解散時期や候補者も決まっていないのに、橋下徹・大阪市長が率いる「維新の会」が次期総選挙で大躍進し、国会を席巻するかのような報道があふれている。
こうした論調に惑わされているのか、「維新の会」には有象無象が押し寄せている。橋下らは今月9日、連携を望む首長や国会議員らを集めて公開討論会を開催する。そこで、自らが掲げた政策、「維新八策」に対する踏み絵を踏ませて、候補者を選別する気だ。なにやら、独裁者気取りだが、大半の新聞やテレビや週刊誌は、橋下市長らの発言を受け売りするだけで、そこに見え隠れする矛盾や問題点を検証・批判しようとはしない。
橋下徹とは何者なのか。維新の会は何をやろうとしているのか。突き詰めていくと、いくつもおかしなことが出てくるのだ。
中でも見過ごせないのが最近、急浮上している安倍晋三・元首相との連携話だ。「党首を打診」との報道もあった。
これまで維新の会は、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への考え方が異なる」として小沢一郎元代表との連携を拒否した。「基本政策の一致」が大原則と、声高に強調していたものだ。
しかし、維新の会と安倍の政策は、ずいぶん違うのだ。確かに安倍と維新の会は憲法改正や教育基本法などでは一致する。しかし、例えば、原発政策ではどうか。少なくとも安倍は橋下のように関西電力との対決姿勢を鮮明にし、声高に再稼働に反対したことはない。原発再稼働容認の自民党の方針に異論を唱えたこともない。かなりの温度差があるのは否めない。
安倍は週刊誌のインタビューで「橋下維新と共闘し、民自公談合連立を潰す!」(「週刊ポスト」9月7日号)と勇ましかった。しかし、その一方で、7月末に行われた山口県知事選では自公推薦の候補者を支援。それも消費増税で余裕ができた財源で建設国債を発行し、積極的な公共投資を行う政策を訴えていたのだ。「維新の会」は現行の消費増税反対だから、ここでも安倍との姿勢は大きく異なる。
そんな安倍がなぜ、党首候補なのか。結局、「維新の会」の実態は政策集団というよりも、領土問題や歴史問題で対外強硬姿勢を取る極右集団ではないのか。そんな疑念が出てくるのだ。「安倍元首相との連携を進めているのは、堺屋太一氏と松井知事です。『リーダーとなる国会議員がいなくて、このままだと烏合の衆になってしまう』という危機感から、安倍さんを口説こうとしたと聞いています」(維新の会事情通)
理念や政策の一致は、単なる建前論なのだろう。元改革派経産官僚で橋下市長のブレーンでもある古賀茂明氏も「『安倍元首相は改革派』と思っていたので、(山口県知事選での)“公共事業バラマキ発言”には驚いた」と話している。
「既得権益の打破」にひかれて「維新の会」に投票したら、第2次安倍政権になっていた――。これじゃあ、国民は騙されたことになる。
(取材協力=ジャーナリスト・横田一)
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