北海道長期債務残高6兆300億円 借金地獄の中で
  大手ゼネコン大儲け 北海道新幹線で北海道財政破綻へ  
   
【汚職】 ウィキペディア 「北海道新幹線」について JR北海道の回答 政財界にはびこる国有財産泥棒

国鉄の解体はリストラの原点だ
AERA 野村昌二 (更新 2017/4/5 16:00)

 国鉄が解体し、7社のJRが発足して30年。株式上場を機に、脱テツドウにシフトする会社があれば、お先真っ暗な未来にアタマを抱える会社あり。現在のリストラなど働く人たちの労働環境悪化は、国鉄解体に原点があるとの指摘も。「電車の進化」などさまざまな切り口で30年を検証していく。AERA4月10日号では「国鉄とJR」を大特集。

 国鉄解体前夜、何があったのか。国鉄OBたちの証言をもとに、鉄道員の人生を翻弄したその実態に迫る。
*  *  *
 国鉄という組織ほど、政治に翻弄(ほんろう)された公営企業はなかった。
 戦前は鉄道省に属し、終戦直前に新設の運輸省鉄道総局に移管された国鉄。1949年6月に公共企業体としてスタートし、高度経済成長で輸送力を飛躍的に伸ばした。だが、自動車と航空機の時代の到来で、64年には赤字に転落。借金漬けの構造から抜け出せぬまま、問題を先送りするだけの再建計画が繰り返し作られた。組織内の危機感は薄かった。

 国鉄当局は70年、生産性向上運動、いわゆる「マル生運動」を導入する。労使が協調し経営を立て直すものだったが、当局側が現場管理職を通じ、組合脱退を強要していた事実が明るみに出る。翌71年10月、磯崎叡総裁(当時)が不当労働行為を認めて陳謝すると、現場の力関係は組合側に大きく傾いた。

 国鉄時代、東京南鉄道管理局人事課に勤めていた丸山祐樹さん(70)=交通道徳協会理事=は、連日のように各労働組合と団体交渉をしていたと振り返る。

「徹夜交渉はしょっちゅう。やるかやられるかの世界でした」


●闘う労組は国労だけ

 当時国鉄には、主要組合として国鉄労働組合(国労、組合員約24万人)、国鉄動力車労働組合(動労、約4万3千人)、鉄道労働組合(鉄労、約4万3千人)の三つがあった。このうち国労と動労は総評(社会党)系で分割民営化に反対、鉄労は同盟(民社党)系で労使協調路線。しかし86年1月、「鬼の動労」の異名をとった動労が突然、雇用確保と組織温存のため民営化賛成へと方針を転換。動労は「牙が抜けた」と評され、「闘う組合」は、国労だけとなった。反対姿勢を貫く国労によって、職場の規律は崩壊した。首都圏の貨物職場で働いていた国鉄OB(60代)は言う。

「70年代半ばごろにはトラック輸送に押され貨物の仕事が減ってきました。半面、勤務時間内の作業手待ち時間が増えてきたので、国労の職員たちが何を始めたかというと、チンチロリンとかマージャン。お金はもちろん賭けていた」

 国鉄で在来線の運転士をしていたJR職員(50代)も、勤務時間中に飲酒をしていた運転士を目撃している。たがが外れ、現場に悪慣行がはびこっていた。この点について、現在も約1万人の組合員を抱える国労はこうコメントを寄せた。

「中には『好ましからざる行為』を行っていた職員もいたことは事実です。しかし、一部国鉄職員の行為があたかも国鉄職員全体の行為であるかのように恣意的にゆがめられ、悪意に満ちた喧伝や報道が行われたことが異常でした」(国労本部書記長の唐澤武臣さん)

●クビ切りは組合で選ぶ

 そこに国鉄の不祥事が追い打ちをかけた。ヤミ手当の受給に、機関士の酒気帯び運転……。マスコミは国鉄の批判キャンペーンを展開。分割民営化に世論もなびいた。一方、国鉄では毎年1兆円の赤字が出て、出血が止まらない。こうして国鉄はついに解体されることになった。

 誰を国鉄に残し、誰に転職を促すか──。国鉄内で「選別」が始まり、水面下で「リスト」作りが行われた。

 民営化前、関西で列車乗務の仕事をしていた男性は、「50歳以上は会社を辞めてほしい」と圧力をかけられた、と振り返る。彼は辞め、残った同僚もすぐにJRを去った。最近、その理由を教えてくれたという。

「乗務が終わって職場に戻ったら、上司になった後輩から『ぼちぼち辞めたらどうや』と毎日言われる。みじめやった、と振り返っていました」

 国鉄の内部事情に詳しい国鉄OB(60代)はこう証言した。
「社員を選別する際、その一つにどの労働組合に所属しているかが重要な要素だった」

 このOBによれば、管理部門の人事担当には「K、D、T」という隠語があったという。Kは国労、Dは動労、Tは鉄労の意。隠語は元々、駅長や助役など現場責任者や管理者が使っていた。組合への直接介入は、不当労働行為に当たるからだ。声に出して言えない時は、指で“影絵のキツネ”を作った。逆にすると「K」に見えた。

「分割民営化の1年くらい前から『〇〇はKだ』『△△はDだ』という言葉が人事担当者間で露骨に飛び交ってた。なぜ労働組合で選別するかって? それが一番分かりやすいからですよ」
 また別の国鉄OB(70代)はこう言った。
「優秀な社員と組合運動ばかりしている人だったら、どっちを残しますか」


●総評つぶしが狙い

 国鉄改革は、何のための「改革」だったのか。首相として国鉄改革に政治生命をかけた中曽根康弘氏は、国鉄解体の狙いをかつて本誌でこう語った。

「総評を崩壊させようと思ったからね。国労が崩壊すれば、総評も崩壊するということを明確に意識してやったわけです」(96年12月30日号)

 ルポライターで、86年に『国鉄処分』の著書を出した鎌田慧さん(78)は、国鉄解体の本質は(1)民活(民間活力)(2)国労つぶし──この2点にあったと指摘する。

「『民活』という名で公共性をなくし、大企業が国鉄財産を乗っ取ることを考えた。そのためには、国労という最強の抵抗勢力であった労働組合が邪魔だった。そこで楔を打ち込み、壊滅を図ったのです」
 国鉄当局は86年7月、全国に「人材活用センター」を設置。余剰人員と見なされた1万5千人の職員を送り込むと、草刈りやペンキ塗りなど本業とは関係のない仕事をさせた。センターは「首切りセンター」とも呼ばれ、将来への不安を抱いた職員が何人も自殺した。JRが発足すると、7628人を「清算事業団」に回し、3年後、最後までJR復帰を訴えた1047人のクビを切った。うち、国労組合員は966人を占めた。

 北海道名寄市の佐久間誠さん(62)は、JRに不採用となりクビを切られた一人だ。
「自分を全否定された気がしました」

 地元の高校を出て19歳で国鉄に入社、名寄保線区に配属となった。当時、鉄道の街と言われた名寄駅には140人近い職員がいた。全員が国労。佐久間さんも自然の成り行きで国労に入り、仕事を真面目にこなし、ごく普通の組合運動をしてきた。それが、理由も明らかにされず、86年7月に「人材活用センター」に入れられ、結局、採用拒否にあった。


●労働者の人権を軽視

 どうしても不採用に納得がいかず、90年4月、同じくクビになった職場の仲間36人で名寄闘争団を組織した。慣れない建設現場で日雇いアルバイトなどをしながら生計を立てた。闘争団は各自の稼ぎや寄せられたカンパをプールし、再分配する仕組みを作った。月収は10万円程度。4歳と2歳の2人の子どもがいて生活は大変だったが、郵便局で働く妻が応援してくれた。
「こいつら赤旗を立てると言われ、アルバイト先を探すのも大変でした。この先どう生きていこうか、精神的に追い込まれていきました」

 それでも歯を食いしばって最後まで頑張れたのは、いわれなき差別に対する闘いでもあったからだ。JR不採用問題は2011年7月、国労が闘争終結を決定し、24年間に及んだ闘争に終止符を打った。15年に名寄市議に初当選し、街の活性化と生活インフラの充実を訴える佐久間さんは、こう振り返った。

「失ったものは歳月だよね。労働者として一番の働き盛りに闘争の人生を歩んできたから」

 先の鎌田さんは言う。
「国鉄解体は、いまのリストラの原点。国鉄解体後、組合の力は弱くなり、働く者の生活や人権が顧みられなくなった。その結果、労働者のクビ切りが簡単に行われるようになった」

 鉄道員の人生をもてあそび、多くの犠牲から生まれたJR。今後どのような軌跡を描くのか。

(編集部・野村昌二)
※AERA 2017年4月10日号

JR北海道をつぶすの誰だ 会社もグループもみんな逃げた
AERA 福井洋平 (更新 2017/4/7 07:00)


 国鉄が解体し、7社のJRが発足して30年。株式上場を機に、脱テツドウにシフトする会社があれば、お先真っ暗な未来にアタマを抱える会社あり。現在のリストラなど働く人たちの労働環境悪化は、国鉄解体に原点があるとの指摘も。「電車の進化」などさまざまな切り口で30年を検証していく。AERA4月10日号では「国鉄とJR」を大特集。

 半分の路線を「維持困難」と投げ出そうとしているJR北海道。会社もJRグループも国も自治体も、誰も責任を取らない。十分予測できた暗い未来を直視しなかった。
*  *  *
 3月中旬、北海道日高町にある日高門別駅を訪ねた。立派な待合室のある駅舎に2本の線路。だが、いつまでもそこに列車は来ない。ここ2年ほど、JR北海道の大動脈の一つ、日高線(苫小牧─様似(さまに)、146.5キロ)が、116キロにわたって運休しているからだ。
 きっかけは2015年1月の高波被害で、線路下の盛り土や橋が流されたこと。JR北は、「復旧に86億円、運行再開しても年間13億円かかる」と沿線自治体に負担を求めた。人口減少に悩む自治体にとても負担はできない。運休区間の廃止を通告してきたのは昨年12月。沿線自治体の一つ、日高町の三輪茂町長は困惑を隠さない。
「地図から鉄道路線が消えたら、首都圏から人が来なくなる。年間予算100億円程度の町の規模ではJR北海道が求める(1町あたり年2億円程度の)負担は到底できません」

 15年12月から、沿線自治体とJR北が復旧に向け議論する沿線自治体協議会が始まった。
「復旧に際し国に補助金を要請するには(運行を)持続させる仕組みをセットで構築することが不可欠です」(JR北海道)

 だが三輪町長によれば、JR北に、路線再開に向けた熱意を感じることはできなかった。沿線7町は様似から札幌までの優等直通列車導入や新駅設置などの利用促進案を出したが、JR北は年間3億円程度の赤字が出るとの試算を出して難色。鵡川(むかわ)駅から、日高門別駅までの約20キロは路線の損傷はないが、運行再開には折り返し施設新設などで6千万円に加えて、毎年の運行コストなど3億2千万円の負担が必要と町に要求したという。

「二言目には『赤字なので』という話ばかり。災害をいいことに、路線を廃止したいとしか思えません」(三輪町長)


 JR北はいま、国鉄から受け継いできた「全国あまねく」(ユニバーサルサービス)の看板を下ろしつつある。昨年11月に全路線の半分にあたる10路線13区間を「自社だけでは存続できない」、うち3路線(のちに日高線運休区間を含め4路線)の一部区間のバス転換を沿線自治体に提案した。

 札幌から車で約1時間半、北海道の農村地帯にある札沼線の終点、新十津川駅(新十津川町)。昨年3月のダイヤ改定で列車が3本から1本に減らされ、午前9時40分に「日本一早い終電」が発車する駅に。ここから北海道医療大学駅までが廃止3線区のうちの一つだ。14年に駅前に休憩所「寺子屋」を開き、グッズなどを販売している後木幸里(うしろぎゆきさと)さん(86)は嘆く。

「温暖化が進めば雪も減り、北海道は移住先や別荘地として魅力的な存在になる。そうすれば鉄道の役割も増えると思います。JR北海道は真剣に努力をしてきたのか、と言いたいですね」


●発足10年は頑張った

 国鉄の分割民営化時、すでに将来の経営難が予想されたのは九州、四国、北海道のいわゆる「3島会社」。だが、昨年上場を果たした九州と比べてもJR北の惨状は際立つ。直接の原因は、11年の石勝線トンネル内特急火災など頻発した事故。安全対策のため特急列車の減速減便などコストカットを余儀なくされ、鉄道の魅力はさらに失われた。

 工学院大学の曽根悟特任教授は、JR北は発足から10年くらいは「非常に頑張っていた」と言う。雪が降ったら「運転が怖い人が鉄道に乗ってくれる」と「雪ダイヤ」を組んで積極的な運行に努め、90年の札幌─旭川間130キロ運転や94年の札幌─函館間2時間59分運転など、札幌と各地を結ぶ特急の高速化も実現した。

 当時在籍していた60代のOB社員は、こう当時を振り返る。
「スキーブームもあって本州からどんどん客を呼ぼうという意識が高かった。東京駅に営業所もつくるなど頑張っていました」

 だが、その頑張りも十分ではなかった。OB社員は言う。
「各自治体との連携や、地元の観光需要を掘り起こす動きが全社的にならなかった」

 足元の安全確保や需要喚起といった動きが鈍いまま、低金利時代が襲ってきた。もともと経営難が予測されてきた3島会社は分割民営化時に国から「経営安定基金」(JR北は6822億円)を与えられ、その運用益で赤字を埋める仕組みだった。だが、低金利時代に突入して運用益は目減り。当初の金利水準に比べ、トータルで約4千億円減少したと推測されている。かといって、取り崩しもできない。
 曽根氏は、同じ苦境に立たされた四国と北海道の違いがここで表れたと言う。四国は苦しい状況でも路盤改修に積極的に投資し、枕木をコンクリート製に切り替えて結果的に保守費を切り下げることに成功した。JR北は、その動きができなかった。

「四国、九州と違い鉄道システム全体が見通せる技術者が会社のトップにつかなかったため、技術革新の姿勢が次第に失われたのです」(曽根氏)



●国の支援体制が不十分

 この苦境を招いたことをJR北だけの責任にするのは間違いだ。鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは、「国がJR北海道を支援する仕組みが整っていないのが最大の問題」と指摘する。

 JR北は民営化当時に比べて赤字線区を切り、利用客も増えている。だが運賃値上げをしたくても、国の指針により他のJR旅客会社とコストを比較して運賃を決める「ヤードスティック方式」を採用しているため自由に運賃が値上げできない。そのため正社員数を発足当時の1万3千人から7千人(16年)まで減らすなど、コストカットを強力に進めざるを得なかった。一連の事故もその流れの中にあると梅原さんは指摘する。

 北海道内を走るJR貨物から十分な収益を得られなかったことも、JR北にはダメージだった。JR貨物も経営環境が厳しく、貨物列車が走ることによるレール摩耗分などの上乗せ経費分だけの「アボイダブルコスト」のみを払う仕組みになっている。北海道大学の石井吉春特任教授(社会政策)は、「北海道内では旅客に対する貨物の割合が極めて高く、本来JR貨物が払うべき費用負担をJR北が肩代わりしているため赤字解消が進まない」と分析する。石井特任教授は、JR北海道が貨物から得られていない線路使用料は年150億~200億円程度と推測する。経営安定基金の運用益の大半を食いつぶす計算だ。

 JR貨物は17年3月期に鉄道事業が初めて黒字化する見通し。好調ぶりについて、同社は、
「国内総貨物量は減少しているが、トラックドライバー不足や環境問題を背景に、鉄道による貨物輸送量は増えている」

 と分析する。黒字化でアボイダブルコストのあり方も今後問われることになるだろう。


●無料道路との競争に

 北海道の苦境は国の交通政策に遠因があると語るのは、関西大学の宇都宮浄人教授だ。JR発足後も次々と高規格道路を開業させ、特にJR留萌線と並行する深川留萌自動車道、JR日高線と並行する日高自動車道(それぞれ一部)など国交省北海道開発局が開発する高規格道路は無料開放されている。

「これはイコールフッティング(平等な競争条件)ではない。道路と鉄道にかける予算の配分の適正化を国や自治体は考えるべきです」(宇都宮教授)

 高規格道路はそもそも、道内の自治体が求めてきた構図があると石井特任教授は指摘する。
「その結果、鉄道が苦境に陥った。今回維持困難とされた線区の地元自治体の首長は、自分たちがどう公共交通を維持していくか考えないといけません」

 日高線沿線にある新ひだか町の酒井芳秀町長は、レール上も道路も走れるバス「DMV」を日高線に導入すべきだと主張する。だが、「日高の公共交通を考える有志の会」を主宰する新ひだか町の高橋幸二さん(50)は、「DMVはメリットを感じられないし、鉄道にこだわっていては理想の公共交通は生まれない。そもそもの原因は鉄道による街づくりを行政が怠ってきたことだ」と厳しく批判する。国もJRグループも自治体も、問題をなあなあで先送りし、JR北の苦境をつくってきたのだ。



●インフラは国が責任を

 打開策はあり得るのか。観光情報サイト「タビリス」の鎌倉淳さんは、北海道にはポテンシャルの高さがあると言う。

「インバウンド客が集まっており、しかも団体客から個人客にシフトしつつあるため列車移動の需要は高い。今年2月に乗車した富良野線は外国人観光客でいっぱいで、高い運賃を設定するといいのではないでしょうか」

 もう一つの方策は、北海道新幹線の高速運転化だ。現在、整備新幹線部分の最高時速は法律で最高260キロと決められている。法律を変え360キロ運転を実現すれば30年度に札幌まで延伸予定の北海道新幹線は東京─札幌間が4時間を切る可能性があり、「航空機との競争で優位に立てる」(鎌倉さん)

 もっとも、老朽化した鉄路の改修や整備点検はこれからもJR北の経営を圧迫し続ける。宇都宮教授はJR北が主張する通り、インフラ部分を国や自治体が保有する「上下分離方式」が望ましいと主張する。

「本来、鉄道は道路同様、社会インフラとして国や自治体が地域全体の社会的な利益を考え、その土台を支えるべきもの。欧州で浸透しているこの考え方を、JR北海道の問題を機に日本でも広げていくべきです」

 JR北の経営好転の切り札になるかもしれない新幹線。そんな新幹線を渇望しているのが、四国だ。新幹線誘致の旗振りを務める「四国の鉄道高速化連絡会」は誘致の理由について、「人口減少対策のための基盤として、全国の新幹線ネットワークと結ぶことが不可欠」と説明する。一方、整備新幹線を地元にもつ青森大学の櫛引素夫教授(地理学、新幹線論)は、こう警鐘を鳴らすのだ。
「青森では在来線沿線の三沢市や野辺地町などが特急停車駅でなくなり、新幹線ができて利便性が低下して不満が根強く残りました。誰が得をし、誰が損をするかを検討しないまま建設促進論だけが強調されれば、地域に混乱を招く可能性もあります」


(編集部・福井洋平)
※AERA 2017年4月10日号
札幌延伸まであと14年、高齢者はお墓の中で開業を祝うことになる。
<北海道新幹線>目立つ空席、観光地明暗 開業1週間 毎日新聞 4月1日(金)21時51分配信
JR北海道、18年度末に破綻と試算 国から1200億円支援で回避

JR北海道、2018年度末に破綻と試算!国から1200億円緊急支援で回避 (北海道新聞)

 JR北海道が今年初めに、給与などの支払いにあてる手元資金が2015年度末にマイナスに転じ、18年度末には1122億円不足して事実上の経営破綻状態になると試算していたことが15日、関係者への取材で分かった。


私見)結局、JR北海道は、北海道新幹線など運行できるような会社ではない。道民は「北海道新幹線で変わる、旅が、仕事が、暮らしが、未来が!」などと浮かれている場合ではない。


 この試算を受け、政府は6月末、設備投資の費用などとして、JR北海道に一部返済義務のある1200億円の支援を決め、資金不足は解消する見通しだ。
JR北海道は鉄道事業で慢性的な赤字状態が続き、国からの経営安定基金の運用益で赤字分を補う経営を続けている。


私見)「一部返済義務」のある1200億円とは税金でしょう。そもそも、毎年度300億円前後の赤字を出しているJR北海道が1200億円を返済できるわけがありません。


 一方、一連の車両火災などを受け、18年度までに安全投資や修繕に総額2600億円を投じる計画を進めており、今回の試算からは、これらの資金拠出も重なって、来春の北海道新幹線開業以降も厳しい経営状況が続くことがあらためて浮き彫りになった格好だ。


私見)このままでは、北海道新幹線の札幌延伸(2030年)までに、JR北海道は経営破綻することは目に見えている。

北海道新幹線 道民に残されるのは、巨額の負債
2013年10月14日 石川栄一
 北海道新幹線が開通する22年後の2035年、少子化と道外への人口流出で道民150万~200万人減になるのは確実だ。
 更に道民の人口の7~8割は札幌経済圏(現在約340万人)に集中する。地方では職が少なく、病院も学校も減少するためで、現在も進行中である。
 しかもその札幌経済圏の7割は、現役をリタイヤした60歳以上の高齢者が占める。従って「老人街札幌」まで新幹線が延伸したとしても、採算が取れる可能性はまったくない
 しかし、財務省、財政制度等審議会が北海道新幹線は採算がとれない」というような理由で凍結していたが、「コンクリートから人へ」と謳って政権交代を果たした民主党が、野田政権になって、この延伸事業が復活となった。聞くところによると、国土交通省は、なんと延伸事業の復活が決まってから事業の採算性の検討に入った、との事である。
 さて、国土交通省が政務3役会議で北海道新幹線、新函館(仮称)-札幌間(211キロ)の2012年度着工を決定したが、工期24年とし、建設費1兆6700億円、2035年度の開業を目指すとしている。
 しかし、22年後に日本はどうなっているのか考えて欲しい。
そもそも、北海道新幹線の誘致を運動していた人達の大半は、生きてるうちに乗れるかどうかも怪しい。
 結局、大手ゼネコンにエサ(建設費1兆6700億円)を与える為の新幹線延伸ではないのか。
 また、現在も事故続きのJR北海道運行では、恐らく「”棺桶”新幹線」になるし、北海道新幹線は赤字路線確実であり、潤うのは工事を請け負った大手ゼネコンだけである。その建設事業費である1兆6700億円だけで、北海道開発予算の3~4年分にあたる。
 24年間で、1兆6700億円使うとなれば、毎年約696億円つぎ込む計算だ。新幹線の営業主体であるJR北海道(予定)の毎年の赤字額は300億円を超えている。果たして、2035年度の開業まで、鉄道事業を継続できるのか疑問である。
 更に建設主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(予定)は、採算がとれるとして、その後も永続してゆくことを、本気で考えているのだろうか。北海道新幹線で経済上向きになるなんて、夢のまた夢である。
 その間の費用は、工事業者である大手ゼネコンへの「乳供給事業費」であり、税金の無駄遣いになるだけではない。
 心配なことは、北海道が財政再建団体になるかも知れないということだ。そして道民に残されるのは、巨額の負債と錆び付いた鉄路である


北海道180市町村の2035 年の将来推計人口について
― 2005~2035 年の人口シミュレーション ―
社団法人 北海道未来総合研究所

調査結果の要旨
■北海道全体の30 年後(2035年)の人口
総人口は、2005 年の563 万人から2035 年には424万人(伸び率マイナス24.6%、年率マイナス0.9%)になるものと予測される。
高齢化率(総人口に占める65 歳以上人口割合)は、2005年の21.5%から2035年には36.4%まで上昇すると予測される。
従属人口指数(15~64 歳人口に対する0~14 歳と65 歳以上の人口割合)は、2035年に80を超えると予測される。

■180 市町村の30 年後(2035 年)の人口
○2005 年から2035 年の総人口の伸び率がプラスとなる市町村は、180 市町村中5市町村にとどまる。
○2005 年から2035 年にかけて総人口が増加する5市町村は、札幌市周辺の恵庭市、旭川市周辺地域の東川町、東神楽町、帯広市周辺の音更町、芽室町となった。
総人口が5千人未満の市町村は、2005年の62市町村から2035年には、112市町村に増加すると予測される。人口規模の上位10市町村についても、2035年には減少に転じていくものと予測される。
2005~2035 年の人口シミュレーション
目で見る25年後のあなたの町の人口ピラミッド
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大手ゼネコン大儲け 北海道新幹線着工へ 2012年7月3日
 元 北海道大学 文部科学技官 石川 栄一
「コンクリートから人へ」を忘れた民主党は、北海道新幹線の札幌延伸の着工を正式に認可した。総工費1兆6700億円。
マスコミは、今日まで北海道新幹線の特集で「道民の夢、30年以上も開通準備を進めてきた努力が報われない」といった論調で報道してきた。
経済界ベッタリのマスコミにしてみれば、道の債務残高などどうでも良いことで、今回の新幹線、札幌延伸の着工は、さぞかし喜ばしいことであろう。

「北海道新幹線の問題点」

1.JRの役員の言によると、JR北海道による輸送実績の60%以上は貨物輸送などの物流であり、現在の段階では、青函トンネルがネックとなり、時速300Km以上での貨物輸送は不可能である。

2.旧・国鉄幹部の言によると、北海道新幹線の場合は「絶対に黒字にならない」と断言している。その根拠として、道民の生活水準の低下に加えて、公務員、例えば北海道大学の場合、本州方面への出張については旅費節減のため鉄道の利用を認めていない。民間各社も安い運賃の方を選ぶ。

しかも道庁の幹部も、「出張では鉄道は利用しない」と述べている。
従って、鉄道を利用できる客層は、「お金と暇がある方々」が中心になる。さて「年収300万円以下」が圧倒的に多い道民の何パーセントがこれに当てはまるか。

3.さて、めでたく北海道新幹線が開通した場合、在来線は廃止になる。そのような状態になったとき、在来線を利用していた周辺の住民生活はどうなるのか。(資料1)
北海道新幹線の開通を「大声で唱えている方々」は、はたして、在来線周辺住民の生活を考えているのか。(資料9)

更に、道の試算によると実質負担額(税金)は、建設期間(24年間)で2900億円となるそうだが、北海道新幹線の開通により、御利益を受けるのは、札幌~新函館間の「新幹線沿線の停車駅周辺のみ」である。
「道民の夢」は今の段階では、あくまで「夢」にしておいた方が宜しいのではないか。

格安航空会社(LCC)時代の到来

北海道新幹線の開通は、青函トンネルの膨大な額の赤字を解消する起死回生の策でもある。考えうる解決策としてはその程度しかないが、これにも大きな疑問がある。更に、これからは格安航空会社(LCC)の時代であり、一段と北海道新幹線の赤字経営に拍車が掛かるに違いない。

北海道新幹線の利用者が住んでいる地域と、新幹線の停車駅や飛行場のアクセスにもよるだろうが、北海道(札幌始発)から東京まで行くのに、わざわざ新幹線を使う人は、はたしてどれだけいるだろうか。どう考えても飛行機の方が格安で、目的地に早く到着する。

極端な話、仮に千歳発着の国内線利用者が全て新幹線の利用者になったとしても、新幹線の建設費やトンネル等の建設費1兆6700億円。更に維持補修費だけでも最低、年間数十億円はかかる。その上、借金の利子が嵩み北海道新幹線の赤字が解消する可能性は極めて低い。

そもそも、千歳空港の利用者の半数でも新幹線の利用者になってしまったら、丘珠空港(札幌市)のように千歳空港も寂れてしまうだろう。
北海道内で客の奪い合いをしても北海道全体としては何の得もない。
千歳空港は国際空港でもあり、絶対になくす訳にはいかないというのが多くの道民の意見でもある。

がれき受け入れ問題 青函トンネル内で列車火災の危険性

次に、大きな問題は、道が法令違反(資料5)にもかかわらず、受け入れを決めている「震災がれき」の輸送における青函トンネル火災の恐れである。
JR北海道は、石勝線トンネル火災事故(資料7)などに見られるように事故続きであり、青函トンネル内で、もし「放射能汚染がれきの”自然発火”や、機関車や貨物車の”整備不良で起こる発火”」が原因で、貨物列車が火災を起こしたら、大量の「放射性がれき」が燃焼し大火災になるだろう。

青函トンネルは、地上のトンネルとは異なり、「致死量の放射線が青函トンネル内に充満」し、そのうえ、がれきは”未処理”であるため、青函トンネル外への排気により大気中に放射性物質が拡散されることになり環境を破壊する。また、JRの保線作業員の健康被害にも繋がり、復旧も困難になる。このように、青函トンネル内で大事故が起これば、北海道新幹線どころか、在来線の運行も不可能になり、本州と北海道が永久に分断されることになる。

北海道新幹線の破綻で道民に残されるもの

北海道新幹線が赤字路線になるとJALの二の舞になり、潤うのは新幹線の建設工事に携わった大手ゼネコンだけである。
北海道新幹線の建設事業費の1兆6700億円だけで、北海道開発予算の3~4年分にあたる。その結果、北海道新幹線の破綻により道民に残されるのは、巨額の負債と錆び付いた鉄路だけである。

 
★北海道長期債務残高 4兆8901億5930万円
★道民一人あたり(子供を含む) 88万円 (2012年7月4日現在)
「北海道新幹線」について JR北海道広報部の回答(抜粋)    
平成22年4月22日現在 
次に、「北海道新幹線」についてですが、北海道新幹線の新青森・新函館間については、青函トンネルを含む一部区間において新幹線と在来線貨物列車が共用走行する計画となっています。

 高速で走行する新幹線と貨物列車が共用走行するケースは初めてであることから、国が中心となり安全対策の検討が進められているところですが、札幌までの全線開業時には共用走行区間の輸送力についても課題となります。
そのため、当社としましては、安全を確保した上で輸送力の確保が可能な方策として、在来線貨物列車をそのまま搭載し輸送する新幹線規格の貨物列車の技術開発に取り組んでおり、青函トンネルの最大限の活用のためにも是非とも実現させたいと考えています。

 続きまして、北海道新幹線を利用される方の見込みについてですが、これまで道内経済界によって、利用者予測調査や、北海道、東北、関東地方等に在住する方を対象としたアンケート調査等が行われており、それらの結果によると、北海道新幹線が札幌まで開業した場合、北関東や東北地方と道央との移動における利便性が大幅に向上することによって、多くのお客様に北海道新幹線をご利用いただけると考えています。
 また、新幹線の開業にあわせて、並行する在来線については当社の経営から分離されることになります。その取り扱いについては、北海道が中心となり利用実態等を勘案しつつ検討を進めることとなりますが、当社としましても鉄道事業者として可能な限りの協力をして参りたいと考えています。

 今後ともJR北海道をご愛顧下さいますようお願い申し上げまして、このたびの、回答とさせていただきます。

 平成22年4月22日 JR北海道広報部
 2012/07/03
 石川栄一
 
 【資料8】
ゼネコンランキング(2010年3月期売上高予想) クリックで拡大します。
 
【資料9】
2001年4月1日以降に廃止された路線
 
 2000年代になって鉄道の廃止が顕著になった理由は2つある。
1つは、1999年3月1日の鉄道事業法改正である。
もう1つは、第三セクター鉄道の資金切れだ。  
[杉山淳一,Business Media 誠] 全文>
 
What a comeback! Eleven months after the tsunami ravaged Japan, a series of pictures reveals the incredible progress being made to clear up the devastation.
瓦礫 市街地には殆ど 残っていません
証拠写真<1>
証拠写真<2>
 
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高齢者はお墓の中で新函館北斗・札幌間の開業を祝うことになる 寝台特急の廃止は北海道新幹線の開業が原因

 本日(2015年3月14日)、北陸新幹線が開通した。
今までは、東京駅から長野駅まで部分開業しており、同区間は便宜的に「長野新幹線」と呼ばれていた。本日開業した北陸新幹線は、現在の長野新幹線を延伸する形で、金沢と長野の間のおよそ230キロが新たに開業し、金沢と東京の間が、従来より1時間20分ほど短い、およそ2時間半で結ばれることになる。
テレビ等では、金沢駅や東京駅のホームで行われた出発式のテープカットや、くす玉割りなど華々しい光景を、盛んに報道していた。
テレビでは、金沢・東京間の所要時間の短縮や、経済効果などのメリットを大々的に報じているが、多くのデメリットを報じないのは、マスコミのいつものやり方だ。

さて、このように、めでたく開業した北陸新幹線ではあるが、前途洋々ではなさそうだ。

(引用:2014年11月02日付 HARBOR BUSINESS Online)
 新幹線開業は必ずしもプラスの面ばかりではない。鉄道専門誌の編集者は

地元で暮らす人にとってはマイナスの側面のほうが大きいかもしれない」と話す。

 具体的にはどのようなデメリットが生じるのか。
現在、新幹線が新たに開業すると、並行している在来線はJRの運営から離れて第三セクター化されることになっています。これはJRの経営負担を軽くするため。つまり、逆に言えば収益の望めない赤字路線を地元自治体に押し付けるということでもある。これまでも東北本線の一部がIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道に、鹿児島本線の一部が肥薩おれんじ鉄道に、信越本線の一部がしなの鉄道に移管されています。そのいずれもが極めて厳しい経営を強いられていますし、運賃の値上げなどで利用者への負担も増加しています
(中略)
新潟から富山に単身赴任しているという国家公務員のA氏は言う。

今は金沢~新潟に特急北越が1日5往復走っています。でも、新幹線が通ると北越は廃止。新幹線で上越妙高まで行って乗り換えるしかありません。お金も時間もかかるし乗り換えの手間もある。今までのように頻繁に家に帰ることはできませんね

 富山県の高岡市から金沢市内に通勤しているB氏も「特急がほとんどなくなるので各駅停車でいくしかない」と溜息をつく。
今は高岡から金沢まで約20分。各駅停車だと40分はかかります。本数も少ないですし……。新幹線駅もできますが、さすがに高いしすべての列車が止まるわけじゃありませんからね。僕たち北陸の人間にとっては新幹線が通ってもなにひとつ便利になりません

 さらに深刻なのは、特急はくたかを運行する北越急行ほくほく線の沿線住民。特急はくたかは越後湯沢~金沢を結び、これまで東京と北陸のアクセスには欠かせない路線だった。しかし、新幹線開業に伴って廃止が決まっている。
何でも北越急行って利益の9割がはくたかだったという話。はくたかが無くなることで、北越急行そのものがなくなっちゃうんじゃないかと心配しているんです。もしそうなったら、子どもたちの通学やお年寄りの通院はどうすればいいのでしょうか……
(引用終わり)


北海道新幹線は赤字確実だ。テレビではいつもの通り、多くの問題点を報じない。
北海道新幹線(新青森・新函館北斗間 2015年度末)の開業に伴い、絶大な人気があった寝台特急トワイライト・エクスプレスや北斗星が廃止された。また、北海道新聞社のウェブサイトに、カシオペアの9月廃止が報じられている。
これは、青函トンネルの架線電圧が交流20kV(2万ボルト)から、新幹線規格の25kV(2万5千ボルト)になったことと、採算面の理由もある。


(引用:2014年11月02日付 HARBOR BUSINESS Online)
鉄道ファンからも新幹線開業に伴うデメリットを指摘する声が聞こえてくる。
この道20年の撮り鉄C氏が言う。

北海道新幹線開通の影響で、JR西日本の運行する豪華寝台特急トワイライト・エクスプレスが廃止されます。まだ発表はされていませんが、JR東日本の北斗星(ブルートレイン)・カシオペアも廃止になるでしょう。どれも鉄道ファンならば一度は乗っておきたい寝台列車だけに、寂しい思いでいっぱいです

 これらの寝台特急が廃止されるのは、新幹線の走る青函トンネル内の規格がこれまでの在来線仕様ではなく新幹線仕様になるためだ。
JR貨物では在来線線路も新幹線線路も走ることのできる電気機関車EH800形を開発しましたが、これはこの区間が貨物列車にとってドル箱路線だからできたこと。寝台列車だけのためにJR西日本や東日本が車両をあらたに作ることは難しい。北海道新幹線の誕生で北海道から九州までが新幹線で結ばれることになりますが、それは寝台特急の終焉も意味するのです」(前出・鉄道専門誌編集者)
(引用終わり)


■北海道新幹線 新青森・新函館北斗間は平成27年度末(2015年度末)開業予定!
■北海道新幹線 新函館北斗・札幌間は、平成42年度末(2030年度末)開業予定!

札幌延伸まで、あと15年。平均寿命は男性で約80歳、女性が86歳である。
単純に考えても、現在、65歳以上の男性と71歳以上の女性は、お墓の中で北海道新幹線の新函館北斗・札幌間の開業を祝うことになる。


北海道庁のホームページでは、『2015年度末に予定される北海道新幹線の開業に向け、いよいよあと1年となりました!北海道では、3月20日(金)~29日(日)を「北海道新幹線開業1年前ウィーク』として、関係団体と連携して、さまざまなイベントを開催します。」などと、子供染みた宣伝を大々的に行っているが、採算がとれるのかどうかや、在来線の問題等については述べられていない。
北海道新幹線 道民に残されるのは、巨額の負債
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新幹線自殺は他人事じゃない!
年収400万円世帯も将来は生活苦にあえぐ“下流老人”に


 大きなニュースになった新幹線での焼身自殺。自殺したのは71歳の一人暮らしの老人で、「年金が少なく生活できない」ともらしていたという。公共交通機関を死に場所に選び、何の関係もない人を巻き添えにしたその行為は正当化されるものではないが、しかし、貧困にあえぎ、孤立する老人の姿はけっして、他人事ではない。
 日に一度しか食事をとれずスーパーで見切り品の惣菜だけを持ってレジに並ぶ老人、生活の苦しさから万引きを犯し、店員や警察官に叱責される老人、医療費が払えないため、病気を治療できずに自宅で市販薬を飲んで痛みをごまかす老人、誰にも看取られることなく独り静かに死を迎える老人……。

 さらに、これからの季節、深刻なのは、持病のある高齢者が倒れたまま発見されず、手遅れになる事態だ。「室内で転倒して動けなくなり、誰にも気づいてもらえない。身体は腐敗して真っ黒になり、人間としての原形をとどめていないこともある。遺体からは、腐敗した血液などの体液が流れだし、うじ虫やハエが室内を占拠するため、異様な腐敗臭が充満する」、そのようななかで、遠い親戚や遺品整理業者らが片付けを行うのだ。
 社会的に孤立し、人間らしい余生や最期を送ることができずに、孤独死しかねない“下流老人”は、現在推定で600万~700万人はいるという。
 12年間、埼玉県を中心に下流老人を含めた生活困窮者支援を行うNPO法人の活動に携わってきた藤田孝典氏の著書『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)によれば、今後も深刻な“下流老人”が増えていき、「平均的な給与所得があるサラリーマンや、いわゆるホワイトカラー労働者ももはや例外ではない。(略)現役時の平均年収が400万円前後、つまりごく一般的な収入を得ていても、高齢期に相当な下流リスクが生じる」「普通に暮らしてきた人々が、老後を迎えて、普通の生活を送れなくなってしまうような事態、すなわち下流に転落してしまう」(同書より)というのだ。
 藤田氏は下流老人を「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義し、下流老人の具体的な指標として、1「収入が著しく少『ない』」、2「十分な貯蓄が『ない』」、3「頼れる人間がい『ない』」(社会的孤立)という3つを挙げている。
 1「収入が著しく少『ない』」状態とは、いわゆる「貧困」状態だ。「相対的貧困率」(統計上の中央値の半分に満たない所得しか得られない人の割合)を目安に、2013年の国民生活基礎調査をもとにすれば、一人暮らしの場合、年の可処分所得額122万円、二人世帯では約170万円、三人世帯では約210万円、四人世帯では約245万円、この基準以下の収入しかない場合があてはまる。

 2「十分な貯蓄が『ない』」状態は、収入が少ないために貯蓄に頼らざるをえないのだが、老後の生活もお金がかかる。「高齢期の二人暮らしの場合の1か月の生活費平均は、社会保険料などをすべて込みで約27万円。仮に年金やその他の収入が月約21万円あったとしても、貯蓄額が300万円では約4年で底をつくことになる(不足分6万円切り崩し×50か月)。仮に1000万円あっても、14年弱しかもたず、最終的に貧困に陥る可能性があるのだ」(同書より)


 厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査の概況」によれば、4割以上の高齢者世帯が貯蓄額500万円に満たないとされ、数年で「すでに貯金を使い果たしてしまった」状態に陥りかねないのだ。
 貯蓄がゼロのうえに、相談できる、3「頼れる人間がい『ない』」(社会的孤立)となれば、生活に困窮しても助けを求められず、問題が表面化するのは重篤化してからだ。

「下流老人とは、言いかえれば『あらゆるセーフティネットを失った状態』と言える。収入が低くても、親の遺産なども含め十分な貯蓄があれば問題ない。また、貯蓄がなくとも、家族の助け、地域の縁があれば支えあって暮らしていける。しかし、そのすべてを失ったとしたら……。現状において、有効な手立てを講じるのは難しいと言わざるをえない」(同書より)

 たとえば、同書で紹介されている新潟県出身の男性・加藤さん(76)は、県内の公立高校を卒業して以降、自衛隊や飲食店、介護職など仕事を転々としてきた。「ところが、40代にさしかかるとき、重大な転機が訪れる。一番働き盛りのこの頃に、両親が相次いで病気に倒れ、介護が必要な状態になってしまったのだ」。

 独身だった加藤さんは正社員の仕事を辞め、10年間介護を続けた。両親の死後、50代半ばとなった加藤さんは新潟の実家を引き払い、首都圏に出る。65歳まで介護の仕事で働き、年金を受け取るようになると、厚生年金がわずかに9万円であることが判明する。「両親の介護離職による年金加入年数の少なさ、低賃金などから支給される年金は少なかった」のだ。
 糖尿病に、介護の仕事で患った腰痛で働くこともできず、500万円ほどあった貯蓄も瞬く間に消えてしまった。年金支給日前には野草を食べて暮らしたほどだ。
「野蒜(のびる)って知っているか。見た目がエシャロットとかラッキョウに似た小さな野草、一時期はそれを主食にしていてさ。それを食べて暮らすんだよ。よもぎとかふきのとう、つくしなんかも採っていたな。野草には救われた。それがなかったら餓死していたかもしれないと思うときもあるよ」(同書より)
 現在、加藤さんは厚生年金に足りない部分の約4万円は生活保護を受け、家賃5万円で滞納していたアパートから低家賃の住宅に転居し、健康状態も回復することができた。
 これらは、単に「かわいそう」といった同情や「自己責任」「自助努力」で解決できる問題ではない。簡単に“下流老人”に転落しかねない家族扶助を前提とした年金制度、負担ばかりが高まる医療費に家賃、「経済優先・弱者切り捨て」の原則に基づいた社会構造を見直すべきなのだ。
 だが、現実は逆だ。すでに今年8月から、介護保険制度の改正で160万円以上の所得の人は負担額が倍になることが決まっているが、安倍政権はさらに社会保障費のカットを計画している。

 自民党は稲田朋美政調会長を財政再建特命委員長にすえ、年間5000億円の社会保障費をカットする計画を進めている。これから先、介護保険はもちろん、医療、年金、生活保護と、あらゆる分野で、負担増、支給・サービス減の改悪が進んでいく。
 絶望した老人が次々に自死を選ぶ。そんな社会はすぐ目の前に迫っているのだ。

(小石川シンイチ)【出典】 LITERA 2015.07.02
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代官:「まことの将軍様がこのような場所に来られるはずがない。将軍様の名を騙る狼藉者だ!。
出合え、出合えっ~!」
 
資料1
北海道新幹線:並行在来線問題 江差線、三セク正式合意 赤字経営に不安も 道・3市町、財政負担重く /北海道-毎日JP
資料2
北海道新幹線-ウィキペディア
資料3
北海道-北海道新幹線のページ
資料4
北海道新聞「新幹線 北海道へ」ニュースサイト
資料5
【広域処理は憲法・地方自治法違反】”北海道外”で発生した廃棄物を、処分目的で”北海道内”に搬入することはできません。「北海道ホームページ」
資料6
【放射性物質はお引き受けできません=JR貨物】 危険品の事故はヒト・モノに甚大な影響を及ぼしかねません。事故防止のために厳正な取り扱いをお願いします。はじめに1お引き受けできないもの『放射性物質』全文(PDF)
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