
(編集部)
【出典】LITERA 2018.06.18
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記念撮影では隣同士も…(C)共同通信社 |
どうりで慌てて拉致被害者家族と面会したワケだ。時事通信が8~11日に実施した6月の世論調査で、安倍内閣の支持率は前月比2.6ポイント減の35.5%となった。2012年の第2次安倍政権発足以降、昨年7月の29.9%に次ぐ低水準で、4カ月連続の減少。不支持率は同0.4ポイント増の43.4%で、不支持率が支持率を上回ったのも4カ月連続だ。
支持しない理由(複数回答)は「首相を信頼できない」が31.1%で最多。1年以上続く「モリカケ問題」を通じて、ウソにウソを重ねて国民をダマし続ける安倍首相の人間性に対し、多くの国民が怒りを抱いている実態が明らかになった。
そんなレームダックの安倍首相が総裁3選と支持率回復のために利用しようと必死になっているのが「日朝首脳会談」の開催。複数の日本メディアは、14日にモンゴルで開かれた国際会議「ウランバートル対話」で、外務省の志水史雄アジア大洋州局参事官が、北朝鮮のキム・ヨングク軍縮平和研究所所長と意見交換し、拉致問題についての日本政府の立場を伝えた――と報じたがどこまで本当か怪しいものだ。
というのも、14日にウランバートルの国際会議場の様子を報道したテレビ朝日系「報道ステーション」の映像を見る限り、とてもじゃないが「意見交換」するような雰囲気じゃなかったからだ。映像では、北朝鮮の関係者に対して、中国の関係者が笑顔で話しかけたり、欧州の関係者が名刺交換をお願いしたりする中、日本政府関係者だけが遠くから物欲しそうな顔で眺めているだけ。あまりに情けなくて恥ずかしい姿だった。
対照的に余裕シャクシャクだったのが、北朝鮮の関係者だ。メディアから「日本の代表団と会談しないのか」と問われても、「会っても話すことがない」「話すことがないのに会ってどうするのか」とケンモホロロ。こんな状況で、どう考えても日本が北朝鮮と「水面下の交渉」など出来るはずがない。要するに安倍政権は対北外交でも国民にウソをつき続けているのだ。ウソつき安倍首相を引きずり降ろさない限り、北朝鮮問題は進展しないのだ。
【出典】日刊ゲンダイ 2018年6月17日
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カナダで“成果”をアピール(C)共同通信社 |
与野党候補の事実上の一騎打ちとなった新潟県知事選は、自公与党が支持した前海上保安庁次長の花角英世候補(60)が辛勝した。ウソとデタラメでモリカケ問題の幕引きを図る安倍首相に審判を下すべく、野党6党派は総力戦で元県議の池田千賀子候補(57)を支援したものの及ばず。自公のなりふり構わない掟破りの組織戦に敗れた。
現地で取材にあたったジャーナリストの横田一氏はこう言う。
「国政の影響を排除するため、花角陣営は『県民党』を掲げて“安倍隠し”を徹底していましたが、実態は自公与党の丸抱え。花角候補を擁立した二階幹事長をはじめとする党幹部が連日現地入りして企業や支援団体を丹念に回る一方、勤務時間中の期日前投票を露骨に呼び掛けたり、その成果を記載した調査票の提出を迫るほど締め上げていた。池田候補をめぐる誹謗中傷というほかない悪質なデマも盛んに流されていました」
これで安倍が「信任を得た」とか言い出し、免罪符を得たとばかりにまたデカいツラをするのは目に見えている。
夜郎自大にはホトホトうんざりだが、政権浮揚を懸けて詰め込んだ外遊の「成果アピール」にもヘドが出そうだ。“外交の安倍”の過剰演出である。
10日(日本時間)までカナダで開催されていたG7首脳会議は、米国のトランプ政権がブチ上げた鉄鋼・アルミなどへの輸入関税をはじめとする保護主義的な貿易政策をめぐり対立。侃々諤々の激論が交わされた。
そこで安倍が議論を主導し、調整役を果たしたというのだが、それを触れ回ったのが同席した安倍側近の西村康稔官房副長官。しかもツイッターまで駆使しているのだから、お笑いである。西村は写真入りで<安倍総理が、G7で結束して自由で公正な貿易の推進を発信すべきと議論を主導>と実況中継さながらにつぶやき、<トランプ大統領から「シンゾーの案に従う」と頼られ、安倍総理が「ルールに基づく貿易システムを発展させていく」と提案し、合意につながりました。フランスのマクロン大統領からも「シンゾーの提案のおかげだ。ありがとう」と声をかけられていました>ともツイート。ここまでくると、読むほうが気恥ずかしさを感じるほどである。
もっとも、厚顔無恥な安倍はさにあらず。史上初の米朝首脳会談を控える北朝鮮に対して上から目線の発言を連発。「(非核化に向けた)具体的な行動を取らせることが必要不可欠だ」とか、「北朝鮮には豊富な資源と勤勉な労働力がある。北朝鮮が正しい道を歩むのなら、明るい未来を描くことも可能だ」などと、相変わらずの高飛車な態度で日朝首脳会談の実施を呼びかけたが、こうした安倍のセリフの一つ一つがおそらく、北朝鮮の神経を逆なでしているのだろう。朝鮮労働党機関紙の論評などを通じ、北朝鮮は安倍批判をヒートアップさせている。
デイリーNKジャパン編集長の高英起氏は言う。
「北朝鮮は対米追従の安倍政権を〈カメレオンとも比較にならない〉とコキおろし、〈「政治的ジェスチャー」というくだらない話ばかりするマヌケ〉などと非難を繰り返しています。安倍首相の言動が金正恩党委員長のカンに障っているのは間違いありません。そうでなくても、日朝首脳会談の開催は相当にハードルが高い。安倍政権は拉致問題解決を前提にした経済協力を提案していますが、信頼関係がまったくない日朝間の現状では肝心な部分の協議ができず、いつまで経っても堂々巡りなのです」
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シンガポール入りした金正恩委員長はすぐさまリー首相と会談(C)ロイター |
安倍は二言目には「拉致問題の解決は安倍内閣の最重要課題だ」と言うが、この5年半、状況は1ミリも進展しなかった。こんな政権にいまさら日朝首脳会談などできるのか。朝鮮半島情勢に詳しい東京新聞論説委員の五味洋治氏は日刊ゲンダイのインタビュー(4月6日付)で、北朝鮮をめぐる安倍外交をこう指摘していた。
〈北朝鮮がミサイルを発射するたびに、「政府は北朝鮮に対し、北京の外交ルートを通じて厳重に抗議した」と報じられ、拳を振り上げて怒りを表明したかのようですが、実際は北朝鮮大使館にファクスを送っているだけなんです〉
南北首脳会談でも金正恩朝鮮労働党委員長が「(拉致問題について)韓国や米国など周りばかりが言ってきているが、なぜ日本は直接言ってこないのか」と口にしていたという。手だてに窮した政府高官が日本生まれの金正恩の母親の親族を頼り、金正恩に宛てた手紙を託したものの、封も開けられずに戻ってきたとも報じられた。
ルートなし、人脈なし、戦略なし。ナイナイ尽くしのくせに、拳を振り上げていたポンコツ首相の成れの果てがトランプへのしがみつきだから、語るに落ちる。
「トランプ大統領は選挙中、オバマ政権がイランで拘束された米国人解放にあたって“身代金”を支払ったと非難していましたが、先日解放された米国人3人をめぐり、北朝鮮と何らかの取引をしたようなのです。口添えはしてやる、後はわれわれと同じようにやればいいじゃないか。トランプ大統領はこう考えているフシがある。それで早々から日本に対北経済支援を仕向けているようです」(日韓関係筋)
政府が認定した拉致被害者は12人だが、拉致の可能性がある行方不明者は800人を超える。安倍は一体何をもって「拉致解決」とするのか。
「北朝鮮からすれば拉致問題は解決済み。ストックホルム合意による再調査報告書の受け取りを拒んだのは安倍政権なのに、何をガタガタ言っているんだという認識なのです。安倍首相が救出を訴える横田めぐみさんを死亡とする従来結果は覆っていません。3年以上にわたる頬かむりをごまかすため、トランプ大統領の口を借りて現実を明らかにし、収束を図ろうとしているのではないか。そう思えてなりません」(拉致問題に詳しい国際ジャーナリストの太刀川正樹氏)
モリカケよれよれ政権の怪しい外交は諸外国に足元を見透かされているのである。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。
「安倍首相は米朝首脳会談でトランプ大統領に拉致問題に言及する確約を取ったと胸を張り、“外交の安倍”の大勝利を喧伝しています。だとしたら、なぜ日本はまた米国からカネを巻き上げられようとしているのか。なぜ軍用機をはじめとする米国製品を数十億ドル規模で購入すると約束させられたのか。自国の問題である拉致問題の解決に米国の力を借りざるを得ない事態に陥ったのは、安倍政権には今も昔も戦略がないからです。米国の関与を求め続ける限り、トランプ大統領からつけ込まれ、要求のエスカレートは避けられません」
無定見な亡国首相とともに、この国は沈没しつつあるのか。
【出典】日刊ゲンダイ 2018年6月11日
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米国は北への経済支援に前のめり(C)AP |
北朝鮮情勢で「蚊帳の外」の安倍政権だが、このままだと、北の非核化プロセス後の経済支援でも、日本の頭越しに枠組みがつくられかねない。米国では日本に突き付ける“請求書”の具体的金額が語られているというから深刻だ。
14日の衆院予算委で、国民民主党の玉木雄一郎共同代表が、米朝会談で非核化が合意に至った場合の懸念材料について質問。北朝鮮が米国に届くICBMの破棄に応じるものの、日本に届く近距離・中距離ミサイルは温存するとなった場合どうするのかと問い、「日米の利益は必ずしも一致しない」「(経済協力の)請求書だけが日本に回ってくることは避けるべきだ」と訴えた。
安倍首相は「何をもって経済支援ということかと思います」「外交をやっている最中でありますから、手のうちをここで申し上げるわけにはいかない」と、毎度の曖昧な答弁だった。
だが、この“請求書問題”は真剣に捉える必要がある。
というのも、米国が北への経済支援に前のめりだからだ。ポンペオ国務長官は13日のテレビ出演で、北が完全に非核化すれば「体制の保証」を確約するとともに「経済支援」の用意があるとして、電力供給や農業技術など具体的な支援策を披露。
「米国民の税金を使うのではなく、民間企業による投資」と、カネの出し手についても踏み込んだ。この「民間投資」というのがミソだ。
「すでに米議会周辺では米朝和平後の投資による儲け話でロビイストたちが蠢いています。北朝鮮は地下資源が豊富ですし、観光開発なども含めさまざまなインフラ整備の可能性が広がっている。『巨大プロジェクトになるので日本も巻き込んだらいい』と、ロビイストがトランプ政権に知恵をつけていて、その金額は戦後補償と経済協力という名目で2兆ドルだというのです」(米議会事情通)
2兆ドル! 日本円にして200兆円超だ。日本の年間の一般会計予算が100兆円弱なのに、あり得ない額だが、民間企業による投資も含め、10年や20年かけて日本に巨額資金を拠出させようということらしい。
1965年の日韓国交正常化では韓国に対し、有償・無償合わせて5億ドルが支払われた。90年に訪朝した自民党の金丸信副総裁が北朝鮮に対し戦後補償として約束した額は、100億ドルとも500億ドルとも言われている。
安倍側近の今井尚哉首相秘書官は最近も番記者相手に「拉致問題を解決できるなら、日本は10兆円くれてやってもいいじゃないか」と言い放っているという。トランプべったりの安倍首相だけに、米国に言われるがままカネを出しかねない。
国際ジャーナリストの春名幹男氏がこう言う。
「日本は『非核化しなければ、経済支援はせず、圧力を強める』と言っていますが、米国のスタンスが明らかに変わってきていることを分かっているのでしょうか。米国は今や『経済支援と同時進行の段階的な非核化』という中朝の方針に乗りつつある。ポンペオ国務長官は韓国外相との会談でも、『非核化に向けた行動を取れば経済支援』『北朝鮮の繁栄』という文言を使っています。ミサイル破棄にしろ経済支援にしろ、日本の頭越しでさまざまなことが決められてしまう恐れがあります」
主体性のない日本外交。安倍首相ではナメられるばかりだ。
【出典】日刊ゲンダイ 2018年5月17日
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【出典】日刊ゲンダイ 2018年5月12日 |
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一人ぼっち(C)日刊ゲンダイ |
「加計学園の理事長は総理もいたバーベキュー、ゴルフで見かけましたし、学園関係者には官邸で3回お会いしました。総理には日に5回も10回もお会いしますが、加計の件を報告したことや指示を受けたことは一切、ございません」――。こんなバカげた説得力ゼロ答弁を誰が信じるのか。
柳瀬唯夫元首相秘書官の参考人招致で、ますます「加計ありき」が色濃くなった10日夜。トランプ米大統領が自身のツイッターで、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談が6月12日にシンガポールで開かれると明らかにした。
全世界が注視する米朝トップ同士の史上初めての会談。恐らく世界史にその日付を刻むことになる「6・12」は、史上最悪の無能破廉恥政権が「ご臨終」を迎えた日としても、歴史に記録されることになりそうだ。
先月の板門店における南北首脳会談以降、北東アジアに広がる融和ムードに置き去りの安倍首相は「蚊帳の外」批判を打ち消すことに躍起だ。
中韓蔑視外交のツケで宙に浮いていた日中韓首脳会談が今週、2年半ぶりに開かれた際も、情勢急転に取り残されまいと必死。これまで散々敵視してきた両国にすがりつくような格好で、共同宣言の文言に「拉致問題の解決」を差し込むことに血道を上げ、北朝鮮問題に取り組んでいるポーズを示すためだけに中韓両国を振り回した。
政権に返り咲いてから5年以上、1ミリたりとも拉致問題を進展させてこなかったクセに、いまさら中韓両国に泣きついても後の祭り。これだけ情けない姿をさらけ出しながら、北への強硬姿勢はテコでも曲げない。9日の日中韓、日韓、日中の一連の首脳会談でも、例によって「最大限の圧力をかける」との主張を壊れたレコーダーのように繰り返し、完全に浮きまくっていた。
「北の非核化を目指し、関係各国が対話に向かう中、安倍首相だけが蚊帳の外から圧力一辺倒で吠えまくる。それでいて拉致解決の成果だけを欲しがるのは、ないものねだりの支離滅裂外交です」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
みっともない“圧力バカ”につけるクスリはないが、それでも日朝首脳会談の実現を目指し、拉致解決に淡い期待を抱いているのが、圧力バカのバカたるゆえんだ。
安倍は10日のトランプとの電話会談でも、米朝首脳会談で「拉致問題を取り上げて」と頼み込む一方で、最近しきりに持ち出すのが、2002年の日朝平壌宣言だ。宣言は「不幸な過去の清算」と「国交正常化後の経済協力」に言及。巨額の戦後補償というニンジンをぶら下げ、金正恩を会談に引きずり出そうとする狙いが透けて見える。
むろん、こんな卑しい魂胆が成功する兆しは一向に見えず、逆に朝鮮労働党の機関紙・労働新聞には「下心を捨てない限り、1億年経ってもわれわれの神聖な地は踏めないだろう」とコケにされる始末。先日の南北首脳会談で、韓国の文在寅大統領が拉致問題を提起した際、金正恩は「韓国やアメリカなど周りばかりが言ってきているが、なぜ日本は直接言ってこないのか」と語ったという。
5年以上も「拉致問題は安倍内閣の最重要課題」と豪語しながら、北との直接のパイプも築けていないとは、今まで安倍は何をしてきたのか。就任1年余りで、北に拘束された米国人3人を奪還したトランプを少しは見習ったらどうだ。
ポツンと蚊帳の外に置かれたアベ外交をアザ笑っているのは、金正恩だけではあるまい。圧力バカ路線が全世界の嘲笑を買う中、トンチンカン首相は運命の「6・12」を迎えることになる。
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「会談は大成功を収めるだろう」と自信満々(C)AP |
米朝首脳会談の日程を明かした直後の演説で、トランプは「平和と安定の未来を世界全体にもたらすための会談になる」と抱負を語り、「(金正恩との)関係は良好だ。会談は大成功を収めるだろう」と自信満々。米テレビ各社のインタビューに応じたペンス副大統領によれば、トランプは「金正恩が完全な非核化を受け入れる準備があるとの希望の持てるサインを出している」との認識でいるという。
実際にトランプと金正恩の関係は今のところ、良好のようだ。北朝鮮国営の朝鮮中央テレビによると、9日に訪朝したポンぺオ米国務長官からトランプのメッセージを伝えられた金正恩は、「大統領が新たな代案を持って、対話を通じた問題解決に深い関心を払い、朝米首脳の会談に積極的な対応を取っていることを高く評価する」と応じた。
トランプの「新たな代案」をめぐり、韓国聯合ニュースは「北朝鮮が非核化の条件としている敵視政策の撤回や、安全保障上の脅威の除去などに関連した内容の可能性もある」と分析。1カ月後に迫る歴史的会談を控え、北の非核化に向けた米朝両国の条件交渉が水面下で熱を帯びている様子が伝わってくるが、圧力バカ首相は口を開けば「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化を達成しない限り、制裁解除はしない」の一点張り。交渉に加えてもらえないのに、この上から目線は何サマのつもりなのか。
驚くことに6月12日の米朝シンガポール会談には、外交関係者の間で、中国の習近平国家主席が現地入りする可能性が取り沙汰されている。なるほど、金正恩が短期間で習近平との首脳会談を重ねたのも、そのためかと思えてくる。
前出の五野井郁夫氏はこう言った。
「習主席の現地入りが実現すれば、朝鮮戦争の休戦協定署名当事国である米中朝首脳がそろい踏み。トランプ大統領は『何かとてもいいことが起きつつある』『日本、韓国、中国、みんなにとってとても重要なことだ』と訴えていましたが、それは朝鮮戦争の終結を意味する可能性が高い。板門店宣言で南北両首脳が言及した休戦協定の平和協定転換に、米中両国が合意すれば北東アジアの緊張は一気に解け、安全保障環境はガラリと変わる。その場合、最大の障害となるのが、安倍首相の存在です。北の脅威をあおり、中韓を蔑視してきた外交がアダとなり、朝鮮半島の平和と安定に貢献しようにも発言権は皆無に等しい。対話の輪に押し入れば、強硬路線を支持してきたコアな支援者を失うことになる。もはや、アベ外交は八方ふさがりです」
「6・12」は、日本が世界に取り残される日となる一方で、6月20日の国会会期末も近づく。柳瀬氏の参考人招致で「加計ありき」が色濃くなる中、森友疑惑にも新事実が発覚した。財務省側が森友学園側などと面会や交渉をした際の500ページ近い記録が残っていたことが判明し、佐川宣寿・太田充の新旧理財局長コンビが「ない」と強弁した答弁は、またしても大ウソ。記録には昭恵夫人や複数の政治家の名前も記されているという。
この調子だと、会期末までにモリカケ疑惑をめぐって、驚愕の新事実や証言が次々と飛び出しても、おかしくない。
「今や、モリカケへの関与を全面否定する安倍首相の居直り答弁のつじつま合わせのため、忖度官僚が嘘やデタラメを重ね、国政の停滞を招いています。得意と自称する外交面も国際社会での孤立化を招き、もはや安倍首相の存在は百害あって一利なし。この国を正常化させるには、最大の障害物である安倍首相を取り除くしかありません。米朝首脳会談や国会会期末を待たずに、一刻も早く退陣を表明して欲しいものです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
もはや存在理由が何一つない安倍政権は、モリカケ疑惑を認めた上で総懺悔し、退陣表明する以外に道は残されていない。百害首相をいつまでも野放しにしておくわけにはいかないのだ。
【出典】日刊ゲンダイ 2018年5月12日
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【出典】日刊ゲンダイ 2018年5月12日 |
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安倍首相のせいで日本は世界の孤児化(C)日刊ゲンダイ |
中韓蔑視のアベ外交のツケで宙に浮いていた日中韓首脳会談が9日、都内の迎賓館で開かれ、関係各国の注目を集めている。2年半ぶりの開催を後押ししたのは、皮肉にも安倍首相が敵視する北朝鮮をめぐる情勢の急転だ。中国の李克強首相と韓国の文在寅大統領が就任後初めて来日したものの、安倍とは同床異夢と言っていい。
中国は金正恩朝鮮労働党委員長の再訪中を8日受け入れ、習近平国家主席と2度目の首脳会談。朝鮮半島の非核化をめぐる段階的な措置で一致した。史上初の米朝首脳会談への道筋をつくった韓国も融和姿勢を強め、各国に働きかけている。
ところが、安倍は相も変わらず圧力一辺倒だ。
口先では一応、「南北首脳会談が朝鮮半島の完全な非核化に向けた重要な一歩となったことを評価する」と言うものの、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化に向けて最大限の圧力維持」と交渉のハードルを上げている。何のルートも解決策もないくせに、なぜ、居丈高に北朝鮮への圧力を吠え続けるのか。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の当事国で拉致問題を抱えながら、金正恩には見向きもされず、蚊帳の外に置かれたまま。当事者能力はゼロだ。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「北朝鮮が政策を変えようが変えまいが、安倍首相の立場からすれば北朝鮮は脅威の対象であり続ける必要があるからでしょう。世論の反対に耳をまったく傾けず、安倍政権が強引に推し進めてきた政策の多くは北朝鮮を口実にしたものでした。集団的自衛権行使を容認する安保法制がそうですし、5年連続で過去最高を更新する防衛費の拡大もそうです。そして安倍首相が悲願とする憲法改正、9条改憲しかりです」
安倍は政権の屋台骨を揺るがすモリカケ疑惑隠しにも北朝鮮を利用してきた。ミサイル着弾を警告するJアラートを響かせ、全国各地で避難訓練を実施して国民の恐怖心を増幅させた。北朝鮮を「国難」と呼び、昨秋の衆院解散・総選挙を断行。自民党が圧勝すると、麻生財務相は「明らかに北朝鮮のおかげ」と口を滑らせたものだ。安倍にとって北朝鮮は政権浮揚の道具であり、疑惑から国民の目をそらす格好の目くらまし。北朝鮮が脅威的な存在であり続けなければ困るのだ。
政治評論家の森田実氏もこう言う。
「安倍首相は政権の最重要課題に拉致問題の解決を掲げていますが、事態を動かすには日朝対話の再開が不可欠です。このところしきりに持ち出す日朝平壌宣言にのっとり、対北経済支援を履行する以外の手だてはありません。そんなことは分かり切っているのに、制裁や圧力にこだわり、米中韓に協力を仰ぐみっともない他力本願。拉致問題を本気で解決する気がないからとしか思えません」
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(左から)中国の李克強首相、安倍首相、韓国の文在寅大統領(C)共同通信社 |
6月初旬までの開催が見込まれる米朝首脳会談に向け、関係国は慌ただしく動き回っている。
金正恩はわずか1カ月あまりで2度も訪中し、習近平と朝鮮半島の非核化をめぐる綿密なすり合わせを重ねている。金正恩は中国を後ろ盾に交渉を有利に運ぼうともくろみ、習近平は北朝鮮への影響力を誇示して米国を牽制し、朝鮮半島の新体制構築で主導権を握ろうという思惑だ。
一方、朝鮮半島危機を回避すべく米朝会談を橋渡しした文在寅は、11月に中間選挙を控えるトランプ大統領に手柄をすべて差し出し、舞台回しに徹している。22日に行われる米韓首脳会談でさらに英雄主義をくすぐり、南北首脳会談でまとめられた板門店宣言に基づき、休戦状態にある朝鮮戦争を年内に終結させ、平和協定への転換を目指す。並行して北朝鮮の非核化が進捗すれば、2期目を狙うトランプが喉から手が出るほど欲しがるノーベル平和賞も現実味を帯びてくる。
各国それぞれの思惑はあれど、朝鮮半島の和平へ向けた動きは加速している。
「朝鮮半島の緊張が緩和されれば、東アジアの安全保障体制は大きく変わります。情勢の変化を先取りすれば、置いてきぼりだった日本が一転してリーダーシップを発揮する千載一遇のチャンス到来です。朝鮮戦争が終結して南北統一に向けた協議が進み、北朝鮮の非核化が実現すれば、在韓米軍の縮小・撤退の議論が本格化するでしょう。在日米軍を含むアジア太平洋地域の米軍再編が俎上にのる可能性がある。韓国と協力して在韓、在日米軍の縮小に向けた機運をもり立てることができれば、米軍を脅威とする中国にメリットをもたらすこともできるでしょう。ひいては日米地位協定や日米安保のあり方の見直しへと発展し、安倍首相が訴える戦後レジームからの脱却へとつながっていく。安倍首相が果たすべき役割はハッキリしているのに、そうした意欲は感じられません」(五野井郁夫氏=前出)
世界情勢に取り残された疑惑まみれの政権がシャカリキにやっていることは、真逆だ。外交で存在感を示そうと制裁や圧力にこだわり、北朝鮮の非核化は理想論にすぎないと片づけ、事態を逆行させんばかり。やることなすことメチャクチャな首相に歴史の転換点を任せていいのか。
「安倍首相という人物はナンセンスを超えて、もはや救いがありません。歴史が大きく変わろうとする局面を目の前にしても、愚かな人間は方針を変えることができないということです。朝鮮半島情勢が安定すれば、安倍首相が北朝鮮を利用して強行しようとしてきた憲法改正の目はついえ、政権を支えてきた支持者は離れてしまう。そうして批判にさらされることを安倍首相は恐れているのでしょう。こんな小物に首相をやらせていたら、日本は世界の孤児になりますよ」(森田実氏=前出)
デタラメな歴史観にとりつかれ、自分を利する目先の利益しか頭にない亡国首相の居座りを許したツケは、計り知れない。
【出典】日刊ゲンダイ 2018年5月9日
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「首相官邸 HP」より |
森友学園や加計学園問題について、自民党内部からも苦言や批判が漏れ伝わってくる。小泉進次郎筆頭副幹事長も、安倍昭恵首相夫人の証人喚問の必要性について「総理しか説明できない」と発言し、話題になった。次から次へと湧き出る問題について、自民党員はどのような本音を抱えているのだろうか。
自民党に所属し、ある都市の市議会議員を務める男性議員は、一連の報道によって自民党への風向きが変わってきたと感じるという。
「朝の出勤時間に駅頭で活動しているのですが、いつもは人々が慌しく去っていくか、無言でビラを受け取っていくだけでした。しかし最近では、私が自民党員だとわかると、『お前も安倍の味方か』などと怒りをぶつけられることがあるんです」(男性市議会議員)
支援者からも、森友・加計問題について問われることがあり、自民党に対する市民の不信感をぶつけられることが増えてきたという。問題解決が先送りにされるなか、同市は来年、市議会議員選を迎える。だが、「不安はあるけれど離党はしない」と断言する。
「安倍首相に対しては、こうした問題を速やかに解決してほしいと思います。間違ったことをしていたなら、辞職もやむを得ないでしょう。しかし、自分は自民党の政策などに共感して入党したわけだから、このまま所属を続けます。それに、この町は自民党支持者が多いので、選挙にも有利ですからね」(同)
彼の同僚議員にも話を聞くと、「自民党をやめたくないけれど、安倍首相には退任してほしい」と本音を漏らした。
「自民党員というだけで、自分たちも悪者だと思われてしまうことがあり、来年の選挙にもマイナスだと感じています。その原因をつくったのが安倍首相であるならば、一刻も早く退任してほしい」(同僚議員)
地方都市レベルでもこうした余波を受けているようだが、県政ではどうだろうか。関東地方で県議会議員を務める男性は、「安倍政権への不信感はあるが、誰がトップでも変わらないのではないか」と話す。
「支援者たちとの集いでも、『安倍首相を辞めさせろ』という声を聞きます。でも、ほかの人に代わったところで、別の問題が噴出するだけです。それに、もしも首相が退任して衆議院解散となれば、私たち地方議員もその手伝いに駆り出されます。昨年、衆院選を行ったばかりなのに、また選挙に時間を取られるのはごめんです」(男性県会議員)
衆議院・参議院選挙となれば、地方議員たちも地元から出馬する党員の応援にまわる。事務所へ足を運んだり、自分の支援者たちに呼びかけたりするなどの活動がプラスされることで、本来の職務である県会議員としての仕事が進まなくなることがあると懸念する。
同じ自民党員でも、安倍首相に対する意見は分かれるようだが、少なからず影響を受けていることは間違いない。だが、地方議員は党内でも発言力は低く、国会の動きに左右されることも多い。「早く問題を解決してほしい」「自身の地位をおびやかすようなことはやめてほしい」という切実な意見は共通している。
(文=OFFICE-SANGA)
ニュースサイトで読む: http://biz-journal.jp/2018/05/post_23269.html
【出典】Business Journal 2018.05.10
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【出典】日刊ゲンダイ 2018年5月9日/Business Journal 2018.05.10 |
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宮内庁HPより |
日本国憲法施行から71年になる今日は、平成の「象徴天皇」にとっても最後の憲法記念日だ。来年4月末日をもって退位する明仁天皇は、いま、どのような思いでこの日を迎えているのだろうか。
というのも、周知の通り、今上天皇は平和と反戦の思いをもつ“護憲の天皇”。日本を戦争へと引きずりこむ安倍政権の改憲に対して、強い危機感を抱いているからだ。
もともと即位後の朝見の儀でも「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い」と表明したように、今上天皇は以前から日本国憲法を遵守する考えを強調してきたが、第二次安倍政権以降はより強まって、美智子皇后とともに、これまでになく踏み込んだ発言・行動を起こすようになった。
まず、第二次安倍政権が誕生した翌年2013年の10月には、美智子皇后が誕生日に際した文書コメントで明確にした。
美智子皇后は、一年で印象に残った出来事を「5月の憲法記念日をはさみ、今年は憲法をめぐり、例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます」としたうえで、以前、あきる野市五日市の郷土館で「五日市憲法草案」を見たときの思い出をこのように語った。
「明治憲法の公布(明治22年)に先立ち、地域の小学校の教員、地主や農民が、寄り合い、討議を重ねて書き上げた民間の憲法草案で、基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務、法の下の平等、更に言論の自由、信教の自由など、204条が書かれており、地方自治権等についても記されています。当時これに類する民間の憲法草案が、日本各地の少なくとも40数か所で作られていたと聞きましたが、近代日本の黎明期に生きた人々の、政治参加への強い意欲や、自国の未来にかけた熱い願いに触れ、深い感銘を覚えたことでした。長い鎖国を経た19世紀末の日本で、市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして、世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います」
日本国憲法と同様の理念をもった憲法観が日本の「市井の人々」によってもつくられていたことを強調し、基本的人権の尊重や法の下の平等、言論の自由、信教の自由などが、けっして右派の言うような「現憲法は米国の押しつけ」などではないことを示唆したのだ。
そして、同じ年の12月、今度は、今上天皇が80歳の誕生日会見でこれまでの歩みを振り返って「やはり最も印象に残っているのは先の戦争のことです」と語り、こう続けたのである。
「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います」
日本国憲法を「平和と民主主義を守るべき大切なもの」と最大限に評価する明確な“護憲発言”だった。しかも、今上天皇はわざわざ「知日派の米国人の協力」に言及した。明らかに、安倍首相ら改憲右派ががなりたてる“押し付け憲法論”への反論の色彩を帯びていた。
こうした天皇・皇后の発言に、官邸は眉をひそめた。翌2014年の4月、「正論」(産経新聞社)5月号に「憲法巡る両陛下のご発言公表への違和感」と題した文書が掲載された。
執筆したのは、安倍首相のブレーンのひとりと言われる八木秀次・麗沢大学教授。〈両陛下のご発言が、安倍内閣が進めようとしている憲法改正への懸念の表明のように国民に受け止められかねない〉〈宮内庁のマネジメントはどうなっているのか〉。
それは「改憲の邪魔をするな」という安倍側からの攻撃に他ならなかった。なお、官邸は2016年の生前退位に関する「お言葉」ビデオメッセージについても、一般公開前に八木氏へ内容をリークしていたことが判明している。
陰に陽に圧力がかけられるなか、それでも天皇と皇后は、自分たちにできるやり方で、安倍政権による平和の破壊と改憲に強い疑義を呈すような姿勢を続けた。
たとえば美智子皇后は2014年の誕生日文書コメントで「来年戦後70年を迎えることについて今のお気持ちをお聞かせ下さい」という質問にこう答えている。
「私は、今も終戦後のある日、ラジオを通し、A級戦犯に対する判決の言い渡しを聞いた時の強い恐怖を忘れることが出来ません。まだ中学生で、戦争から敗戦に至る事情や経緯につき知るところは少なく、従ってその時の感情は、戦犯個人個人への憎しみ等であろう筈はなく、恐らくは国と国民という、個人を越えた所のものに責任を負う立場があるということに対する、身の震うような怖れであったのだと思います」
この皇后発言の2か月前には、安倍首相がA級戦犯として処刑された元日本軍人の追悼法要に自民党総裁名で哀悼メッセージを送っていたことが報じられていた。連合国による裁判を「報復」と位置づけ、処刑された全員を「昭和殉難者」として慰霊する法要で、安倍首相は戦犯たちを「自らの魂を賭して祖国の礎となられた」と賞賛したという。そうしたタイミングで皇后は、A級戦犯に踏み込む異例のコメントを出したのだ。
一方の天皇も、2015年の安倍首相による戦後70年談話が公開された翌日の8月15日、戦没者追悼記念式典で「さきの対戦に対する深い反省」を明言した。
「終戦以来既に70年、戦争による荒廃からの復興、発展に向け払われた国民のたゆみない努力と、平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。戦後という、この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき、感慨は誠に尽きることがありません。
ここに過去を顧み、さきの大戦に対する深い反省と共に、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心からなる追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」
今上天皇が、戦没者追悼式典で戦争に対する「深い反省」を使ったのはこの年が初めてのことだった。そのため、憲法の平和主義を解釈改憲によって骨抜きにした安保法制関連法案に対する天皇からの「反論」ではないかとも取り沙汰された。以降、天皇は同式典で「深い反省」の言葉を用い続けている。
そして、決定的だったのが2016年、人々に直接語りかけた生前退位の「おことば」だ。今上天皇はそのなかで、「象徴」という言葉をじつに8回も使い、最後は日本国憲法に言及しながらこう締めくくった。
「始めにも述べましたように、憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。国民の理解を得られることを、切に願っています」
天皇は生前退位を長年温めてきたと言われるが、これは天皇自身の退位問題以上に重大な決意を示している。日本国憲法における「象徴」のあり方を何度も強調した「おことば」の内容は、天皇を「国家元首」に規定した2012年自民党改憲草案へのカウンターにもなっていたのだ。
安倍首相を中心とする右派勢力が、天皇を戦中のような神話的存在にし、国民支配の装置として再び政治利用しようという意図をもっているのは明らかだが、それを、明仁天皇は国民に語りかけるかたちで、断じて否定したのである。
なぜ、今上天皇がこれほどまでの護憲姿勢を見せたのか。そのルーツに自身の戦争体験があることは間違いないが、一般の国民と違うのは、明仁天皇が憲法で定められた「象徴天皇」として、戦後日本の平和主義、民主主義との両立を模索し続けてきたことだろう。
言うまでもなく、日本国憲法第一条は天皇を「象徴」とし、その地位は主権者たる国民の「総意」に基づくと定めたが、憲法成立過程の研究において「象徴天皇制」は「戦争放棄」とセットだったという見方が強い。本来、「民主制」や「基本的人権」からもっとも遠い天皇制というシステムのなかで、いかにして人々とともに歩んでいけばいいのか。極めて特異かつ難解な自問自答を繰り返してきたはずだ。
「私」と憲法との関係をめぐる、気が遠くなるほどの省察、その最終地点として、明仁天皇は「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」と、自らの言葉で国民に訴える決断を下したのだ。これは、天皇に許される目一杯の「反改憲宣言」に他ならないだろう。
即位からずっと、反戦平和主義と護憲の姿勢を示し続けた明仁天皇と美智子皇后。その存在が、強い戦前回帰志向の安倍改憲に対する一種の“抑止力”となってきたことは、まぎれもない事実である。しかし、平成時代も残すところ約一年。危惧されるのは、この「平和主義の護憲派天皇」という逆説を失った国民世論が、一気に、政権によって好戦的な方向に流されてしまうことだ。
実際、安倍政権と一部の保守勢力は長らく、現在の皇太子と雅子妃を今上天皇・皇后とは逆の方向に導くため、水面下で策動しているという見方も根強い。これについてはまた稿を改めるが、いずれにせよ、皇太子徳仁親王に明仁天皇のような在り方を漠然と期待するだけでは意味がないだろう。「平成の終わり」は、平和を望むわたしたちひとりひとりが、日本を戦争へと向かわせる改憲に、あらためて対峙すべき時代となるのだ。
(編集部)
【出典】LITERA 2018.05.03
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自由民主党HPより |
きょう、憲法施行から71周年となる記念日を迎えた。この間、権力をカサに憲法をないがしろにしつづけてきた安倍政権だが、ここにきて、森友の文書改ざんや加計疑惑での「首相案件」文書の発覚、自衛隊の日報隠蔽、北朝鮮外交の失敗による「蚊帳の外」状態と、そのインチキな正体を次々に露呈させ、政権の土台が大きく揺らぎ始めた。
しかし、驚いたことに、安倍首相はこの期に及んでもまだ憲法改正を諦めていない。産経ニュースによると、安倍首相は1日におこなわれた新憲法制定議員同盟の集会にメッセージを寄せ、憲法9条について「いまだに多くの憲法学者は『自衛隊を憲法違反である』といい、ほとんどの教科書にその記述があり、自衛官の子供も、その教科書で学ばなければならない現状がある」と述べたという。
現在使用されている7社の中学生向け公民教科書は両論併記で、断定的に「自衛隊は違憲」と記述している教科書はない。この指摘は昨年からずっとされつづけているが、安倍首相はこの“自衛隊員の子どもがかわいそう”なる感情論でまたも煽り、こうつづけている。
「もとより戦後70年、わが国が堅持した平和主義の基本理念は今後も変わることはないが、憲法にわが国の独立と平和を守る自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つことは今を生きる私たちの責務だ」
「いよいよ私たちが憲法改正に取り組むときが来た。主役は国民だ」
違憲論争に終止符を打つ。これが改憲の目的だと言うのだが、そもそも安倍首相は2月5日の衆院予算委員会において「(改憲案が)国民投票で否定されても(自衛隊が合憲であることは)変わらない」と答弁しており、「違憲論争に終止符を打つ」ことが改憲の目的ではないことは明白だ。
事実、本サイトがスクープしたように、安倍首相と安倍自民党が進めている9条に自衛隊を明記する加憲案は、安倍首相のブレーンであり、日本会議常任理事で政策委員の伊藤哲夫・日本政策研究センター代表が2016年から提案していたもの。日本政策研究センターの機関誌「明日への選択」16年9月号では、伊藤氏が加憲の狙いを“護憲派の分断”にあると開陳しているのである。
その上、安倍首相の改憲案が恐ろしいのは、平和主義を具体化した9条の戦争放棄と戦力不保持を骨抜きにするものである、という点だ。改憲案では、自衛隊を「必要最小限度の実力組織」とする定義を変え、「必要な自衛の措置」をとるための実力組織として位置づけられている。この「必要な自衛」はいかようにも解釈でき、フルスペックの集団的自衛権の行使も可能になってしまうのだ。
先日も政府は自衛隊のイラク派遣の日報に記載されていた「戦闘」という言葉を、自衛隊法上の「戦闘行為」の意味で用いられた表現ではないと閣議決定した。不都合な記載がある日報を隠蔽しつづけ、さらには戦闘があったことを現場が報告しても言葉を弄んで否定する──。公文書改ざんをはじめ、このような国民軽視、人命軽視の総理に、憲法に手を出す資格などもとよりない。
だが、こんななかでおこなわれた今回の憲法をめぐる世論調査では、危機感を抱かずにいられない数字が並んだ。
たとえば読売新聞では、改憲について「改正する方がよい」が51%、「改正しない方がよい」が46%。NHKも憲法改正の必要について「必要」と答えた人が29%、「必要ない」が27%となった。毎日新聞は自民党改憲案に「賛成」すると答えた人が27%、「反対」が31%と反対が多いものの、拮抗していることに変わりはない。
もちろん、この結果は半数近くの国民がいますぐの改憲を望んでいるということではない。たとえば、“安倍政権下での改憲に賛成か反対か”と具体的に質問した朝日新聞の調査では、「賛成」と答えた人は30%、「反対」は58%にもおよんでいる。また、NHKでは「いま憲法改正議論を進めるべきか?
ほかの問題を優先すべきか?」という質問をおこなっているが、「ほかの問題を優先すべき」が68%となり、「憲法改正の議論を進めるべき」の19%を大きく上回っている。
朝日でも、優先的に取り組んでほしい政治課題は「景気・雇用」が60%、「高齢者向けの社会保障」56%、「教育・子育て支援」50%とつづき、「憲法改正」は9つある選択肢のなかでもっとも少ない11%となった。
さらに、御用マスコミの調査結果には不審な点がいくつもある。読売は「国会が憲法改正を発議する時期は、いつがよいと思いますか」という質問もおこなっているが、「2018年中」が11%、「2019年の参院選の前」が16%、「2020年まで」が22%、「2021年以降」が21%。
合計すると、憲法改正発議に賛成した意見は70%になる。一方、「憲法改正を発議する必要はない」と答えた人は20%しかいない(「その他」「答えない」は合わせて10%)。前述の改正の是非を問うた質問では、憲法を「改正しない方がよい」と答えた人は46%だったはずなのに、数字がまったく合わない。
これにはトリックがあって、その前の質問で「国会での発議について、あなたの考えに近いのはどちらですか。」と問うているのだが、その選択肢は「改正に前向きな勢力の賛成で、なるべく早く発議すべきだ」(27%)「時間がかかっても、なるべく多くの政党の賛成で発議すべきだ」(70%)「答えない」(3%)の3つだけで、「発議する必要はない」という選択肢がないのだ。
読売は9条改正についても質問しており、「賛成」55%、「反対」42%となぜかこちらも賛成が憲法改正賛成の数字を上回っている。これは「戦争の放棄や戦力を持たないことなどを定めた今の条文は変えずに、自衛隊の存在を明記する条文を追加することに、賛成ですか、反対ですか」と誘導的な質問をしたためだろう。
ちなみに、NHKでは「9条を評価するか」という質問で「評価する」と答えた人が70%に達しており、朝日も9条の改憲の是非は「変えるほうがよい」32%に対して「変えないほうがよい」は63%だった。
同じ読売でも、戦争放棄を定めた第1項改正の必要の有無にかんしては「ある」が15%、「ない」が82%と高い数字となっている。
安倍首相は「いよいよ憲法改正に取り組むときが来た」「主役は国民だ」と声高に叫ぶが、実際には国民のあいだで改憲への気運が高まっているという状況ではまったくなく、なかでも9条の平和主義を守りたいという思いは広く国民に共有されていることがよくわかる。
だが、一方で、国民のあいだに「内容はよくわからないけど、変えられるなら変えたほうがいい」というざっくりとした意識がどんどん浸透していることは事実で、これは安倍政権や改憲勢力、御用メディアによるプロパガンダが徐々に浸透している結果だろう。
しかも、こうした動きはこれからさらに活発になっていくはずだ。つい最近も、日本青年会議所の「宇与くん」騒動では、改憲に向けて左翼、リベラル、護憲派を攻撃するなどの炎上マーケティングを狙ったネット工作を画策していたこともあきらかになったばかりだが、日本会議などが自らの正体を隠して新たな団体をつくり、憲法改正賛成を主張する街宣活動や署名集めを展開するのは必至だろう。
また、先日、本サイトで元博報堂の広告マンである本間龍氏が指摘したように、自民党はすでに電通に大々的な改憲プロモーションを発注している可能性が高い。
このような世論誘導と一方的な国会運営で、国民に満足な説明もないまま議論を進めていく。安倍政権は安保法制のときと同じように、ソフトな語り口で本質や本音を隠し、改憲の国民投票までもち込む気でいるのだろう。
しかし、もう騙されてはいけない。じつは、本日付の西日本新聞の「デスク日記」では、こんな事実があかされているのである。
〈今から5年前。東京で政治取材を担当していたある夜のことだ。酔って帰宅した安倍晋三政権の政府高官が番記者たちに、こうつぶやいた。「極端なことを言うと、われわれは選挙で『戦争したっていい』と信任されたわけだからね。安全保障の問題とか、時の政権にある程度任せてもらわないと前に進めない」〉
戦争していいと信任された──。これはちょうど特定秘密保護法案が国会に提出されていた時期のことだというが、安倍政権はこのころからしっかりと「戦争できる国づくり」を目指していたのだ。
安保法制に批判が高まっていた際、安倍首相は「戦争法案と言うのは無責任なレッテル貼りだ!」と吠えたが、やはり安保法は「戦争法」だった。そして、憲法改正による「戦争できる国」の完成をいま目指しているのである。
いまは安倍首相が進めようとする改憲案がいかに平和主義を打ち砕いてしまうものなのか、その事実を広めていくことが重要だ。
いや、そもそも何度も言うように、公文書を改ざんして国民を欺くような人物に、憲法を弄ばせるようなことをやらせてはいけないのだ。憲法改正云々の前に、まずは総理の座から退いていただくほかないのである。
(編集部)
【出典】LITERA 2018.05.03
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【出典】LITERA 2018.05.03 |
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早く撤回しろ!(C)日刊ゲンダイ |
裁量労働制をめぐる厚労省のデータ“捏造”問題の疑惑は拡大する一方だ。もはや、安倍政権が今国会の目玉と位置付ける「働き方改革」は空中分解寸前。一刻も早く法案提出を断念するべきなのに、安倍首相や加藤厚労相は「準備をしっかり進めていきたい」などと突っぱね、法案提出に固執しているから、正気の沙汰じゃないだろう。
そもそも今回の問題は、裁量労働制の適用拡大で長時間労働や過労死が増える――という野党側の懸念に対し、安倍が反論答弁に使ったデータがインチキだったことがバレたのが始まりだ。
安倍も、それを認めて謝罪、撤回したのに〈データを撤回すると申し上げたのではなく、精査が必要なデータに基づいて行った答弁を撤回した〉なんて意味不明な答弁をした揚げ句、オレは説明された資料を読んだだけ―――と、開き直りとも受け取れる説明を続ける姿は見苦しい限りだ。
きのう(25日)のNHK日曜討論に出演した自民党の岸田政調会長も、「厚労省が悪い」みたいな口ぶりだったが、そうじゃない。今回の問題をめぐる“主犯”は紛れもなく安倍なのである。
裁量労働制の適用拡大を含む労働法制関連の議論は、経済財政諮問会議や産業競争力会議などを踏まえ、安倍政権が2013年6月14日に閣議決定した「日本再興戦略」がスタートだ。
そこには〈企画業務型裁量労働法制をはじめ、労働時間法制について、早急に実態把握調査・分析を実施し、本年秋から労働政策審議会で検討を開始する〉とあり、同時期に閣議決定された規制改革会議の規制改革実施計画でも〈企画業務型裁量労働制やフレックスタイム制等労働時間法制の見直し〉が盛り込まれた。
経済財政諮問会議、産業競争力会議(16年9月廃止)、規制改革会議の所管はいずれも内閣府で、経済財政諮問、産業競争力の両議長は安倍だ。3会議とも財界関係者が委員に名を連ね、労働者団体の代表はほぼ皆無。
何のことはない。最初から官邸と財界主導で結論ありきの議論が進められてきたワケで、安倍本人も“捏造”データの答弁直前に〈岩盤規制に穴をあけるには、やはり内閣総理大臣が先頭に立たなければ〉と威張っていた。だが、こうしたむちゃくちゃな形で進む労働法制議論に対し、猛反発していたのが日本労働弁護団だ。すでに17年3月には幹事長声明で、こう怒りの声を上げていた。
〈安倍政権は、これまで労政審(労働政策審議会)を事実上骨抜きにする方策をとってきた。経済財政諮問会議、産業競争力会議、規制改革会議などにおいて、労働政策の方針を決め、それを閣議決定することにより、労政審の外堀を埋めてしまうというやり方である。
閣議決定の段階で、いつまでにどのような内容の改革を実施するかが決まっているため、労政審では、これらの閣議決定の枠内で議論せざるをえない。安倍政権は、労働者不在のままで労働政策を決定し、労政審の議論を形骸化することで、矢継ぎ早に様々な労働規制改革を実施しようとしてきた〉
きのうのNHKの日曜討論でも、立憲民主党の長妻昭議員は〈最大の問題は、首相官邸に設置した、産業競争力会議という厚労大臣も労働者も入ってないところでドーンと裁量労働制の拡大を決めて閣議決定でおろしてきた。そのひずみがデータ問題などの現実無視のものとして噴出している〉と指摘していたが、その通りだろう。労働問題に詳しい法大名誉教授の五十嵐仁氏はこう言う。
「安保法など独断専行の安倍政権はこれまでも散々、国民を騙すような手法を繰り返してきましたが、今回もそれが表れた。最も責任があるのは安倍首相なのに、ウソがばれても何の反省もなく、押し通そうとしているから言語道断です。今回の問題は働く人の命にかかわる。こんな強権的で非民主的なやり方を認めてはいけません」
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最初から結論ありき(C)日刊ゲンダイ |
有識者と称する官邸直属の御用学者会議が「岩盤規制に穴をあける」「規制改革」の名の下に結論ありきで議論をまとめて閣議決定し、所管官庁でおざなりに審議する――。どこかで見た経過だと思ったら、安倍が議長を務める国家戦略特区諮問会議を経て閣議決定された加計学園(岡山理科大)の獣医学部新設問題とソックリだ。
加計問題では、官邸サイドが文科省に執拗に設置認可を迫り、前川喜平前文科次官が「行政が歪められた」と批判したが、厚労省のデータ問題にも同じ構図が透けて見えるのだ。
つまり、官邸主導で裁量労働制の適用拡大が決まり、厚労省が労政審にアリバイ的に諮ったら、労働団体の委員から反対の声が続出。労働時間の細かなデータ提示を求められ、独法の労働政策研究・研修機構(JILPT)に調査を委託すると、裁量労働制の労働時間の方が一般労働者よりも長い結果に。
しかし、厚労省は官邸の意向を酌んで、JILPTの調査結果を労政審に報告せずにインチキデータを使い続けた――という流れだ。
JILPTが調査報告書をまとめた2014年5月は、官邸が各府省の幹部人事を決める内閣人事局が発足した時期と重なる。厚労省が官邸の意向を“忖度”して政策立案を「歪めた」可能性は十分あり得るのだ。
そして、その弊害は今も続いている。データ問題で矢面に立っている厚労省労働基準局の山越敬一局長は、JILPTが裁量労働制の労働時間を調査した時のJILPT理事で、同局ナンバー2の村山誠総務課長は、労政審にJILPTの調査結果をマトモに報告しなかった当時の労働条件政策課長だ。
2人ともデータ問題の真相が分かっているのにダンマリ。森友問題でシラを切り続けた佐川国税庁長官と同じ。やはり、元凶は安倍なのだ。
それにしても、なぜ、安倍政権は裁量労働制の適用拡大を景気対策のごとく宣伝し、一時は連合に擦り寄るという“禁じ手”を使ってまでも導入したいのかといえば、答えは決まっている。何が何でも労働コストを削減したい財界から猛烈な突き上げを食らっているからだろう。
23日付の日経新聞電子版は、今回のデータ問題を取り上げ、〈最悪のシナリオは06~07年の第1次安倍政権の労働改革の再来だ。経団連は脱時間給制創設を要望したが頓挫。一方で残業が一定時間を超えた社員に割増金を多く支払う内容が盛り込まれ、企業の負担増になった苦い経緯がある〉と報じていたが、これが大企業の“本音”なのだ。
「働き方改革」なんて言っているが、あくまで大企業本位の「働かせ方改悪」。かつて年収400万円以上のホワイトカラーの残業代をなくすよう提言していた経団連の理想は、労働者全員を非正規にして残業代ゼロにしろ――なのだろうが、さすがにムチばかりではマズイからと安倍政権は「残業時間の上限規制」などのアメを抱き合わせしてゴマカしているだけ。法案さえ通せばこっちのもの、後は省令でやりたい放題になると踏んでいるのだ。
労働者保護の法律は、1802年の英国の工場法が最初とされる。産業革命期、資本家が労働者を低賃金で長時間酷使したため、劣悪な労働環境が社会問題化。資本家も労働者保護の観点が必要――と判断するに至ったのだが、安倍政権の時計の針は産業革命時代に逆戻りしているのだ。
埼玉大名誉教授の鎌倉孝夫氏(経済学)がこう言う。
「裁量労働制というのは簡単に言うと、すべてを労働者の自己責任でやってください、ということ。極論すると、労働者一人一人が独立した請負業のような形になり、(最悪の場合)企業は社会保険料も何も負担しないで済むかもしれません。企業にとって極めて使い勝手のいい雇用切り捨て策なのです。『同一労働同一賃金』も聞こえはいいが、年配であろうが扶養家族がいようが、一切無視して『同じ仕事だから賃金もこれだけ』という目的がミエミエです。まさに産業革命時代の資本家の思想と同じ。労働は商品ではありません。国民も労働とは何か、賃金とは何かを改めて考え直すべきでしょう」
労働者を奴隷に追い込む改悪制度が成長戦略の柱なんて、冗談ではない。
【出典】日刊ゲンダイ 2018年2月26日
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【出典】日刊ゲンダイ 2018年2月26日 |
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口を開けば嘘八百(C)日刊ゲンダイ |
スポンサーでもある財界の意向を受け、安倍首相が4年越しで成立させようとしている「働き方改革関連法案」は頓挫必至だ。「過労死促進法案」「定額働かせ放題法案」と悪評を買う裁量労働制の拡大をめぐり、厚労省の調査データをお手盛り使用。デタラメ答弁を垂れ流していたのが野党の追及でバレて、異例の答弁撤回・謝罪に追い込まれた。
裁量労働制が長時間労働を助長するのは常識中の常識だ。にもかかわらず安倍は、1月29日の衆院予算委で厚労省の「2013年度労働時間等総合実態調査」を持ち出し、1日当たりの労働時間は裁量労働者9時間16分に対し、一般労働者9時間37分と明言。「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者より短いというデータもある」と言い張った。
ところが、双方の算出方法は異なり、比較できる代物ではなかった。裁量労働者は1日の労働時間を調査していたが、一般労働者は1日の残業時間のみを調べ、この平均値に法定労働時間(8時間)を機械的に上乗せしていたのだ。野党から「人の命に関わるデータの捏造」と批判の声が上がるのは当然で、紛れもないデッチ上げだ。
それで安倍は「精査が必要なデータを基に行った私の答弁は撤回するとともに、おわびを申し上げたいと思います」と渋々頭を垂れたわけだが、データの精査不足がデタラメ答弁につながったわけではない。安倍政権はこのデータを平然と使い回している。確信犯なのだ。
15年7月の衆院厚労委で塩崎厚労相(当時)は同じデータに言及し、「むしろ一般労働者の方が平均でいくと長い」と答弁。17年2月にも同様の答弁を繰り返していた。
連合の神津里季生会長の発言も意味深だ。働き方改革をめぐるダイヤモンド・オンライン(17年8月10日付)のインタビューで、〈安倍さんは、あまり知られていませんが、じつは「社労族」です。だから労働問題には詳しいし、関心も高い〉と一目置いている。イロハのイを分かっていながら、無理筋を通すため、恐るべき捏造データで黒を白にし、強行突破を図ったのである。過労死法案はかくもデタラメなのだ。
それだけ、裁量労働制は問題だらけだということ。実際の労働時間にかかわらず、一定時間働いたとみなして残業代込みの賃金を支払う制度のため、企業がどんなに従業員を酷使しようが、残業代の上乗せは不要。「過労死促進法案」「定額働かせ放題法案」と呼ばれるゆえんである。独立行政法人の労働政策研究・研修機構が14年に発表した「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果」でも労働環境の厳しさは浮き彫りだ。
公表データを基にアベノミクスの実態を痛烈に批判した「アベノミクスによろしく」(集英社インターナショナル新書)の著者で、労働事件に詳しい明石順平弁護士はこう言う。
「裁量労働制は過労死、過労自死、過労うつの温床で、労働者にプラスに働くことはあり得ません。〈裁量〉という単語が誤解を招いているようですが、裁量労働制は労働者側に裁量を与えるわけではなく、企業にとって都合の良い制度なのです。
働き方改革は裁量労働制を営業職にまで拡大しようとしています。職責に関係なく、法人担当や企画管理に携わる営業マンまで含まれかねません。収入要件がないのが最大の問題点で、年収200万円の人も対象になってしまいます」
全産業で営業職は342万人。20人に1人の割合だ。安倍は施政方針演説で「誰もがその能力を発揮できる、柔軟な労働制度へと抜本的に改革します」と労働者の味方ヅラしていたが、嘘八百。詐欺師政権のペテンはこれだけでは済まない。
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加藤厚労相もシドロモドロ(C)日刊ゲンダイ |
安倍政権がこうまで働き方改革にこだわるのは、財界が労働法制の規制緩和を猛烈に要求しているからだ。経団連は05年にホワイトカラーエグゼンプションを提言。残業代ゼロ法案の元祖で、当初から非難ゴウゴウだった。政治献金の復活で経団連と蜜月関係になった安倍政権は、それを高度プロフェッショナル制度に衣替え。
裁量労働制拡大とセットにした労基法改正案を15年4月に閣議決定し、国会に提出したが、野党の反対でたなざらしになった。それで残業時間の上限規制と抱き合わせ、8本の改正案をゴチャ混ぜにした働き方改革関連法案に一本化したのだ。10本もの法案を一括審議で済ませた安保法と同じやり方である。
高プロも裁量労働制に匹敵する悪質さだ。これも残業代はゼロ。さらに労働時間、休日、休憩時間に関する労働基準法の規制がすべて外されてしまう。その代わりに企業は健康確保措置を求められるが、その内容はメチャクチャ。例えば、年間5日の有給休暇を取らせれば360日連続勤務OK。4週間で4日以上、年間を通じて104日以上の休日を確保させれば24時間勤務も合法になる。サラリーマンの奴隷化だ。
対象は年収1075万円以上の高度専門職とされているが、他人事だと思ったら大間違い。悪法は「小さく産んで大きく育てる」のが権力者の常套手段だ。改正を重ねて年収要件のハードルをどんどん下げるリスクをはらむ。派遣法もそうしてなし崩しになった。ホワイトカラーエグゼンプションを持ち出した当時の経団連は、年収400万円以上のホワイトカラーをターゲットにしていた。
「安倍政権が進める働き方改革は自動車のブレーキを壊し、アクセルを全開に踏むようなもの。使えなくなった労働者はサヨウナラです。裁量労働制を拡大させ、高プロを創設させる残業代ゼロ法案が実現すれば、ブラック企業の壊滅どころか、ホワイト企業のブラック化を引き起こしかねません」(明石順平氏=前出)
働き方改革法案の真相は、ブラック企業支援法なのだ。
労働問題に詳しい法大名誉教授の五十嵐仁氏もこう言う。
「少子高齢化による人手不足が深刻化する中、労働者を使い潰せば、労働力を失う。そんなことは分かりきっているのに、目先の利益しか頭にない財界もどうかしている。まさに今だけ、カネだけ、自分だけですよ。合法的なブラック労働の助長で労災申請のハードルが上がり、認定を争う裁判で雇用者側が敗訴する可能性も懸念されます」
労働者側に立つはずの連合はアテにならない。高プロ導入には表向き反対し、4週間で4日以上、年間通じ104日以上の休日を確保させ健康確保措置を提案したと胸を張るが、逆に24時間勤務を合法化する抜け道をつくってしまった。
そもそも、連合に加盟する労組は公務員や大企業ばかり。昨年の春闘対象は全労働者のわずか5%に過ぎなかった。労働貴族クラブと化しているのである。
一事が万事ですべてが怪しい「働き方改革」一括法案。成立を許せば、サラリーマンを待ち受けるのは地獄の奴隷労働だ。何が何でもブッ潰さなければ、この国はお先真っ暗だ。
【出典】日刊ゲンダイ 2018年2月16日
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【出典】日刊ゲンダイ 2018年2月6日 |
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5日、米国株急落を受け日経平均も大幅下落(C)日刊ゲンダイ |
安倍首相は真っ青になっていることだろう。
株価の大暴落が止まらない。きのう(5日)、きょうと週明けから2日連続で東京株式市場の日経平均株価(225種)は全面安の展開だ。一時600円超というきのうの下げ幅は、2016年11月の米大統領選でトランプが勝利した直後の下落幅(1059円57銭)以来、約1年3カ月ぶりの大きさ。終値は昨年の大納会(12月29日)以来、約1カ月ぶりの2万3000円割れとなった。
〈あっという間に200万円も失った。信じられない〉。ネットの株式掲示板は個人投資家らの阿鼻叫喚の書き込みであふれ返っている。
2日発表の米雇用統計(1月)で、賃金が09年以来の高値水準となり、長期金利の指標である米10年債利回りが2・85%と4年ぶりの水準に急上昇。リスクの高い株を避ける傾向が顕著になり、米市場のダウ工業株30種平均が600ドル超の急落。
この流れは5日も止まらず、1100ドル超という過去最大の下げ幅を記録した。日本株暴落はおそらく、日本市場で約7割の売買シェアを握る外国人投資家が、米国株の損失を補うために売りまくったのだろう。
米国内では雇用回復、賃金増加で利上げペースが加速し、さらなる長期金利上昇が株価下落を招く――との見方が広がっており、投資家心理を測る指標とされる「恐怖指数」=米株の変動性指数(VIX)も急上昇中。今後も日本株はそのあおりを受け、続落する可能性が高い。
ついこの間まで、〈26年ぶりに2万4000円台を回復した〉と日本市場が大ハシャギしていたのがウソのよう。国会でアベノミクスの成否を問われた安倍首相が〈全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれている〉と胸を張り、“唯一の根拠”にしてきた株高もこれでパーだ。
もっとも、今の相場は日銀が「異次元緩和」の一環で年間6兆円規模のETF(上場投資信託)を購入したり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や郵貯マネーなどの公的資金が投じられたりしてきた「官製相場」だ。異常な株高は実体経済に裏打ちされたワケでも何でもないから、いったんはじけたら、どこまで下落するのか分からない。
「いずれ『調整(再び株価が上昇)が入る』と楽観視する声もありますが、そうは思いません。今の株式市場は日銀の大量のETF購入や、GPIFマネーによっていびつに膨らんでいて、もはや(自由な取引市場という)本来の機能を完全に失っている。(中国政府の介入が度々、問題視される)上海市場と変わりません。1日で500円も600円も下がったら、日銀だって買い支えられないでしょう。調整どころか、いつ、どんなことが起きるか予想できない。危うい思考停止状態が今の日本市場。何かあれば、たちまちドカンと大きく下がりますよ」(経済評論家の斎藤満氏)
日経平均株価は今年末には3万円台、20年の東京五輪までに4万円台突入―――なんて浮かれた声も出ていたが、「官製相場の限界」というアホノミクスの底が割れた今、五輪前からバブル崩壊にまっしぐらだ。
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失敗を認めるべきなのに…(C)日刊ゲンダイ |
〈増す副作用にどう対処するか〉。4日付の読売新聞で、物価上昇率2%を掲げ、5年近く異次元緩和を続ける日銀の姿勢に対する社説が掲載された。安倍政権「応援団」とは思えないほど、中身は辛辣だ。
〈より柔軟に政策方針を見直す姿勢が問われよう〉〈大規模緩和の弊害は、多方面に表れ始めている〉〈日銀の金融政策頼みでは、脱デフレを確実にするのに限界があることは明らかだろう〉
どの指摘もその通り。日銀が物価上昇率2%達成にこだわるあまり、市場経済が歪められ、数々の副作用が出ているのではないか、と警鐘を鳴らしているのである。
とりわけ深刻な副作用が表れているのが16年2月から始まったマイナス金利政策だ。日銀は国債発行残高の4割にも達するほどジャブジャブにした緩和マネーを市中に“強制的”に循環させようと試みたが、メガバンクや地方銀行など国内銀行の17年末時点の貸出金の伸び率は2年前の4%増とほぼ変わらず。
しかも、融資の内訳をみると、不動産業向けが全体の15%に達し、設備投資といった生産性を高めるような融資につながっていないばかりか、行き場を失った大量のカネが大都市圏の不動産に流れて「投機バブルを招いている」との懸念も出始めた。
それでも不動産融資の需要があるメガバンクなどはまだマシで、高齢化と人口減少で経済規模が縮小している中小企業の多い地方銀行は最悪。金融庁のリポートでは、マイナス金利の長期化が収益力を圧迫し、〈25年3月期には約6割の地域銀行が本業で赤字になる〉と予想されている。
もはやアベノミクス=「異次元緩和」が限界を露呈したのは明らかなのだが、日銀の黒田東彦総裁は、まるで反省しちゃいない。きのうの衆院予算委でも参考人として出席した黒田は異次元緩和について「道半ば。粘り強く続けていく必要がある」と平然と言い放っていたから唖然ボー然だ。アベノミクスの実態を痛烈に批判した「アベノミクスによろしく」(集英社インターナショナル新書)の著者、明石順平弁護士はこう言う。
「日銀はいつまで異次元緩和を続けるつもりなのでしょうか。世界の中央銀行でもこんな例はないし、どんな副作用が出てくるのかは誰にも分かりません。不自然に歪められた株価の上昇は必ずしっぺ返しがある。それは人類の歴史が示しています」
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日経平均株価 2018年2月6日 |
本来であれば、黒田日銀は「異次元緩和は誤り」と素直に認めて軌道修正を図るべきなのに、口が裂けてもそう言えないのは、もはや逃げるに逃げられなくなった――というのが本音ではないのか。
なぜなら、GDPの6割を占める個人消費がメタメタだからだ。「異次元緩和」で円安・株高が進んで大企業が儲かれば、「トリクルダウン」が起きて庶民のフトコロが潤い、消費拡大につながる――と喧伝されたが、実際は1世帯当たりの実質消費支出は安倍政権誕生前の年間360万円から20万円もダウン。
前出の斎藤満氏によると、この5年間で実質GDPが7・2%拡大したのに対し、個人消費は2・3%。個人事業主や持ち家世帯が架空の家賃を払ったとした「帰属家賃」を除く純粋な家計消費はわずか1・1%増だ。
一方で、12月の全国ベースの消費者物価は生鮮食品を含む食料品と電気やガス、ガソリンなどの値上がりで1・3%上昇。2人以上世帯の可処分所得は1997年に月額49万円あったが、社会保険料の負担増などで2016年は約42万円と減り続けているから、この物価高は庶民にとっては実質的な負担増と同じだ。
さらに18年度は庶民イジメの増税が目白押し。70歳以上の患者負担限度額の引き上げや、75歳以上の後期高齢者医療保険料の低所得者への特例軽減の縮小、介護保険の利用者負担の2割から3割への負担増も計画。「中間層狙い撃ち」といわれる年収850万円以上の会社員らの所得増税のほか、たばこ増税、森林環境税、国際観光旅客税もある。
個人消費がますます冷え込むのは分かり切っているから、黒田日銀としては「異次元緩和」を継続しようがしまいが出口はないのだ。金融論が専門の相澤幸悦埼玉学園大教授がこう言う。
「株価連動政権と揶揄される安倍政権を後ろ盾にする黒田日銀としては、このまま突っ走り続けるしかないのでしょう。しかし、おそらく米長期金利はまだ上がる。そうなれば投機筋は『いよいよ株は手じまい』とみるから、株価は今以上に下落する。当然、日本株もつられて下がることになるでしょう。将来、サブプライムバブル崩壊のような現象が起きる可能性は否定できません」
黒田バブルが崩壊すれば、真っ先に影響を受けるのは国民だということを忘れてはならない。
【出典】日刊ゲンダイ 2018年2月6日
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【出典】日刊ゲンダイ 2018年2月6日 |
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生き残るのは“アベ友”だけ(安倍首相と加計孝太郎氏)(C)日刊ゲンダイ |
2018年は大増税元年。増税メニューが次々と国会で審議される。年収850万円以上の会社員らの所得増税に始まり、たばこ増税、森林環境税、観光促進税……と負担増ラッシュ。19年秋には消費税率10%引き上げも控えている。
ただでさえ、サラリーマンの「手取り」は年々減り続けている。2人以上世帯の可処分所得は1997年の月額49万円をピークに、毎年引き上げられてきた社会保険料の負担増などで、2016年は42万9517円と月7万円も減ってしまった。年間84万円ものガタ減りである。
円安政策で輸入物価の高騰に苦しみ、せっせと貯金に励んでも低金利政策の長期化で受け取れる利息はスズメの涙。家計全体の利子所得は1991年の38・9兆円をピークに、どんどんゼロに近づいている。
カラッカラに干上がった庶民のサイフから、さらにフンだくるとは血も涙もない冷酷政権だ。
「日本経済は今、伸び悩む個人消費に本格的なテコ入れを図るべき時期です。それなのにサラリーマン狙い撃ちで負担増を押しつければ、さらに消費は冷え込み、景気は悪化の一途です。日銀の物価上昇目標も遠のき、異次元緩和の失敗策もズルズルと続くことになる。庶民から巻き上げたカネを安倍政権が何に使うのかといえば、米国から“爆買い”する、決して使うことのない高額兵器や、規制緩和や特区制度をネジ曲げて仲間内の利益に消えるだけでしょう。庶民の負担増と引き換えに、トランプ米大統領と“アベ友”たちを喜ばせるなんて、ムチャクチャな政権です」(斎藤満氏)
安倍政権が続く限り、庶民生活は成り立たなくなる運命である。
【出典】日刊ゲンダイ 2018年1月3日
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